皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「お餅にまつわるえとせとら」

六花書房」のゆゆきさんからの頂き物です♪


今年の新年の斎千SSとは別の年賀用に、書いて下さった沖千SSだそうですが、
諸事情により、8ヶ月近く遅れてしまったようですw

なので、設定その他はご納得の上でwww
それにしても、久しぶりのゆゆきさんの沖千♪甘い!甘いですよ~
私には逆立ちしても描けないお話です。

ところで、千鶴ちゃんがカプッとした沖田さんの「とある部分」って…?
と、あらぬ妄想をしつつ―――w

では続きからどうぞ、ゆゆきさん印の激甘沖千を堪能して下さい(* ̄∇ ̄*)


挿絵は感謝を込めてゆゆきさんに進呈します。
他の方は御遠慮下さいね。



お餅にまつわるえとせとら



目の前には七輪と焼き網、そしてその上に乗ったまあるいお餅たち。
お正月と言えばやっぱりお餅だよね!という事で、大晦日にせっせとたくさんこしらえたものだ。
焼き網の上でお餅がじりじりと炙られて膨らんでいく様子を見ていると、自然と私の胸までわくわくと膨らんでいった。

「総司さんは何をつけて食べるのがお好きですか?私はあんこもいいけどきな粉も好きなので、どちらにしようかなって迷ってしまいます。」

ゆらゆらと炎の熱が揺らめく向こう側にいる総司さんに話しかけると、彼は薄く笑ってこう答えた。

「千鶴って案外食いしん坊だよね。僕はそうだなぁ・・・砂糖に醤油を垂らしたやつが好き・・・かな。」

確かに各種用意したつけダレの中から彼が自分の方へと引き寄せていたのは、そのタレの入った小皿だ。
私の事を食いしん坊呼ばわりするけれど、彼だって食べ物によってはなかなかの食いしん坊だって思う。
焼き網の上に所狭しと置かれたお餅がその証拠で、こうして網の上に隙間なくお餅を並べたのは彼の方なのだ。
総司さんは昔から食が細い印象だけど、お餅になると彼の大好きなお菓子の延長みたいな感覚になるのか、何故かいつもより食いつきがいい。
炊いたご飯だって十分おいしいんだけどな・・・と思うんだけど、お餅の方がより強く甘みを感じるからなのかもしれない。
そもそも、彼の好きなタレがみたらし団子のソレと同様のものなのだから、彼が甘党なのは疑う余地がない。
なんて私も十分甘党なんだから、甘いものには目がない似たもの夫婦と言われればそれまでなのだけれど。

「早くお餅焼けないかなぁ・・・私、待ち遠しいです。」

まだ菜箸でツンツンとつついてみるまでもない状態なんだけど、お餅というのは気を許した一瞬の隙に黒焦げになっていたりするのだから目が離せない。
菜箸を構えたままでじーっとお餅とにらめっこを繰り広げる私を見て、総司さんがにやりと笑った気がした。
そしてそれは決して気のせいではなく・・・違和感を感じて「どうかしましたか?」と尋ねようと視線を上げた瞬間。
ヒュッと彼の持っている箸が唸りを上げて私の方へ突き出されるのと、チリッとした痛みを頬に感じたのはほぼ同時だった。
炙られているお餅の向こうで彼が笑っている・・・とても愉快そうに。

「・・・いたいでしゅ、総司しゃん・・・なにしゅるんでしゅか・・・。」
「あ、ごめんね。千鶴のほっぺたって白いし柔いし、下膨れでお餅みたいだったから、間違えちゃった。」

