皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「猫のお気に入り 」

伊能縁玖音さんからの頂き物です。
このお話は、玖音さんの長編を元に書かれたSSです。
オリジナル設定のお話が苦手な方はスルーして下さいね。


という訳で、こちらの千鶴ちゃんは男勝りで、強い女の子です。
その千鶴ちゃんが唯一怖いものとは・・・
よろしければ、続きからどうぞ^^


挿絵は感謝を込めて玖音さんに進呈します。
他の方は御遠慮下さいね。




猫のお気に入り




夏の日差しが降り注ぎ始めたその日の朝、屯所中に絶叫が響き渡った。



「ギャ―――――――――――――――――っ!!」



 ちなみに、キャーではなくギャーである。



「何だ何だ?!」



「何があったの?!」



「千鶴どうかしたのか?!」



「あんな悲鳴初めて聞いたぞ!」



その悲鳴の主に幹部がそれぞれの獲物を引っ掴んで駆け付けると、その部屋の主である千鶴は寝巻のまま真っ青になって猫のように小さくなりながら棚の上に座ってぶるぶる震えていた。普段男を蹴っ飛ばして喝を入れられるほど勝気で怖いものがない千鶴が怖がるものはただひとつ。

予想はしながらもくしゃくしゃになった布団を原田が槍で恐る恐るひっくり返すと、中からこれまた立派な大蛇が出て来た。



「ひっ!!」



 昔蛇にかみつかれて滅法痛い思いをした挙句に毒による痛みと高熱で死にかけたことのある千鶴は何よりも蛇を嫌っていて同じ部屋にいることでさえ嫌がる。


以前、蛇の生き血をのんでしまった時は吐き出すことすら嫌で耐えていたがそれでもしばらくの間は誰に何と言われようと山崎が用意した水しか口にしなかったとかなんとか。料理の食材に蛇が使われていないかと恐れているようでしばらくは肉類すら口にできなかったとか。



「あ、これはまたでかい」



「ただの草蛇で毒はないけど、これが近くに居たら怖いな」



「おい、問題は誰がこの蛇を持ってきたかだろ。見ろ、千鶴の奴、すっかり怯えちまってあそこから降りようとしねぇ」



 ぶるぶる震えている千鶴に沖田と山崎が必死に声をかけているが、彼女は蛇が怖いのか全くそこから動こうとしない。
むしろ、棚の奥に逃げてしまって何もできない。


 だが、その丸くなった姿に可愛らしい耳と尻尾が見えるのは気のせいだろうか。めったに見れない千鶴の可愛らしい姿に沖田と山崎は顔を見合わせていたが、とにかく千鶴をそこから降ろそうと説得を再び開始した。いくら頑丈な棚とはいえ、千鶴が長時間乗っていると壊れる可能性もあるからだ。


カット510猫のお気に入り


「千鶴ちゃん、おりておいで。ただの草蛇だし、僕たちが居るから大丈夫だよ」



「そうだ、もう俺達が居るから大丈夫だ」



「や、やだ、怖い! 絶対降りたくない!」



 蛇の姿を少しでもとらえると千鶴は梃子でも動かなかった。普段ならここまで拒否反応を見せないのだが、不意打ちだった上にこれほど大きな大蛇を寝起きに見てしまっては動転するのも仕方のないことだ。



「原田、新八、さっさとその蛇運び出せ。千鶴が降りてこねぇ」



「え! 俺らかよ!」



「新八、千鶴のためだ。こんなでっかい蛇なんざ、俺も触りたくねえが仕方ないだろ。さっさと追い出すぞ」



「斎藤と平助はこの部屋の周囲を確認しろ。これ以外に蛇が居たら捨ててこい」



「御意」



「分かった。千鶴、俺達が蛇を退治してくるからな、安心しろよ?」



 原田と永倉は大きい布を持ってくるとそこに蛇を閉じ込めるとシャーシャー鳴いて威嚇する蛇を慌てて外へ運んだ。


 斎藤と藤堂が調べると、どうも隣室に怪しげな玉手箱がありそこには草蛇が何匹かいてそのうちの一匹が千鶴の部屋へ向かったらしい。だが、脱走した蛇は他にも何匹かいたが近くに居たのですぐさま全部捕まえることが出来た。


 悪質な悪戯にしては質が悪く、千鶴は蛇が居なくなって周囲にも蛇が居ないと確認してからようやく棚から降りた。だが、怖いのか沖田に引っ付きっぱなしで離れようとしない。普段ならからかう沖田も千鶴の怖がりようがあまりにも酷いので宥めるように頭を優しくなでたり抱きしめて背中をぽんぽんと叩いていた。


 蛇の衝撃が抜けなかったのか、その日千鶴は沖田から一歩も離れなかった。寝る時でさえ自分の部屋に戻るのを怖がって沖田におねだりまでして一緒の部屋に寝たのだ。


 その様子に実はわざと蛇をけしかけた犯人である天霧は深く反省していた。
 実は風間に命じられて千鶴に嫌がらせをするように差し向けられたのだが、どんなことがあろうとも(か弱い?)女子に手を出すのは天霧の主義に反したのでせめて怖がらせないようにと隣室に置いて気配だけを感じ取ってもらって怖がってもらい、その様子を不知火に見張らせている風間に知らせるつもりだったのだが、箱から蛇が脱走するのは全くの誤算だった。決して千鶴を害するつもりは無かったのだ。


 後日、調子を取り戻した千鶴の元に煌びやかで明らかに値打ちものである簪や櫛、巾着や着物などあらゆる見舞い品を持参した天霧は事の次第を話して深く謝罪した後、主犯である風間と協力者で蛇を揃えた不知火に頭を下げさせて謝罪させた。
 だが、これで怖い思いをした千鶴の気が収まるわけがなく、武士を重んじる近藤からは女子である千鶴に対する態度について、山南からは女子に対する接し方と世間一般の常識を説教された。特に今回千鶴が怯えたことに関して山南はひどくご立腹で鬼達はねちねちと嫌みの籠った厳しい説教を受ける羽目になった。千鶴からも侮蔑が籠った痛い視線と彼女の怒りが籠った飛び蹴りを受けた鬼達は大人しく帰って行った。


 この一件で千鶴の蛇嫌いには拍車がかかったが、ひとまずきらびやかな振袖と簪にはとても喜んでいたのでそれは良いことだった。試しに幹部が説得して女の格好をさせた千鶴は誰もが振り返る美人で、それを見立てたのは全て天霧だと知った。





 この一件で何故か印象が大幅に上がったらしい天霧は大層千鶴に気に入られ、後日よく二人で街中を歩いている姿が目撃されたとかなんとか。その姿は仲睦まじい夫婦のようだと言われていたそうな。



「何故この俺ではなく天霧が気に入られるのだ!」



「そりゃそうだろ」





  了
  1. 2014/09/16(火) 23:39:43|
  2. 頂きもの
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  1. 2014/09/24(水) 21:58:58 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

玖音様♪

こんばんは!
イラスト気に入って頂けたようで良かったです^^
そちらの続き、頑張って下さいね。
今回はこちらこそありがとうございました。
本編創作の合間に何か浮かんだら、またいつでもどうぞ。
  1. 2014/09/25(木) 22:59:47 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

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