皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「続・戯言艶語~ぞく・ざれごとつやがたり~」後編

ゆゆきさんの「続・戯言艶語~ぞく・ざれごとつやがたり~」後編でーす♪


続きからどうぞ^^


挿絵は感謝を込めてゆゆきさんに進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




続・戯言艶語~ぞく・ざれごとつやがたり~後編


バチバチと火花が散りそうに睨み合っていた二人だけど、沖田さんはフッと剣気を緩めると一足飛びに後ろに退いた。
えっ・・・沖田さんが競り負けたって言うのっ!?
信じられない・・・と思って彼を見ても、沖田さんは顔色一つ変えていない。
つまりはこのまま鍔迫り合いを続けても埒が明かないので、自ら一歩下がって相手の出方を伺う戦略にしたって事なのかな?
風間さんから少し距離をとると余裕綽々とした様子で刀の背でトントンと自身の肩を叩いている様子からしても、何も沖田さんは風間さんに競り負けたわけではなさそうだ。
そうだよね、剣に関しては沖田さんの右に出る人なんかいるわけないんだもん。沖田さんが負けるわけがない!!
そう私が信じたとおり、沖田さんはこれから風間さんに勝利をおさめるんだけど。
剣の技で勝ったわけじゃなくて・・・ちょっと厳密に言うと、勝ったって言えるのかな、これって・・・?
沖田さんは剣での勝負が好きなんだけど、こういう手段で風間さんを撃退したって事は、きっと戦ってて楽しい相手じゃなかったんだと思う。
私がそう思ったのは、風間さんは剣の腕は確かなものを持っているけれど、それ以上に足蹴り砂かけなんでもありの喧嘩じみた戦い方で、戦う相手としてはちょっと沖田さんはやりにくそうに見えてしまったから。
沖田さんは本当は、もっと純粋な剣術の勝負がしたいんだと思う。だって斎藤さんと剣を交えている時は本当に楽しそうだもの。
何はともあれ、沖田さんは違う戦法で攻める事にしたらしい、つまりは『話術』によって。

「ねえ、君は千鶴ちゃんを諦めたんじゃなかったの?千鶴ちゃんはもう僕のものだって言わなかったっけ?」


嘘でも何でも、沖田さんの口から『千鶴はもう自分のものだ』等と言われると、こんな状況においても胸がドキドキと高鳴ってしまう。
ちなみにこれは、以前『私が沖田さんのもの』だと風間さんに信じ込ませた所、その効果はテキメンで、風間さんは怒りに震えながらも退散していった事があったからだ。
そしてその時、沖田さんは思う存分風間さんをおちょくって楽しんだと言う経緯もある。また同じようにして追っ払うつもりなのかなぁ・・・でも風間さん相手にまたその手が通用する?
沖田さんの強さは信じてるし何か考えがあるんだろうけど・・・と私が勝手な心配をしている間にも、二人の会話は続く。

「ふん、千鶴がお前の手に落ちたなどと嘘っぱちだったではないか。貴様はあの時、そこにある春本を読んだだけで千鶴とそのような関係にはなってはいない。その娘は未だ生娘、違うか?」

私が生娘・・・って、なんでわた、私のそんな話に・・・。
しかし、風間さんはなぜか勝ち誇ったようにフフンと鼻を鳴らして沖田さんを嘲っている。

「そもそも千鶴が春本に出てくるような淫らな娘であるわけがない。」

なんですって!?だったら、以前私の事をさんざんふしだらだと罵って帰っていったあなたは何なのよ!!と怒りがこみ上げて、思わず物陰から身を乗り出しかけてしまった。
ううう、悔しい・・・私のこと、ふしだらとか、淫乱とか、すごくひどく言ったくせに。真相がわかった途端また私をさらいに来るなんて、そんなの都合が良すぎる!
そんな様子の風間さんに沖田さんは物も言わずに少し肩をすくめて見せた。

「さあ、その娘をさっさとよこせ。今度こそ貴様ら駄犬の手垢がつく前に俺のものにせねば、な。」

そう言って私の方を見る風間さんの顔がなんとも厭らしくて、私は悪寒で身震いがした。
沖田さん、何か言い返して!!私悔しいやら呆れるやらで、このままじゃあ腸が煮えくり返っちゃいそうなんだもの。
そう思っていた所に、いよいよ沖田さんの本領が発揮されることになった。
薄ら笑いを浮かべる彼の顔は、遠めに見れば人当たりのいい好青年にも見えるかもしれないけれど、実際にその笑顔を向けられたものは決してそうは思わないだろう。
すぅっと細められた瞳には冷ややかな青い炎が宿っており、私なんかはそれを見ただけで背筋がぞっと凍ってしまう。
これから自分が受けるだろう仕打ちが、残酷なものになるであろうことが予想できるからだ。
沖田さんの口から出る言葉は他意がなく無邪気なんだけど、だからこそ相手は逃げ場がなくて、丸腰で吊し上げられたような気分になるのだ・・・。

「やっぱり君は、風間マヌケだよ。改名したら?」
「き、貴様ァ、そのような侮辱は許さないと・・・。」
「確かにあの時はそこにある本を読んだだけだったけど。でもね、勝手に勘違いしたのはそっちなんだし、僕を責めるのはお門違いだよね。それにこの間の話は君の勘違いだったとして、それで僕と千鶴ちゃんの間に何もないなんて思うのは、ちょっと能天気すぎるんじゃないのかなぁ?」

沖田さんはわざと間延びしたような口調を崩さない。ムキになる相手にいかにも『君の相手は退屈だなあ』とでも言わんばかりのその態度は、誇り高い風間さんにとってはかなりの屈辱だと思う。
しかし風間さんの怒りが増せば増すほど、沖田さんの目は薄く孤を描き、その奥の彼の加虐心が踊っているのが見えた。
私には、沖田さんが獲物が自分の網にかかった事を確信しているのがわかった。
彼の口角がにいっと上がっているのがその証拠で、もはや目の前の獲物が敵というよりは餌食である事を示している。
いつもはこの餌食になるのは大体私で、だからこそ彼の癖は知り尽くしている・・・意外と本人に自覚はないのかもしれないけれど。
ああ、もう風間さんは沖田さんにいたぶられて食べられるだけなのだなと思うと少しだけ可愛そうになり、私は思わず心の中で合掌した。
そして、風間さんは私が思った通りにひどく屈辱的な目にあわせられる事になるのだった。

「んなっ・・・ま、まさか。」

風間さんは口をあんぐりと開けて、沖田さんの嘘を真に受けて衝撃を受けている。
いや、でも沖田さんの恐ろしい所は、実は彼は『嘘はついていない』と言う事だ。
嘘は言っていないのだ・・・真実でもないけれど。ただ、相手が沖田さんの思惑通りに勘違いをして自滅してしまうだけで、彼は一言も嘘は言っていない。
まあ、『千鶴は僕のもの』という所だけは嘘も方便だと思っているのかもしれないけれど、私がこんなにも沖田さんの事を好きなのだから、そこさえも実は嘘ではないのだ。
ただ、彼はそんな事は知らないはずだけど。

「大体さぁ、あの男所帯にこんなにかわいい女の子が一緒にいるんだよ、無事で済むわけないじゃない?そんなところにお嫁さんにしたいと思ってる女の子を放っておくなんて、やっぱり君は単なるマヌケだ。」
「君たち鬼がどうかは知らないけど、僕たち人間の男って言うのはね、そばに女の人がいれば抱かずにはいられないんだよ。ましてこんなかわいい子が、手を伸ばせばすぐの場所にいるんだから、ねえ、いくら君がマヌケでもわかるよね?」

沖田さんは風間さんのマヌケぶりが愉快でしょうがないらしく、クスクスと馬鹿にしたような笑いを交えながら、風間さんに私が・・・き、生娘ではない理由を次々に説明してあげている。

「特にね、人を斬ってきた後は自分でも抑えきれないほどに無性に誰かに相手をして欲しくなる。柔らかくて、甘い存在にね。夜毎に島原に通ってる連中もいるけど、僕にはほら、あの子がいるから。」

沖田さんはそう言うと、物陰に隠れている私に向かって片目をパチリとやって目配せを寄越した。
彼のその時の微笑みが、こんな時だと言うのになぜだかとても眩しく感じて、私の頬は自然とぽーっと赤らんだ。
捕物の後は結構皆さん散り散りに帰ってくるけれど、そういうわけなんだ・・・というのを私はいま初めて知った。
原田さんや永倉さんの朝帰りなんてもうしょっちゅうの事だから気にも留めないんだけど、沖田さんだけは朝に屯所にいないなんて事はなかった。
そういえば沖田さんは捕物の後はよく、帰ってくるなり私にお茶や菓子を持ってきてと言い、その後しばらく相手をさせられるのだけど・・・あれも沖田さんにとっては心の慰めになってたのかな?
そうだったのなら、ちょっと・・・いや、とても嬉しい・・・私は嬉しさのあまり自分の頬がさっきよりも一層赤らんでいくのを止められない。
しかし、その様子を見て風間さんは何かを盛大に勘違いしたらしい。

「そ、その女は、貴重な女鬼なのだぞ!お前は、お前はッ!!その貴重な純血の女鬼を・・・ッッ。い、いいや、待て。貴様、俺をまた嵌めようとしているな、二度と同じ手にはかからん!!」
「ふぅん、僕の言うことが信用できないんだ。なら本人に直接聞いてみたら?ねえ、千鶴ちゃん??」

突然話の矛先が自分に向けられて、私は目を見開いた。
沖田さんは肩をすくめて、困ったような救いを求める顔で私を見るけれど・・・私に風間さんをどう騙せと?