総司さんは全く悪びれた様子もなくニヤニヤとしながら箸で私の頬を摘み、器用に箸を動かしてむにむにと私の頬を引っ張ったり縮めたりして弄んでいる。

「・・・総司しゃん・・・。」

私が彼を恨めしく見ると、彼の口角がイタズラ大成功とばかりにニィと孤を描いた。
それを見て私は当然カチンと来た。なんて、、、小憎たらしいのっ!!
ええ、ええ、総司さんったらいっつもそうなんです!
彼のこういった子供じみたイタズラ癖は、こうして夫婦になった今も全く治る片鱗さえも見せず、相変わらず私に存分に発揮されている。
まあ、屯所にいた頃に土方さんをはじめ他の方々が蒙った被害に比べたら、私がされるイタズラなんて毎回可愛いものだっていうのはわかってる。
それが彼のちょっと歪んだ愛情表現みたいなものだって言うのも、わかってはいる。
でも、いくら愛する旦那様のかわいいかわいいイタズラとは言え、言っていい事と悪い事があるって思うんですっ!
他のどんなイタズラも最終的には許してしまう私だけど、容姿についてからかわれるのだけはすんなり水に流せない。
だって私自身はそもそもそんなに容姿に自信がないんだもの。
だから、いつだって自然と注目を集めてしまう総司さんの横に立っていると余計にそれを感じてしまうのにっ。
彼にどんなに「千鶴はかわいいよ、もっと自分に自信を持ちなよ。」と言われても、彼には私の『あばた』も『えくぼ』に見えているに違いないのだから。
それはもちろん嬉しい事だけれど、自分の実情を知っている身としては真には受けきれない褒め言葉なのだ。
そんな自分に自信のない私だから・・・顔や体型の事で彼にからかわれるのは正直歓迎しかねる気持ちになってしまう。
いつも褒めてくれるのはやっぱりお世辞で、こっちの気持ちの方が本当の気持ちなんじゃないかなって思っちゃうの・・・。
総司さんはわかってないと思うけど、女の子はいつだって好きな相手から一番にかわいいって、綺麗だって思われたい生き物なんですっ!!
それは夫婦になったって変わりはしない事なのに。
ううん、むしろ夫婦になった今だからこそ、総司さんにがっかりされる女性にはなりたくないって気持ちは強まった気がする。
だから密かに気にしている部分をからかわれて、それを下膨れだの、お多福だの言われたらこちらのへそも曲がると言うものでしょう!?
そもそも総司さんと言えば、私が彼を『沖田さん』と呼んでいた頃から、私のほっぺたをお餅か大福だと勘違いしている節がある。
いつだって私を見つけると、前にいようが後ろにいようがところ構わずとにかくやりたい放題だったんだから。
その長い手をにゅっと伸ばすと問答無用で私の頬を掴んで、後はつまんだりひねったり伸ばしたりこねてみたり・・・。

カット207b

「私のほっぺたはお餅じゃありません!!」何度そう訴えたか知れない。
その度に「だって千鶴ちゃんのほっぺた気持ちいいんだもの。僕の為に役立ってるんだから、少しは喜びなよ。」とかなんとか、自分勝手な理由でさらにこねくり回されて、最終的には真っ赤に腫れあがって「りんごみたいだね。」と齧られそうになった事もあったような・・・。
あんなにこねくり回されたら誰のほっぺただって下膨れになってしまうと思います!
やっぱり私の頬がお餅と見間違うほど下膨れなのだとしたら、少なからず総司さんに責任があると思うんだけど。
それを彼に言ったらきっと、「だから君をお嫁さんに貰って、責任取ったでしょ?」とか平気で言っちゃうんだろうな、この人は。
でも、そういう問題じゃないんです!私は少しでも可愛い状態で彼にお嫁さんに貰って欲しかったんだからっ!!


