皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「恋し慕し夏の日」

Ginger-Leaf」のたってぃさんから、久しぶりにSSを頂きましたー(^▽^)/

今回は直球の甘い斎千!
それもちょっと艶っぽかったり…(//∇//)
私には描けそうもない斎藤さんにドキドキさせてもらいましたw

そんな色っぽい斎藤さんを、続きからどうぞ堪能して下さい♪



挿絵は感謝を込めて、たってぃさんへ進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




恋し慕し夏の日


 引退と引き継ぎが終わり、今度、後輩たちが活躍する夏の大会を見守る。
 斎藤一が剣道部員として果した役割は、一区切りついたと言えた。
 全国まで行けなかったのは心残りだったが、早々に引退が出来て、時間が出来た事は喜ぶべきことかもしれない。
「一さん、何を考えていたんですか?」
「あぁ。雪村とこうしている時間を、幸せだと感じていてな……」

カット887恋し慕し夏の日

 膝に乗せた恋人を後ろから抱きしめて、白いうなじに顔を埋める。
 シャンプーの清潔な香りと微かな汗の匂いに、体温があがっていくのを感じる。
「もうっ、一さんったら、私はただ差し入れを持ってきただけなんですけど」
 そうだった。千鶴は大学受験の勉強をしている斎藤の為に、夜食を作ってきたのだ。
 可愛らしい恋人の訪問とひやかす家族をあしらいながら、彼女を自分の部屋に招き入れた。
 恋人が苦笑している気配に、斎藤は千鶴の肩に顎をのせて言う。
「腹よりも、俺はアンタに癒して欲しい。もう少し、こうしてくれないか?」
「いいですけど、折角の作ってきた夜食が冷めてしまいます」
 不満ながらも、為すがままの千鶴に斎藤は存分に甘える。
 華奢な肢体から伝わる体温に安心して、彼女に身を預けた時、どこに居る時よりも息を深くつけるように感じられた。
 目をつぶって、このまま千鶴と眠ってしまいたい。一日中ずっと独占したい。
 この体勢から横に倒れこんでしまえば、ベッドの上で彼女を組み敷く事が出来るだろう。
 頭の中で、千鶴のきているワンピースを脱がしている場面を想像し、斎藤はさらに息を深くつく。ゆったりと呼吸が出来る心地よいさに、愛おしい恋人に、自分は何が出来るだろう。
 俺は、千鶴をどうしたいのだろう……。
「あの…。息抜きに今度デートしませんか? ウチの近所で夏祭りがあるんです」
 千鶴の言葉に思考が現実に切り替わる。
 テーブルには千鶴が用意した夜食が、湯気を立てて存在をアピールしている。
 水筒に入れて持ってきた『崩し豆腐の粥』は、持ってくる夜食の中で一番のお気に入りだ。
 このままでも美味しいのに、彼女はさらに卵とラップで包んだ薬味を用意する。卵を割り入れて、ネギやシソを刻んだ薬味を散らし、かき混ぜて食べるのだ。
 くうっ。と、腹がなる。
 それが、心からの飢えか肉体的な飢えか、斎藤にはわからない。
「あぁ、いいな」
 深夜なのに蝉が鳴いている。雌を求めて鳴く声に、心の中からぐつぐつと様々な感情が現れては消えて行く。


 待ち合わせの鳥居の前で斎藤は千鶴を待っていた。
 鳥居を我先にとくぐりぬけて、祭りの会場へと向かう子供たち。自分にもこういう時期があった事を思い出して、懐かしさから子供たちの小さな背を目で追っていた。
「一さん……」
 唐突に唇に狐の面が押し付けられる。
「ぼうーっとしないでくださいよ」

カット695

 悪戯を成功させた子供の様に笑う恋人は、ブルーのリボンで髪を結い、青地に白菊の浴衣姿。
 群青色の瞳をしばたたかせる斎藤は、千鶴の妖しげな頬笑みに鼓動が高まっていく。
 星が見えない夏の夜空。暗黒に覆われた世界の中で、祭りの灯りと赤い鳥居がくっきりと幽玄に浮かび上がる。
 絡みつく熱気が肉体をまとわりつき、じりじりと内側から焦げていく想い。
 気付けば斎藤は千鶴の体を引き寄せる。
 かたりと、石畳の道に落ちる狐面。目を細める栗色の瞳は、誘うように甘い熱を孕んでいる。
「挑発しているのか? 俺のことを」
「さあ? なんのことでしょう」
 あぁ、生意気な唇だ。
 噛みつく様にキスをする。深く、深く、貪るように。
 舌を絡めるごとにぴくりと反応する背中に手をまわし、互いの体温を確かめるように密着する。
「んっ」
「ふっ…」
 耳朶を打つ熱い吐息。獰猛な感情が理性を苛んで、彼女が欲しいと叫んでいる。
 ふとした瞬間に見せる恋人の貌(かお)。艶やかに見下ろす千鶴。酷薄さを感じさせる瞳で挑発する千鶴。物憂げに顔を伏せ、なにを考えているのか分からない千鶴。
 全て欲しいと思った。全部暴きたいと思った。
 彼女を知ろうとすれば知るほど、自分の中の様々な感情や独占欲に気付かされる。
 俺の知らない千鶴。俺の知らない俺。人と交わる事で知る、未知の部分に魅せられていく。もしかしたら、千鶴も俺の全てが暴きたいのかもしれない。
「一さん、祭りいきましょう」
 唇を話し、斎藤の指に己の指を絡ませる。甘い余韻にひたる紅潮した千鶴の顔。夜闇が作る千鶴の陰影に、斎藤は引きずり込まれていくのを感じた。
「あぁ」
 短く応じて、絡めた指を繋ぎ直す。
 まだ、夏は始まったばかりだ。まだ、祭りは始まったばかりだ。
 手を繋いで赤い鳥居をくぐる二人。
 天上にあがった黄色の月が、まるで目玉の様に二人の恋模様を眺めていた。


  1. 2016/10/11(火) 17:45:34|
  2. 頂きもの
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