皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「空への誓い」

桜護雪」の香西香住さんからの頂き物です♪


原田さんとのバーデートと、不知火さんとの墓参りデート―――そのイラスト2枚でSSを書く、と聞いた時には
どんなお話になるのかと思っていましたがw
やはり香住さんですね。思ってもいない繋げ方をしてくれました。感服^^

では
今回はおまけの新規画はありませんが、
続きから香住さんのかっこいい匡さんを堪能して下さい♪


挿絵は感謝を込めて香住さんへ進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。



空への誓い



カット683

「それで、匡さん、最近、元気なくて」
「なんだよ。折角、千鶴から呑みに誘ってくれたと思って喜んで来てみたら、匡の奴の話か」

原田先生は私をからかう様に笑いながら覗き込んできた。

「原田先生!私は真剣なんです!!」
「そうは言ってもよ、親友の彼女とは言え、二人っきりで話したいってこんなお洒落なBARに連れて来られたらちぃと期待しちまうもんだ」
「私がその気なら、そもそも原田先生は付いて来たりしないでしょう?」
「まあな。でも、匡に内緒なんだろう?一般的に見たら、立派な浮気なんじゃねぇ?」

言われてみれば!!!

「ど、どうしよう!私はただ、原田先生と大喧嘩でもしたのかと!」
「してねぇよ、していたとしても、それでお前が感付く程あからさまに落ち込む程可愛くねぇよ、あいつ。一体いくつだと思ってんだ……ああ、でも、そういや、そろそろあの人の命日か」
「え?」
「そういや、毎年近くなると元気なくなるな。まあ、俺から話せる話じゃねぇし、後は本人から聞けよ」
「え?」
「わりぃな、左之助。手間を掛けた」
「匡さん」

声に振り返ると、そこには最近の淋しげな笑顔の匡さんがいた。

※※※

「ここは……」

翌日、匡さんに連れて来られたのはお墓だった。

「俺の恩師の墓だ」
「……恩師の?」
「高校時代、お袋の結婚相手が気に入らなくてグレまくっていた俺を見捨てずにいてくれた人だ」
「え?」

先日、紹介して貰った優し気なお義父さん。

「ガキが思春期な時に結婚するなっつぅんだ。なぁ?今なら、お袋の幸せを祈って祝ってやれんのに」
「あの…………」
「俺のお袋は未婚で俺を産んで育ててくれたんだ。所謂、私生児ってやつだな」
「え……」

衝撃的な話に頭が付いて行かない。

「ガキなりに男だし、母親を守ってたつもりでいたから、取られたみてぇで面白くなくてグレていた俺が何度反発しようが、殴ろうが、構い続けてくれたのが、当時の担任だったこいつって訳だ。…………で、多分、俺の実の父親だ」
「え……」
「実際に確かめたわけじゃねぇが、確実に血が繋がってる顔立ちと、生まれ付きのこの肌色。それに、お袋の態度。わかっちまうさ」
「恨んでは……」
「ガキの頃はな。でも、逢ってみたら、色々事情があるのは瞬時理解出来たし、お袋が、一人で育てる覚悟をしてまで産んだ俺の父親だ。恨んだら駄目だろう?それに、多分、俺が出来た事知らなかったと思うんだよな。お袋が知らせなかったんだろ?それだけの、まあ、歳差がな。お袋も元教師だしな。それに親父としての役目はあの三年間で果たしてくれたよ。すげぇ良い奴だったしな。すげぇお人好しで……結局、妊婦を庇って交通事故で……な。二十歳になった祝いに、酒を奢って貰う約束してたんだがな」
「じゃあ、今日って……!」
「気にすんな。今更誕生日を祝う歳でもねぇよ。そんな顔すんなって。今から親父にお前を紹介するんだから、笑えよ」

匡さんは、持って来た柄杓で墓石の上から水を掛けて、タオルで磨き始めた。

カット688

「は、はい!」

とりあえず、邪魔にならないように、桶を持って避ける。

「知ってるか?本当はこうやって水を掛けんの、ルール違反なんだぜ?」
「ええ!そうなんですか!?」

どうしよう。普通にやっていた。

「ああ。死者に冷や水を掛けるっつぅてな。本当はタブーらしい。何より、墓石が痛む。」
「……知ってて、何で掛けられたんですか?」
「二十歳になるまで酒我慢したのに約束破られた腹癒せの嫌がらせ」
「ええ!?」
「冗談だよ。本当は、暑がりな人だったし、この暑さじゃすぐに乾くだろうし、良いんじゃねぇ?墓石も煙が出る程熱くなってっしな。寧ろ、冷やした方があの人は喜ぶはずだ。……よし、こんなもんだろ」

匡さんは汗を拭い、頷いた。

「すっきりしましたね」
「まあ、いくら綺麗にしてもあの人はここには居ねぇけどな」
「え?」

問いかけると、匡さんは笑って、空を見上げた。

「昔から、魂は天に還るもんだ。いるとしたら、上だろ。……よぉ。漸く、連れて来れたぜ。俺が一生を共にすると決めた女だ」

そのまま、空に向かって話し掛ける。

「匡さん……」
「あんたがお袋と出来なかった分まで、俺はこいつと添い遂げてから、そっちに逝く。あんたが、自信を持って「息子だ」って紹介出来る様な男になってな」

穏やかな笑顔でそう告げる匡さんがとても愛おしくて、私も空に向かって叫ぶ。

「お義父様!千鶴と申します!匡さん……息子さんは、私が必ず幸せにします!!ですから、どうか安心して下さい!!」
「……千鶴。…………くっ」

匡さんは、口を押さえたかと思うとしゃがみ込んだ。

「匡さん!?」

ね、熱中症!?

「っはははは!」

慌てて背中に触れると、次の瞬間、お腹を抱えて笑い出した。

「き、匡さん!?」
「お、おま、すげぇ男前!!やべぇ、惚れ直すわ!つぅか、俺情けねぇ!やっぱ、あれだろ、幸せは二人で作るもんだろ?」

涙を拭きながら匡さんは久しぶりに本当の笑顔を見せてくれた。

「そうですね」
「あー……、自分の誕生日に心から笑ったの久しぶりだわ」
「その方がお義父様も喜びますよ。想って偲んで下さるのは嬉しいでしょうけど、笑顔が見たいと思うと思いますよ」
「……そうだな」
「これからは毎年一緒に過ごさせて下さい。私が貴方の笑顔を護ります」
「……くっ。まじで格好良いな、お前。じゃあ、来年も二人で逢いに来るか」
「はい!!」

陽射しを浴びた匡さんの笑顔は何時も以上に輝いていた。

end
  1. 2015/07/28(火) 16:42:57|
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