私は総司さんにも分かるようにあからさまに眉根を寄せると、頬をぷうっと膨らませてその反動で総司さんの箸を頬から弾じき飛ばしてやった。

「ひ、ひどいです。下膨れって・・・気にしてるのに!」

キッと恨みがましい目で見ても、抗議の言葉を口にしても、当然ながら総司さんに効き目があるはずがない。

「だからごめんって言ってるじゃない。千鶴のほっぺたがおいしそうなのが悪いんだよ。本物の餅よりふくふくしてるんだから。」

のうのうとそんな事を言いながら、挙句にもう一度私の頬を摘もうと機会を伺っている彼を見て、流石の私もちょっぴりムキになった。

「そっ・・・そんなに言うのなら、焼いてるお餅じゃなく私のをお食べ下さい。はい、どうぞっ!!」

私は総司さんに向かって身を乗り出すように自分の頬を突き出した。
もちろん拗ねているのでありったけ頬は膨らましている、それこそ弾ける直前のお餅のように。
ふーんだ、どんなに総司さんがいじわるだって私のほっぺたを本当に食べられるわけがないんだからっ!!
やれるもんならやってみろと言わんばかりの私の態度に、総司さんも最初は目を瞠っていたけれど・・・。
彼は私の気迫に一瞬だけきょとんとした顔をしたけれど、そもそも彼は私なんかの開き直りに気圧されるような人ではなかった。
それは今までの付き合いの中でも十分すぎるほどに分かっているはずなのに、それでも、頭に血が上りやすい私はいつも同じ過ちを繰り返してしまう。
つまりは総司さんの格好の獲物になってしまうのだ。
彼はそんな時、いつも猫みたいな顔になる。
目を爛々と輝かせて口の端が三日月のように持ち上がって、もしも彼に猫の髭があったらヒクヒクと動かしているに違いないはず。
そんな顔になった彼を見て私はいつも自分が失態を演じた事に気づくのだけど、いつだってそれは手遅れの合図なのだ。

「へぇ・・・食べていいんだ。千鶴って時々大胆だよね・・・じゃあ、遠慮なく。」

あっと思った時は既に手遅れで、総司さんの長い腕が伸びてくると私の頭の後ろに回されて、そのまま彼は私を自分の方へと引き寄せた。
それからもう一方の手で自分の用意していた小皿からすばやく指にタレを絡めとって、そのまま私の口元に走らせると・・・

「!?な、なにを・・・」

抗議の言葉は甘じょっぱい味と柔らかく湿った感触によって封じられてしまった・・・。
私は驚きのあまり目を閉じる事もできずに、眼前にある総司さんの長い睫をただただ凝視していた。

「ん・・んんっ・・・。」

総司さんは私の言葉を真に受けて、本当に食べているのだ・・・お餅さながらにタレまでつけて、私の『唇』を。
その行為は口付けというよりはまさしく『食べている』と言った方が相応しくて。
彼はご丁寧にはむはむと私の唇を甘噛みした挙句に、残ったタレを舌でぺろりと舐めとっている。
時折ほんの少し離れては「おいしい」なんて言葉を囁く彼の声は、いつもの軽妙な様子とは違ってねっとりと甘く私の鼓膜に響く。
たったそれだけの事で、私の身体は自分ではよく分からないずっと奥の方が震えるようにずくんと疼いた。
唇にかかる吐息の温もりには何度そうされても到底慣れる事ができなくて、いつも心の中でひゃあっと悲鳴をあげてしまっている事に、彼は気づいているのかいないのか。
総司さんにそうされる度に硬くなってしまうのは、自分の事とはいえ、もはや私にはどうすることも出来ない。
そっと彼が離れる気配で目を開くと、少し困った様子で総司さんが見つめていた。

「千鶴はいつまでたっても初々しいよね。でも、そこが・・・堪らない。」

先程とどこか様子が違って少し余裕の無さそうな彼を見てしまったせいなのか、「もっと食べたい。」と再び噛みついてきた総司さんをより一層強く意識してしまって、私の心臓は壊れてしまうんじゃないかという程どくどくと脈打っている。
だんだんと身体の奥の方が熱くなってきてしまうのをとめるにはどうしたらいいんだろう。
私は今、彼にいい様にされているだけのはずなのに・・・逆にもっと欲しくなってしまうのは、彼に触れて欲しくなるのは、私が紛れもなく『女』だっていう性(さが)のせいなんだろうか。
ほんの少し残った自制心で、甘く溶かされそうな意識を必死に繋ぎ止めようともがくけれど、彼の手からはそう簡単には逃れられるわけもない。
結局、私は彼が満足いくまで存分に食べ尽くされてしまった。
歯と舌でじっくりと味わいながら私の唇を『食べた』総司さんは、最後に「ごちそうさまでした」と満足げに言った。

