皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「風に青む」

風のなごりに」のまそほさんからの頂き物です。

前作「あおち風」の続編にあたります。
私が前回描いたおまけ挿絵をヒントにできあがったお話だそうで、光栄です^^

あの後、突っ走った斎藤さんはどうしたのか、倒れちゃった千鶴ちゃんはどう思ったのか―――
色々気になっていたことが、このお話ですっきりして、ほんわりとした気分になりました。

そんな、これがやっぱり斎千テイストだよね、というお話は続きからどうぞ♪



挿絵は感謝を込めて、まそほさんに進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




風に青む



 思い乱れる、とは今の斎藤一のような状態を言うのだろう。
 人知れず、彼は悩んでいた。


 先だって、斎藤は密かな想い人である雪村千鶴に、狼藉をはたらいてしまった。
 発端はと言えば事故だったのだが、事に乗じて彼女を辱め、あげくの果てには気絶にまで至らしめたのだ。
 屯所の庭の一角という場所で、斎藤の行状が誰の目に留まることもなかったのは、幸運だったとしか言いようがない。
 意識を失くした千鶴を抱えて屋内に入ってからを思い出せば、いまだに冷や汗がにじむ。


『千鶴、どうしたんだ!?』
『なんだ、具合が悪いのか?』
『ってか気絶してんじゃねえかよ、千鶴ちゃん!』
『え、ひょっとして一君がなんかしたの?』


 ──特に最後の一言には。
 このところの諸々で不機嫌な彼が、うさ晴らしとばかりに絡んでくるのをいなしてかわしはしたものの、どこまでごまかしきれたのかは自信がない。


『おい、てめえら! 殺るか殺られるかってぇやり取りが仕事の新選組幹部が、人ひとり目ぇ回してるってぐれえでがたがたぬかしてんじゃねえ!』


 沖田以上に不機嫌を極める土方の一喝でその場は収まり、千鶴はとりあえず部屋に寝かせて様子見となった。
 誰が付き添うかでまた揉めかけたが、なんとか斎藤が看るという形に持ってゆくことができた。他の面々に巡察や他行の予定が入っていたのも、幸いした。
 その後、意識を取り戻した千鶴に謝罪すると、彼女は笑顔で受けて入れくれた。
 斎藤への非難や抗議の言葉を、一度たりとも口にすることなく。

『忘れることにします。だから、今までどおりにしてください』

 そうして彼女の望むとおり、以前と変わりなく接するようにしているのだが──果たして、それだけで赦されていいものだろうか。

(それでは、俺が良い思いをしただけではないのか)

 男の戯れや気まぐれの類だったなどとは、間違っても思われたくない。
 行為に至るまでの想いがあったのだと、知ってほしいと思う。
 だが、それは──「情を移すな」「女と見るな」──すなわち、土方の命令に、背くことになる。

「…………」

 隠蔽の意図などはなかった。
 土方には後でつまびらかな報告をして処断を受けるつもりでいたのだが、「大ごとにはしないでほしい」と当の千鶴に頼まれては、否とは言えなかった。
 確かに、男女の間で何事かがあったとして、露見して傷になるのは女の方だろう。
 ましてや新選組における千鶴の立場は、複雑で難しいものだ。非は斎藤にあると言い立てても、千鶴までが咎められかねない。
 それに今この時期にこれ以上、土方の心労を増やすような報告をしたくない、というのもまた、斎藤の本音だった。

(……未熟にも程があるな)

 呵責が、胸を焼く。
 『今までどおり』に振る舞う千鶴の、声を聞く度、顔を見る度、このまま、うやむやの内に済ませて良いものか、と思う。
 秘めているつもりだった。
 明かす気はなかった。
 けれどもいつからか胸に抱いた想いは、斎藤にとってまごう方なき真実のものであるから。

