皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「木蓮の涙」

六花書房」のゆゆきさんからの頂き物です♪
※今回は沖田さんの死ネタです。苦手な方はご注意を。

沖田さんが変若水に手を出さなかった場合、それはどうしてだったのか―――
千鶴ちゃんの存在が、決して変若水への切っ掛けにはならないというお話です。
でもそうなると、もう辿る運命はこれしかない訳ですよね(>_<;)
どちらにしても、沖田ルートは切なさと切っては切れないのですが・・・

そんな切なさ満載ですが、ゆゆきさんからちょっとしたおまけのお知らせが最後にあります。
読まれた方はこちらもどうぞ。
うーん、それにしても、よくこんな事、この長さのお話でやりましたね(^^;

では続きからどうぞ。



挿絵は感謝を込めて、ゆゆきさんへ進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。



木蓮の涙




愛なんて言葉は知らなくったって、私にとってあなたが特別だって言う事はすぐにわかったの。

息を切らせて逃げ惑ったあの日、震える私を助けてくれたのは、他の誰でもないあなただったから。

ただ、最初にあなたに抱いた気持ちは決して良いものではなかったけれども。

口を開けばいじわるな事ばかり言うのだから、それも当然ですよね。

照れ隠しだった・・・と言えば、許されるなんて思ってるんですか?



あなたは冗談ばかり言うけれど、私はそれが冗談だって気付かないまま、いちいち翻弄されてばかり。

いたずらで何度泣かされた事かわかりません。

だけど、それでも。私は沖田さんを憎むことなんかできなかったんですよ。

くれたのは、そんないたずらやいじわるに隠した優しさだって気づいてしまったから。

手に触れれば、目を見れば、沖田さんがどんなに隠そうとしたって私にはすぐにわかっちゃうんです。



   ~ 木蓮の涙 ~





ここ数日、沖田さんはますます弱ってきていた。

飲んだり食べたりする事が急激に難しくなってきたのだ。

無理をして私の前では平気なそぶりをしているのが、尚痛々しくて。私は心苦しくなる。伏せる事が増えたので布団で

眠っていると思っていたら、沖田さんは今だけは寝床からいなくなっていた。薄く障子を開けて

覗きこんだ部屋の中には、いるはずの姿がない。私は焦って部屋に滑り込んだ・・・が、やはり部屋の中にいない。

探さなきゃ!あんな体で沖田さんは一体どこへ・・・と思ったけど、

さもありなん。沖田さんはすぐ隣の部屋にいた。

痩せて幾分小さくなった背中が、隣の部屋の文机に向かっているのが見えた。

消えゆく自分を書き留めるかのように、そこここに紙が散乱していた。

ガタッと音を立てて沖田さんが急に文机に倒れ込んでしまったので、私はひどく慌てた。

「あっ!沖田さん、大丈夫ですか?無理しちゃだめです!!」

「な・・・んでもないよ。ちょっと目眩がしただけだから。

大したことじゃないんだから、君はあっちに行ってなよ。」そう言うと、私から文机の上

を見えないように手で隠した。

さりげなく落ちている紙を拾い集めて目を落とすと、どれも沖田さんの大切な人に宛てた手紙だった。

書き損じの中に混じって、封をしてある文が何通か見えた。近藤勇殿、土方歳三殿、沖田ミツ殿・・・

静かにそれらを拾い集めて、そっと沖田さんの文机の脇に置いた。

手つかずの紙がまだ何枚か机の上に乗っているのが見えた。

今、沖田さんが書こうとしている文の相手は誰だろう?

瑠璃色の文鎮が留める紙の先頭をそっと覗き見る。

「あっちに行ってって言ったよね?聞こえなかったの?

なにが書いてあるか、人の手紙を覗き見るなんて悪趣味だってわかってる?」沖田さんは呆れたように私に言った。

確かに人の手紙を覗き見るなんて、ちょっとした興味本意だったと言っても決して褒められた行動ではなかった。

「沖田さん、ごめんなさい・・・そんなつもりじゃ・・・。いえ、本当は

良くない事だと分かっていたのに、気になってしまって・・・。」

   確かに自分が悪かったと思ったので素直に謝ると、沖田さんは私の言葉にひっかかるものがあったようだ。

「ん?気になったって、何が?僕が手紙なんか書いてたら可笑しいって事?」私は頭を横に振って否定しながら、

「出来たらそれが私宛だったらいいなぁ、なんて浅はかな事を思ってしまったんです。本当にごめんなさい。」

「いつも一緒にいるのに、僕からの手紙が欲しいの?君って本当に変な子だね。」と、沖田さんは首を傾げ

るけれど、私からすれば全く変な事を言ってるつもりはなんてないのだ。

いつまでも一緒になんていられない。そんな事、沖田さんの方が感じているはずなのに。

尽きる命を悟っているからこそ、こうして皆さんに宛てた手紙を書いているんでしょう?

まだ生きたい・・・誰よりもそう思っているはずなのに、運命はひどく残酷だ。

できる限りの事をしてあげたいのに、沖田さんは私に甘えることはしない。

もっと頼ってください。もっと私を必要として・・・。

いつもそう願っているのに、結局私は何も出来ないまま、死に行く沖田さんを歯痒い気持ちで見ているしかできない。

つい、考えが暗い方へ暗い方へと傾いてしまう。

「まあ、君が欲しいって言うのなら書いてあげてもいいよ。

でも、僕だけが書かされるのは不公平だと思わない?」

もし・・・ううん、正直な所、明日にはどうなっているのかわからない沖田さんだから、

そばにいる間に、彼が生きている間に・・・言葉を交わせる間に少しでもたくさんの事を彼からもらいたかった。

馬鹿な女だと他人は言うかもしれない。私は死ぬとわかっている人に恋をして、身を尽くして、そして欲している。

にこりと笑うと、沖田さんはこんな提案をしたのだった。

「一緒に書いて。僕は君に書くから、千鶴ちゃんは僕に手紙を頂戴。」沖田さんは私にいじわ

るをする時によくしたように、唇の端をにぃっと持ち上げて口を三日月にした。

突拍子もない・・・というわけではないけど、突然私からの手紙が欲しいと言われて、私も戸惑ってしまった。

「いったい私は何を書けばいいです?」思わずそんなとんちんかんな事を沖田さんに聞いてしまった。

「づ(ず)るいよね、そんな質問。何を書くかは自分で考えなきゃ。でも

適当に書いたりしたら許さない。その時は千鶴ちゃんの事、斬っちゃうよ。」

ただでさえ、何を書いていいのかわからないのに、沖田さんはそんな脅し文句を言う。

あの身体で私を斬るなんて今では到底無理なのに、沖田さんは相変わらずそんな言葉を口にした。

泣きたくなるのは何故だろう・・・?それがもはや虚勢だとわかりきっているからだろうか・・・。

たくさん意地悪な事を言われた私だけど、沖田さんの「斬っちゃうよ」は殊更特別に感じる何かがあった。

初めて会った時も言われたっけ・・・。

嘘はつかない沖田さんだから、最初の頃は本当に必要とあらば私を斬ることも辞さなかったに違いない。

そんな二人の関係が変わったのはいつの頃からだったんだろう?

束の間、沖田さんに惹かれはじめたあの頃に思いを馳せた。





きっかけはいつだっただろうか・・・自分の、沖田さんへの想いに気付いたきっかけは。

だって、普通に考えたら到底好きになるなんて考えられない人だったから。

ねぇ沖田さん、あなたは私の気持ちに気がついてくれていましたか?