「最近は毎晩、僕と一緒に過ごしてるってこの鬼さんに説明してあげて。僕じゃ信じてもらえないみたいだから。」
「え、え、あの??」
「な、何ィ!?毎晩この男と一緒にいるのか、貴様は!!」

風間さんは眉根を寄せると、ますます邪悪な顔になって私に詰め寄ろうとした・・・ううう、怖いです。
沖田さんがそんな風間さんを牽制してくれたから、それ以上は近寄ってこなかったけど・・・私何を話したらいいんです?
そんな困惑した顔で沖田さんの方を見ると「普段の事をありのまま、教えてあげて。」と助言された・・・ありのままって言われても、話す事といえば・・・あの事かなあ・・・?
私も事実をそのまま話せば、風間さんが沖田さんの思惑に乗ってくれるという事なんだろう・・・ちょっと自信ないけど、きっとそこは沖田さんが助け舟を出してくれるはず。
沖田さんの話に嘘がないように、私も嘘をつく必要はないんだと思う。そもそも、私が嘘なんかついたらバレバレで、すぐに風間さんに見破られてしまうよね・・・。

「え、ええ、はい。そうです、少し前から沖田さんと夜一緒にいることが増えました。」
「千鶴ちゃんが僕に相手をして欲しいっておねだりしてきた時は、正直びっくりしたけどね。」
「だ、だって沖田さんはやっぱりお上手ですから・・・。」
「き、貴様らいったい何を!」
「何って・・・そんなの聞かなくてもわかるじゃない?僕たちが一緒にする事といえば、一つしかないよね。」

うーん?一つしかないかといわれれば、もっと他にもあるような気はしたけれど・・・そこは沖田さんの話に乗っておこうと、こくこくと頷いた。
でも、私が話せば話すほどに風間さんの怒りは増すようで、さっきから怒りの威圧感で押しつぶされてしまいそう。

「俺は貴様に問いているのではない、千鶴答えろッ!!」
「いい汗流してるよね、僕たち。」

沖田さんは曇りのない笑顔でにこにことこちらに笑いかけるもんだから、私もつられて力ない笑顔を返した。
ううう、こんな話してていいのかなぁ・・・沖田さん、本当に何か考えがあるんですよね?
でも、今は普段の事を正直に言うしかない・・・。
実際、最近沖田さんと一緒に夜を過ごすのはとても楽しくて・・・ヘトヘトに疲れちゃうんだけど、心はとっても満たされるんだよね。
それを思い出したら、私も自然と笑顔になれた。
そっか、沖田さんと一緒にいると楽しいって伝えたら、私の心が風間さんに向いてないってわかってもらえたら、風間さんも私のことを諦めてくれるかも?

「はい!最初の頃はやっぱり沖田さん・・・あの、その・・・少し荒々しくて、私ついていくので精一杯で・・・」
「あー、ごめんごめん。女の子だから優しくしなきゃって思うんだけど、僕アレに関しては手加減とかできないから。」
「で、でも、最後はちゃんと優しくしてくれますし、いろんな細かい技術も手取り足取り教えてくださるので私、少しは上達したかなって・・・」

そう思って、いつもの様子を風間さんの威圧に負けじと一生懸命説明したつもりなんだけど・・・あれれ、風間さんの様子がますますおかしい事に・・・。
風間さんはこれ以上聞きたくない、とばかりに路地裏の誰かの家の壁を拳で殴りつけた。
あまり上等ではない壁は、風間さんの一撃であっけなく風穴が開いてしまった・・・あれがもし自分に向かって振り上げられた拳だと思うと、怖くて腰が抜けてしまいそうだった。
そして、もっと恐ろしい事に彼の怒りは今、私に一身に向けられている・・・ひいい、沖田さん大丈夫なんですよね!?

「千鶴っ!!貴様、女子の身でよくも恥ずかしげもなくその様な事をッッ!!」
「ようやく信じてくれたみたいだね、僕たちの関係。」

風間さんがワナワナと震えているのを見ると、私と沖田さんの関係を何か許し難いものだと勘違いしているのが、流石に鈍い私にもわかった。
沖田さんはもう楽しくて仕様がないという風に、敵である風間さんにまでニコニコと・・・いや、むしろ網にかかった餌食をどうやって喰ってやろうかと、邪悪にニタニタと笑っている。
でもこれで前みたいに勘違いをして、私に愛想をつかしてもう二度と私を嫁にしよう拐いに来ないのなら、それはそれで好都合だと思って、私も沖田さんを見てコクコクと頷いた。
何より、嘘でもなんでも、私にとって沖田さんの相手というのは悪い気持ちになるものではないのだから。
でも、私と沖田さんの夜の過ごし方でそんなに勘違いして怒るような部分、どこかあったかな?
私、沖田さんに剣の稽古をつけてもらってるだけなんですけど?

私も巡察に同行させてもらっている以上、少しでも皆さんのお役に・・・ううん、せめて足手まといにならないようにしたくて、せめて自分の身を守れるくらいにはと、たまに剣の指導を隊士の皆さんにお願いする事があった。
今までは斎藤さんに見てもらう事が多かったんだけど、斎藤さんは土方さんの手となり足となり、朝から晩まで始終忙しいことが多くて・・・そこに私ごときの剣を見てもらいたいなんてお願いしにくくなっちゃって・・・。
原田さんは槍の方が得意だって言うし、永倉さんや平助くんはお願いしやすいけど、仕事はないはずなのに気がつくともういないことが多くて・・・。
沖田さんは剣の稽古は手を抜かない・・・というか、抜けないらしく、幹部の皆さんには及ばないまでも、それなりの猛者揃いの一番組隊士の皆さんも毎回ボコボコにされると恐れられているので、私なんかが教えを乞うのは正直怖かったけど・・・でも、お願いしてみたら案外丁寧に教えてくれるんだよね。
確かに沖田さんの教え方は斎藤さんと違ってとても感覚的なもので、頭で考えてわかるものじゃない部分が多いんだけど、それでも真剣に教えてくれようとする気持ちだけは伝わってくるから、私も少しでもそれに応えたくて必死に彼の教えについていった。
流石に私はボコボコにされることはなかったけれど、稽古となれば他の隊士さんと同じように厳しく教えてくれるのが、私には何より嬉しかった。
女の子の護身術だなんて彼は馬鹿にしないで、いざという時にちゃんと身を守れるだけの術を教えてくれようとしているのが嬉しかった。

「でもね千鶴ちゃん、本当に危険だと思った時には迷わずに逃げるんだ。君に教えているのは最低限身を守る剣だから、危ないと思った時には僕のところに逃げておいで。」

「そうしたら、必ず守ってあげるから。」最後はプイッとそっぽを向いてそういう沖田さんだったけど、それがなんだか可愛らしくて、そして私にはとても嬉しくて。
私はいざという時に、彼の元へ逃げるだけ術は身に付けようとますます熱心に稽古を続けている。
昨晩もへとへとになるまで竹刀を振るっていい汗をかいた。
風間さんに言ったのはその事で、私は沖田さんと何も後ろめたい事をしているわけではないのに・・・この事のどこをどう勘違いすれば、あのように怒り狂えるんだろう・・・わかんないなぁ。

