皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「涼風笑う」

六花書房」のゆゆきさんが、コメント欄に書き込んでくれた感想SS♪
表に出させてもらえる事になりましたので、さっそくUPします^^

最近、一部の方たちが、『一本のお話にする程でもなく』『挿絵をもらう程でもない』という奥ゆかしい理由から、
『感想文SS』と称して、ネタにしたイラストのコメント欄にちょっとしたお話を書き込んで下さってます^^
勿論、こちらとしてはすごく嬉しいんですが、ただ、もったいないなあとかねてから思ってて―――
常連さんなら知ってたかもしれませんが、通りすがりの方やスマホの方などは気付かないかもしれないし、
読む人も限られると思うので(^^;

これからは気がついたら、コメント欄も覗いてみて下さいね。
また、どなたでも参加したい方はご遠慮なく、わいわいしに来て下さい♪

では、風鈴のイラストのコメント欄に書き込んでくれた、ゆゆきさんのSSを続きからどうぞ^^


挿絵は感謝を込めてゆゆきさんに進呈させて頂きます。
他の方は御遠慮下さいね。



涼風笑う




「あっ・・・」

と千鶴が思った時には、それはもう欠けていた。

「あー・・・もう使えないよねこれ。」

千鶴は食事の後片付けで皿を洗っていたのだが、手が滑ってその時持っていた『ぐい飲み』の口のところが少しだけ欠けてしまった。
水が漏れるわけではないが、こんな欠けた物で酒を飲んで怪我をされては大変!と、千鶴はそのぐい飲みを処分しようと脇に寄せておいた。
そこに沖田が水を飲もうとやって来て、それを目ざとく見つけた。

「あれ・・・これ欠けてるね。千鶴ちゃんが割ったの?」

白い陶器の『ぐい飲み』には所々に桜の花びらを散りばめた模様があり、沖田はそれを手に取るとしげしげと眺めている。

「すいません、さっき手が滑ってしまって。危ないので、触らないで下さいね。」
「じゃあこれ、もう捨てるの?」

沖田の言葉に千鶴はそちらを振り返った。
自分が割ったものは沖田のお気に入りのものだっただろうか・・・それならば、何かもっと詫びをした方がいいだろうかと少しばかり不安になりながら、

「ええ、口を切ったら危ないですし、そのつもりですけど・・・。いけませんか?」

千鶴は恐る恐る聞いてみた。
沖田は特に千鶴の様子を気に止めた風もなく、こう言った。

「じゃあこれ、僕がもらっていい?」
「?それは構いませんけど、割れてますよ?何に使うんですか?」

沖田の意外な一言に、千鶴はきょとんとしている。
沖田は千鶴の不思議そうな顔を面白そうに見たが、何故自分がそれを欲しがったのかはその時は教えてはくれなかった。

「それはまだ秘密だよ。じゃあもらって行くから。」

そう言うと沖田は、その壊れた『ぐい飲み』を持って勝手場から去っていった。


食事の後片付けが終わった千鶴は、自分の部屋へと戻った。
今日はそれほど仕事がないので、昼の食事の準備まで部屋でゆっくり過ごすつもりだった。
そういえば、洗濯物をしている時に見つけた着物の破れでも繕おうかと針箱など出してみる。
太陽はキラキラと照って今日も暑くなる事が一目でわかったが、それと同時に心地いい風も吹いていたので、千鶴は障子を開けたまま針仕事を始めた。
すると、またしても沖田がひょっこりやって来た。
千鶴は沖田がやって来たのを見ると、てっきり自分に用事があると思ったが、沖田は千鶴には一言も声をかけなかった。
沖田は千鶴の部屋の前の廊下に陣取ると、懐から何やらごそごそと色んな物を取り出しては、順番に並べている。
さっき勝手場から持っていった『欠けたぐい飲み』。どこから持ってきたのか、錐とたこ糸。小さな薄紅色の貝殻を数枚。あとは、薄い冊子のようなもの。