ここ数日、屯所内はなんだか慌しい。大捕物があったから当然なのかもしれないけれど、

幸か不幸か、新選組の名前は京の街でも知らない人がいないほど大きな組織になっていた。

六花が空一面に咲いていたあの時、私は忙しく手を動かしながらも一人物思いに耽っていた。

「はぁ・・・寒いと思ったら、雪かぁ・・・これからはお洗濯物が辛いな。それにしても・・・」

お父様は未だに見つからない。

   兎にも角にも、この目的のために私はここにいるのに、その目的を果たせる日は一向に訪れていなかった。

きっとここで頑張っていれば、いつかはお父様に会える。必ず新選組の皆さんが探し出してくれるはず。

ざわざわと胸に湧く嫌な予感を無理やり押し込め、私はひたすらに自分のできる事に専心していた。それなのに・・・

理由なんかないんだろう・・・きっと、彼は私の事がただ気に入らないだけ。

にこりと笑う顔だけはまさしく子供のように人畜無害な装いをしているけれど、

   そこから発せられる辛辣な言葉の数々に私はいつも戦々恐々としていた。

「いつも洗濯ご苦労様。千鶴ちゃんはこんなに寒い日でもさぼったりしなくて、本当に真面目でいい子だね。」

と仰って下さる言葉の通りであれば、私がこんなに怯える必要はない。

自然、私は彼に対して距離をとろうと身構えてしまっていた。

刺す様な水の冷たさに耐えながら、黙々と手を動かしていたのだけど、そこに沖田さんの手がにゅっと伸びてきた。

後々まで、私にはこの時どうして彼がこうしたのかわからなかった。

「はぁぁ・・はぁぁぁぁ、千鶴ちゃんの手、氷みたいに冷たいんだけど!」沖田さんは私の手に息を吹きかけている。

何が起こったのか一瞬わからなかった。一瞬どころか、私自身が凍ってしまったかのように私は動けなくなっていた。

「頑張るのはいいけど、君ってば無理しすぎ。手だってあかぎれだらけじゃない。

   一応女の子なんだから、少しは気にしなよ。」

「ご・・・ごごご・・・御用件はなんで・・・すか?」私は素っ頓狂な声でそう聞くのが精一杯だった。

「可愛くないね、さっきまで僕の事無視してたくせに。」

肩越しに沖田さんの声が聞こえてくるのは、私をその大きな腕の中にすっぽりと収めてしまっていたからだ。

   私はまるで、背後から沖田さんに抱きしめられているような状態になっていた。

え・・・えっと・・・ななな、何でこんな事に!?雪の降りしきる中、私の頭の中だけは沸騰寸残になっていた。

 
カット88

 

手紙に綴りたいのは私のどんな想いだろう?沖田さんがくれる手紙には何を書いてくれるのだろう?

初めて彼の脆い一面を見たときに、私は彼に急速に惹かれていった。そしてわかりにくいけど優しい一面にも・・・。





「ほら、そっちの手も貸して!」沖田さんは今掴んでいる反対側の手も出せと言う。

ほんの少し躊躇ったものの、私は言われるがままにもう片方を差し出した。

遠慮した所で、沖田さんがそれを素直に聞き入れるはずがない。

   最終的に私はきっと両手を差し出さずにはいられない状況にされるだけだろう。

「ん・・・いい子だね。いつもこれくらい聞きわけがよかったら、僕も苦労しないのに。」

黙って聞いていれば、言いたい放題言われている・・・。

   素直じゃなくて苦労しているのはこちらの方だと言ってやりたかった。

ああ言えばこう言う、こう言えばああ言う・・・という感じで、沖田さんには口で勝てた試しがない。

何をどう言っても、例えそれがどんなに理不尽な事であっても、最終的にはこちらが言いくるめられてしまう。

「頼んだ覚えはないですけど・・・。」それでも何か一言言ってやりたくて、聞こえない程小さな声でそう反論した。

沖田さんが包んでいる私の手に視線を落とした。

水仕事ばかりしているせいか、確かに私の手はあかぎれだらけで、女の子の手とは思えないほどがさがさだった。

「ツレないなぁ、僕が君に何かしたって言うの?千鶴ちゃんは僕の事、嫌いなんだね。」

   しれっと沖田さんは私の小さな抵抗を非難した。そう言われては、私は沖田さんの言葉を否定する他はない。

「め、滅相もないです。それに、私が嫌いというより、沖田さんの方が私の事をきら・・・」

   そこまで言うと、急に胸をぎゅうと鷲づかみにされたように苦しくなって、その続きは言えなかった。

「手・・・手を離してく・・・ださい。もう、充分・・・です・・・から。」

たぶん沖田さんは私の事が嫌いなんだ・・・それは十分わかっていた筈なのに、私はそれを言葉にするのが怖かった。

突然胸に沸き起こった苦しい気持ちを沖田さんに悟られたくなくて、私は彼の腕から逃れようともがいた。けれど。

沖田さんは私を逃がすまいと、肩を抱く手に一層力を込めた。そして。

「嫌だ。」沖田さんは私の耳元でポツリと呟いた。

「離さない・・・離したくない。」そう呟く沖田さんの声が震えてい

るのは、今日がこんなに寒いせいだろうか・・・当時の私にはそんな風にしか考えが及ばなかった。





後になれば、この時の沖田さんは・・・沖田さんこそが混乱していた事を私は知るのだ。

   でも私はこの時はまだ、何もわかってなかった。

密かに沖田さんが抱える苦悩も、秘めた決意も、そして私に救いを求めた事も・・・何もわかってなかった。





「冷えるね・・・今日は本当に寒いよ。こんなに寒いんだから、こうしてくっついていた方が温かいでしょ。」

やけに明るい声でわざとらしく言った事が、さすがの私にも違和感を抱かせた。

「さ・・・さっきから、沖田さん変です。何かあったんですか?」

しかし、沖田さんは私の問いには答えてくれなかった。

「さっきから変なのは君の方じゃないか。そんなに慌てて、本当に千鶴ちゃんは面白いなあ。」

沖田さんはおどけた調子を崩さない。崩さないけれども、その声の奥底には何かに対する怯えを隠していた。

常日頃からいじわるされ続けた結果・・・と言えば何だか複雑な気持ちになるけれど、

   とにかく今日の沖田さんは何かが違ったのだけははっきりわかった。





無邪気な微笑の下には、一人では抱えきれないほどの重荷を隠していた。

今になればわかる・・・この頃、彼は自分の病気を自覚し始めた頃だったに違いないのだ。

できれば違って欲しいと願いながら・・・

   それでも、自分の身体を着実に蝕む異変にもはや目を瞑る事はできなくなっていたはずだった。

沖田さんは自分の病気と、そしていずれ迎える死と向き合わなければいけなかった。

理不尽だと、納得できないといくら嘆いても、今の医学ではこの病を治す術は皆無に等しかった。



あの雪の日の出来事から少し経って、私がその事を知ったあたりには、沖田さんはもう自分の心に

   整理をつけていたように思う。

現実を受け入れるしかないと頭でわかっていても、感情はそんなに簡単に割り切れるものではないはずなのに。

『ただ近藤さんのためにこの身を捧げる・・・残りの時間が多くても少なくても、自分にできる事はほんの少しだけ。

近藤さんは僕の全てだから・・・』そう告げた沖田さんの言葉には、もう迷いはなかった。





「い・・・いきなりこんな事されたら、誰だって慌てます!もう、本当に離して下さい。誰かに見られたら・・・」

のたくっては見るものの、私の力では到底抜け出せそうもなかった。

「恥ずかしいの?別に見られて困る事してないじゃない。

   僕は君の手を温めてるだけ。千鶴ちゃんは僕に温められているだけ。

ね?何も恥ずかしがる事なんかないんじゃないかな?それとも、君は何か見られて困る事があるの?