「クッ・・・証拠だ、証拠を見せろ!!お前たちの戯言など、俺は信じないッ。」
「証拠って・・・仕方がないなあ。でも、いい加減それを見たら、諦めてくれる?」
「フン、貴様が千鶴を抱いた証拠などどこにもない。吠え面をかくのはお前の方だ。」
「それはどうかな?ねえ千鶴ちゃん、ちょっとこっちに来て。」

だ、抱いた証拠!?
え・・・いつの間にそんな話になったの!?私は二人の話についていけなくて、一気に頭が真っ白になった。
ああなるほど、それで風間さんはこんなにも怒りに震えてたのか・・・私が沖田さんに抱かれ・・・え、抱かれて?きゃああああ、なんて話をしてるんですか、あなたたちは!!
一瞬遅れてやってきた私の理解は、私を大いに慌てさせた。もう、顔からは湯気がプシュプシュでているはず・・・ううう、恥ずかしいです。
そもそも、『千鶴は僕のものだ』と沖田さんが言った時点で、こういう展開だったのは私はわかっていたはずなのに・・・わかっていても免疫のない私はこうなってしまう。
でも、今はそんな事でうろたえてる場合じゃない。
そ、それに証拠を見せろなんて、一体沖田さんはどうするつもりなんですか!?
そんなものはありはしないのに・・・大体、私が沖田さんに・・・だ、抱かれたなんて事実もないんだもん、証拠なんてあるわけがない。
しかし、沖田さんはそんな風間さんに止めを刺そうと思ったらしく、私に向かってちょいちょいと手招きをした。
まだ互いに刀を鞘に納めているわけでもなく、まして風間さんは怒り狂っているというのに、私がまたノコノコと出ていったら沖田さんが不利になるだけなんじゃあ?と思ったが、沖田さんの顔にいつもの薄ら笑いが浮かんでるのを見て、彼には何か考えがあるのだと思い、おずおずと沖田さんの傍に駆け寄った。
沖田さんは私が手の届く範囲に来るなり私の事を強引に抱き寄せると背中からぎゅうっと抱き締めた。

「え、えっ?な、なんです??」

突然の事に私はわたわたと更に慌てるしかないが、彼は私を抱いている左手の親指と人差し指を私の顎に添えると、風間さんに私の顔がよく見えるように少し持ち上げた。
顔が沖田さんの手によって固定されているので、恐る恐る視線だけを斜め上の沖田さんに向けると、彼は今にも舌舐めずりをするんじゃないかという程の恍惚とした表情を浮かべている。

「ねえ、ほらよく見て。千鶴ちゃん前よりずっときれいになったと思わない?」

風間さんは獣の唸り声のように喉の奥をぐるるると鳴らしながら私の顔をじろじろと舐めるように見た。
その間、私は息が出来ないほどに恐ろしくて後ろに下がりたいのに、背後からは沖田さんに抱きしめられるという形で押さえつけられているので逃げる事もできずに・・・これは一体何の拷問ですか!?
今にも泣きそうになりながら、それでも沖田さんの話に口裏を合わせようと必死に相槌を打った。

「え、あの、そ、そうですか?」
「やっぱり毎日僕が可愛がってあげてるからかなぁ。」
「そ、それは・・・あるかもしれません。」

恋をすれば女の子はみんなきれいになれる・・・その言葉を信じるのならば、沖田さんに『ある意味』可愛がられている私は最初の頃よりはずっときれいになっているはずだ。
それぐらい見返りがないと、沖田さん相手に恋なんて理不尽なものはしてられないじゃない!

「どうして君にはこうやってすぐに悪い虫が寄ってくるのかなぁ?」
「ど、どうしてでしょうね??」
「やっぱりここは、千鶴ちゃんが僕のものだって、もっとよくわかるようにしておかないとね?」

沖田さんはそう言うと、私の着物の襟元を鎖骨が見える程度に少しくつろげた。
!!!
まさか沖田さんにそんな事をされると思っていなかった私は、驚きやら羞恥やらで目を白黒させた。
しかし、目の前の風間さんは私の肌を見るなり、目をむいた。
え、風間さん何にそんなに驚いてるの!?この人に限って、女性の肌を見るのが初めてなわけがない。

「そ、その痕は・・・なんと愚かなッ!!」

痕?
そういえばと思って、自分の鎖骨のあたりに視線をやると、ポツンと赤い点ができている。
これは昨日、沖田さんにつけられた・・・

「あぁ、やっぱり。昨日つけた印なんてもう消えかかってる。治りが早いのも困りものだね、こうして毎日僕の印を君に刻まないといけないんだから。」
「え?印って・・・ッッッ」

彼の言う印とはなんの事なのか私が理解する前に、沖田さんは私の後ろから首筋にカプっと噛みついた。
!!!
ヒッっと思わず小さく悲鳴が出てしまうが、これは私が沖田さんのものだって風間さんに見せつけるための演技なんだ・・・そう思って、恥ずかしくて死にそうになりながら彼の唇が私の首筋を舐めとっていく感触を必死に耐えた。
首筋から伝って、私の方向を少し変えながら何箇所かに強く噛み付くと、沖田さんは最後に鎖骨下にある痕にきつく吸い付いた。
私はそうされるのが、例え沖田さんだとしても何だか怖い気がして目を硬く瞑っていたので見てはいないんだけど、きっと沖田さんは風間さんに見せ付けるように視線を送るのを忘れなかったはずだ。

「ね、これでわかってくれたでしょ?」

沖田さんは私を抱きながら、勝ち誇ったような笑みを風間さんに向けている。
わざと見せ付けるように私を更に強く抱いてすりすりと顔を寄せる沖田さんに、いつもの私だったら頭が沸騰しちゃうところなんだけど。
それよりも演技とわかっているけど、さっきの事はあまりに突然で、私はびっくりしたやら恥ずかしいやらでなんだか今にも泣き出しそうにうるうると彼を見上げた。
沖田さんはそんな私の顔を見て何を思ったのか、うっと顔を曇らせて、急にそっぽをむいてしまった。
い、いきなりこんな事を・・・しかも風間さんの前でしておいて、私の方が恥ずかしいのに、私がちょっと責めるような目で見たからってそっぽを向くなんてずるい・・・です、うう。
でも、ここでそんな泣き言を言ったらせっかくのお芝居が台無しになるので、私は唇をグッと噛み締めてこらえた。
何も沖田さんに噛みつかれたのが嫌だったんじゃない・・・むしろ嘘でもなんでも彼の印を私につけてくれたのが嬉しいはずなのに・・・あんまり突然でびっくりしたから心がついていかないだけなのだ。
まあ、何はともあれ・・・私たちのいちゃいちゃ大作戦が風間さんには効果抜群だったようで・・・

「千鶴ッ、貴様という女は・・・そのような男に身体を許すなど、今度の今度こそ失望したッ!!もはやお前に用はない、どこへなりと消え失せろッ!!」

風間さんは前と同じように私の事をギラギラと蔑みと憎しみの篭った目で睨みつけている・・・うぅぅ、沖田さんが一緒にいてくれなければ、私はそれだけで泣いてしまいそうなほど怖かった。
「二度と俺の前に姿を現すなッ!!!」と捨て台詞を吐いて去っていった風間さんだけど、実質私が彼の事をフったって事で・・・いいんですよね??
こんなにも風間さんが屈辱的な目に合わされているのに、私のことを斬り捨ててしまわないのは、『鬼は鬼を殺さない』という鉄の掟があるからだ。
もしもそれがなければ、私は今にも彼の刀の錆になっていてもおかしくはなかった。
彼の唯一尊敬できる点は、その鬼としての誇りを何より大切にしている所だけれど、それを差し引いても性格に難がありすぎる・・・と思う。
風間さんの性格を直すのは無理なような気がする。あの俺様気質だもん、今更治るわけないよね・・・。
とすれば・・・どうか、彼の性格の全てを受け入れてくれる女性が彼の前にも現れますように、と願わずにはいられない。
まあ、こんな素直じゃない天邪鬼さんを好きになっちゃう女の子もいるぐらいだから、頑張って探せば風間さんを受け入れてくれる人もどこかにはいるんじゃないかな、なんて。
今回も私を守ってくれた沖田さんを、ようやく安堵の息をつきながら、そんな事を思いながらそっと見上げた。