カット496涼風笑う

千鶴は、沖田がなぜ自分の部屋の前で店を広げ始めたのかわからない。
沖田が何かまた自分に対する悪戯か何かをするためだろうかと、千鶴は興味半分、恐怖半分でじーっと見ている。
しかし、沖田は千鶴の視線は確実に感じているはずなのに、全く声をかける様子もない。
まず沖田は錐を手に取った。
『欠けたぐい飲み』を逆さにして廊下の床に伏せると、錐をその中央にあてがって、両手をすりすりとすり合わせながら回し始めた。
どうやら沖田は『ぐい飲み』にさらに穴を開けたいらしい。
千鶴はその様子が不思議でしょうがない。
それもそうだろう・・・欠けていても水は汲めるが、穴を開けてしまってはますますあの『ぐい飲み』は捨てるしかないだろう。
しばらく慎重にくるくると錐を回していた沖田だったが、どうやら無事に貫通したらしい。
今度は小さな桜色の貝殻に錐をあてがって、同じようにくるくると回して穴を開けている。
貝殻の方はさして厚みもなかったため、錐はすぐにも貫通した。
千鶴は沖田がしている事が気になってしょうがなかった。
なぜ自分の部屋の前なんだろうという疑問もあったが、それよりも沖田が何をしようとしているかが気になり、ついに千鶴は沖田に声をかけた。

「沖田さん、何をしているんですか?」
「・・・・・・・・。」

沖田は何も答えない。
沖田に聞こえていないはずはないと思いながらも、もしかしたら作業に熱中しすぎて自分の声が聞こえていないのかもしれないと、千鶴はもう一度声をかけた。

「沖田さん?何か作っているようですけど、何が出来るんですか?」

沖田はまたしてもすぐには答えなかったが、千鶴は沖田が教えてくれるのを辛抱強く待っている。

「・・・・・・・・秘密。」

沖田は千鶴の方をちらりと一瞥すると、たった一言そう言った。
あとは何も答えず、鼻歌のようなものを歌いながら手を動かしている。
何やら沖田が上機嫌の様子なのはわかったが、千鶴はますます沖田が何をやっているのか気になって仕方がない。

「秘密って・・・わたしの部屋の前なんですよ。何をやっているのか教えてくれたっていいじゃないですか?」

千鶴がそう言っても、沖田はもう鼻歌を歌っているだけで何も答えてはくれなかった。
沖田が何をしようとしているのか気になった千鶴は、とうとう手に持っていた仕事をそこに置くと、沖田の傍まで寄っていった。
沖田の背後からその手元を覗き見ると、今度はたこ糸を先程開けた『ぐい飲み』の穴へ通している。
『ぐい飲み』に通すと、糸の途中に貝殻も同じように通した。
貝殻が一定の場所で固定されるようになのか、貝を通した後は糸を玉止めにして止めている。同じようにして、貝殻は糸の上に全部で三つ、つけられた。
先程『秘密』といった割りには、沖田は千鶴に本気で隠すつもりはないらしい。
千鶴が見ていても一向に構う様子もなく、手だけを黙々と動かしている。
糸を通し終わると、沖田は次に脇に置いておいた冊子を手にとってパラリと捲った。
表紙からパラパラと見るでもなく、見ないでもない様子で捲っていたが、あるところでピタリと手を止めた。
そしてその部分を、懐から取り出した小刀でサクサクと切り取った。
白い紙の真ん中に、何やらとても女性的で繊細な文字が綴られている。
沖田はその文字の部分だけを残すように、紙を細長く切り取った。
そして、その紙を先ほどの『ぐい飲み』に通した糸の先にくくりつけると「うん、やっぱり風に揺れる短冊の部分は大事だよね。」と
一人ごちながら微調整をしている。
千鶴はようやく、沖田が何を作っていたかわかると驚きの声をあげた。

「風鈴!沖田さん、それ風鈴ですか?」

千鶴は思わず身を乗り出して、沖田の手元をよく見た。
沖田は千鶴の方は見ないで「そうだよ。」とだけ言うと、最後に軒下に吊るす方の糸を輪にして結んだ。

「よし、出来た。」

ようやく沖田は千鶴の方を見ると、傍らでその様子をじっと見ていた千鶴の前で、今完成したばかりのそれを振って見せた。
瀬戸物の『ぐい飲み』の部分からはチリンという涼しい音はしなかったが、貝殻が当たってカラコロと何だか愉快な音をさせた。

「うーん・・・やっぱり寄せ集めじゃだめかな。いい音はしないみたい。」

沖田はそう言って肩をすくめてみせたが、千鶴にはその風鈴もどきの音色はとても心地いいものに思えた。
もう捨てるしかないと思っていた『ぐい飲み』がこんな形で生まれ変わるなんて・・・と、千鶴はきらきらと沖田に尊敬のまなざしを向けている。
沖田は沖田で、言葉とは裏腹にそれなりに満足のいく物ができたのか、それを手の中で揺すってはカラコロと音を鳴らしていた。