みんなに知られたらまずい事でもあるって言うのなら、離してあげなくもないけど。」

   そういうと沖田さんはますます私をぎゅっと抱いた。

どきどきと胸が高鳴ってしまうのは、沖田さんが無茶を言うせいだ。こんな所見られたら、困るに決まってる。

理由なんていくらでも考え付く沖田さんと違って、

   私は皆さんに問い詰められたらうまく答えられる自信なんかこれっぽっちもないんだから。

能面のように微妙な笑顔を浮かべながら、なんとか沖田さんにわかってもらおうとするけれど、一切相手にされない。

勝手な人・・・私の事をいつも苛めてからかってるくせに。

絶対、沖田さんが猫だとすれば、私は彼に追いかけまわされていたぶられて、

   最終的にぱくりと食べられてしまう鼠に違いないのに。

考えれば考えるほど、沖田さんの身勝手さに腹が立ってきた。

ふぅと大きく一つ息を吐いて、ちょっとだけ気合を入れた。

   痛い目には会いたくないけど、あまりにも目に余るから、どうにか一言言ってやりたい気持ちに

   駆られたのだ。覚悟を決めると、

首だけをくるりと沖田さんの方へ向けて、私は精一杯怖い顔を作って言った。

「沖田さんはいつも勝手です。そんな事ばかりしていたら、いつか罰が当たりますよ。」

神様がいるなら、こんなに悪い人を放っておくはずがない。私はそう思った。

煮る事も焼く事も私には叶いそうもない人なんだから、私は神様に頼るしかなかった。

よりによって、その罰が最悪の形で沖田さんに下されていたなんて事、この時の私には知る由もなかった。

罹病したのは私のこんな言葉のせいではないのはわかっているけれど、この時の言葉を私はずっと後悔している。



「そ・・うだね。うん、罰があたったのかも・・・ごめん。」突然しおらしく謝る沖田さんに私は拍子抜けした。

包み込んでいた沖田さんの大きな体から私は解放された。と同時に、一気に寒い冬風に晒された。

手からはみるみる沖田さんのぬくもりが失われていった。

やめて欲しいと確かに思ったはずなのに、彼が離れていく事が何故だか無性に寂しく感じて、私は思わず振り返った。

硝子球のようにどこまでも透き通って、それでいて何故だかとても虚ろに思える翡翠の瞳と目が合った。

抵抗して逆襲に合い悔しい思いばかり何度もしていたせいか、逆に素直に謝られるとどうしていいかわからなくなる。

特に、振り向き様に見た沖田さんがあまりにも、私が想像していた表情と違う顔をしていたから・・・。

傷ついた心が、その瞳の奥底に哀しそうに漂っていた。

初めて沖田さんの弱さを垣間見た気がして、私はどきりとした。

雪は相変わらずチラチラと降り続いており、しかし、いくら降っても地面に触れた瞬間には解けて消えた。

きれいな六辺の花は冷たいながらも人を魅了する。

   例えばそれは、春に咲く桜も同じ。一瞬だけの美しさだからこそ、人はより惹かれるのだろう。

すぐに解けて消えてしまう雪の花の姿に、私は何故だか沖田さんを重ねて見ていた。

銀色に塗りつぶされていく世界の中で、沖田さんが何故だかとても儚く、今にも消えてしまいそうな存在に思えた。





いつからだろう?君の事を自然と目で追うようになってしまったのは。

悔しい事に、こんなにも気になっているのは僕の方だけらしい。

鈍感そうだものね君は、と頭ではわかっていても、あまりの鈍さについ意地悪をしたくなる。

明確な理由を探してみても、どうにもそれはわからなかった。

   けれど、人が誰かに惹かれる時なんて大抵そんなものなのかもしれないね。

彼女は僕がどんなに意地悪をしても、全くめげる様子がない。本当に面白い子だよね。

   鳥の名を持つ君だけど、僕はむしろ君に違うものを重ねて見ていた。それは例えば、

長閑な春の訪れを告げる花。

春風と共に芽吹き、その小さな体いっぱいに温かい日差しを浴びて、生きてる事が素晴らしいってみんなに教えてくれ

る。君は、見ている者にそんな気持ちを抱かずにはいられなくする。

野に咲く健気な花だと思ったんだ・・・だから誰かに手折られたり摘まれない様に、守ってあげないと。

日々、君を目で追ううちに、僕が君に抱く気持ちは大きくなるばかりだった。それなのに・・・。





紅い液体が喉から這い上がってきて、口いっぱいに不愉快な味が広がってゆく。

なんで血が口から・・・どうしてこんな・・・そんな、まさか・・・。

たくさんの人を斬ってきた代償だと言われれば、それまでなのかもしれない。

肺を病み、湿った咳が続いて、そして血を吐いて吐いて、吐いて・・・最後は死ぬ。罹ったら最後の死病。

姉さんが言ってたっけ・・・僕らの親もこの病で死んだんだって。だからって僕までが罹る必要なんてないのにね。

無力だった僕は、ようやく力を手に入れた。僕は誰にも負けない。

   その力でほんの少しでもあの人の役に立てると思うと嬉しかった。

累年の努力が結実しないまま、僕はただ死ぬのか・・・そんなの嫌だ。絶対に、絶対に嫌なんだ。

弱音を吐くなんて僕らしくない・・・?でも、僕だって迷ったり、悔やんだり、泣きたい時だってある。

恨むなら誰を恨めばいい・・?こんな身体に産んだ親か、僕にこんな定めを与えた神か。この道を選んだ自分自身か。

二度と戻れないからこそ、僕に残された時間が残り少ないからこそ、僕は後悔したくないと思った。





その日は随分と冷えた。誰にも言えない秘密を抱えた僕は、馬鹿な考えに取りつかれていた。

羅刹になれば、死病と言えども克服できるのではないか。

部屋に一人でいると、そんなことばかり考えてしまうのだ。

遠からず僕の病は露見するだろう。隠し通せるとは思っていない。

   とりあえず、しばらくの間は体力も持つだろうし、咳が出たら風邪だと言って誤魔化すつもりだ。でも・・・

たぶんその時が来た時には、僕は土方さんに役立たずの烙印を押され江戸に返されるだろう。

   それだけは絶対に嫌だった。

瓶のある場所はわかっている。変若水の管理は、綱道さんのいない今、山南さんが一手に行っている。

誰かにわかってもらおうなんて思わない。ただ、少しでも長く、少しでも多く近藤さんの役に立ちたい。

辛く苦しい事にも必ず意味はある。それを乗り越えて強くなれと近藤さんは教えてくれた。

たとえいつか血に狂う時が来ても、僕は今自分のする選択を後悔しない。

生き急いでいると皆は言うかもしれない。けれど、事実僕には時間がないんだ。

付き合ってきた時間は決して短くはない皆に、僕の異変を悟られる前に早くしなければいけなかった。





前の廊下をパタパタと軽やかな音が駆けて行く。この足音は千鶴ちゃんだ。

できる事なら君とももう少しだけ、何気ない日々を送れたら楽しかっただろうなあとは思うよ。

もし羅刹になってしまえば、それさえも望めない事になるからね。僕は夜の世界に生きる事になる。

いつまでも同じではいられない・・・それは僕が羅刹になろうとなるまいと変わらない事だから、

束の間、愉快な夢でも見ていたと思えば、いつか諦めもつくと思うんだ。

前と同じに戻るだけだよ・・・子供の頃と同じ暗闇の世界に。信じるものは近藤さんだけあればいい。

でも、千鶴ちゃんは近藤さんに比べたら僕の中ではちっぽけな存在でしかないはずなのに、君に対して

もやもやとやりきれない気持ちが僕の中で燻っているのは、何故なんだろうね?





外に一歩出るとどんよりとした曇り空から雪が舞い落ちてきていた。僕は自然と身を縮こまらせた。

バサッバサッと布を振る音が聞こえるのでそちらに目を向けると、この寒空の下、洗濯に勤しんでいるあの子がいた。

庭の隅にある井戸の前で、凍てつく冷たさの水の中で手を動かしている。真っ白い

息を吐き震えながらも熱心に仕事をする彼女を見ると、ため息が出た。いつでも一生懸命な千鶴ちゃんは、さぼ

るという言葉を知らないようだ。

とにかく、誰かに何か仕事を言いつけられては、従順な子犬のように疑う事もなく従っている。



いつの間にか、僕はふらふらと吸い寄せられるように千鶴ちゃんのすぐ後ろまで来ていた。彼女を見ると

ついちょっかいを出したくなるのは、僕の気性のせいなのか、それとも千鶴ちゃんがあまりにも無防備なせいなのか。

てきぱきと洗濯をこなす彼女に声をかけると案の定、明らかに警戒されてしまった。

   さすがにその態度は傷つくなあと思い、どう非難してやろうかと考えていると、ふと彼女の手が視界に入った。

たらいの中の冷たい水から彼女の手を強引に掴むと、僕の口許に引き寄せた。

あーあ、これでますます警戒されるんだろうな。日頃の行いが悪いと言われてしまえば言い返す言葉もないけれど、

何もいたずらをしようとか、びっくりさせようと思った訳じゃないんだよ。

ただこの時期の水仕事は本当に本当に辛いから・・・千鶴ちゃんの手があまりにも真っ赤で痛そうだったから。

「はぁぁ・・はぁぁぁぁ・・・千鶴ちゃんの手、氷みたいに冷たいんだけど!頑張るのはいいけど、君ってば無理

   しすぎ。手だってあかぎれだらけじゃない。一応女の子なんだから、少しは気にしなよ。」

後ろから彼女に手を伸ばした結果、思わず抱きしめるような形になってしまったため、千鶴ちゃんはひどく

   びっくりして固まってしまったようだった。

そっぽを向きながら恥ずかしげに抗議してくるけど、そういう態度が男心をたまらなく疼かせてるって事、君は少し

   自覚した方がいいんじゃないかな?