 あの時、斎藤がどれほどの愛しさをもって、彼女を抱きしめたのか。
 どれほど触れたいと願って、その唇に触れたのか。

 彼女は知らない。
 伝えることは──できない。


   *  *  *  *  *


 千々に乱れる、とはこのような心持ちを言うのだろうか。
 雪村千鶴は、戸惑っていた。


 先日、偶発的に斎藤と唇を触れ合わせるという出来事があってから、どうしても彼を意識してしまう。
 謝罪してくれた斎藤には、「忘れる」と約束をしたのに。「今までどおりにしてください」と、頼んだのは自分なのに。
 あの時感じた熱が、唇から消えない。
 意識すまいとすればするほど、鮮明に思い出してしまう。

(斎藤さんには、気に病まないでくださいって言ったのに。私の方がこんなのじゃ、だめだよね)

 くり返し思い返し、くり返し溜息をつく。
 感じた熱さも、くり返し。

 これまで──「俺が留守の時に何かあったら斎藤を頼れ」──土方に言われたからというだけでなく、何ごとかがあって誰かの手を必要とする時、千鶴はまず斎藤を頼った。
 感情のうかがえない言葉や表情は冷然として見えるが、希望に添えるかはわからないと言いながらも、斎藤は千鶴の話にいつもきちんと耳を傾けてくれ、対処してくれた。
 土方の言葉を斎藤に伝えてからは、斎藤の方から声をかけてくれることも増えた。
 千鶴を気にかけてくれるのは斎藤にとっては隊務の一環に過ぎない、それは充分に承知していた。
 だがそこに斎藤なりの気遣いや心配りを見て、その人となりに触れる度に、斎藤の心の内をもっと知りたいと思うようになっていったのは────。

(斎藤さん……)

 まだ恋と呼べるほどの強い想いではない、ささいなことで揺らぐほのかな好意が、熱を帯びるのを持て余す。

 自分がなぜ新選組の屯所にいるのかを、忘れたことはない。
 「副長の命令」「新選組の隊士ではない」──そんな言葉で、斎藤は事ごとに一線を引いて隔てを置くが、その理由もわかっているつもりだ。

 千鶴が斎藤と今以上に親しくなりたいと望むことは、斎藤に不都合を生じさせるのではないだろうか。
 恋情を抱いて斎藤に執心し、それが目に余ると映れば、また軟禁の身に戻されることもあるかもしれない。隔離され、斎藤の姿を目にすることすら、叶えられずに。

(『今までどおり』でいるしかないんだ)

 斎藤の傍で過ごしたいと思うなら、やはりそれしかないのだ。
 目も耳も口も記憶も、どんな想いも、封じて。


   *  *  *  *  *


 所用を済ませ、西本願寺への帰路をたどる道すがら、斎藤は通りがかった店から若い男女の二人連れが出て来るところに行き会った。
「嬉しいわぁ。おおきにえ?」
 細い手をひらめかせながら、娘が笑顔で連れの男に礼を述べている。
 その様子を目にして、斎藤の脳裏に先だっての一件がよみがえる。

 事が起こる直前まで、千鶴は洗濯をしていた。
 二月の風の中で延々と水仕事を続けていた彼女の手は、触れてみると氷のように冷たくなっていた。

 ──思い返して、斎藤は自責の念に襲われる。
 あの時、やはりかつぎ上げてでも、すぐに自室に戻らせて休ませるべきだったか。
 しかしそれはそれで、別の騒乱を招いていた気もする。
 今さら悔いても仕方がないのだが、斎藤にはもうひとつ、心残りがあった。
 そうまでして仕事を遂行させた彼女に対して、ねぎらいの言葉ひとつ、かけてやらなかったのだ。
 目の前の娘よりもっと小さくて華奢な、千鶴の手を思い出す。

 何か、してやれることはないだろうか。
 自由のない身を嘆くこともなく、強いられた男装にも黙して従い、新選組の役に立ちたいと骨身を惜しまず働いてくれる彼女に。
 斎藤の愚行を笑って赦してくれた彼女に、──せめて、あのように身を飾るくらいのものなら。

