皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「背中」

angeさんからの先日の斎千イラストへの頂き物です^^


そうそう! こんなクールな斎藤さんがいいんですよねえw
そして、守られているだけじゃない千鶴ちゃんにも萌えさせてもらいました~♪

今だ恋を知らない二人でも、この二人の場合は萌え所が随所にあって、
それをangeさんはとてもうまく表現されていると感心しました。

ではでは恋愛未満の斎千を、続きからどうぞ~^^



挿絵は感謝を込めてangeさんに進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。



背中



三番組巡察の帰路。

隊士達を先に帰し、斎藤と千鶴は所用の為、とある店に立ち寄った。

千鶴はそこで浪士らしき男に絡まれる。

謝罪を口にしても取り合わず、相手をしろと、男は体に触れてきた。

すぐに斎藤が助けに入った。


「この者は我ら新選組の者。相手が欲しいなら俺が務めよう」

浅葱色の羽織を見ても怯まぬその相手は、腕に相当の覚えがあるらしい。

聞くに堪えない罵詈讒謗を、斎藤に浴びせかけた。

他の幹部であれば、有無を言わせず斬り伏せていたかもしれない。

「ここでは迷惑だ。外へ出ろ」

動じることなく、斎藤は男に告げる。

「よかろう。壬生狼如き、斬って捨ててくれるわ」

二人の男は、人々が逃げ出した往来で対峙した。


「新選組三番組組長、斎藤一だ」

武士としての礼を尽くす斎藤に対して、やましいところがあるのか、名乗りを上げず抜刀する男。

不遜な態度をとるだけあり、その構えは自信に満ちて一分の隙も見せない。

斎藤は相手が本気と見て、鯉口を切った。

苛立ちを見せるでもなく、声を荒げるでもなく。

居合の達人と謳われた男が、敢えてゆっくりと刀を抜いていく。

静中動というべきか、動中静というべきか。

片手で千鶴を庇い、無言で相手を見据え。

斎藤の刀は、立ち合う男の心の臓に向けてぴたりと止まる。

刀身は陽光に照らされ、鋭い切先はその煌めきを誇示していた。

このらしからぬ大仰な動きは、まさに威嚇の為。

近藤や土方ならば、腹の底から響く声で圧倒し、

沖田であれば、人を喰った笑みで挑発しただろう。

千鶴は固唾を飲んで見守った。

(どうして居合の構えを取らなかったの?ひょっとして私がいるから……?)

彼は無用の殺生はせぬが、必要とあらば一刀両断にしてみせる筈。

やはり自分が共にいるからなのか。

足が竦み、動けなくなった自分を怖がらせないように。

全身に纏った殺気だけで、彼は無血の勝負を挑んだのだと、千鶴には思えた。

「お前を血祭りに上げて、その綺麗な小僧もいたぶってくれようぞ」

悪意に満ちた言葉に、青く冷たい炎が斎藤を包み始める。

「できればこの者に血を見せたくは無かったが、あんたの様な武士の風上にも置けぬ男に情けは無用だな」

あまりの気迫に怖くなり、千鶴は思わず斎藤の背中に取り縋った。

カット519

「案ずるな。だが、俺の後ろから離れずに付いてこい」

この最中に自分に気遣いを見せる彼の声の静かさが、かえって彼の怒りの激しさを思わせた。

「はい、斎藤さん!」

この張り詰めた場では、息をするのも憚られるほど。

それでもどうにか絞り出した自らの声で、ほんの少し緊張が解れ、

斎藤の背に強く当てていた握り拳を少し緩めることができた。

彼の背は常に真っ直ぐで気高く、自分の日常の模範となる【道標】であったけれど。

今は自分を守ってくれる大きな砦のように思える。


斎藤が、じりり、と一歩踏み出せば、

相手は気押されて、一歩退く。

また一歩踏み出せば、相手もまた一歩退く。

ただ、退きはするが逃げ出す気配のない相手に、斎藤も攻めあぐねた。

間合いは縮まらず、緊迫した空気だけが流れていく。


そんな斎藤が動くたびに、千鶴は離れまいと、彼の背に手を当てたまま共に動いていた。

(心配ない、大丈夫。この人と共にいれば、大丈夫)

確かな思いが彼女を包む。

いつしかその拳は開かれて、斎藤の背に吸いつくように手のひらが当てられていた。

やがて、手から伝わる斎藤の体温と力強い鼓動が、千鶴に勇気を与えた。

(一人じゃない。私達、二人いる!)