捕まえた千鶴ちゃんの身体はとても小さくて、僕の腕の中にすっぽりと収まってしまう。

   離してくれと懇願されると余計に離したくなくなるのは、僕が天邪鬼なせいかな。

   ・・・ううん、きっとそれだけじゃない。僕は君に何かを求めてる・・・だから、離したくないんだ。

「君に何かしたって言うの?千鶴ちゃんは僕の事、嫌いなんだね。」自分の戸惑いを隠して、しれっとそう言った。

誰から見ても、千鶴ちゃんが僕に好意を持っているなんて考えられないだろう。僕もそうだよ。でも・・・

ねえ千鶴ちゃん、僕は君に嫌われてもしょうがない事をしたけれど、君に嫌われたくてそうしたわけじゃないんだよ。



わかっているんだ、僕は君に相応しくない。この想いは断ち切らなくちゃいけない。君にはそうだなぁ・・・

例えば、一君みたいに寡黙ながらも優しくて、大事の時には必ず守ってくれるような人がいいってわかってる。

死病を患っている上に、君を困らせる事しかできない自分には、どう考えても幸せをあげる術が思いつかない。今も

思わず手をとってしまったけれど、僕と触れた事で君にまで僕の病が移ったらと不安になっているところだよ。

「沖田さんはいつも勝手です。そんな事ばかりしてたら、いつか罰が当たりますよ。」

君がそう言うのも無理はないね。今まで幾度となく困らせて、泣かせてしまった事に今更ながら

罪悪感が沸いた。でもしょうがないじゃない・・・近藤さんは天然

理心流については木刀の持ち方から教えてくれたけど、女の子の扱い方は僕に教えてくれなかったんだから。

二兎を追う事はできないんだって。だから僕は近藤さんの教えの通り君の手を離して、そして死ぬまで剣を離さない。

もうそれしか、僕には道がないんだ。羅刹になってでも、剣のみに生きる道しか・・・。ならばいっそ、

狂ってしまえばいいのかもしれない。人を斬るのが僕の仕事なんだから、狂ってたって構わない。今までどおり

連日連夜くだらない事で笑いあって、みんなと酒を酌み交わして、同じ夢なんか追えなくなるんだから。でも、み

んなの賑やかな輪の中には君がいて、そしてその隣に僕がいられなくなる事がどうしてこんなに寂しいんだろう?

脳裏に浮かぶのは何故か君の事ばかりだよ。何故かな・・・?胸がすごく・・・すごく苦しいんだ、千鶴ちゃん。

掴んでいた手を離して千鶴ちゃんを解放してあげると、何故だか自分の中にぽっかりと穴があいたように感じた。

僕の方を振り返った彼女と目が合った。きれいな琥珀色の瞳は、僕を見ると何故だかひどく驚いていた。

みぞれ混じりの白いものは、いよいよ降り積もらんと本格的な雪に変わっていった。どうせ降るなら僕のささやかな

願望を叶えてくれないかな・・・

   雪よ雪よ、お願いだから僕の醜い心も君への迷いも、何もかも真っ白に塗りつぶしてくれないか。





一つ言えることは、その時の沖田さんはいつもと明らかに違ったと言う事だ。

羅刹や変若水の事をまだよく知らなかった私には、まさか沖田さんがそんなモノに手を出そうとしている事なんて

   思いつきもしなかった。でも・・・

『苦しいんだ・・・本当は嫌だけど、もうそれしか・・・。誰も僕を助けてくれないなら・・・

   でも苦しいよ。嫌だよ・・・誰か僕を助けて。僕を一人にしないで。』

   苦しむ沖田さんの心の叫びが、彼の虚ろな瞳に写っている気がした。そんな叫びと共に何故か私の

脳裏に浮かんだのは、初めて沖田さんに助けてもらった時に私を襲った人達の様に狂気に狂った沖田さんの姿だった。

「沖田さん、待って・・・待って下さいっ!!」

   私の元から去ろうとする沖田さんに呼びかけても、彼は振り向く事もしなかった。

みるみる離れていく沖田さんを追いかけて、右手をありったけ伸ばすとようやく彼の茜色の羽織の裾を捕まえ

る事ができた。そのまま左手も伸ばすと、もう逃がさないとばかりに沖田さんの着物の腰紐をむんずと掴んだ。

「たった一人でどこに行こうとしてるんですか、沖田さん!」私は無意識にそう叫んでいた。

びくっと大きく肩を震わせると、沖田さんは立ち去ろうとする訳でも私を払い除ける訳でもなくただ突っ立っていた。

「逃げないで下さい。一人で苦しまなくったっていいんです、だから・・・」

赤みを帯びている沖田さんの髪に真っ白い雪がまとわりついて、彼の髪の色を白く変えていた。その姿は私に一層

不安な気持ちを呼び起こさせた。赤い瞳、白い髪の人斬り鬼になった沖田さん・・・私は恐ろしい考えに襲われた。

冷覚はもはや麻痺して寒さなど全く感じていなかったのに、私はぶるぶると身震いが止まらなくなった。さっきの様に

抱きしめて、この不安な気持ちを取り去って欲しい。いつもの沖田さんのいじわるで私を安心させて欲しいのに。

救いを求める沖田さんに、私はどうやって手を差し伸べればいい?

   わからないままに、私は沖田さんの背中にぴたりと寄り添った。

「何を悩んでいるのかはわかりませんけど、沖田さんは一人じゃありません。

   近藤さんや土方さんや・・・それに私だって・・・

みなさん互いの事を大切な人たちだって、家族だって思ってます。家族には我侭を言っても、甘えてもいいんですよ。

だからどうか一人で苦しまないで下さい。私の知らない所へ行こうとしないで下さい。お願いです・・・。」

張り裂けそうな想いを、ありのままの言葉で沖田さんに伝えた。結局、私にはそれしか出来はしないから。



ゆっくりと一つ息を吐くと、沖田さんは諦めたかのように私の方を振り向いた。

目線を上げて沖田さんの顔を下から伺い見る。長身の沖田さんに対して、私は彼の

喉元までしかない為に、沖田さんが目線を合わせてくれない限りは、私は沖田さんの表情を見る事ができない。

「あの・・・ご、ごめんなさい、生意気な事を言って・・・。

   でも、沖田さんが何か悩んでいるなら私だって力になりたいんです!」

止める事が出来ない想いが私の胸からあふれ出して、それはそのまま、私の目からも溢れ出ていた。

「さっきはごめんなさい。罰が当たればいいなんて、ひどい事を言いました。

   もうそんな事言いませんから、だから沖田さ・・・」

「君はどうして・・・」消え入りそうな声でそれだけ言うと、沖田さんは私をそっと抱き寄せて胸に抱いた。

二度と離さないで欲しいと、こんな不安な気持ちにさせないでと願った気持ちは、そのまま私の恋心の表れだった。





あんなにも苦しくて切なくてやり切れなかった僕の苦しみを、君は一瞬で和らげてくれた。

何でわかったの・・・どうして僕の叫びが聞こえたの?