 楽しげに言葉を交わしてすれ違い行く二人を横目に、斎藤は店の中へと足を踏み入れた。


   *  *  *  *  *


 西本願寺の境内から、門の向こうにその人物の姿を見て、千鶴は胸を高鳴らせる。
 外出していた者に頼むなら誰でも同じ、と自分に言い聞かせながら、彼の元へと向かう。
「斎藤さん! あの、お帰りになったばかりのところを大変申し訳ないんですが、斎藤さんはこの後、何かお仕事がおありですか?」
「副長への報告があるが。どうかしたのか?」
「風邪のお薬を調合していたのですけど、材料が足りなくなってしまって。土方さんに申し上げたら『適当に誰かつかまえて買いに行って来い』とお金はいただいたんですが、屯所におられる方は皆さんお手すきではなくて……」
「わかった。副長への報告を済ませた後に、俺が同行する。ここで待っていろ」
 足早に去って行く背中を見送って、千鶴は小さく息を吐く。
 特に斎藤を待っていた、というわけではないのだが、一緒に外出できるのは単純に嬉しい。
 ここしばらくは隊士たちの動きがあわただしく、特に組長は不在も多かった。
 斎藤とも数日顔を合わせないこともあったので、よけいに心が弾む。

(やっぱり近藤さんがお留守だからなのかな)

 局長の近藤は先月から広島へ出張している。その前の長州訊問使に同行しての西国行きから戻って、ふた月も経たない内のことだ。参謀の伊東もまた近藤に同行して不在なので、現在屯所には組長より上役は土方しかいない。
 元々がいつ休んでいるのか、本当に休みを取っているのかさえ疑わしいほど多忙な副長に、局長と参謀の代行職務が増えるのだ。山南の助力はあっても、彼の存在は秘められたものであるため、表向きのことはやはり土方にかかってくるだろう。
 薬の材料の不足を告げに行った時の土方の様子を思い出し、千鶴は遠い瞳になる。
 正に『鬼の副長』の名に違わぬ、鬼気迫る形相をしていた……。
 そう言えば、頼まれてお茶をある部屋に持って行くと、文机に向かっていたのが永倉で、失礼だとは思いつつ盛大に驚いてしまったこともあった。
 細かい分担などはわからないが、仕事の振り分けは当然組長にもあるのだろう。
 原田は酒量が減り、藤堂は口数が減り、家事雑事を共にしてくれる井上は、外出が増えた。
 沖田はひたすら機嫌が悪い。

(斎藤さんも、きっとお忙しいのだろうな)

「待たせたな」
 再び眼前に現れた斎藤に物思いを破られ、千鶴は目を瞬かせる。
「いえ」
「必要なのは材料か。木薬屋でよいのか?」
「はい。すみません、お疲れのところを」
 すでに外へ向かって歩き出している斎藤を追うように、千鶴も歩みを進める。
 追いついて、並んで門をくぐり抜けると、斎藤が言った。
「薬の補充は、松本先生の指示なのだろう」
「はい。先生に書いていただいた処方を見て、私が調合しています」
 寒暖差の激しい時節柄、風邪気味の隊士が増えている。
 他の病で使う者があることもあり、特に咳止めは減りが早い。
「隊士に飲ませる薬の材料調達に同行するのは、隊務の内だ。気兼ねはいらぬ。それに山崎のいない今、医術に関してはあんたの働きに頼るところが大きい。……あんたはよくやっている」
 新選組の医事と薬事を担う山崎は、昨年の近藤の西国出張に随行して以来、監察方としての任務で引き続き当地に留まっている。
 医術の心得があるからとその方面を任されてはいるものの、どれほどのことができているのか自信を持てないでいた千鶴は、思いがけない言葉に喜びを噛みしめる。
「あ、ありがとうございます」
「事実を言ったまでだ」
 甘口や世辞を言うような人間ではないと知っているから、なおさら心嬉しかった。


 生薬を商う木薬屋で必要な材料を取りそろえ、後は戻るだけという段になって、ふいに斎藤が言った。
「屯所に戻る前に、あんたに話したいことがある」
 硬い声に千鶴は緊張を覚えるが、否とは言えない。
「少し歩くが、構わぬか?」
「はい」
 西本願寺からは遠ざかる方向へ、荷物を携えて斎藤は無言で歩く。
 千鶴もまた斎藤に従い、ひと言も発することなくついて歩く。
 そうして堀川沿いの町家の途切れるあたりまで来たところで、やっと斎藤が立ち止まる。
「話というのは……この間のことなのだが」
 唐突な切り出しに、千鶴の胸が早鐘を打ち始める。