「あの、それどこかに吊るすんですよね?」

千鶴はそう尋ねると、沖田は手の中の風鈴を眺めながら、千鶴の期待を裏切るかのようにこう言った。

「どうしようかな。やっぱり本物を用意した方がいいかもね?」
「え!?せっかく作ったのに・・・どこかに吊るしましょうよ。ね、沖田さん!!」
「でも、この音聞いても涼しくならないじゃない。」

沖田は思いの外、千鶴がこの風鈴に興味を示した事に驚いたようで、嬉しい反面どこか困ったように眉根を寄せて苦笑いしている。
しかし千鶴は沖田の作った風鈴がえらく気に入ったようで、それはどこかで買って来た風鈴よりよっぽどいいものに思えたのだから、沖田を説得しようとした。

「そんな事ないです!!私、この音色好きです。カラコロ鳴ってて可愛らしいじゃないですか。沖田さんがいらないのなら、私にくださいませんか?」
「千鶴ちゃんはこれが欲しいの?」
「はい、私その風鈴が欲しいです♪」

千鶴はにっこり笑いながら沖田に強請ったのだが、沖田も元々千鶴にあげるつもりで作っていたのだから、譲らないつもりはないらしい。

「そんなに言うのなら、仕方ないな・・・これは君にあげる。ついでだから、ここに吊るしてあげるね。」

自分の作ったものを気に入ってくれたのが実の所は沖田も嬉しかったようで、沖田は立ち上がると千鶴の部屋の前の軒先にそれを吊るした。
千鶴は、どうして沖田が自分の部屋の前でそれを作っていたのか途中からはわかっていたから、その様子をくすくすと笑った。

「沖田さんって素直じゃないですよね。でも、私嬉しいです。」

少し背伸びしながら手作り風鈴を取り付けている沖田の後ろ姿を、千鶴はニコニコと見ていた。
沖田は千鶴に背を向けながら「何生意気なこと言ってるの?僕にそんな口利いたら斬っちゃうよ。」等と言うけれど、
その声色は穏やかでまんざらでもない様子だった。
今日はいい風が吹いている。
無事に千鶴の部屋の前に吊るされた沖田特製の風鈴からは、カラコロカラコロと、なんとも不思議で憎めない音が鳴っている。
千鶴はその音を聞きながら、部屋の中に戻って先程の針仕事の続きを再開した。
沖田は風鈴作りに使った道具を脇に寄せると、そこにゴロンと寝転がって、その愉快な音に耳を傾けていた。

「この着物を繕ったら、お茶を入れてきますね。この間お客様からいただいた水ようかん、ちょうど二つ残ってるんです。」

千鶴が嬉しそうにそう言うと、沖田は寝転がったまま千鶴の方へ顔を向けてやさしく笑っていた。


それから数日・・・。
土方が千鶴の部屋の前を通りがかった時、そこに不思議な物が吊るしてあるのに気がついた。
どうやらありあわせの物を使って作った風鈴らしい。
というのはわかったのだが・・・よく見ると、その先、風に吹かれてヒラヒラと揺れている短冊の部分に土方はいささか見覚えがあった。
・・・というか、それは見慣れた自分の字であった。
沖田が風鈴の先につけた短冊の紙は、土方の密かなる趣味の集大成である句集を切り抜いたものだったのだ。
土方はその風鈴の前でフルフルと震えると、その先についていた自分の句を勢いに任せてぶち切った。
そして、その後屯所中に土方の怒声が響いたのは言うまでもない。

「・・・総司ィィィ~~ッッッ!!!!!」

沖田の風鈴は、土方の怒鳴り声でかすかに揺れると、カラコロと鳴った。
それはまるで、沖田の笑い声のようでもあった。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~




  1. 2014/08/18(月) 23:34:56|
  2. 頂きもの
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  4. | コメント:5
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コメント

>ちょこさん
キャッー (^ω^*))((*^ω^) さっそくいただいて帰りました、ありがとうございますっ♪
いたずらっこ沖田さん、かわいいです~///
最近、私の中ではシリアス目の話が多かったので、余計かわいいよ~(*ノノ)
風鈴つるしてる沖田さんももちろん捨てがたいですけど、こちらの楽しげに作ってる沖田さんの方がこのSS特有な感じがするので///
本当嬉しくて、いつもにまして、こちらにご挨拶もしないまま速攻持ち帰ってしまいましたw←おい
小道具たちも細かく欠いていただいて・・・千鶴ちゃんも『え、ココで沖田さん何はじめたの・・・?』っていう気持ちがよく現れてますよね(*´∇`*)