たくさんたくさん僕は君にひどい事をしたのに・・・そういえば最初に君を屯所に連れて来た時なんて

雁字搦めに縄で縛ったっけ。今更ながらひどい事をしたと思うよ、ごめんね。そんな僕の事なんか

君が気にかける義理なんかこれっぽっちもないのにさ。本当に千鶴ちゃんは変な子だね。

断ち切らなければいけない想いとわかっているのに、君に惹かれて止まない理由はそこなのかもしれない。君

が僕には健気な花になって映るのは、周りの全てに平等な安らぎをくれるからなのかもね。





次の日、僕らは仲良く揃って熱を上げた。それはそうだよね、あんな雪の日にずっと外にいたんだから。

照り返す日の光がこんなにも眩しく感じるのは、昨日の雪が一面を銀世界に変えたという理由だけではないはずだ。

ただでさえ小言の多い土方さんと一君の前で僕らは二人で正座させられて、ひどい風邪を引いてしまった事を

こっぴどく叱られたのは言うまでもない。

長閑な午後の昼下がり。屯所の庭に降り積もった雪が消えないうちにと、遊びに興じるあの三人の声が聞こえる。

おかげで僕はうるさくて眠れやしない。

風邪さえ引いていなければ、僕だって子供たちと雪遊びをしたかったのに。

賑やかな障子の外に恨めしげに視線を送ってから、僕は静かに目を閉じた。





人の温もりがこんなにも温かいものだと感じたのは久しぶりだった。僕にとっては君が二人目。

とにかく震えがとらない様子の君を落ち着かせようと、背中をぽんぽんと何度も叩きながら

   「千鶴ちゃん、ねえ落ち着いて。どうしてそんなに震えているの?」と

理由を尋ねてみても、君は涙を浮かべた瞳で僕を見上げて、ただ首を横に振るばかりだった。

君は妙なところで勘が鋭いから、なんとなく僕の悲壮な決意を感じ取っていたのかもしれない。

   人は自分より混乱しているものを見ると、急に冷静になれるらしい。

理性的になってみれば、羅刹になってでもなんて思ったのは全くの馬鹿げた考えだった。

再起を掛けようとして、あんな血に狂う可哀想なものになるなんて、本末転倒もいいところだ。

良かった・・・千鶴ちゃんが僕の心を引きとめてくれて。

「泣かないで、僕はどこにもいかないから。こんな君を放ってどこにも行きはしないよ、だから、ねえ。ほら、

   泣き止んでよ。あぁ本当に困ったなあ、もう。さっきの話じゃ、甘えていいのは僕だったんじゃないの?」

羅刹も変若水もまだ知らない君が、僕がそうなってしまう事を感じ取っていたなんて、とても不思議な話だった。

溶けた雪と涙で顔をぐちゃぐちゃにしながら、千鶴ちゃんは僕を見上げて

   「沖田さん、私を置いてどこにも行きません?」と迷子の心細そうな子供みたいに聞いてくる。

「行きません。だから、安心しなよ。」

言い切ることはできない・・・本当は。でも、この時はそうなればいいと思ったんだ。

叶う事なら、あと少しだけみんなと夢を追いたい。そして君と何気ない事で笑いあいたい。ただそう思ったんだ。

結局、僕の労咳は悪化し、こうして死を待つばかりの日々を送ることになったけれど、あの時変若水ではなく、君の

手を掴んだ事を僕は後悔していない。

「なんでも言ってくださいね。私だって沖田さんの力になりたいんです。」

   僕にあやされてるのに、そんな事を言う千鶴ちゃんがあんまりにも可愛いから、やっぱり君に向かってしまう

   僕の気持ちをとめられそうもない。けど、これは無自覚すぎる千鶴ちゃんが悪いよね?

「んー、そんなに僕の役に立ちたいの?だったら・・・」

どうしようもなく今、君が欲しくなったんだよ。

   僕は無意識に口元を三日月にしていた。どうやらこれは、獲物を捕らえたときの僕の癖らしい。

「もらっていい?千鶴ちゃんの。」

不思議な顔をして僕を見上げた彼女の一瞬を、僕は奪った。

理屈はよくわからないけど、人は誰かを好きになるとこうしたくなるらしい。

掠め取られてしまった千鶴ちゃんは何が起こったのかわからないらしく、目をぱちくりしている。その一瞬あと、

「え・・・・・・?え・・・!?!?えええええ!?!???」君は素っ頓狂な声をあげて、混乱の

るつぼに落ちていってたけどね。そんな千鶴ちゃんが本当に可愛らしくて、そして愛おしいと思ったんだ。





雨音で僕は目が覚めた。昨夜降った雪もこれで全部解けてしまうんだろう・・・そんな事をぼんやりと思った。

いつの間にか、僕は寝入っていたようだ。傍らに人がいるのも気がつかなかったなんて、珍しい事だった。

畳に寝巻きのまま、ちょこんと座っているのは千鶴ちゃんだった。

   何故彼女がここに?千鶴ちゃんも僕と同じで、熱を出して寝込んでいたはずだ。

「苦しかったり、辛かったら言って下さいね。あ、お水飲みますか?」優しく語りかけてくれる千鶴ちゃんの

手が僕の手をしっかりと握り締めているのを見ると、彼女はまだ僕がどこか遠くに行ってしまうんじゃないかと

   心配だったようだ。

あまりにも僕に対して無防備な彼女を見て、やれやれとため息をついた。

いくらなんでも、熱があるのに他人の心配をして、寝巻きのまま真っ赤な顔して僕の看病なんて問題ありすぎだよ、

   千鶴ちゃん?

たまりかねて、僕はあいてる腕を伸ばすと彼女の額に手を当てた。千鶴ちゃんのおでこは僕よりもずっと熱かった。

「苦しいのは君の方でしょ!?まだこんなに熱があるのに・・・僕の事はいいから、早く部屋に戻って休みなよ。」

「て・・・てぬぐい、絞り直しますね。冷たくて気持ちいいですよ。」

   千鶴ちゃんは高熱で朦朧としているのか、首を傾げると僕の言葉がわからないという顔をした。

「こんなに無理をして・・・だめだったら!千鶴ちゃん、君は戻って休むんだ、いいね?」

   もう一度、今度は強い口調で言うと、今度はわかったようだった。それなのに、言うに事欠いて

のぼせた様な真っ赤な顔をしているのに「私は平気です。それよりお腹すきませんか?私お粥でも作って・・・。」

   なんて言う始末。

胸に思わずこみ上げてくるものがあるのも仕方がないと思わない?千鶴ちゃんは本当に粥でも作ろうと思ったのか、

   ふらふらと立ちあがった。今の彼女にそんな事はさせられない。僕は千鶴ちゃんの腕を引くと、自分の

寝床に引き込んで布団の中に押し込めた。逃げられないように両腕で彼女の身体を抱くと、千鶴ちゃん

の身体が、本当は熱でどうにかなりそうなほど熱くなっているのがわかった。

「さっさと僕の言う事を聞かなかった君が悪いんだよ、千鶴ちゃん。僕にこんな事をさせるなんて。」

さっき千鶴ちゃんが絞ったままで畳に落ちた手ぬぐいに手を伸ばす。

   彼女の額の汗を拭ってあげると、千鶴ちゃんは熱で潤んだ瞳で僕を見上げて

「やぁです、いやぁ・・・沖田さんの看病は私がするんです。」なんて言いながら身をよじっている。

   熱に浮かされてるとは言え、君は本当に世話が焼ける困った子だよ。

   これが僕じゃなかったら、君は確実に狼の餌食だよ?

「君に看病してもらうには、まずは千鶴ちゃんが元気になってくれないと。傍にいるから、僕はどこにも行かない

   から大丈夫だよ。おやすみ、千鶴ちゃん。」

   安心させるように何度もそう言って、背中をトントンと叩いているうちに

我慢してた糸がプツンと切れたのか、ようやく千鶴ちゃんはすやすやと安らかな寝息を立て始めた。

   彼女が完全に眠りに落ちたのを確認して、僕は千鶴ちゃんを起さないようにそっと布団から這い出した。

   もう一度冷たく絞った手ぬぐいを彼女の額に乗せてあげる。冷たいのが気持ちよかったのか、彼女の寝顔が

   柔らかいものに変わっていった。そうして僕は、いつまでもいつまでも彼女の寝顔を見ていた。





『愛してる』なんて言葉は言ってあげられないけれど、君は僕にとって本当に特別だったんだよ。

泣かせたくない、守ってあげたい・・・できる事ならずっと二人一緒に。

たった一言、君に想いが伝えられないのがこんなにも辛いなんて思わなかった。

「置いて行かないで」と君は言うけれど、まさかこれから僕が行く場所に君を連れて行けやしないから。

三途の川を渡るには、君はまだ早すぎるから。

がむしゃらに生きた日々は辛い事も多かったけど、そんなに悪くないと思える事もたくさんあったから、

   僕はきっと笑って逝けると思う。

白い紙に『雪村千鶴殿』と君の名前を書き綴ると、子供達にもらった桜色の千代紙を一枚取り出した。

手紙を書いてあげると言ったけれど、ごめんね。僕はもう何も書く事ができそうもない。

いっぱい伝えたい事はあったけど、それは到底言葉で伝えられる事じゃないから・・・

   千鶴ちゃんを思い浮かべながら一つ一つの作業を丁寧に折りあげた。きっと君なら僕の言いたい事わかってくれ

るって信じてるから・・・。想いを託したそれを手紙の上に乗せて、僕はゆっくりと目を閉じた。

   さようなら千鶴ちゃん、今までありがとう・・・。





ある日突然、それは訪れるってわかっていた。だからなるべく考えないように、私はその事に目を背け続けた。

泣きたくても涙も出ないほどに苦しくて、その事は私を悲しみの奈落へと叩き落した。





たった今書き上げた手紙を、私は嬉しいような、少し恥ずかしいような顔をして眺めていた。

沖田さんは私にどんな手紙をくれるんだろう?そして彼は私の手紙を読んだら、どんな顔をするのかな?