「行っちゃいましたね・・・。」
「あ~ぁ、また安っぽい捨て台詞なんか残しちゃってさ。あの人、フられたのは自分だって言う自覚あるのかな?」
「ないんじゃないでしょうか・・・?」
「だよね。でも、こんな方法で千鶴ちゃんを諦めてくれるんだったらもっと早くにやれば良かった。」

確かに、以前撃退した時もそれで相当長い間訪ねてくる事がなかったのだ。
というか、今回が風間さんとの久しぶりの再会とでも言うべきもので、今日の様子だともう二度と会うことはないだろう・・・いや、会う事がないと思いたい。
風間さんが去っていった路地をしばらくぼんやりと眺めていたけれど、私は急にへたへたと足の力が抜けてそこにへたり込んでしまった。
そう言えば、沖田さんと合流するまで街の中を随分と走り回ったんだった・・・。
腰が抜けたように立てなくなってしまった私を沖田さんはしゃがみこんで心配そうにしてくれる。

「千鶴ちゃん、大丈夫?ほっとしたら力が抜けちゃった?」
「はい、すいません。あの、私、立てますから・・・。」

そう言って立ち上がろうとするけれど、やっぱりどうしても足に力が入らない。

「いいよ、おぶってあげるから、ほら。」

沖田さんはそう言って私の目の前でしゃがみこんだけれど、私には彼がどうしてこんなにも優しいのかわからない・・・。
そりゃあ今の今まで風間さんから守ってくれたし、本当は優しい人だって知ってるし、私はそんなところが好きなんだけど・・・こんなにもあからさまに優しいのは彼らしくない。

「そんな、申し訳ないです。助けてもらったのに、その上おぶっていただくなんて・・・あっ、助けていただいてありがとうございましたっ!!」

私は沖田さんにお礼を言うのを忘れていたので、慌てて付け加えた。
そんな私の様子を見て、彼はぷっと吹き出した。

「え?あの、私何かおかしいこと・・・?」
「いや、そうじゃないんだ・・・なんか、ちょっと、やりすぎたかなって思って・・・それで、ごめん。」
「ごめんって、何のことですか?謝るならむしろ私の方です。あれだけ言われたのにまた迷子になってしまいましたし、風間さんにも追いかけ回されるし・・・。」
「うん、そうだね。千鶴ちゃんは僕の忠告を聞かない悪い子だからこんな目にあったんだよ・・・じゃあ、おあいこって事でいい?」

沖田さんが私の何に対して謝っているのか、私の今日の失態と何を相殺して欲しいのか全くわからないままに、私はこくんと頷いた。

「ええと、はい、もちろんです!」

何故だか弱ったような顔をしていた沖田さんだったけれど、彼が後ろめたく思っていた何かを私が許した事で、彼の気持ちも晴れたらしい。

「ありがと。じゃあ、気を取り直して、はい。君を待ってたら僕もいつまでも帰れないし、早くおぶさってくれない?それとも一人で帰ってこれるのなら、置いて帰るけど。」

沖田さんはいつもの皮肉めいた笑みを口元に浮かべて、私が方向音痴な事を揶揄した・・・ちょっと意地悪な言い方だけど、でもこれが彼らしいんだよね。
そんないつもの様子の沖田さんになら、むしろ私は素直に甘えられる。
見返りはきっと、おいしいお茶と戸棚に用意してあるとっておきの金平糖と、私が彼にからかわれて拗ねる様子と・・・きっとそんなもので満足してくれるだろう。

「・・・で、ではお言葉に甘えまして・・・よろしくお願いします。」

私が沖田さんの肩に手を回してしがみ付くと、よいしょっと彼は立ち上がった。
猛者ぞろいの新選組の中では沖田さんはそんなに筋骨隆々と言う風には見えないけれど、こうして彼の背に身体を預けると確かに自他共に厳しい剣を振るい続ける逞しい体である事がよくわかった。

「それにしても、昨日僕が君につけた傷跡が役に立つなんてね。面白いように引っかかってくれたよね。」
「でも、昨日は本当に痛かったんですよ?」
「ああ、ごめんごめん。今度はもっと手加減するから。」

さっき風間さんはひどく驚いていたけれど、私の鎖骨の所にあった痕は沖田さんの突きを受けた痕だった。
昨日食らった直後はどす黒く赤くなっていたんだけど、やっぱり私の身体は治りが早いらしくて、もうさっき見たように小さな赤い点になっていた。
ただ、それだけの痕だったんだけど・・・それがどうやら、風間さんにとっては私を諦める決定打になったようだ。
つまりは、あの・・・その・・・沖田さんが私の身体に、さっきしたように、唇で残した痕だと勘違いしちゃったんだよね・・・。

「・・・いいんです。私がお願いした事ですし。また竹刀の稽古付き合ってくれますか?」
「うーん、それはいいんだけど。僕、本当に竹刀は苦手なんだよね。だから昨日も手元が狂って・・・本当にごめんね。」
「沖田さんみたいに上手な方でも、そんな事ってあるんですね。何だか不思議です。」
「不思議って・・・刀の重さは結構重要なんだよ、君はわかってないみたいだけど。」

そんな事を話しながらさっきの風間さんの様子を思い浮かべたら、さっきまであんなに怖かったのに、今は愉快でしょうがなくなってしまった。
私が沖田さんの背中でクスクスと笑うと、沖田さんも同じ気持ちでいてくれているのが彼の背中からなんとなく伝わってきた。
広い背中は心地よい温かみがあって、人の背におぶわれる安心感も手伝って、私は屯所に帰りつく頃には沖田さんの背中でウトウトと夢を見ていた。


~エピローグ~

そんな事があった翌日・・・。
今朝私が起きて一番にした事は、寝巻きからのぞく自身の肌を鏡で見ることだった。
私の身体は人の数倍傷の治りが早い・・・という事は、昨日沖田さんがつけた印も人より早く消えてしまうという事だ。
それが今日は何故だかとても悲しくて、沖田さんの所有印なら永遠に残っていてくれてもいいのに・・・なんて思っていた。
昨日、沖田さんが謝っていたのはきっと、私を自分の所有物扱いした事についてだと思う。
私の事を自分のおもちゃのように弄ぶ事もある沖田さんだけど、それはあくまでおふざけの範疇だって互いが思ってるからできる事なのだ。
沖田さんの事を真面目じゃないとか、だらしがないとか言う人もいるけれど、彼は結構そういう線引きはきっちりしている。
あの謝罪はきっと、その範疇を超えてしまった事に対する謝罪だったのだと、それは夜に一人になってから気がついた。
でも私は沖田さんの所有物にだったら望んでなりたいと思ってるんだから、昨日、彼が演技とは言え、ああいう行動で私を守ってくれたのは嬉しく思いこそすれ、嫌な気持ちなど一切なかった。
沖田さんには私のその気持ちはまだ言えないし、伝わりもしていないのだなと・・・そう思うと、ちょっぴり寂しい気もしたけれど・・・。
そんな彼の所有印は朝起きたら消えてしまうかもと半ば諦めていたので、うっすらとでもまだ残っていてくれた事が私には嬉しかった。
きっと女の子のほとんどは好きな人にこの印をつけてもらう事を願っているはずで、私もその例外ではない。
沖田さんには『絶対に誰にも見せちゃだめだからね。』と釘を刺されたけれど、普通どおりに着物を着て襟を立てていれば誰に見られることもないだろう。
これは私と沖田さんだけの秘密の印。
まだ今日一日は彼のものでいられる・・・そう思うとちょっぴり恥ずかしくも嬉しくて、でも今日の夜には消えてしまう事を思うと、一抹の寂しさが胸を襲った。
あー、だめだめ、朝からこんなに感傷的になるだなんて!
よし、今日も一日頑張ろう。私は気持ちを切り替えようと大きく伸びをして胸いっぱいに朝の空気を吸った。
それから寝巻きを脱ぐと着物に着替えて、いつも通りに髪を高く結い、仕度を済ませると私は張り切って朝餉の準備に向かった。


皆さんにいつも通りに朝食を振る舞い、後片付けをして、その後はお洗濯にお掃除・・・私にもそれなりに毎日の仕事がある。
ひとたび部屋を出ると私は日々の雑務に忙殺されていった。
ようやく一息つける暇を見つけて勝手場の隅でぼんやりと考え事をする時間が持てたけど、やっぱり考えてしまうのは昨日の事ばかりだった。そこへ沖田さんがやってきた。
彼は私に用があるわけではなく、ただ水を飲みに来ただけのようだった。
まっすぐに水を溜めてある甕に向かうと柄杓に口をつけてそのままごくごくと水を飲んでいる。
私がその様子をじーっと眺めていると、沖田さんは特にこちらを向くわけでもなかったけれど「千鶴ちゃん元気ないみたいだけど、どうしたの?」と声をかけてくれた。