ようやく総司さんに解放された私は、しばらくの間は放心しているしかできずにいた。
身体に全然力が入らなくて、私の背骨まで食べられちゃったんじゃないかと錯覚するぐらい体がぐにゃぐにゃと定まらない始末。
それでも、徐々に頭が冷静になるにつれ彼に対して言いたい事が山のように沸いてきた。
女として愛する人に求められればそれは嬉しいけれど、何事も時とか場所とか、その他諸々こちらの都合も考えて欲しいんですっ!って。
それなのにそれはうまく声にならなくて、金魚のようにただ口をぱくぱくと動かし続けてようやく言葉になったのは、呂律の回らない馬鹿みたいな言葉だった。

「ななな・・・そ、そう・じさん、いいい今、何を・・・。」

彼は大げさに目を見開いてわざと「わからなかったの?」とでも言いたげな顔をしたけど、わからないわけないじゃないですか!!
わ、私が言いたいのはそういう事じゃなくて・・・と、言いたい事がうまく言葉にならなくてワナワナと震える私を見ても、彼はどこ吹く風としれっとしたもの。

「千鶴が食べていいって言ったから食べたけど、何か問題でもあった?」

「ももも、問題大有りですっっっ!!!め、めめ、夫婦になったからって、し、していい事と悪い事がありますっっ!!」

総司さんのあまりの余裕ぶりに、私の羞恥心が一気に沸点に達したのも仕方がないでしょ!?
私が真っ赤になりながらわあわあと自分でもわけのわからない抗議をぶつけても、彼はとても愉快そうに私を見ているだけ。
・・・いや、違った・・・。
彼はもっと『私で』楽しもうと思いついたらしい・・・。
総司さんの瞳の奥にキラキラと無邪気な加虐心を見つけて、私は背筋がぞーっと凍った。
まだばくばくと心臓の鼓動も落ち着かないのに、次は何をされるんだろう・・・でも私は腰が抜けてしまっているので、そこから逃げる事もできはしない。
少しでも距離をとろうとじりじりとお尻をすって後ろに下がったけれど、それぐらいで総司さんの手中から逃れられるはずもなくて。
それは甘い考えだって知ってるけど、他に身を守る術がすぐには思い当たらないのだからしょうがない。
彼は「そんなに警戒しなくてもいいじゃない。」とたった今、私にした事はなかったかのように肩をすくめて見せた。
私が逃げようとするのは、総司さんの日頃の行いのせいなんですよ!それなのに・・・

「ねえ、千鶴。見て。」

総司さんは意味ありげに笑うと、自分の唇にもついていたタレをゆっくりと指で拭って見せた。
そして私にわざと見せ付けるようにしながらゆっくりと薄い唇を開いて指を咥えて見せる。
こちらにチラリと目線を寄越すと猫のように目を細め、そして伏し目がちにぺろぺろと自分の指を舐め始めた。
何が始まるんだろうと警戒していた私は、直接自分に何かされるのではないようだという事で確実に油断した。
それが総司さんの罠だとも知らずに、私はすでにまんまと彼の術中にはまっていたのだ。
彼の赤い舌がペロペロと指を舐める様子は何故だか妙に艶かしくて、そして私はそれから目が離せなくなってしまった。
彼はただ指を舐めているだけなのに、何故だかその全てがとても淫らな事のように私の目に映る。
更には総司さんの色気が駄々漏れで、こんな淫らな行為を見ちゃいけないって思うのに一向に視線を逸らす事ができない。
私は気づいてしまった・・・彼が今度は私に何をしているのかを。
今、彼が自分の指に対してしている行為は、さっき私に対してした行為そのものなのだ。
それをこうして意識的に見せつける事で、余計に私の羞恥心を煽ってからかっているのだ。
あんな事をされてたなんて・・・そう思うと、私の顔からは沸騰したやかんのようにしゅわしゅわと湯気が上がって止まらない。
ちゅぱちゅぱとわざと音を立てるように自分の指を丁寧に舐め終わると、総司さんはトドメとばかりに「千鶴の、とってもおいしかったよ。」と満面の笑顔をこちらに向けた。
私はもう顔を上げている事すらできなくなって、俯いたまま総司さんのこの拷問にも似たイタズラをただひたすらにじっと耐えるしかなかった。