よくよく何を書こうか悩んだけれど、結局沖田さんに伝えたい事はたった一つしかなかった。

「んー・・・書き間違いとかなかったかな。それに、沖田さんに読まれるとなるとやっぱり恥ずかしい・・・かも。」

出来たには出来たけど、何度読み返してみてもまだ沖田さんに伝え足りない事があるような気がして、

   このまま渡すかどうか迷っていた。

いつか近い未来、沖田さんは私とは一緒にいられなくなる。・・・それは、こんな状況でもまだ、想像もできないほど   私には辛くて苦しい事に違いなかった。だからせめて今のうちに私の想いの全てをこの手紙に籠めて、彼に伝え

るつもりだった。

一生懸命書いたんだもの・・・きっと沖田さんにも伝わるはず!私なりに彼への想いを

綴った手紙に封をして、それを持っていそいそと沖田さんの部屋へと向かった。

舞い上がっていた私は、もはやこの手紙を渡す相手がここにいなくなっていたなんて、思いもしなかった・・・。





泥濘にでもはまったように、私はそこから動けなくなっていた。



   私が部屋まで行くと、沖田さんは文机の前に座って、壁に身をもたせていた。

   何だかいつもと様子が違う・・・?私は傍まで寄って行って、背後から彼に声をかけた。「沖田・・・さん?」

もしかしてうたた寝をしているだけかも。日差しが温かいからきっとそうだと思い、揺り起こそうと肩に手をかけた。

言い様のない嫌な予感が身体の底から這い上がってくる・・・。普段ならば私がこんなに近寄っているのに、彼が気がつかないわけはないのだ。沖田さんは、誰よりも人の気配に敏い人だから。

まさか・・・そんなはずはない。今朝はいつもより少し調子が良さそうだったんだから!!!

   私が作ったご飯をおいしいって・・・たくさん食べてくれて・・・。

でも、じゃあなんでさっきから何度も肩を揺らして呼びかけてるのに、沖田さんは答えてくれないの?

「もう、沖田さんったらそんな悪ふざけしないで下さい。ほら・・・私約束の手紙書いて来たんです・・・よ?

   読んで・・・下さ・・・わたし、おきたさ・・・」

その身体はまだ温かかったけれど、もう沖田さんの鼓動は脈を打っていなかった。私は自分の心も身体も

ばらばらに砕け散ってしまうんじゃないかと思った。

二度と私に笑いかけてくれることも、話しかけてくれることもない沖田さんの身体をかき抱いても、

   私はまだ信じられない。信じたくない。まだ何も伝えてないのに、そんなの絶対認められるわけがない。

いつもみたいに「冗談なのに本気にして変な子だね」って言って下さい。からかった私の様子を見て面白がって笑って

る顔を見せて下さい。何回だって、何百回だって、何万回だってそうして下さい。

遠くに行かないって、私を置いてどこにも行かないって言ってくれたじゃないですか、ねえ沖田さん!!!

いつかはこういう時が来る事はわかっていたのに、あまりの突然の訪れに、とうとう私は取り乱して泣き叫んでいた。

机の上には、自分が死んだら渡して欲しいと沖田さんが用意していた文の束が見えた。

   近藤勇殿、土方歳三殿、沖田ミツ殿・・・

手紙・・・そうだ、沖田さんは私に手紙を書いてくれただろうか?その中に、

たった一言私の望む言葉があれば、今すぐこの小太刀で沖田さんの後を追うことも私は辞さないつもりだった。

   それなのに・・・



『愛してる』なんて言葉を望んでいたわけじゃない。好きだと書いて欲しかったわけでもない。

   私が望んだ一言は・・・ただ、沖田さんにも私に傍にいて欲しいと思って欲しかっただけ。

   それなのに・・・それなのにっ!!



何も書かれていない沖田さんの手紙を見て、私は愕然とした。

ただ最初に「雪村千鶴殿」とだけ書かれた手紙が、沖田さんの座っていた文机の上に残されていた。

白紙の真ん中に、綺麗な桜色の千代紙で折った折り鶴が一羽止まっている。

   その翼はピンと広げられ、これが本物の鶴ならば今にも飛び立ってしまいそうだった。

うそつき・・・私が書いたら、沖田さんも私に書いてくれるっていったじゃないですか。

それとも、これが私に残した沖田さんからの最初で最期の手紙だとでも言うつもりですか?

   何も書かれていない真っ白い和紙と、その上に乗せられた折鶴。

   ・・・これにあなたがどんな想いを託したつもりか知らないけど、こんな想いの伝え方はずるいです・・・

つうーっと涙が私の頬を滑り落ちていく。

「君は自由になるんだ。もう、どこへなりとも飛んでいけるはずだよ。」

大好きなあの人の声が、耳元で聞こえた気がした。

   ひどい、ひどい・・・ひどい!!私は自由になりたかったわけじゃない。

願う事はたった一つだったのに・・・私のこんなちっぽけなお願いもきいてくれないんですか?

わたしを置き去りにしないで下さい、沖田さん、私を一人にしないでください。

ただ傍にいたいと願う事がこんなにも難しいのなら、だったら愛するってどうすればいいんですか?

静かに眠りについた沖田さんの表情はとても安らかで、もうここに彼がいないなんて到底信じられなかった。

沖田さんは意地悪です・・・ずるい人です。勝手な人です。

   私の気持ちをどこまでも無視して、せっかく書いた手紙も受け取ってくれないなんて。

   そして、私に一方的にあなたの想いを押し付けて、勝手に死んでしまうなんて・・・

   本当に、本当にあなたは・・・ずるい人・・・。



置き去りにするくらいなら、私の事を殺してでも連れて行ってくれる事を望んでいたのに。

「斬っちゃうよ・・・?」彼がよく口にしていた言葉を、心の中で反芻する。

戯れ言ならば、どうして私にあんなにも、あの言葉を言ったんですか?

   私は・・・私は・・・!!あなたと一緒にいられないのなら、本当にあなたの刀の露になってしまいたかった。

理由なんて今更言わせないで下さい。私の望みは沖田さんだってわかっていたはずなのに・・・。



二度と目を開ける事がない沖田さんの亡骸を抱いて、私はいつまでもいつまでも彼の名前を呼び続けていた・・・。


カット406




※※※

ここまで読んでくださりありがとうございました。実は作者から伝えたい事がもう一つあります。

この物語には、隠されたメッセージがあります。お時間のある方は、もう少しだけお付き合い下さい。

文章の先頭の文字をたてに繋げて読んで見てください。

漢字はひらがなに直したときの一文字分だけ読んで下さい。(「愛」なら「あ」と読む。)

段落を下げてある所は、縦読みの文に加えずに飛ばしてください。

 

                 良くない事だと・・・・・

ここは読まずに飛ばす。→    確かに自分が・・・・

                 「ん?気になった・・・・)



ところどころ、少しだけイレギュラーが発生しますが、そこはご愛嬌と言う事で・・・。

私がこの物語を作ったきっかけが浮かび上がります。そして、それは私の中の千鶴ちゃんの心情にも重なりました。

どうか、最後まで楽しんでいただけますように。
  1. 2014/06/15(日) 16:12:14|
  2. 頂きもの
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:7
<<気が緩みました~ | ホーム | 「過去と現在の相合い傘」>>

コメント

死ネタって書くの忘れてました;

わああ、こんなに早く仕上げてくださるとはありがとうございます(ーー;)
慌てて自分のホムペにもあげさせていただきましたw
そして、二箇所ほど改行忘れてた事に気がつきました( ̄▽ ̄;)!!そこだけ長くなってる・・・失敗したァ;;

壮大なあいうえお作文になってしまいました。
最初に始めたときはこんなに文字数多いと思ってなくて、「ちょろいちょろい~(・-・*)」と思って始めたら、だんだん長さに気付き始めて( p_q)←馬鹿
やりにくい文字の多いこと、多いこと・・・「る」と「ん」がくるたびに死んでました。学生時代に愛用してた辞書を片手に創作してましたw
でも、書いてると今度は話がおさまらなくなってきて・・・書けば書くほど、長くなりますよね(*´∇`*)!?