「昨日つけていただいた印がもう・・・。」
「あー・・・消えたのなら良かったじゃない。別に君は僕のモノってわけじゃないんだし。」

印が消えたのを確認しようとしたわけじゃないだろうけど、沖田さんはチラッとこちらの様子を伺った。
沖田さんの反応は予想通りのものだったけれど、でもあまりにそっけない態度に私は何だか急に悔しく思えてきた。
沖田さんは私の気持ちになんか興味がない風にもう一度柄杓を甕に突っ込むと、二杯目の水を掬っている。
彼が勢い余って私にあんな印を刻んだ事は昨日謝ってくれた事でも明白なんだけど、私は謝って欲しかったんじゃなくて・・・むしろ風間さんぐらい強引に・・・。
そう思うと・・・無意識に肩口に手をやってついポツリと私は呟いてしまった。

「どうしてそんな事言うんですか・・・印だってもう一度つけて欲しいぐらい・・・なの・に・・・。」

沖田さんはその時口に含んでいた水をぶーっと盛大に噴出した上に激しく咳き込んでしまった。

「ゴホッ・・・ゴホゴホッ・・・ぐっ、き、器官に入った・・・・。」
「だ、大丈夫ですか?」

なんで沖田さんがこんなにも狼狽しているのかわからないままに私は彼に駆け寄って、せめて咳き込む彼の背を擦った。

「君が、へ、変なこと言うから・・・いたたた、水が変な所に入ったよ・・・。」

少し離れた場所にいる沖田さんには聞えないほどのとても小さな声で呟いたつもりだったのに、それはどうやら彼の耳に届いてしまったらしい。
まさか聞えるとは思っていない自分の呟きに、今更ながら顔がカァーっと赤くなる。わ、私今何て言ったっけ・・・あれってもはや告白みたいなものじゃなかった!?

「き、聞え・・・ました?」

私は恥ずかしさのあまり両手で顔を覆ったけれど、それで恥ずかしさが減るなんて事は全然なかった。
きっと沖田さんは違う事に気をとられて水を噴出したんだ・・・そう思おうとしたけれど、彼の言葉でそれは到底無理だと知った。

「・・・・・・・・・・・聞かなかったことにして欲しい?」

いつものように『へえ、千鶴ちゃんは僕の事が好きなの?』とでも素直にからかってくれれば、私も本心は隠して思いっきり否定できるのに、なぜかこんな時に限って沖田さんはそうしてくれない。
まさか聞えるとは思っていなかったからこその私の大胆発言だったけれど、聞えてしまったのなら聞かなかったことにはしないで欲しい。
ううん・・・きっとどんなに小さな声でも沖田さんの前で言っちゃったって事は、私は本当は聞いて欲しかったんだと思う・・・。
私の気持ちを、ほんの少しでも沖田さんに知って欲しかったんだと・・・思う。だから、私はなかばやけっぱちになりながら沖田さんにお願いしてみる事にした。

「い、いえ・・・あの、その・・・聞かなかった事にはしないで・・・欲しい・・・かも、です。」
「はぁ・・・無自覚って本当に怖いね。あの印の意味、知ってるの?男はみんなオオカミだって、前に教えなかったかなぁ。」

沖田さんは私の事を呆れた様子で見るけれど、流石の私だって沖田さんに教えてもらわなくたってそんな事は知っている。
男の人は知らないかもしれないけれど、女の子は自分の好きなオオカミにだったら食べられちゃっても構わないって思ってるんですよ?
でも、流石にどんなに勇気を出したって『あなたに食べられたいと思ってる』なんて言えっこない。もじもじしながらこう言うのが、今の私の精一杯だった。

「え、はい。だからオオカミ避けに、あの・・・。ほ、ほら、私今日も巡察に同行する事になってて、それがあれば風間さん避けになりますし・・・えっと、あの、お、お願いしますっ!」
「ふぅん、僕はオオカミの中には入らないんだ。へぇー・・・。」

沖田さんの声には抑揚がなくて、彼が今何を思っているのかわからない・・・私、変なこと言った!?怒らせちゃった・・・?
私が不用意なことを言うものだから、呆れられちゃったのかな・・・でもでも、男の人だってみんな同じじゃないんだし、特に沖田さんは私にとって特別で・・・。
そう思うと、後から考えるとまたしても不用意としか言いようのない告白を、私はしてしまっていた。

「オオカミの中でも沖田さんは特別ですっ!・・・あっ。」

言ってしまった言葉は取り消せない・・・ますます気まずくなって俯いていると、ようやく沖田さんが私の気持ちに応えてくれる気になったらしい。

「・・・いいよ、そんなに言うならつけてあげる。千鶴ちゃん目を閉じて。」
「は・・・い・・。」

昨日と同じ事をするのにどうして目を閉じる必要があるのかと思ったけれど、私は沖田さんに従った。
大体昨日だってあまりの恥ずかしさに思わず目を閉じてしまったんだから、結局は同じ事。
沖田さんの手が私の肩にかかってぐーっと近寄ってきているのがわかる・・・どきどきどきどき・・・今更ながらに、なんて大胆な事をお願いしてしまったんだろうと私の胸の鼓動は早鐘のようだ。
しかし、待てど暮らせど昨日のように襟元を開けられる様子もない。
どうしたんだろう・・・自分からお願いした事だけど恥ずかしい事には変わりはなくて、こんな状態で待たされると余計に時間を長く感じてしまう。
思わず薄目を開くと、眼前に沖田さんの顔があった・・・え、なんで?どうして目の前に沖田さんの口があるの・・・?
そう思った時には彼はにやっと笑って、その口が大きく開くと私の思ってなかった場所にかぷっと噛み付いた。

「ひゃぁっっ!」
「はい、よーく見えるところにつけといたから、これでもう安心だね。」

私が彼の予想以上の悲鳴を上げたのが嬉しかったらしく、彼はにっこにこと満面の笑顔を浮かべて私から身を離した。
私としては、さっきのドキドキを返して欲しいぐらい腹立たしい・・・だって、沖田さんったらひどいんだもの!!

「もー・・・沖田さんっ!!鼻に噛み付くなんてひどいです。」
「だって、君はどこにつけて欲しいって言わなかったじゃない。」

彼は悪びれた様子もなくしれっと私の抗議を受け流した。『どこに』なんてそんな事、私の口から言えるわけがない。
それが思わず不満となって口から零れた。

「そうですけど・・・鼻はあんまりです・・・。」
「じゃあ、僕は稽古の続きがあるから。またね。」

そう言って立ち去る沖田さんの背中を、私は彼に噛み付かれた鼻を擦りながら見送った。
私の気持ちはなかなか彼に伝わらない・・・あんなに勇気を振り絞ったのに、沖田さんの印がもらえなかった事に私は悔しいやら悲しいやら、ちょっと一言では言えない気持ちになっている。
そもそも私の中では印といえば昨日と同じ所につけてくれるものとばかり思っていたのだから、私は少なからずがっかりしていた。
だって、昨日みたいなああいう場所に印をつけてくれるって事は、多少なりとも私を女としてみてくれてるって思えたから・・・それなのに、今日は鼻に噛み付くなんてこれじゃあまるで子ども扱いもいい所じゃない。
さっきだって、こんな状況なら他に噛み付く場所があるよね?・・・なんて、きゃああー、私ったら私ったら何考えてるの!!
こんなに翻弄されてて、私の気持ちも全然わかってくれなくて、ちょっぴり憎くさえも思えちゃうのに、それ以上に、もっともっとさっきみたいな彼の笑顔が欲しくなっちゃうなんて、私はやっぱり相当沖田さんに参ってると思う・・・こういうの、惚れた弱みって言うのかな?
それにしてもさっきの私は・・・なんて思い返してみると、今更ながらに火が出る思いで頬が赤くなっていくのを止められない私だった。


一方、勝手場から去っていった沖田さんだったけれど、出てすぐのところで斎藤さんと出会っていた。
二人とも稽古の途中で、休憩がてら水を飲みに来たところだったみたいなんだけど。
ちょうどすれ違う時に、斎藤さんは沖田さんの異変に気がついて声をかけた。