「わ、私のって・・・それはモチじゃなくて、クチ・・・です。」

プルプルと羞恥に震えながら精一杯の抗議をしても「どっちも柔らかくて甘くておいしいんだから、同じようなものじゃない?」なんて、やっぱり総司さんのヘリクツによってさらりとかわされてしまう。
七輪の網の上で最大限まで炙られて膨らんでいたお餅は、私の代わりにぱちんと弾けてぷしゅうとしぼんだ。


あれだけ楽しみだったお餅がようやく焼けてちょうど食べ頃だというのに、総司さんのせいで私はもはや胸がいっぱいでお餅なんか食べられそうもない。
なのに・・・

「ほら、焼けたよ千鶴。もう!早く取らないと焦げちゃうってば。」

彼は何事もなかったかのように箸でお餅をつまむと先に私の小皿にとってくれた。
総司さんはいじわるなのか本当は優しいのか、こんな風に翻弄されてばかりで、彼といればいるほどよくわからなくなってしまう。
ううん、本当のところはよくわかっているんだけど、さっきみたいな事を面白半分でされる私の気持ちも少しは考えて欲しい・・・と幸せすぎる今の、私のちょっぴりの不満(?)なのだ。

「総司さんは、ずるいです・・・。」

小さな声でぽそっと呟くと、彼はさっそく焼けたお餅を咥えたままこっちを見て「ずるいって千鶴の方が数が多いのに、そんなこと言うの?」なんて不審な目を向けられてしまった。
確かに目の前の皿を見ると、焼けたお餅が山に盛られている。
でも私が言ってるのはお餅の数の事じゃないんですけど・・・わかってますよね?!
いじわるもイタズラもいっぱいされちゃうけれど、その分さりげない優しさもくれる人を旦那様に選んじゃったんだから仕方ないか・・・と心の中でため息を一つ吐くと、私も焼けたばかりのお餅にぱくりとかじり付いた。

「!!!おいしい!ん~、熱々でもちもちでたまりません。」

ほんのり甘くて、もちもちとした弾力をかみ締めると思わず笑顔になれた。
そんな私を見て、総司さんったら「そうだね。でも千鶴の方がもっとおいしかったかな。」なんてさっきの事をもう一度蒸し返すものだから、私は思わず咥えていたお餅を喉に詰まらせてしまった。

「!!・・・んんっ・・・んーっ!!!」
「大丈夫?ほら、お茶飲んで・・・慌てて食べるからだよ、本当に千鶴は食いしん坊だね。」
「ち、違います。総司さんがまた変な事言うから・・・。」
「え~、僕おかしい事を言ったつもりはないけど?千鶴のがおいしいのは本当・・・。」
「もーっ!!その話はもういいですからっ!!!」

何を言っても何をしても、きっとこの人には敵いっこない。
それはわかっているけれど、さっきから総司さんには翻弄されてばかりで、私だってたまにはぎゃふんと言わせて見たくなる。
だから私はささやかな逆襲を思い付いた、それは・・・

「そんな事ばっかり言ってると、今度は私が総司さんの事、食べちゃいますからねっ!!」

カット698お餅にまつわるえとせとら

『齧り付いちゃうぞ!!』と、まるで熊が襲いかかる時みたいに両手の爪を立てて、がぶっと噛みつくように歯を剥いてみせた。
総司さんは私の行動が意外だったのか、ぽかんと口を開いたまま、箸で摘まんでいた餅さえも取り落としてしまった。
総司さんは開いた口が塞がらないまましばらく私を見つめると、ふいっと後ろを向いた。

???
これって、逆襲成功ってこと・・・かな?
うなだれるように背を向けた総司さんは、猫背なせいかちょっぴりしょんぼりしているように見えた。
私が「ちょっとは反省してください!」って言いたいの、伝わったかな?
それにしても・・・なかなかこちらに向き直ってくれる気配がない。
私があんな事言ったから、総司さんへそ曲げちゃったのかな・・・?

