皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「殺意」

茶々姫」のMURAさんから頂いた誕生日プレゼントです♪
ありがとうございます(≧∀≦)

暗いお話になってしまったかも…とMURAさんからの但し書きがついていたのに、
今描いてる頼まれものの原稿のせいか、頭の中が現在コメディ仕様のようでして(^^;
途中までずっと、千鶴ちゃんの『殺したい』ものが、人類の敵の黒くてテカテカしているGさんで、いつオチがくるのかと思いながら読んでいましたwww
シリアスで切ないお話なのに、MURAさんごめんなさ~い(* ̄∇ ̄*)エヘヘ

という訳で、皆さんはちゃんと初めから真面目なお話として読んで下さいね←
ではでは続きからどうぞ~♪



挿絵は感謝を込めてMURAさんへ進呈します。
他の方は御遠慮下さいね。


殺意



 早く……
 早くしなければ……

 誰かに見つかる前に
 誰かに気付かれる前に……

 急がなければ……

灯りを灯す事もなく千鶴は一人、自室の端で身を寄せ小さく震えていた。
暗闇よりも深い色をその大きな瞳に、青ざめた硬い表情で唇をきゅっと噛む。
小刻みに震え続けるその両腕に、しっかりと小通連を抱きしめながら……


「早く、殺さなければ……」

紅を塗ったかの様な赤い唇が微かに震え紡いだ言葉は、千鶴らしからぬものだった。
闇の中、酷く暗い目をした千鶴は、まるで縋るかの様に小通連を抱く腕に更に力をこめた。



―――でなければ、ここにいられなくなる……


閉め切られた限りある部屋。
湿度の高い部屋の中で、千鶴の頬を冷たい汗が一筋、流れ落ちた。





「雪村。」
「…っ!」

ふいに背後から声をかけられ、千鶴は両手に抱えたタライを危うく落としかけた。
慌てて両手でしっかりと抱え込み、辛うじて難を逃れる。

「斎藤さん……。」

弱々しい、掠れた声。
一歩、身体を引いては振り返るその瞳には、怯えの色が浮かんでいた。

気まずさを誤魔化すかの様に、千鶴はタライを抱える両腕に力をこめた。
浅黄色を身に纏ったその姿。
それだけで斎藤の用件に察しはついた。
巡察に行く刻限なのだ。
だが……

「どうかしたのか、顔色が悪いようだが……?。」
「……。」

視線を合わせたくなくて、千鶴はそっと俯いた。
その様子に斎藤の目が細まった。

「どこか具合でも悪いのか。なんなら今日の同行も無理する必要は……」
「……すみません。そうさせて頂きます。」

斎藤の言葉を最後まで聞く事もなく、頭を下げ詫びる千鶴。
斎藤の眉が訝しげに潜められた。

「雪村、あんた……」
「斎藤組長!」

何かを言いかけた斎藤を阻むかの様に、男の無骨な声が遠くから割り込んで来た。
千鶴を呼びに向かったまま、なかなか戻らない斎藤を三番組の隊士が探しに来たのだ。

「……失礼します。」

その声に斎藤の意識が逸れた隙に、千鶴は小さく頭を下げては素早くその場を離れて行った。
まるで逃げるかの様なその後姿。
斎藤は遠のくその後姿をじっと見つめていた。

その後も、千鶴が巡察に同行する事は無かった。
季節外れの風邪をひきかけているのだと言い、他の者にうつさない様にと食事も自室で一人取る。
原田達が心配しては巡察の手土産にと色々な菓子等を持ってきたが、食欲が無いのでと丁重に断られるのだ。
青ざめた顔色で必死に、取り繕うかの様な笑顔も見せるが、それが却って原田達の方が痛々しく感じられる程だった。

自室で取っている筈の食事も、あまり箸か進まないのだろう。
顔色も悪く、目の下には薄い隈が出来ていた。
必死に笑顔を作っては申し訳なさそうに頭を下げる千鶴を前に、皆は何も言えないでいた。



 今日も殺せなかった

 どうして……
 どうして 殺せないの……?

 殺さなければ……
 早く、殺さなければ……

 私は………っ!


青ざめた表情は険しく、大きなその瞳も深い焦りが色濃く浮かんでいた。
小通連を唯一の心の支えとするかの様に、抱きかかえては小刻みに震えている千鶴。

胸にある決心が揺らぐ事は無い。
けれど、どうしても出来ないのだ……。

 いくら考えても
 なんとかしなければと思い悩んでも
 それでも……
 殺せない……

暗闇の中、千鶴は一人、己の不甲斐なさを呪い、嘆いていた。



その日も千鶴が巡察に同行する事は無かった。
掃除に洗濯。炊事にその他の雑用。それらは問題無く、きちんとこなしている。
ただ、同行する事だけが出来ないでいた。

その夜……

「雪村。」

襖の外から声をかける斎藤。
だが、返事は無い。
思案気に目を細め、気配を探り、自室にいない事を悟る。
手にしていた石田散薬の袋を改めて懐にしまい、踵を返した。

 バシャ!
 バシャ!!