「総司、稽古場で皆待っていた・・・ぞ?ん、あんた熱でもあるのか・・・?」
「は?熱なんかないんだけど。何言ってるの一君・・・僕先に行ってるから。」

それだけ言葉を交わして沖田さんは稽古場へ足を向けた・・・はずだった。
まさかこの後の不用意な一言で、斎藤さんは生死の境をさまよう事になるなんて思いもしなかったに違いない。
勝手場の暖簾をくぐると、斎藤さんも甕に向かって土間に下りてきた。

「ああ、雪村いたのか。ちょうどいい、頼みたい事があるのだが。」
「あ、はい。あの、斎藤さんなんでしょう?」

沖田さんと入れ違いに入ってきた斎藤さんに、まだ心の切り替えが出来てない私は大いに慌ててしまった。
まださっきの事で顔がぽーっと赤くなってる真っ最中の私を、斎藤さんは不思議なものでも見るような目で見てから、意外な事を言った。

「なんだ、あんたも具合が悪いのか?」
「い、いえ、私なら別に?何ともないので大丈夫です。ところで、あの、頼みとは?」
「そうか、顔が赤かったから熱があるのかと思ったが、そうでないならやはりあんたに頼むとするか・・・。どうやら総司は風邪を引いたらしい。後で薬を持って行ってやってくれ、あいつに飲ませるのは手間だとは思うが・・・。」
「え?沖田さん風邪なんか引いてないはず・・・ですけど?」

斎藤さんがどうしてそんな事を言うのかわからなかった。
だって、さっきの沖田さんは別に咳もしてないし、熱もなかったと思う。ちょっと汗ばんでいたとは思うけど、稽古の途中で抜けて来たみたいだったからそのせいだと思うし。
私が不思議そうな顔をしているので、斎藤さんはその理由を教えてくれようとしたんだけど・・・その言葉を最後まで聞くことが出来なかった。なぜなら・・・。

「いや、先程そこですれ違った時、倒れるのではないかと思うほど顔が赤くて、あれは相当熱があるは・・・もがっ!!」

斎藤さんは途中から話す事ができなくなった・・・なぜなら背後から斎藤さんの口を封じた人がいたからだ。
その斎藤さんの口を封じている人物とは・・・

「お、沖田さん!?」

ものすごい速さで廊下を滑る様に駆け戻ってきた沖田さんは、斎藤さんにもう一言も余計な事をしゃべらせないとばかりに背後から抑え込んだ。

「そ、総司、何を・・・もがもがっ。離せ、俺が何を・・・もが、むぐっ。」
「はーじーめーくーんっ!!!何余計な事言ってくれてるのかなぁ??」

沖田さんの表情はいつもとなんら変わらないように見えて、その実頬がピクピクと引きつっている。
そして、ぱっと見は笑ってるかのように見えるその瞳には、自分を辱めた相手に対する憎悪の色が煮え滾っていた。
それに気がつきはしたものの、沖田さんがどうしてこんなにも必死に斎藤さんの口を塞ごうとしているのかがわからなくて、私はその光景をただ呆然と見ていた。
え、え?どうして沖田さん急にこんなに怒ってるんだろう・・・斎藤さん、一体何をしでかしたの!?
私はもちろん、それは当の斎藤さんにもわからないようで・・・ようやく沖田さんの口封じから逃れると猛然と抗議をしだした。

「余計な事とは何のことだ。俺はあんたが熱があるようだからと、雪村に・・・もが、ぐふっ。」

しかし、沖田さんは強かった。敵だと思えば先程まで仲良くしていた相手でも躊躇なく『殺せる』のが沖田さんの強みだ。
沖田さんは何の躊躇いもなく背後から斎藤さんの首に腕を回すとぐいぐいと締め上げた。
斎藤さんは目を白黒させながら、それでも何とか逃れようと必死に頑張っているけれど、こういう時は体格差がものを言う。

「熱なんてないよっ!!千鶴ちゃんも気にしなくていいから・・・さあ一君、稽古に行こうか。今日は一君が相手をしてくれるんだよねぇ、僕楽しみだなぁ、ははは。」

沖田さんは斎藤さんの主張を激しく否定すると、私の方にだけは取り繕った顔で『何でもないよ』と笑顔を振りまいた。
え・・・え?なんで沖田さん、こんなに必死なの??

「は、離せ。俺はまだ用事が・・・うぐっぅ、え、襟巻を引っ張るな・・・首が、ぐえっ・・・ぐふっ。」

そしてそのまま斎藤さんはいつも背中に垂らしている襟巻の端を沖田さんに握られ、無理やり引きずられていった・・・だ、大丈夫かな、斎藤さん・・・。
あれじゃ首が絞まって息が出来ないような・・・気がするんだけど。
私が呆然と見送ってる間にずるずると引きずられていく斎藤さんはもう、遥か彼方の廊下の端だ。
ここからだとなんだか斎藤さんの顔がどす黒く見える気がするんだけど・・・ま、まさかね??
た、助けに行ったほうがいいのかな・・・?あの沖田さんを私が止められるとは思わないけれど・・・でも、斎藤さんの言ってた事が本当なら沖田さんのことも心配だし。
沖田さん結構自分の体を考えないで無茶するんだよね。
よしっ!!私は沖田さんたちを追いかけることにした。

「待ってください沖田さん。熱があるなら、無理しちゃだめです。」

追いかける私の声に振りむいた沖田さんはぎょっとした顔をすると、歩幅を大きくして私が追いつけないように駆け出した。

「な、何で逃げるんです?やっぱり沖田さん熱が・・・。」
「だぁかぁらぁ、熱なんてないってばっ!!!」
「じゃあなんで逃げるんです?ちょっと確認するだけですから。」
「そんな必要ないって言ってるでしょ!!君も大概しつこいなあ。」
「もう、待ってくださいっ。」
「待ちません、僕はこれから稽古があるんだから、君の相手をしてる時間はないんだってば!!」
「おい、総司、千鶴っ!!てめぇら人の部屋の前でわあわあぎゃあぎゃあとうるせえんだよッ!!!・・・って、斎藤、ど、どうした、何があった!!?」
カット530続・戯言艶語

廊下を駆け回っての私たちのそんな押し問答はしばらく続き、あと少し土方さんが止めに入るのが遅かったなら斎藤さんはもはやこの世の人じゃなくなってたかもしれない・・・。
この時、沖田さんが私に顔を見られたくなかった理由を知ったのは、もっとずっと後のこと。
これは互いに互いの気持ちに鈍感だった私たちの、まだまだ平行線でもどかしかったあの頃の話。


【おしまい】
  1. 2014/10/22(水) 11:03:48|
  2. 頂きもの
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コメント

>ちょこさんと、読んでくれた皆さんへ

今回もありがとうございました( ^∀^)ギャグだからミニキャラかなぁと思ってましたが、ラストシーンでしたか。
てっきりぶちギレちー様と、調子に乗ってる沖田さんかなぁなんて思ってましたが、予想外れちゃったwww
土方さんなんて一言しか出番ないのに…ちー様より断然扱いがいいっていうwww
四人とも一ヶ所にいるのに全員表情が違うっていうね、コミカルな一枚ですねwww( ^∀^)
しかし、こんなひどい目に遭ってる斎藤さん描かせてしまって申し訳ないです。主様の推しキャラになんの配慮もしないっていう…(;゜∇゜)いやぁ、天然パワーで沖田さんの地雷踏めるのは斎藤さんしかいないと思って♪いつか彼にもいい思いをしてほしい…ですが、 書きかけてるのでも斎藤さんひどい目に遭ってたなぁ…(´・ω・`)←
あと、名前も間違っちゃってすいません、お手間とらせました(汗)一応そこは気を付けてたんですが、見逃しがありましたね…。

こんな長い話、誰も読んでくれないかも…(´・ω・`)と本気で思ってたら(しかも一応続編だし)、思ってた以上の方は読んでくださったみたいで嬉しいです( ^∀^)よくて三人とかだと思ってました、あっはは~\(^-^)/少なくても五人はいることに感謝です(^人^)
読んでくれた方が笑ってくださってれば、物書き冥利につきます。
ではでは、イラストはちょうだいいたしますね ♪
次もさくっと仕上がればいいのに、なかなかこうはいかないんですよね~(;・ω・)とほほ。
  1. 2014/10/23(木) 13:32:31 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #EYMZMP9E
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ゆゆき様♪

