皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「決意」

桶乃ハシさんからの頂き物です♪

天然の千鶴ちゃんの色香に迷う山南さんのお話―――(^^;)
長いお話の一部のような感じですね。

この後、山南さんはどうするのか・・・余韻の残るSSです。
続きからどうぞ♪


挿絵は感謝を込めて桶乃ハシさんに進呈します。
他の方は御遠慮下さいね。


決意



 あれからと言うもの、雪村君は昼間に私の部屋を訪れるようになった。私が眠っている間も、茶を運んでくれている。それに、私が起きていれば、話をしていく。たわいのない話だが、それが楽しみになっている。そして今日も、彼女は私にお茶を運んできた。
「……あの、山南さん」
襖の方に一度顔を向け、雪村君は私に視線を戻した。
「隣の部屋は、使われているのですか?」
「いいえ。誰も使っていません」
 本当は私が使っている。変若水の研究資料や、試薬が置いてある。嘘を付くまでも無いと分かっていたが、この部屋の机上より多くの試薬が置かれている、などと到底言えそうもない。彼女が気に病むのが目に見えている。その試薬が私のような化け物を生む危険な物。その素を作ったのが父親だと言うのなら、尚更。
「そうだったんですね。それなら、手が空いた時にお掃除した方が良さそうですね」
 立ち上がると、彼女は隣に繋がる襖の前に立った。
「使ってないと埃がしますし、山南さんのお部屋にその埃が入って来るかもしれませんから」

カット447

 開けてしまう、そう感じて私は瞬時に雪村君の後ろから手を伸ばし、襖に手を添えた。急な接近に驚いたのか、彼女は硬直している。不意に、彼女の首筋に目がいった。すらりと長く、白い線。非常に眩しい。
──この首に顔を埋められたら、どんなにいいでしょう
「山南さん?」
 我に返った。
「すみません。嘘を付きました。まさか、あなたがそんな行動を取るとは、思ってもいませんでしたから」
 振り向き、私を上目遣いで見る彼女は女にしか見えなかった。なんの曇りもない眼。ふっくらとした花弁のような唇。眩暈が起きそうだ。陽の光は、私には不釣り合い。それでも、求めずには居られない。
 気づけば、抱きしめていた。
「さ、山南さん?」
 戸惑う声を聞かなかった事にして、口を開いた。
「あまり、頑張り過ぎてはいけませんよ。あなたは、あなたの思っている以上に役に立っています。ですから、必要以上に頑張る必要はないのですよ」
 子どもに言い聞かせるように努めた。偽りの言葉でもない。本心の一つを言った。休む事を知って欲しいのは事実。
 仄かに暖かい彼女の温もり。これに触れたくて堪らなかった。羅刹の朝は重苦しい緊張しかない。研究も、進まない。それがどうにかなる訳ではないが、この温もりを感じれば、癒される。胸に染み渡るように、温まる。
「いいですか、雪村君。もっと自分を大事にしなさい。分かりましたか?」
 小さな声で、はい、と彼女は答えた。
「さ、山南さんも、ご自身を大事になさって下さい」
「ありがとうございます。でも、私には時間が無いかもしれません」

カット509決意

 下向き加減だった彼女は、急に顔を上げた。目が合う。口付けたい、そんな思いがこみ上げて来た。それが知られてしまったかのように、彼女の真っ赤になった顔が、直ぐに下を向いた。己の自制心が壊れてしまう前に、腕を解いた。
「それは、どういう意味ですか」
 彼女に背を向け、机の前に座った。お茶を飲む。
「そのままの意味ですよ。さて。そろそろ、寝付こうかと思います。昼餉の時刻でしょうし、雪村君は広間にお行きなさい」
 布団に座り、今すぐ寝られる体制に入る。
「それでは、おやすみなさい」
 戸惑っていた雪村君だったが、おやすみなさいと返して、出て行った。行ってしまうのを見届けた後、横になり、布団を被る。
 あの子の前だとつい、本心が口に出てしまうものですね。そう心に呟くと、目を瞑った。不意に昨晩の羅刹の死に顔が浮かぶ。暗い中に生き、狂い死ぬ。それが私の選んだ道だと言うのなら、光に手を伸ばしてはいけない。そう、この道を選んだと言う事は、新選組だけを考える亡霊として、生き長らえているのだと言うこと。
 彼女と接するあまり、絆されていたようだ。私情に流されてしまっている。これから、会うのはなるべく避けるべきだ。
──思いの強い山南さんだからこそ、今の山南さんが居るんですね
 彼女の言葉が、強く奮い立たせてくれたのは事実。せめて、何かしら彼女に残るものをあげたい。言葉でなく、何か、形が残るものがいい。私の代わりに、彼女を見守るようなものを。そして、私の想いもそれに託したい。



  1. 2014/09/14(日) 11:11:02|
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