その足がふと止まる。
断続的な水音を耳に、自然と足がそちらへ向いた。
ぼんやりとした月明かりを頼りに井戸の方へと歩み寄って行く。

「!」

我が目を疑った。
千鶴が井戸から水を汲んではそれを頭から被っていたのだ。

 バシャ!
 バシャ!!

続く水音。
千鶴は一心不乱に己に水をかけ続けていた。
この季節にしては涼しい夜。
風があり、木々がざわざわと鳴いていた。
そんな中、一人全身に水を打つ千鶴。

ここ最近の、ただでさえも青ざめた顔色はすでにそれを通り越し、透ける様に青白く見えた。
かちかちと歯が鳴っている。
手桶を抱える手も震えていた。
それでも千鶴は水を被り続けた。
妙にその赤さが映える唇は、微かに震え何かを呟き続けていた。

水の入った桶を持ち上げ、全身に被ろうとしたその時。
斎藤が叫んだ。

「止めろっ!」
「さ…いと…さん……?。」

今も再び水を被ろうとしたその手首を荒々しく掴み、それを阻む斎藤。
千鶴は信じられないものを見たかの様に、青ざめ、そして大きく目を見開いた。

「あんたは何を考えているんだ!」
「……」

一体どれ位の間、水を浴び続けていたのだろうか?。
握った手首が酷く冷たい。
その手からも小刻みな震えが伝わってくる。

「離し…て……っ!」
「雪村……?」

叩き落とすかの様にその手を振りほどかれ、驚愕する斎藤。
千鶴が斎藤に向けた、その視線。
それらはあからさまな『拒絶』だった。

驚き、固まる斎藤を前に、千鶴の表情も強張った。
動揺も露なその視線から逃れるかの様に、さっと顔を伏せる千鶴。

「もう…私の事は放っといて下さい!」
「雪む……」
「お願いですから…あと少しだけ…あと少しだけ、私の事は放っておいて下さい! お願いしますっ!」

今にも土下座をしそうな程の凄い勢いで頭を下げる千鶴。
千鶴のこんな姿を始めて見た斎藤は内心、動揺した。

「……何が、あんたをそこまで追い詰めた?」
「………。」

唇をきゅっと噛み締める千鶴。
視線を合わそうとはしない。

「それはあんたが『殺さなければならない』者のせいなのか?」
「…っ!」

驚き、勢い良く顔を上げる千鶴。
震える唇が「どうしてそれを…」と呟いた。
斎藤は畳み掛ける様に詰問しようとした。
が…

「それは一体……」
「止めて下さい!」

悲痛なその声に思わず斎藤が言葉を呑んだ。

「お願いしますから、それ以上の詮索はしないで下さい。私は…私はここにいたいんです。ただそれだけなんですっ!」
「脅されたのか。何か弱みでも握られたのか!?、それともまさか…何か無体な事を……!」
「違います、これは私の…私だけの問題なんです! 斎藤さんには関係ありませんっ!!」
「…っ!」

先程よりも更に強いその『拒絶』。
斎藤の瞳がぎらりと光った。

「関係無い…だと……?」
「………。」

地を這う様な低い声。
斎藤の全身の血が一気に熱を持った。
怒りに震えるその声に、見えない棘が含まれている。

斎藤の怒気に震えが増す千鶴。
今にも折れそうな細い手首。
それを握る手に更に力が増した。

千鶴自身でも酷い事を言っている事を自覚しているのだろう。
今にも泣き出しそうに、その手首の痛みと共に顔を辛そうに歪めた。

元々、最初の同行を断った時に斎藤は違和感を感じていた。
斎藤の知っている千鶴は、いくら体調を崩していたとしても、それを押し隠し無理してでも同行しようとする性格なのだ。
それをあっさりと、自ら同行を拒むかの様なその態度。
あの時、隊士が呼びに来なければ斎藤はその事を問い質していただろう。
勿論、その後も千鶴に問おうとした。
が、斎藤自身も多忙な上に、千鶴も斎藤を避け続け、今日まで至った。