おまけ絵、お受取りありがとうございました^^
予想外でしたか? いい意味で驚いてくれたならいいんですが(^^;
斎藤さんは、天然ボケ太郎でも弄られヌケ作でも私は美味しく頂けますので、登場させてくれるだけで嬉しいですw
これからもどんどん出してあげて下さいねーwww
次回作はシリアスかまたまたコメディか―――読めるのを楽しみにお待ちしています!
  1. 2014/10/23(木) 23:23:03 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

ごめんなさい、斎藤さん…。

ちょこさんの斎藤さんへの愛が素晴らしくて、笑っちゃいましたwww
『天然ボケ太郎でも弄られヌケ作でも』なんて、愛ゆえですね(*ノノ)ごちそうさまです♪
まあ、かっこいい斎藤さんが一番でしょうけど。斎藤さんはいじられオーラが出てると思うんですよね…だから、弄って可愛がってあげたい気持ちでいっぱいになっちゃって。しかも、私はいじめっこなので、私の加虐心があおられてしょうがありません(;゜∀゜)←
もっとちゃんとした一君を書いてあげたい・・・のに。
次ぎはシリアスでしょうか、コメディでしょうか。書き出すまでわたしにもわかりませんが…コメディまでいかないほのぼのが実は好きなのです。
次も筆が進むといいのですがね…ハァ(;´_ゝ`)
  1. 2014/10/26(日) 02:20:49 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #EYMZMP9E
  4. [ 編集 ]

ゆゆき様♪

え? あれ?
あの小話はどこにΣ(・ω・ノ)ノ!
  1. 2014/10/26(日) 21:12:58 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

見られてた・・(>///<)カァァ

あまりにも出来が微妙だったので、一度下げたのですが・・・ちょこさんに気づかれてた。。゛(ノ><)ノ ヒイイイ
前にもこんな事あったような・・・コメントって主様に通知とか行くのかしら・・・ドキッ。
これからは下手な事書かれない~。。゛(ノ><)ノ ←元々消すくらいなら書くなと言う話(‥;)
じゃあ、思い切って少し手直ししてもう一度///あああ、恥ずかしいです~。
斎藤さんがますますひどい目にしか遭わないので、斎藤さんファンは要注意です( ̄Д ̄;;


土方「おい、斎藤しっかりしろっ!!大丈夫か?総司、さっさと斎藤の襟巻から手を離せっ。」
斎藤「・・・ふ、ふくちょ・・・先立つ不幸をお許し・・・下さ・・・ガクッ」
沖田「あ・・・っごめん、掴みっぱなしだった。(ぱっと手を離す)」
千鶴「もー、沖田さん観念して・・・って、斎藤さん!?だ、大丈夫ですか??ああ、みなさん大変です・・・斎藤さん・・・息してませんっ(焦)!!」
沖田「え、まさか?一君、冗談はそれくらいでいいよ、笑えないからwww」 ←ひどいw
土方「ばっっか・・・総司、斎藤がこんなふざけた真似するかよ。お、おい、斎藤、しっかりしろ。(ガクガク肩を揺さぶるけど、無反応)」
斎藤「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
沖田「『返事がない、ただの屍のようだ。』って感じですか?」
千鶴「沖田さん、そんなこといってる場合じゃないですよ!!どどど、どうしましょう!?」
土方「チッ・・・総司、何てことしやがるんだ。おい千鶴、山崎呼んで来いッ。今ならまだ間に合うかも知れねえ!!」
千鶴「は、はい・・・。(タタタっと駆けて行く)」
沖田「・・・一君、どうして死んでしまったの?もっと君と剣を交えたかったのに・・・先に逝ってしまうなんて、そんな事って・・・うう、せめて安らかに。」
土方「どうしてって、全部てめぇの責任だろうがっ!悪かったと思うんなら、てめぇも斎藤を呼び戻す努力をしやがれ。まだ彼岸には渡っちゃいねえだろ!!」
沖田「・・・一君、せめて餞別にこれをあげるよ。」
土方「って、だから勝手にころすんじゃねえ・・・って、てめっ!!斎藤の手に何もたせてやがるんだッ。」
沖田「え、やだなぁ土方さんもうボケたんですか?自分の句集を見忘れるなんてwww」
土方「見覚えがあるから言ってんだろっ!いつもいつも、何で俺の句集をてめぇが持ち歩いてるのかって聞いてんだよっ!!!」
沖田「・・・なんでって、やだなぁ、豊玉宗匠のファンだからに決まってるじゃあないですか(にやにや)」
土方「クッ・・・見え透いた嘘言いやがって。いいから返せっ。斎藤には用のねえもんだろうが。」
沖田「え~・・・だって、一君ずっと読みたがってたんですよ。だからせめてもの餞別にあげちゃってもいいですよね?一緒に墓に入れてあげるからね、一君。」
土方「もう勝手にしやがれ・・・って、だから今はそれどころじゃあねえだろうがっ!!とにかく今、斎藤に死なれちゃあ困るんだ。総司、てめぇも何か助ける方法考えろ。」
沖田「考えろっていわれても、一君のことだから石田散薬さえあれば何とかなるんじゃないですか?(←theいい加減男w)そうだ、土方さん焼酎持ってきてくださいよ。」
土方「なんで俺がてめぇのパシりなんだよ!!てめぇで持ってきやがれッ!!!いや、そもそも石田散薬じゃ生きかえらねえ・・・」
沖田「あっれぇ?何にでも効く万能薬だって言って売ってませんでした、これ?土方さんはひどいなあ、一君なんて万能薬だって信じたまま死んじゃったのに。」
沖田「一君も土方さんに騙されたまま死んじゃって、死んでも死に切れませんね、化けて出るかもしれませんね?」
土方「総司ッ言うに事欠いて、俺に責任擦り付けるんじゃねえ。そもそも化けて出るんだったらテメェのところにだろうがっ!!」
沖田「やれやれ、手遅れになったら土方さんのせいですよ。よっこらしょ(と言って、焼酎をとりに行く)」
土方「くっそ、斎藤しっかりしろ!!てめぇにはまだこんな所で死なれちゃあ困るんだよっ!!!」
斎藤「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
山南「おや、土方君、こんな所でどうしたんですか?それに斎藤君は随分と顔色が悪いみたいですね。」
土方「ぐっ、山南さん・・・今取り込み中だ、あとにしてくれ。」
山南「それは随分な言い草ですね。どうやら私の見たところでは斎藤君は生死の境をさまよっている、違いますか?」
土方「・・・・・・・・・・・・・くそっ(ダンッと拳で床を殴る)。」
山南「今ならまだ間に合うはずです、土方君、これを飲ませなさい(といって、懐から取り出す小瓶)」
土方「・・・・チッ、しょうがねえ。山南さん、それをくれ・・・今斎藤を失うわけにゃあいかねえんだよっ。」
山南「どうぞ。・・・それにしても、誰が斎藤君をこんな目に?」
土方「・・・(苦虫を噛み潰したような顔)斎藤、飲め。俺の元へ戻って来いっ!!!」
土方「・・・・くっそ、飲ませようとしても口から零れちまう・・・も、もうだめなのか・・・」
斎藤「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
沖田「土方さん、そんな飲ませ方じゃだめですよ。ほら、ちょっとどいてください。」
山南「おや沖田君。焼酎の入った一升瓶なんかもってどうしようというんです?」
沖田「まあ、見ててください。ちょっと苦しいかもしれないけど、我慢してね一君。(と言いながら、一升瓶の口を容赦なく逆さに口に突っ込む)」
土方「・・・って、総司、斎藤の口に一升瓶突っ込んで何する気だっ!!」
沖田「だから強制的に飲ませてるんですよ。あ、ちなみに石田散薬はもう溶かしてありますからw」
斎藤「・・・・・・ごぽごぽごぽ(口から溢れ出ている)」
千鶴「えーん、大変です~。。゛(ノ><)ノ 山崎さん今日に限っていないみたいです、どうしましょう!?って、お、沖田さん何してるんです!?」
沖田「あ、千鶴ちゃんも戻ってきたの?まあ、見てなよ。」
土方「石田散薬は打ち身切り傷用だ。生き返るわけ・・・ねえよ(もはや諦めている)」
斎藤「・・・・・・・ごぽごぽご・・・・・・ぐふっ・・・げほげほっ・・・」
土方「!!」
千鶴「さ、斎藤さんが・・・」
土方「本当に息を吹き返しやがった・・・」
沖田「ほらね(ドヤァ)?やあ一君、おかえり。気分はどう?」
斎藤「げほっげほげほっ・・・・ここは?み、みなどうした?」
土方「斎藤、よく戻ったッ(ヒシッと抱きしめるw)」
斎藤「ふ、副長・・・俺は一体何を・・・この状況は、何があったのですか?」
山南「土方君の石田散薬、今までは胡散臭い代物だと思っていましたがこれは研究の余地があるかもしれません。」
千鶴「ふええん、斎藤さんよかったです~。」
沖田「山南さん、研究しても無駄だと思いますよ。きっと一君にしか効かないですからwww」
山南「沖田君、それはどういう・・(一瞬不思議な顔をするが、思い当たる節があったようで)。ああ、そうですか・・・最大級のプラセボ効果というわけですね。」