(斎藤さんも、まだ気にしていらっしゃるんだ……私が、変な態度をとってしまったりするから)

 そう考えると返す言葉を見つけられず、千鶴は黙って、斎藤の言葉の続きを待つ。
「やはり、俺があんたにしたことは、謝罪の言葉だけで赦されるものではない」
「それは……」
「これを受け取ってくれ」
 小さな紙包みをぐいと突き出され、千鶴はとっさにそれを両手で受け取る。
「詫びの品としてふさわしいかどうかはわからぬ。これで済まされるとも思わないが……」
 緊張した面持ちで告げられ、千鶴は手の中の包みに視線を落とす。
 見るからに小さなそれは、紙の上からでは何が入っているのかまったく見当もつかない。
「あの……ここで開けてみてもいいでしょうか?」
「ああ」
 手のひらからこぼしてしまわないよう、細心の注意を払って、千鶴は包みを開いてゆく。
 出てきた物は────。
「ゆびのわ……?」
 指の輪。
 指にはめる、金物の輪である。
 銀製の、幅は二分(*約6ミリ)ほどだろうか。
「買い求めた店の主が言うには、これがまだゆびがねと呼ばれていた頃に長崎に入ってきた西洋の渡来品を模したものだそうだ」
「買い求めた……って、斎藤さんがわざわざ買ってくださったんですか?」
「だから、詫びの品だと言っている」
 驚いた千鶴が顔を上げると、斎藤は不機嫌な声で言って目をそらすが、その頬は少し赤い。
 詫びであれ何であれ、斎藤が千鶴のためにと買ってくれた物なら嬉しいに決まっているが、しかし──なぜ、指の輪なのだろうか。
 江戸でも京でもたまに見かける装飾品だが、その昔は遊里の女への所有の意味を込めた貢ぎ物にされたりもしていたものだ。
 深い意味はないのかもしれないが、できれば斎藤がこの品を選んだ理由が知りたい。
 疑問が顔に出てしまっていたのだろう。
 少し声を和らげて、斎藤が尋ねてくる。
「輪の内側に、文様があるのはわかるか?」
「あ……はい」
 表はつるりと磨かれた銀の輪の内に、何かが刻まれているのを確かめ、千鶴はうなずきを返す。
「そこに彫られているのは異国の言葉なのだと、店の主は言っていた。たまたま入手した元は金の指の輪を、文様もそのままに写して銀で作らせたのだと」
 千鶴が江戸にいた頃に見た指の輪は、べっ甲でも銀でも平打ちのものだけだった。表側であれ裏側であれ、文様の入ったものは見たことがなかった。
「この文様、文字なんですか?」
「ああ」
 一度言葉を切ってから、静かな声で斎藤が告げる。
「まことの青、という意味らしい」
「まことの、青……」
 くり返してつぶやき、大きく目を見開いて、千鶴は斎藤を見つめる。
 言いようのない想いが、胸を締めつける。
 斎藤が、凪いだまなざしを千鶴に向けて言う。
「……受け取ってくれるだけで構わぬ」
 平らかな声に、千鶴は唇を噛み、両手でそれを強く握りしめる。

 触れ合わせた唇の熱さの意味を、問うようなことはしなかった。
 機会は斎藤が謝罪してくれた折にもあったのかもしれないが、本意を知ろうとして遠ざけられることを、千鶴は何よりも恐れていた。
 けれど詫びの品に言寄せていても、斎藤が【まこと】の名のつくものを、かりそめにも寄越すわけがない。
 【誠】の御旗に命を懸ける斎藤にとって、生半可な気持ちであるはずが、ないのだ。
 細く小さなこの銀の輪に託された斎藤の心が、どれほどのものなのか────。