ところで、前回の「劇場晩見ました」話ですが・・・
私も見ました!田舎では見れないかと思ったんですが、運よく前後編とも劇場で。
前編でぶつぎり感を感じていたら、後半はもっと大変かもしれません(-_-;)もはやこれは土千なのか・・・?と感じてしまいました。
まあ、土方さん以外はもっとアレな扱いなんですけど・・・(-_-;)見せ場はそれなりにあるんですけど、本当に「ファンのために作りました」的な見せ場なんで、私としてはいっそ土方さんに絞ってそこだけの話の方がまだ納得できたかも・・・沖田さんなんて、沖田さんなんて・・・( p_q)ぐすぐす・・・
ちょっといろいろ沖田さんについて納得できてないですo(´^`)o最後のシーンじゃなくて、途中のシーンなんですけどね・・・。
山南さんは後半もめっちゃいいシーンありますよ♪楽しみにしててください(*^-^)

映画も終わってしまって、やはり一段落な感じあるんでしょうね。
SSLもそこまで賑わってないような気がするんですが・・・どうでしょう??私がまだやってないからかなぁ・・・。
ちなみに、私の中では今、薄桜鬼ミュージカルが熱いです///映画より、よっぽどいいです。無限ループで見てしまいます///
・・・と、脱線しすぎました。
今回も素敵なイラストありがとうございましたヽ( ´¬`)ノ次はあのイラスト狙うぞ~~~♪♪
  1. 2014/06/16(月) 01:32:47 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #EYMZMP9E
  4. [ 編集 ]

ゆゆき様♪

こちらは本当にご苦労様でした!

しかし、指摘されるまで、この歌が何の歌かわからなかった私って…orz
どっかで聞いたフレーズだなあ、と途中まで拾って読んでもんもんとしてましたw
それにしても、よくこれだけの長さのお話を、こんなくくりの中で作れましたね。
感心しきりです^^
次のお話、もうネタはできてるのかな?
楽しみにしてますので、また是非!

劇場版、ホントに、どうせなら土千でじっくり描いても良かったのでは、と私も思いました。
後編、ゆゆきさんが沖田さんで納得できない所ってどこかな。
劇場版用の新シーンでそういう所があるのでしょうか。
後編観る事ができたら、チェックしますね^^
  1. 2014/06/17(火) 12:03:08 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

号泣しました。

こんにちは。ゆゆき様。小萩です。

お話が掲載された時から、かなり時間が経ってしまい
ましたが、このお話、私、大好きです。
「木蓮の涙」タイトルからすぐにスターダストレビューの
あの曲だ!!とわかって、読み進むうちに、目から
ボロボロ涙が止まらなくなって、最後にはPCの画面を
見ていられなくなって、タオルで顔を覆いながら
号泣しました。

そして、最大で壮大な仕掛けが。「木蓮の涙」
歌詞を知らなくても、読めばわかるという、とても
親切でお優しいお心遣いに胸が熱くなりました。
これだけの長文で、よくなさいましたね。
素晴らしいです。

沖千は、やっぱり悲しいです。幸福な沖千も数多く
ございますが、やっぱり最後は切なくて悲しくて
苦しくて。千鶴ちゃんが、置き去りにするくらいなら、
私の事を殺してでも連れて行ってくれる事を望んでいたのに。
という気持ち、とてもよくわかります。でも、総司には
それは絶対に出来ないことだから・・・。
愛しているからこそ、連れて行けない。黄泉路へは
自分独りで。総司のやるせない、悲しい、辛い、強い
思いを考えると、胸が痛くて痛くて辛いです。

とても素晴らしいお話をありがとうございました。
  1. 2014/07/09(水) 14:53:36 |
  2. URL |
  3. 小萩 #-
  4. [ 編集 ]

感想ありがとうございます。

>小萩さん
わわっ、身に余る感想ありがとうございますm(_ _"m)ペコリ
シリアスに対して「泣きました」は私にとって最大級の賛辞です。そんなに感情移入して読んでいただいたなんて、こんなに嬉しい事がありましょうか!?
私、そんなにシリアス得意じゃないんですよ・・・(‥;)
書いてる本人は「あいうえお作文」にする事で精一杯で、全然書き足りてないと後悔する部分ばかりなんです。
もっと情景の補足とかしたかったし、心理描写が足りなくて「え、いつの間に好きになったの?(とくに千鶴ちゃんが・・・)」と作者ながらに突込みが追いつかないんですが・・・あまりルールから逸脱して書き足しても、なんか違うものになりそうだったし・・・。
まったく設定を考えてなくて、「手紙を書く二人→最終的に沖田さん亡くなる」という構図しかなくて、もうあとは言葉が繋がるように書いてただけで、自分でもまあよくまとまったと思いますwww←自画自賛www

曲を知ってる人は小萩さんのようにタイトルでピンと来てくれたかも知れませんが、聞いたことがあっても、歌詞だけ書かれて「あ、これはあの曲ね!」と気づくのはなかなか難しいかと( ̄∇ ̄;)なので、ちょこさんは全然落ち込む必要はないと思います!あまり特徴的なワードが入ってない歌ですし(「木蓮のつぼみが~」くらいでしょうか)
私自身、この曲のタイトル知ったのはつい最近で・・・(‥;)しかも、本家のスターダストレビュー版ではなく、最近朝ドラで有名になった女の子が歌ってるバージョンを聞きまして、それが私にはまるで千鶴ちゃんが歌ってるように思えたんです(曲のアレンジも切ない調ですごくよかったんです)
なので、この話のテーマ曲は実は本家ではないという・・・ちょっと前まで動画で見れたんですが、どこかに行ってしまいました( ̄▽ ̄;)!!

沖千は悲しいですか~o(´^`)o でも、そこがまた一つの魅力であるのも否定できなくて、私はこの二人が同じ苦境を共有する仲である事に惹かれてるんですよ。
よく、沖田さんは独占欲の塊みたいに描かれてる場合が多いですけど(近藤さんへの執着心のためでしょうね)私の中での沖田さんはちょっと違うんです。
確かに独占欲はあるでしょうけど、それで相手を傷つけるようならどんなに辛くても自分が身を引く冷静さも兼ね備えた人です。自分の好きな人を守るためならどんな事でもするという自己犠牲精神が一番強いのが、私の中の沖田さん像です。
本当は彼は二次創作で誇張されてるような子供じみた性格ではないはずなのに、やはりそこだけが強く描かれてしまう傾向にはあるような。
それはそれでいいのもありますけど・・・うちの沖田さんは千鶴ちゃんには紳士であって欲しいといつも思っています。
彼が手紙に何も書かなかったのは、「敢えて」です。言葉を残すと、その事が千鶴ちゃんを縛り付けてしまうのではないかと沖田さんなら考えるのではないかと思いまして(・-・*)

私の書房にも足を運んでいただいたようで、ありがとうございます。あとでブログ上にてお返事させて戴きますので、そのうちまた足を運んでいただければと思います♪
こちらこそ、この話を気に入って戴いてありがとうございました(*´∇`*)
  1. 2014/07/11(金) 00:42:02 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #EYMZMP9E
  4. [ 編集 ]

「木蓮の涙」は。

ゆゆき様。こんにちは。こはぎです。
「木蓮の涙」スタレビの名曲なんですが、ゆゆき様が
聴かれたのは女性のカヴァーだったんですね。私に
とってはとても特別な曲なので、よく覚えているんです。

いつまでも いつまでも 
そばにいると言ってた
あなたは嘘つきだね
わたしをを 置き去りに

大好きな、尊敬している方が居ました。90歳過ぎても
まだまだお元気で「100歳まで生きるんだ」と優しく
笑っておっしゃっていたその方は、99歳の春、安らかに
この世を去りました。「大先生の嘘つき!!100歳まで
生きるって言って。ついこの間まで笑っていらしたのに!!」
訃報を聞いた時、目の前が真っ暗になりました。
大切な人がもう居ない。二度と会えない。声も聞けない。
それがどれほどの苦しみか。