※注:プラセボ効果とは・・・偽薬を処方しても、薬だと信じ込む事によって何らかの改善がみられる事を言う。
             (つまり、石田散薬を万能薬だと信じ込んでいる斎藤さんにとっては、紛れもない万能薬であるのだwww)

斎藤「そ、そうか、俺は死にかけて・・・そういえば、随分ときれいな花畑にいたような気がする。目の前に大きな川があって・・・」
沖田「いわゆる三途の川ってやつかなぁ。一君、危なかったね。」
斎藤「みなで俺を救ってくれたのか・・・迷惑をかけた、すまなかったな。」
沖田「どうしたしまして♪」
土方「総司、テメェは少し反省しやがれっ!!!」
沖田「やれやれ・・・まあ、今回ばかりは悪かったかな。ごめんね、一君。」
斎藤「?何故総司は俺に謝るのだ・・・?」←死にかけたせいで記憶が飛んでいるw
千鶴「斎藤さんが無事に戻ってこれて、本当によかったです(‥、)。でも、沖田さんどうしてあんな事を?」
沖田「・・・それはもういいじゃない///千鶴ちゃんしつこいよ。」
千鶴「し、しつこいって・・・ひどい。私は沖田さんが心配だから・・・。」
土方「とにかく斎藤、よかった・・・本当に良かった!!俺はお前を失ったかと・・・ううう(男泣き)」
斎藤「副長・・・それに俺を救ってくれたのはやはり石田散薬・・・これからも副長を信じてついて行ってもいいでしょうか・・・?」
土方「斎藤、お前ぇってやつは・・・ハハッ。ああ、どこまでも俺について来いっ!!離してくれっていっても離してやらねえから、覚悟しやがれ」
斎藤「望むところです///」
斎藤「ふくちょおおおおお///」 ←焼酎で酔っているw
土方「さいとおおおおおお///」 ←斎藤さんの殺し文句にやられているw
沖田「・・・ねえ、何この茶番。男同士で抱き合っちゃって・・・。」
千鶴「沖田さん、二人だけにしてあげましょう(*´∇`*)?」
沖田「うん、そうだね。じゃあ、この二人は放っておいて行こうか。いっぱい走ったら喉かわいちゃったし、千鶴ちゃんお茶入れてくれる?」
山南「雪村くん、私にも後でいいですからお茶を一杯運んでいただけますか?自分で入れる茶は味気なくてですね。」
千鶴「ええ、もちろんです(*´∇`*)」
山南「お二人の邪魔をするのは気が引けますからね。」
千鶴「二人の・・・?ああ、土方さんと斎藤さんのことですね。ええ、あんなに信頼しあってて、私ほろっときちゃいました。」
山南「その二人ではありませんよ。沖田君も苦労しますね?」
沖田「山南さんッ///!」
千鶴「?」
山南 「しかし、沖田君ももう少し素直になったほうが良いかと思いますよ?そんな風ではいつまでたっても女性に気持ちは伝わりませんよ。」←実は最初から全部見ていたw
沖田「///山南さん・・・後で覚えて置いてくださいね・・・。」←山南さんには強く出れない沖田さんだったw
山南「若いとはうらやましいですねえ(´m`)クスっ。では、私は部屋に戻っていますので雪村君お願いしましたよ。」
千鶴「はい、後で伺いますね。・・・あのところで沖田さん・・・山南さんの言ってた事って何の事です??」
沖田「う、うん・・・///だから、何でもないってば。」
千鶴「沖田さん、さっきからそればっかり・・・変な沖田さん。」
沖田「もう・・・千鶴ちゃんのバカ///(小声)」

そんなエピローグのエピローグがあったとか、なかったとか・・・www
とっぴんぱらりのぷうヾ(´ー`)ノ


・・・なんだ、これ・・・( ´△`)勢いで書いたにしてもひどすぎる・・・。
もっとちゃんとした斎藤さんを書いてあげたい・・・(ガクッ)
全ての斎藤さんファンのみなさん、すいませんでしたァ(m;_ _)mペコペコ
  1. 2014/10/28(火) 02:24:39 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #EYMZMP9E
  4. [ 編集 ]

ゆゆき様♪

再UPありがとうございました(*^-^*)
そーなんですよ、コメントの通知はこちらに届いて残っているので、例え後で編集してもログは残るのです( ̄▽ ̄) ニヤ
せっかく書いて下さった小話、闇に葬られなくて良かったー♪
  1. 2014/10/28(火) 23:19:48 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

すっごく楽しいです。

こんばんは、ゆゆき様、小萩です。
一さん、石田散薬を溶かした焼酎で生き返るなんて、
ものすごいプラセボ効果ですね。でもこれ、絶対
一さんしか効かないですよね(笑)。
すっごくすっごく楽しかったです。UPして下さって
良かった。笑いすぎてお腹痛いです(笑)。

最初から全部見ていた山南さんが良い味出して
ますね。千鶴ちゃん、美味しいお茶いれてあげてね。
一さんと土方さんはお二人でしばらくラブラブ(笑)
で居て下さい。とにかく一さんが無事で良かった。
襟巻きにはこれから要注意ですね。つい無意識に
引っ張りやすいというか、掴みやすいんですよ。
一さん、命に関わるので注意してね(苦笑)。
楽しいお話をありがとうございました。
また是非書いて下さいね。心待ちにしてます。
  1. 2014/11/07(金) 18:12:22 |
  2. URL |
  3. 小萩 #-
  4. [ 編集 ]

>小萩さんへ

笑っていただけたようで、ほっ♪( ^∀^)
そういえば!ちょこさんの描いてた四コマ漫画でも、斎藤さんが死にそうな怪我をしてるのに石田散薬で奇跡の復活してるのがあったようなwww斎藤さんは石田散薬、えりまき、とうふ、真面目すぎる性格、むっつり(←あ)と、ギャグにしやすい要素がいっぱいで、ついこんなことに( ̄▽ ̄;)

「一さんの襟巻き、掴みやすいですよね」って、まるで小萩さんも掴んでしまったかのような口ぶりに笑ってしまいましたwww(^w^)斎藤さんは襟巻きに着流しなんて、どうしてわざわざあんなに戦いにくそうな格好なのか聞いてみたいですね。強い人には着物なんて関係ないのかなぁ…でも普通に考えたら、沖田さんと新八さんのが動きやすいと思う( ・∇・)特に新八さんなんて袖もないしwww
  1. 2014/11/10(月) 01:42:59 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #EYMZMP9E
  4. [ 編集 ]

え?そんな奇跡のような漫画が?

こんにちは、ゆゆき様、小萩です。
ちょこ様の漫画にそのような奇跡が?!
石田散薬恐るべし(笑)。

いや、襟巻きとかマフラーとかこう、
ヒラヒラしてるのって掴みやすそう
じゃないですか。特に一さんのは、
とっさにぎゅっと掴んでしまいそうな
雰囲気があって。

確かに一さんの和服って戦いにくそう
ですよね。新八っつあんとか平助とか
左之さんとか、すごく動きやすそう
ですけど。薄ミュで平助が言って
ましたよね、肘とか膝とかノーガード
だって(笑)。でも冬はすごい寒そう。

一さんは私の中でもむっつり設定なので、
大丈夫です(ファンの皆様ごめんなさい)。
いじられやすいというか、土方さんと
同じくらい、総司の悪戯の標的になって
しまっているのではないかと(笑)。
楽しいお話大歓迎なので、これからも
また機会がございましたら書いて下さいね。
  1. 2014/11/10(月) 06:19:36 |
  2. URL |
  3. 小萩 #-
  4. [ 編集 ]

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