「誰だ。一体、誰がお前をそれ程……!」
「止めて、止めて!、もう聞かないで下さいっ!!」

激昂する斎藤の言葉に、ついに堪えかねたかの様に、大粒の涙をぽろりと零す千鶴。
だが、斎藤の手が緩む事は無かった。

水を被りながら、千鶴が口にし続けていた言葉。

―――早く、殺さなければ……

己自身に言い聞かせる様に、呟き続けていたその言葉。
人が傷付く位なら、己が傷ついた方がマシだと、本気で思う程の稀有な心根の持ち主だ。
その千鶴が、他者を害する様な事を…、ましてやその命を奪う様な事を自ら口にしたのだ。

「誰だ、誰があんたを傷つけた、誰があんたを追い詰めたっ!」
「違う…っ、違うんです……っ!」

涙をぼろぼろと零す千鶴。
錯乱したかの様に、激しく首を横に振った。

「私が…私が殺さなければいけないのは……っ!」

酷く切羽詰ったその表情。
大きな瞳が斎藤を映す。
久しぶりに真正面から見た千鶴に、斎藤は一瞬言葉を失った。

「雪村……?」
「私が殺さなければいけないのは……」

火傷をしてしまいそうな熱を含んだその視線。
強すぎる程のひたむきなその熱視線に、斎藤は言葉を失った。

千鶴が『殺さなければいけないモノ』
それは……

―――恋心

いつの頃からだろうか?
出合った当初、怖い人だと思った。
次に口数も少なく、表情も決して豊かでは無いその姿に不器用な人だなと感じた。
そして、奥に隠された感情がその澄んだ瞳が語っていた事に気付き、優しく、そして信じれる人だと思った。
それが、いつからだろうか。
そんな感情が胸の奥で密かに、無自覚なままに育っていったのは……。

新選組に『女』はいない。
いや、正確には居てはいけないのだ。
その為、千鶴は男装をして、周囲を誤魔化し続けてきた。

皆の人柄を知り、そして皆の役に立つ様になりたいと願うのにそう月日はかからなかった。
そんな中、無意識な中で育って行った己の心。
それを自覚した時、恐怖した。

屯所を離れる事。
それは、斎藤からも離れると言う事でもあったからだ。

このまま皆と、斎藤の傍にいる為には、無くさなければならない。
そう思った。

皆は自分の作った食事を食べ、色々な雑用をまかせてくれる。
それは自分の事を信じてくれると言う事だ。
愚かにもそんな皆の信を、裏切ってしまったのは自分自身。

けれど『女』として一度自覚してしまったこの恋心は更に膨らんでゆく。
この恋心は殺さなければならない。
されど、いくらそう願っても、どうしても殺せない。
いくら考えても、何をどうしても良いのかすら解らない。

自分の望みはただ一つ。

―――皆と共にいたい。ただ、それだけだ。

『裏切り』の思いから皆の顔を見るのが辛くなった。
この想いをこれ以上育てたくなくて、斎藤を避け続けた。
けれど、無意識にその姿を探してしまう自分がいた。
その声を耳にしただけでも、心の臓が大きく飛び跳ねる。
身体は熱く、胸の奥がぎゅっ と締め付けられる様に苦しくなった。

最後に同行した時の事。
酔っ払いに絡まれた所を斎藤に助けられ、頬を染めて礼を言う町娘。
その娘に、斎藤が静かな笑みを向けたのを見た瞬間。
胸の中がぐちゃぐちゃになった。

(知らなかった。自分の中に、こんな激しい嵐があったなんて……)

自覚し、それと同時に千鶴は打ちのめされた。
己の浅ましさに……。

皆、それぞれその志は違うが、それでも皆、その『誠』の志を胸に己の命を賭して戦い続けてきた。
そんな中、己の恋心一つ殺せない事に千鶴は絶望したのだ。

混乱した千鶴は頭を冷やそうと、そのまま水を浴びたのだった。
ある意味、千鶴にしては短絡的すぎるその行動。
だが、それ程迄に千鶴は追い詰められていたのだった。

「雪村……。」

千鶴の燃える様な視線に一瞬 躊躇するかの様に、視線を逸らす斎藤。
それを映す大きな瞳が、哀しげな色に染まる。
唇を噛み締め、項垂れるその千鶴の肩にそっと手が置かれた。