確かに独占欲はあるでしょうけど、それで相手を傷つける
ようならどんなに辛くても自分が身を引く冷静さも兼ね備えた
人です。自分の好きな人を守るためならどんな事でもすると
いう自己犠牲精神が一番強いのが、私の中の沖田さん像です。

それ、よくわかります。総司はいつだって千鶴ちゃんを
守り続けて来ました、池田屋でも、無意識に千鶴ちゃんを庇った。
鳥羽伏見の時だって、千鶴ちゃんを守るためにその身に銀の
銃弾を受けて。薫に若変水を飲まされて、羅刹になってしまった
千鶴ちゃんを、そのことを、ものすごく強く悔いていた。
二人とも羅刹になってしまって、一番苦しく悲しかったのは
総司だと思います。

若変水を飲んでも労咳は治らない・・・労咳の血を吐く苦しさは、
お酒を飲んで吐く苦しさの10倍くらいだと、実際に結核にかかって
いた作家さんが言っていました。それを一人で耐えて耐えて、
あんな身体でそれでも戦い続けて。

総司は強い人だと思います。とても心の強い人。小さな頃から、
決して諦めたり逃げ出したりしなかった。史実の総司ですが、
「12歳の時、奥州白河藩の剣術指南役と試合して勝った」って
いう記録が残ってます。試衞館に9歳で入門してから、どれだけの
精進を重ねて来たのか、小さな子がどんなに努力していたのか。

総司は千鶴ちゃんに出逢えてとても幸福だったと思います。
想いを決して告げられなくても、それでも千鶴ちゃんと居られた
数年間は、総司にとってとても大切な時間だった。総司があえて
言葉を遺さなかったのも、総司らしいと思います。千鶴ちゃんは
自由に強く生きていって欲しいと願った総司の気持ち。

でも、私は、どうせなら、一緒に連れて行って欲しかった。
一人にしないで、置いていかないで、連れて行って、たとえ
そこが黄泉でも地獄でも永遠の暗闇でもいい。総司が一緒に
居てくれるなら。そう思っちゃうんです。私がきっと弱いから
ですね。千鶴ちゃんの強さに比べれば雲泥の差です(赤面)。

またサイトの方にもお邪魔させていただきますね。
お返事ありがとうございました。
  1. 2014/07/12(土) 15:54:00 |
  2. URL |
  3. 小萩 #-
  4. [ 編集 ]

>小萩さんへ

「木蓮の涙」は小萩さんにとって、特別思い入れのある曲だったのですね。
私が思いつきの創作に使ってよかったのかしら(‥;)(ドキッ)

なんだか小萩さんの沖田さん語りが熱くて、普段沖田さん沖田さん(*ノノ)言ってる自分、全然負けてる気がして焦ってますw
史実の沖田さんにも「12歳で指南役に勝った」という記録があるんですね!イイコト聞いちゃった~ヽ( ´¬`)ノ
私の中の沖田さんなんですが、実はベースに司馬遼太郎先生の「燃えよ剣」の沖田さんがかなりの分量が含まれていてですね、薄桜鬼の沖田さん本来のほの暗さが少ないかもしれません。私自身、彼の子供時代に対してそれほど悪い印象を持ってないんですよね・・・黎明録もやってないし、アニメでも見てないので薄桜鬼の沖田さんの辛い子供時代を私は見ていないのですよ。
辛い過去があってこその彼だって言うのはわかっているのですが、あまりそういうシーンを見たくなくて避けているというのも少なからずあるかもです。
特に、近藤さんしか救ってくれる人がいなかったみたいなのは、本当に辛くて・・・貧乏だったから内弟子に出されたけど、家族(姉さんや義兄さんとか)との仲も悪いわけではなかったと、私の中ではそう思いたい気持ちが強いのです。

沖田さんの中には近藤さんしかいなくて、でも、そんな自分を本気で心配してくれる千鶴ちゃんの事が徐々に気になっていったんでしょうね。
彼女をこんなにも身を呈して守っているのは沖田さんだけですよね(*ノノ)自覚もしてないのにそんな風に守ってしまう沖田さんが本当に愛おしかったです。
そんな彼が、自分の気持ちを自覚したら尚更全力をかけて好きな人を守ると思いますね。

大切な人を失う気持ちは、幸いにもまだそんな経験がないので私にはわからないのですが。
想像してみれば、やっぱりそれはきっと自分の中が空っぽになってしまったように感じて、それこそ一緒に死んでしまいたいと思うかもしれません。
でも、沖田さんや新選組の皆がもし自害してまで自分を追ってくるなら、そんな千鶴ちゃんは認められないじゃないでしょうか?
沖田さんの言う「君が全てを諦めると言うのなら、その時は僕が斬ってあげる」というのは、千鶴ちゃんの人生にも責任を持つという意味ではなかったでしょうか。
沖田さんは千鶴ちゃんが諦めてしまわないように、『自分の道を歩んで』とメッセージを残していったのですから、彼の事を本当に思うのなら千鶴ちゃんには千鶴ちゃんの天寿を全うして欲しいと思います。病気という不本意な死に方をしたのですから、尚の事その思いは強いんじゃないでしょうか。いくら辛くても悲しくても、死というのはいずれは皆が通る道なのですから、自害して追いかけてこなくても僕はここで待っているからと、沖田さんならそう言ってくれると思うのです。

・・・って、何が言いたいのかわからなくなってきました( ̄Д ̄;;
えっとえっと、そう!!自分は死しても千鶴ちゃんの事を一生懸命考えている沖田さんと、彼に一身に尽くす千鶴ちゃんは素敵だなと、やっぱり最高だなと、私はそういいたいのです///
私が書いた事以上の事を、小萩さんの想像力で補って感じ取っていただいてありがとうございました。
私もこんな風にこの物語を感じとってくれた方がいたことで胸がいっぱいで、自分で書いたにもかかわらず、よりこの話が好きになりました(*´∇`*)
本当にありがとうございます。
  1. 2014/07/14(月) 01:01:13 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #EYMZMP9E
  4. [ 編集 ]

千鶴ちゃんには生きて幸福に。

こんばんは、ゆゆき様、小萩です。コメントのお返事、長い間
出来なくてごめんなさい。ずっと気になっていて。今更ですが、
しばしお時間下さいね。

ゆゆき様の総司は「燃えよ剣」の総司が入っているのですね。
黎明録は辛かったですが、二人のお姉さんやお義兄さんとは、
きっととても仲は良かったと思うんです。京都へ行ってからも
マメに連絡を取っていたのではないかと思いますし。

総司が12歳で藩の指南役に勝ったという記録が「沖田家文書」
にはのこされていて「剣法は天才的で、僅か十二歳にして奥州
白河阿部の指南番と立ち合いたる時、勝ちを得ることあり。
この勝利によって、その名が藩中に籍々とかまびすしく流れた」
と書いてあります。総司は正に天才剣士だったのだと思います。
もしネタに出来ることがあったら、どこかでお使い下さいね。

「木蓮の涙」、思い入れのある曲を創作に使っていただいて
すごく嬉しかったです。そうですよね。千鶴ちゃんは優しくて
強い子だから、きっと生きて、総司や他の人達の分も生きて
幸福にならなきゃいけないですよね。それが薄桜鬼の千鶴ちゃん
なんですもん。私、自分が「置いていかれたくない、独りに
なりたくない。一緒に連れて行って」って思いが強すぎて、
ついそちらに流されてしまいました。ごめんなさい。

総司もきっとそれを望んでいるはずです。ゆゆき様のお言葉で
ようやく目が覚めました。ありがとうございました。間違いに
気付かせて下さって。

どうか総司の魂が安らかでありますように。近藤さんや皆に
無事再会出来ますように。千鶴ちゃんが天寿を全うしたら、
どうか迎えに来てあげてね、総司。ずっと待っているから。
  1. 2014/09/21(日) 22:03:10 |
  2. URL |
  3. 小萩 #-
  4. [ 編集 ]

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://kougethuan.blog.fc2.com/tb.php/595-e0179777
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)