皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「気配と視線 ~恋の手解き、謎の紐解き、愛の帯解き~ 斎藤編」

続けて酔狂元乙女さんから頂いた、「気配と視線」の 斎藤編をUPします♪

沖田編とは全く別のお話として読んでもいいし、
はっきり「沖田さんを好き」と、千鶴ちゃんが言わなかった沖田編の続きとしても読めるそうです。
(けどその場合は、沖田さんがかなり可哀想ですが…;)

二作とも、若い二人の思うようにいかない初恋のもどかしさを描いていますが、
それぞれの個性の違いが感じられて、さすが酔狂さんだと感心しました^^


では続きから―――こちらも素直に恋している斎藤さんを堪能して下さい♪

追伸;酔狂さん、どうせなら全員のこのシリーズのSS、書きませんか? エヘ(*^-^*)ゞ


挿絵は感謝を込めて酔狂元乙女さんへ進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。



気配と視線 ~恋の手解き、謎の紐解き、愛の帯解き~ 斎藤編



ある晴れた春の一日。
非番で、しかも特に予定の無い珍しい日だった。
 
なにゆえこの俺が総司と子供達の遊びに付き合う羽目になったのか。
それは、そこに雪村が巻き込まれていたからだ。 目を離すと奴が彼女にどのような不埒な真似をしでかすか……俺は心中穏やかではいられなかった。
 
「ほら、みんな、かくれんぼだよ!一君が鬼だから」
 
総司の声で子供らが一斉に散り、あとは雪村だけがどうしたものかと突っ立っていた。
 
「一君、ここは広いから。ゆっくり三十まで数えてから探しに来てね」
 
承知した。子供相手に向きになることもなかろう。
 
「言っとくけどね、気配を消しちゃあ駄目だよ。仕事の時の様な事をしたら子供達が驚くからね」
 
いちいち、五月蠅い。案ずるな、たかが遊びに気配を消したりはせん。お前とは違う。
そんな俺の心中を察したのか、奴はにやりと顔を歪めると、彼女に近寄りその手をぐっと握り締めた。
 
「さ、千鶴ちゃん、はぐれない様に手を繋ごうね」
 
頬を染めて俺を振り返る雪村。ちくり、と胸に痛みが走る。
彼女の瞳の色には、恥じらいだけではない微かな喜びの様なものが見て取れたからだ。
 
ソウナノカ?オマエタチハ、ヤハリ……。
 
「待て…」と言いかけた途端、奴は「悔しかったら見つけてごらん」と捨て台詞を残して彼女を連れ去ってしまった。
 
 

 
 
「あかん!見つかってしもうた」「残念だったな。悪く思うな」
 
一人、また一人。俺は次々に子供達を見つけていく。
広い神社の境内ではあるが、はしゃぐ子供らの気配を辿ることは容易かった。
そもそも彼らは、物陰から鬼役の俺の様子をちらちらと窺ってくる。
そのあからさまな視線に気付くのは、新選組の組長でなくとも出来る事だった。
 
残るはあと二人。
恐らく境内の外れの雑木林に潜んでいるだろう。
ふと、邪念が湧いた。
ひょっとして彼らは、屯所から離れたこの場所で二人きりになれる貴重な機会を楽しんでいるのかもしれない、と。
 
ジャマスルベキカ。ジャマセザルベキカ。
 
人の恋路を邪魔する奴は馬に蹴られて何とやら。
他の者であれば、俺は無粋な真似をせず子供らを連れて引き揚げただろう。
だが―――。
 
ヨリニヨッテ、ナニユエ、アノオトコナノダ。
 
総司と雪村が恋仲だという証拠はなかった。
無論、総司が彼女を酷く気に入り、奇妙な懐き方をしていることは明らかだったが……。
肝心の雪村の本意が定かではないのだ。
彼女はどの隊士たちにも愛想よく接し、とりわけ幹部達には献身的に尽くし皆から可愛がられている。
その幹部の中には彼女に言い寄る者も現れた。
ただ、当の本人は口説かれているとも気付かずに、見事なまでの男あしらいの才を見せているのが滑稽だ。
どうすれば彼女の心情を確かめ、己の腕の中に抱けるのか――俺には判らない。
剣一筋に生きてきた不器用な俺に、誰も「恋の手解き」や「娘心の謎の紐解き」をしてくれようはずがなかった。
 