 わき上がる感情を呑み込んで、固く握ったこぶしを開いて、千鶴はもう一度、輪の内側の文字に視線を落とす。

 まことの、青。

「……わかりました」
 再び視線を上げて、千鶴は斎藤の瞳をまっすぐに見る。
「大切にします。……人前に出すことは、できなくても」
 斎藤が口の端をわずかにゆるめ、微笑を見せる。
 その表情に、千鶴もまた心を決める──胸の奥深くで抱きしめる想いは、望みなく秘めるしかないとしても。
 千鶴は左手に目を落とす。
 はめるなら、こちらがいい。
 右手で指の輪を持ち直し、薬指を通す。
「似合いますか?」
 そう言って自分の腹の前で手のひらを下に向けて、指をいっぱいに伸ばして広げる。
 千鶴の言葉を聞き、向かい側から斎藤がのぞき込むように顔をうつむけたところへ、伸びをして顔を近づける。
 押しつけただけの不器用な唇は、それでも過たず斎藤の唇を捉える──息を呑んだ斎藤が身を引いて、短い触れ合いが終わるまで。
 斎藤が物言うよりも早く、千鶴はうわずった声で言い放つ。
「こっ、これでおあいこですからっ!」
 羞恥に耳までを赤くして、千鶴は斎藤に背を向ける。

 あの時、自分は気を失ってしまったのでわからないが、斎藤もやはりこんないたたまれなさを感じたのだろうか。
 精一杯の勇気を出してはみたものの、気恥ずかしさで顔を合わせていられない。
 ただ、斎藤に触れること、触れられることに不快や嫌悪を感じたりはしないと、それだけは伝えたかった。
 千鶴が指の輪を受け取る真の理由までは、伝わらなくても。

 少しの間を置いて、斎藤の低く小さなつぶやきが聞こえた。
「…………不覚っ」
 振り向かずに笑う千鶴のうなじを、夕風がなでて行く。肌寒さに首をすくめると、斎藤の気配がすぐうしろにやって来て、千鶴は背中にそのあたたかさを感じる。
 言葉は、なくても。

 斎藤と出会ってからの日々がどんな形で終わりを迎えるのか、それがいつなのかは、わからない。
 千鶴と斎藤を取り巻くあらゆるものに、確かなものは何ひとつとしてない。
 それでも、すぐ傍らに彼の存在を感じ、同じ空の下で、同じ風に吹かれている。
 時の移ろい、世の流れ、先のことなどわかるはずもないから、今こうしていられることが、すべてだと思える。

「……ありがとうございます、斎藤さん」
「詫びだと言っている。礼は不要だ」
 淡々としているようで感情の見え隠れする声に、また笑って、千鶴は言葉をつぐ。
「まことの青……どんな色なんでしょうか」

 藍、紺、縹、瑠璃、水、空。
 世に青の色は様々あるが、千鶴にとってのその色は────。

 他の色に染まり始めた空へ向けて、千鶴は左手を広げてかざす。
 指の隙間からこぼれる暮れ方の陽に、銀の光がきらめく。


 ──輪の内に刻まれた文字は『True Blue』。
 志操堅固、忠実な、色あせない青色、などの意味を持つ。
 この指の輪が、西洋ではポウジーリングと呼ばれ、夫婦でつけるものであること。
 日本においても後の世には、指輪を渡す行為そのものが求婚の意を示すようになることなど、この時のふたりには知る由もないが──


カット469風に青む



 千鶴の左手の薬指に、斎藤の【まこと】がきらめく。
 まぶしくて、千鶴は目を細めた。


  1. 2014/06/25(水) 19:24:42|
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  1. 2014/06/26(木) 00:01:19 |
  2. |
  3. #
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まそほ様♪

イラストお受取りありがとうございます^^
この場面で良かったのかな~と思っていたので、ほっとしました。
そちらのサイトでの改稿UP楽しみにしています。

それにしても、そちらもこの不安定な気候にやられていたようですね。
くれぐれも今後も体調にはお気をつけて。
そしてできるだけ長く一緒に薄桜鬼を楽しみましょうね(^▽^)/
  1. 2014/06/27(金) 09:53:56 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
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