「あ、あの、総司さん?」
「・・・・・・・・・。」
「・・・怒ったんですか?」

そう聞いても返事はない。
そうだった・・・私が総司さんにイタズラされるのは日常茶飯事でも、逆の事をされるのが彼は嫌いで、一度へそを曲げたら直すのは至難の技が必要だった。
好きな食べ物や謝罪で許してくれるわけもなく、あの手この手で宥めすかしてもすっかり機嫌を直してもらうにはかなりの労力を要する。
とにかく、私にはよくわからない総司さんの『ツボ』を当てるのは、途方もない事なのだ。
やっちゃったかなぁ・・・でも、元はと言えば総司さんのイタズラが度を越してるのが良くない・・・なんて考えが頭を過るけれど。
どうしよう・・・新年早々つまんない事で喧嘩なんていやなのに。

「総司さん、こっち向いてください。お餅冷めちゃいますよ。」
「・・・・・・・・・・・。」
「さっきの事はもう、私が謝りますから、ね。一緒に食べましょう?」
「・・・・・・・・ふふっ。」
「え?総司さん、今なんて?」

総司さんは私からは顔を背けて肩をワナワナと震わせていたけど・・・ん?これってもしかして、怒ってるんじゃなくて・・・?
と思ったら、堪えきれなくなったように総司さんはお腹を抱えて盛大に笑いだした。

「ふ、ふふ、あっははは。もうだめ、我慢できない。もう、君ってば可愛すぎるからっ。」

総司さんは涙も流す勢いで、息も絶え絶えになっている。
私としてはこんなに笑われるほど可笑しな事を言った覚えはないし、彼を怒らせてしまったんじゃないかという心配までしたのに、それに対して総司さんの笑い方はあんまりだと思った。

「な、何がですか!?私笑われる事なんて言ってませんよ。」
「本当に君って面白いね。千鶴がいるだけで退屈しないよ。」
「だ、だから、何がですか!?」

私がむきになって言うと、余計に彼のツボにはまってしまったようで、治まりかけた笑いの発作が再発してしまった。

「ふふっ・・・はははっ。うん、僕の事を食べちゃうんだよね、あははっ。」

そう言って、総司さんはおもむろに私をぎゅーっと抱き寄せた。
私はそれでなんだか悟ってしまった、またしても総司さんの懐に葱を背負って入り込んでしまったんだなと言うことに。

「あ、あの・・・あのっ!?!?」
「ほら、早く僕の事を食べて見せてよ?」

ほら・・・やっぱり!!!
総司さんの顔を覗き見ると、さっきよりも更にイキイキとした顔をしている。

「あ、あれはひとつの例えというか、だから本当に食べるとかできないってわかってますよね ・・・?」
「でも千鶴が言ったんだよ?僕の事を食べちゃうって。だから、はい、どうぞ。」

彼はニコニコと自分の頬を私の口許に差し出した。
こうなった総司さんはどう言っても引き下がってくれるはずもなく・・・確かに私は葱を背負って行ったかもしれないけど、総司さんなんてあんなに葱が嫌いなんだから、むしろ見逃して欲しいくらいなのに、それなのに。

「さっきの勢いはどうしたの?」
「で、出来ませんってば。」
「千鶴は頬も唇もみーんな美味しそうだけど、千鶴は僕のどこから食べてくれるのかなぁ?」
「あ、あの、だからぁっ!ちょっと待ってくだ・・・。」
「待てない。ううん、待たない。ほらほら、早くってば。」
「・・・総司さん面白がってます?!」
「うん♪」

正直に認める彼をどうやって納得させればいいのかわからない。
私が彼の腕の中でどんなにもがこうが、泣きわめこうが、許してくれるつもりなどないらしい。
それは彼が、鼠をいたぶってる時の嬉々とした猫みたいな顔つきになってる事で一目瞭然だ。

「許してください、私が悪かったですから。」
「だーめっ♪千鶴が食べてくれるまで離さないから、そのつもりで。」
「うえええん、勘弁してくださーい。」

私たちのそんな攻防戦は、きっと焼かれたお餅たちが「あんなに楽しみにしてくれてたのに、食べてくれないの?」と焼きもちを焼く気にもなれないものだったに違いなくて。
でも、こういう他愛のない出来事が積み重なって私たちの幸せの形になっていく事を私は知ってしまったから。
彼のこんな困った部分さえも全て、愛おしくてかけがえのないものに思えてしまうから。
だから、最後には必ず彼の言いなりになってしまうのだけど、それでいいんだよねと私は無理やり自分を納得させた。
引いてダメなら押すしかないっ!
『ええい、ままよ!』と恥ずかしい気持ちに蓋をして、私は総司さんのとある部分にカプッと噛みついた。
私が勇気を出して噛みついたのが少なからず予想外だったのか、総司さんはぴくっと体を震わせた。
そっと口を離して彼を覗き見るけれど、何やらさっきまでと様子が違う気がして。