それにしても、今になって思ったんですが・・・沖田さんの懐からよく物が出てくる話だな、とw
某、未来の猫型ロボットのポッケみたいに思えてきて、一人で笑ってましたwww
一君の懐に石田散薬が常備されてるのと同じくらいの勢いで、沖田さんの懐には豊玉発句集が常備されてる気がしますwww

次も何か書けましたら、またよろしくお願いしますヽ(=´▽`=)ノありがとうございました~。
  1. 2014/08/19(火) 09:20:44 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #EYMZMP9E
  4. [ 編集 ]

お見事でした。

こんばんは、ゆゆき様、ちょこ様、小萩です。
風鈴のお話、ちょこ様が見事にイラストで表現して
下さって、一層、ゆゆき様のお話が楽しいものに
なりましたね。お二人の息の合ったコラボ、お見事でした。

いや〜総司の懐に豊玉発句集、一さんの懐に石田散薬、と。
良いですね。それ。土方さんも、あまりにも総司に発句集
頻繁に持ち出されるので、お部屋にもう隠し場所が無いん
でしょう。セキュリティの甘さっていうより、不可抗力
ですね、これは(笑)。本当に楽しかったです。また
ネタが降って来たら、是非書いて下さいね。
  1. 2014/08/19(火) 19:50:43 |
  2. URL |
  3. 小萩 #-
  4. [ 編集 ]

相乗効果で素敵な仕上がりに…

ゆゆき様 、こんばんは。みおです。

ゆゆき様の素敵SSとちょこ様の素敵イラストが合わさってより一層素晴らしい作品に(●´ω`●)

土方さんの部屋のセキュリティー、たしかに心配になりますよね(^.^;
甘過ぎだろっていうww

また次回作楽しみに待ってます!
  1. 2014/08/19(火) 22:28:01 |
  2. URL |
  3. みお #-
  4. [ 編集 ]

ゆゆき様♪

イラストお受け取りありがとうございましたー
イタズラっ子の総ちゃん、他の方からも好評頂き、ゆゆきさんにも気に入ってもらえたようで良かったです^^
こんな表情をさせてやれるのは、沖田さんくらいのものですからねー
それにしても、沖田さんの懐には豊玉発句集、一君の懐には石田散薬常備とはwww
他の人はどうなんだろう、と考えてたら、原田さんはどこにも入れる場所がないよねえ、と気がつきました。
財布すら身につけられないのでは?
遊びに行く時、現金をお腹のさらしにでも挟んであるのかと、ちょっと笑ってしまいましたw

ではでは、次回作、楽しみに待ってますねー♪
  1. 2014/08/20(水) 09:34:38 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

みなさま、こんばんわ(*´∇`*)
突発的に書いた話だったんですが、なんだか好評のようで嬉しいです。
いつも私の思い描いている以上のイラストをちょこさんが描いてくださるので・・・恥を偲んで感想から捧げモノに昇格させてもらってよかったです///
これだから、ちょこさんに捧げるのをやめられないのです///(*ノノ)

思わぬところで、土方さんの部屋のセキュリティー問題が勃発してますねwww
沖田さん避けに、簡易的な対策ですが葱といっしょにおいておけばいいんじゃないでしょうかwww(-m-)ぷぷっ
あ、ますます沖田さんを刺激しちゃいますかね(-m-)ぷぷっ

左之さんどこにも入れるところがない・・・?ふんど・・・いえ、なんでもありません///
よく時代劇見てると、博打を打つシーンで上半身裸の男の人が、首からお守り袋みたいなのぶら下げてて、そこからお金出てきますよね。
・・・って、左之さんそんなの身につけてないですが・・・あっ!!
おなかの傷のところがパカっと開いて、色々しまえるんですよ。ドラ●もんのポケットみたいに(-m-)←おい
うーん、そうですねぇ・・・あっ、粋な男は、宵越しの金は持たないんですよ、きっとヽ(‘ ∇‘ )ノお酒飲んだお勘定も、「屯所に取りに来てくれ」みたいなツケ払いで。
これで解決ですね★←え、どこが。

ではでは、また何か書けるように妄想に勤しみますヽ( ´¬`)ノ
  1. 2014/08/27(水) 00:38:41 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #EYMZMP9E
  4. [ 編集 ]

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