「雪村。よく聞け。」
「………。」

顔を上げないままの千鶴に、斎藤は静かな声で説いた。

「無理に殺そうとしなくて良い。」
「……え?」

てっきり否定されるものばかりと思っていた千鶴は、斎藤の思いがけないその言葉に驚き、顔を上げた。
優しげに細められた瞳が千鶴を映す。

「俺達は確かにあんたに男装を強き、行動の自由すらも奪う様な、酷い事をしている。」
「そんな…違います!。私は……」
「聞け、雪村。」
「は…い……。」

男装は『女』である身を護る為に、土方達が心配しての事だと千鶴は理解していた。
屯所から出られない件については、確かに多少の不自由はあるが、それに関して不便や文句など千鶴は感じていなかったのだと、言おうとする千鶴を阻む斎藤。
その肩に置いた手にぐっと重さが増した。

「だが、俺達はあんたのその『心』まで縛るつもりは無い。」
「………。」
「そのままで、良いんだ。あんたは己の心を『殺す』必要は無い。」
「ほ…んとう…に……?。」

驚愕に見開かれたその瞳から再び大粒の涙が零れ落ちた。

「本当に…殺さなくて……良いん…ですか……?」
「あぁ。本当だ。」

静かに頷く斎藤。
千鶴は呆然とした様に、ただ涙を零しながら斎藤を見つめ続けていた。

『恋』をしたからと言って、日々の雑用を疎かにしたり、皆に迷惑をかける様な事を仕出かしたりする様な人柄ならば、また話は別であっただろう。
だが、千鶴に限ってそれは無いと斎藤は思った。
もし、多少の何らかの問題が出たとしても、それはほんの些細な事だろうし己一人で何とか補えるであろうとも信じていた。

年頃の娘に、着飾る事も、自由に町を歩き楽しむ事も全てを奪い続けて来たのだ。
これ以上、奪う物があってはならない。

「斎藤さんを…想う事を許して下さるのですか……?。」
「先程も言ったであろう。あんたの心はあんたの物だ。あんたの心は自由だ。」

斎藤の真摯なその瞳に千鶴の身体からゆっくりと緊張が解けていった。

「ありがとうございます……。」

嬉しそうに目を細め、はにかむ千鶴。
その表情つられたかの様に、斎藤の表情も自然と優しい物となっていった。
だが、その表情が一気に強張った。
千鶴の身体がぐらりと揺らいだのだ。
そのまま音もなく崩れ落ちる千鶴を慌てて斎藤が抱き止めた。

「ゆきむ…っ、雪村!?」

驚き抱き上げる斎藤。
千鶴は完全に意識を失っていた。

それも無理は無いだろう。
己の恋心を殺さなければならないと、思いつめていた千鶴。
食事も睡眠すらも疎かにしていのだ。
斎藤の言葉に安心し、今迄張り詰めていた糸がぷつりと切れたのだろう。

安定したその呼吸音に、斎藤はほっと安堵した。
起こさないようにと、なるべく静かに抱き上げ、部屋へと歩き出す。
ふと見上げた空には大きな丸い月が浮かんでいた。

カット508殺意

千鶴の心が無意識に育っていた様に、斎藤の心にも育っていた想いがあった。
だが、それを告げる気は今の斎藤には無かった。
今、京の町は様々な策謀に揺れ動いていた。
まだまだ自分達の戦いは続くであろう。

だが、何事にも終焉は必ずやって来る。
それが、終わった時には……
その時には……

頼り気無い程の細いその身体を、ぎゅっと抱きしめる斎藤。
己の体温を移す事を願いながら斎藤はそっと呟いた。

―――その時は、今度は俺から告げさせてくれ……

胸の奥にくすぶる想い。
風が優しく斎藤の頬を撫でた。


~了~
  1. 2014/09/10(水) 14:41:55|
  2. 頂きもの
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:1
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コメント

作品のタイトルにドキッとしましたが・・・

すごいすごい素敵な斎千でした( 〃▽〃)
えー・・全然暗いとは思わなかったんですけど。むしろ、こういうのが真面目な斎千の世界観にあってるって思います。
あー・・なんか、すごい良いものを読んだ気分です。あー・・・(*´-`)(ひたってる人類の敵のGはいつ出てくるのかとはらはらしてたら、千鶴ちゃんの殺意を抱いているものがアレだったなんて・・・そこまで思い詰めてる千鶴ちゃんに胸がいたくなりました( ;∀;)食欲もない、眠れない、誰にも会わないで気持ちを断ち切るだめに・・・だなんて、何てひたむきなのでしょう。でも、このお話の時間軸は斎藤さんが離れていってしまう頃のようで、千鶴ちゃんは許してもらった思いを抱えて、また辛い思いをしなければいけませんねρ(・・、)斎藤さんから早く思いを告げられる日がきますように。
本当にすてきなお話でした(*´-`)あー・・・もう一回読みなおそ♪←

j
  1. 2014/09/12(金) 23:04:09 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #EYMZMP9E
  4. [ 編集 ]

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