「あの、総司・・・さん?離してくださいます??」

これで離してくれる?なんて思った私の考えは確かに甘かったのかもしれないけど、だったらどうしたら良かったんだろう?って考えても私には彼のツボはやっぱりわからない。
一向に離してくれる様子もなく、むしろ抱かれた肩に力が入ったような気さえする。
そして、それは決して気のせいじゃない。

「あ、あの?」
「・・・そんな顔されたら、離せるわけないじゃない。」

耳元で低く甘く、そう囁かれた。
いつもは意識しないけれど、息がかかるほど近くで囁かれると、私は何故だかそれだけで腰が砕けそうになってしまう。
私は今、一体どんな顔をしてるんだろう?
恥ずかしくて頬が赤らんでいるんだろうっていうのは自分でもわかるけど、そんな事は彼にからかわれたらいつもの事。
頬に添えられた彼の手がなんだか熱く感じるのは、私が火照ってるからなのか、それともこれは彼の熱なのかな?

「千鶴が、悪いんだよ・・・?」

そう呟きながら、総司さんは添えた指で優しく私の頬をなぞっている。
物欲しそうに切なく見つめられると、目を逸らす事もできなくて、さっきまで彼の手から逃れようと思っていた気持ちさえ掻き消されてしまう。

-----彼が今、食べたいって思ってるものは 何?-----

甘党の彼にはソレが、それはそれは美味しそうなモノに見えるらしい。
目の前には彼の大好きなタレのついた焼きたてのお餅があるのに、それさえも霞んで見えないほどに魅力的らしく。
いつもは涼しい目元をしているくせに、妙に熱の籠った瞳で見つめられたら、いつもは鈍い私にもソレが何なのか、流石に想像がついた。

-----それはきっと、私。-----

総司さんにとって私はやっぱりお餅か大福か、はたまたお砂糖一袋ぐらい入れた甘い甘いお汁粉みたいなものなのかもしれない。
とろとろに溶かしたあんこにお砂糖をたっぷり入れて、あまくあまく煮詰めたら、もちもちのまっしろなしらたまを入れて。
彼の手によって、私はそういったモノになる。
総司さんの薄く開いた唇から赤い舌がチロリと覗く。
彼がゆっくりと舌嘗めずりをしているのを見て、それは確信に変わっていった・・・。

(おしまい)
  1. 2015/08/17(月) 14:20:22|
  2. 頂きもの
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  1. 2015/08/24(月) 02:21:18 |
  2. |
  3. #
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ゆゆき様♪

無事メールが届いていたようでほっとしました。
あの挿絵が、そちらのご希望の場面じゃなかったのかと、実はどきどきしてたんですよね(^^;
折角のらぶらぶ話なんだから、それに合わせた画にすればよかったものの、実生活に甘さがないせいかw私の画力が足りないせいか、どうにもうまく甘い画が描けなくて…いつか、ゆゆきさんが『おお!』と驚くような甘~い沖千イラスト描いてみますので、それまで待ってやって下さいね( ̄∇ ̄;)
それにしても実生活では、辛いものにもその後出会えていません(T-T)
駅前にあったカレー専門店を目指して行ったら、何となくなってる! 一体いつ閉店したんだ~!!と思わず咆哮。これって私にカレーを食べさせない運命の力が働いているような気がしません?
しかしこうなると、意地でも夏の間に外でカレーが食べたくなってきましたよww
うまくカレーと巡り会える事を祈ってやって下さいwww
あ、ちなみに私も福神漬けよりラッキョウ派です(* ̄∇ ̄*)
ではでは、やっと少し涼しくなってきました。これから秋にかけては、創作に適した時期。
またゆゆきさんの素敵な沖千が読めるのを楽しみに待ってますので、頑張って下さいねー(^▽^)/
  1. 2015/08/25(火) 07:52:15 |
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  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

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