右手を小太刀の柄に当てた。

(怖くない。斎藤さんと一緒なら……私も出来る!)


やああーー! 

勇ましくも可愛らしい声が上がった。

千鶴は斎藤の背から手を離すや否や、彼の右に飛び出し、小太刀を抜いた。

男達は虚を衝かれて、どちらも動きを止める。

「新選組副長付小姓、雪村千鶴!助太刀仕る!!」

あらん限りの勇気を振り絞って、敵の男を睨みつけた。

思わぬ加勢に男が隙を見せた刹那ーー。

風を切る乾いた音と、人の肉に当たる鈍い音が、相次いで空に吸い込まれる。

斎藤が大胆に踏み込み、峰打ちで相手を仕留めていた。

男は気を失い、地面に崩れ落ちた。


ほどなくして、騒ぎを聞きつけた新選組の隊士達が駆け付け、浪士らしき男は彼らによって連行されていった。


「雪村。なんという無茶をするのだ」

隊士達の背を見送りながら、斎藤は千鶴を叱りつけた。

それは新参隊士であれば竦み上がるほどの厳しい表情だった。

「すみません、すみません」

千鶴は深く頭を下げ、無我夢中でした、と言い訳するに止めた。

斎藤の背から得た己の心情を、上手く説明できるとは思えなかったからだ。

「もう帰るぞ」

小さく溜息をついて、斎藤はその一言だけを投げ返してきた。

踵を返して先を歩き出す彼の表情は判らない。

慌てて千鶴は小走りに追いかけた。


彼の背中を追いかけながら、なぜあんな行動に出たのだろうかと、千鶴は思い返した。

過去にも巡察に同行し、危ない目にも遭い、他の幹部に庇われた経験がある。

だが、今日、斎藤の背に庇われて芽生えた感情は、他者へのそれとは違っていて、自分自身にも説明がつかない。

もどかしさの内にも、一つの思いと奇妙な胸の高鳴りが、彼女の心を熱くした。

理由は分からない。ただ。

――斎藤さんの背に、ずっとずっと付いていこう――

そんな決意を心に秘めて。

千鶴は、早足で己の先を行く、真っ直ぐな背中を追いかけた。


*****


【肝を冷やす】とは、この事か。

斎藤は屯所に戻る道すがら、苛立ちを押えきれないでいた。

組下の者であれば、先程の行動を素直に労ったものを……。

(おなごの身であのような無茶を。全く、驚かせてくれる……)

加えて、浪士に悪口を叩かれるよりも、千鶴が無謀な行動をとった事の方に動揺する己にも驚いた。

(それにしても――)

己の背中から、彼女の思いが伝わってきたのは気のせいか。

震える拳から伝わる彼女の緊張が、やがて解れて、徐々に暖かいものに変化した。

それは手のひらを通して彼女の体温を感じただけでなく、【一人じゃない。私達、二人です!】と励まされた気がした。

カット525背中

(多勢に無勢ならいざ知らず、相手が一人で俺が怯むはずもない事は、雪村も分かりそうなものだが……)

いつぞやの八木家の庭での腕試し以来、彼女には剣の稽古を何度かつけてやっていた。

故に自分と彼女との実力の差は十分承知していように……と、思わず苦笑いを零した。

(それでも俺に加勢しようとしたか……)

(俺も甘く見られたものだな……)

(敢えて云うなら、巡察に同行するうちに、敵に複数で立ち向かう我らの戦法を見習ったのかもしれぬが……)


不思議な娘だ。

素直と云えば良いのか、愚直と云えば良いのか。

彼女を持ち上げては貶める言葉が、斎藤の頭を巡る。

――だが、悪い気はしない、な――


後ろから必死に付いてくる足音に気がついて、口元を引き締めてから振り返った。

「あのような構えでは威嚇にもならなかったぞ。明日、また稽古をつけてやる」

思いがけない言葉だったのか、相手はきょとんとした顔を見せて――。

それから花が綻ぶ如き満面の笑顔を向けてきた。

「はい!よろしくお願いします!!」

敵には一瞬たりとも眼を逸らさず対峙できる男が、この笑顔にはまともに対峙できずに――。

彼はそっと眼を逸らした。


「急げ。先程の件、副長に一刻も早く報告せねば」

また踵を返して。

一目散に。

斎藤は、屯所の門に向かって走り出した。




(了)
  1. 2014/10/12(日) 11:09:04|
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  1. 2014/10/12(日) 18:38:50 |
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