「何をつまらぬ事を…」
 
俺は子供達に他の遊びを勧めて一か所に固まらせると、二人を探して奥に入ることにした。
 
 

 
 
程無くして、俺はある大木の陰に雪村の気配を見つけることが出来た。
不思議な事にそこに総司のそれは無かった。
奴が己の気配を消していたにせよ、その木の幹の太さでは二人分の体を隠すことは無理だった。 どこか繁みの中に居て、俺を嘲笑っているのかもしれない。
とにかく俺は忍び足でその木に近づく。
恐らく顔を幹に当てて息を潜めているだろう。 春の日差しを浴びて彼女の艶のある黒髪が輝き、遅れ毛が軟風(なよかぜ)に揺れる様を想像して、不躾にもこの指で触れてみたいと思った。
幹に添えられた小さな右手が、俺の方から丸見えだった。
甘いな。俺は独りごちる。

俺は標的に向かって一気に間合いを詰めると、逃げられぬようその柔らかな手を無造作に掴んだ。
 

カット225


「見つけたぞ」「斎藤…さ…ん……」
 
何故か彼女は安堵の表情を俺に向けた。
 
「途中で沖田さんと別れてしまって…いつの間にか子供達の声も途絶えるし……」
「それで、心細くなったのか?」
「は…い…。斎藤さんが見つけて下さってほっとしました」
 
彼女はまるで幼い少女が恥じらうように笑った。
 
ヤツガ、イナイト、フアンナノカ?ヤツガ、オマエノ、ササエナノカ?
 
片手を繋ぎながらも、太い幹を互いの身の間に挟んで向かい合った状態は、まるで今の俺と彼女の間柄のようにも思える。
それは、沖田総司と云う幹を挟んでかろうじて繋がる俺と彼女の姿……。
 
「解せぬ。総司は何故お前を置いて行った」
「途中までご一緒していたのですが…少し咳きこまれてしまって。水を飲んで来るからこの木の陰で隠れて待っていろと……」
「………」
 
俺の暫しの沈思を、彼女は不安げな表情で見つめていた。
総司は近くに隠れている。
その証拠に、彼女の指に自らの指を絡ませた刹那、奴の刺すような視線が俺の背中に突き刺さっていた。
だが、俺は雪村を安心させる為に言葉を紡いだ。
 
「成程。奴の事だ、大方遊びに飽きてどこかで寝そべっているか、下手をすると帰ったかもしれん」
「ええ!?」
「気にするな。気まぐれな奴だ。もう子供達は帰して、我らも屯所に戻ろう」
 
その場を離れる為に動けば、絡み合わせた彼女と俺の手指は自然と解けてしまう。
すると、背中に刺さった“視線の刃”もあっさりと抜かれた。
 
「解せぬ」
「はい?」
「いや、独り言だ。気にするな」
 
解せぬのは―――奴の心。
彼女をそこまで想うならば、なぜ優しくしてやらぬ。
視線の刃を俺に向けるくらいなら、なぜもっとしっかりと繋ぎとめておかない。
 
いつの間にか消えた気配の行方を案じながら、俺は雪村を急かして歩く。
 
「あの……私…やはり、沖田さんを探してきますっ!」
 
子供らの声が近くに聞こえてきた時、彼女は立ち止り、踵を返そうとした。
 
「止めておけ」
 
俺は片手を神社の高い塀について、彼女の行く手を阻もうとした。
 
「でも、沖田さんはきっと待っています。誰かが見つけてくれるのを……。誰かが自分を探しに来てくれるって……。今、沖田さんを置いて帰ったら、自分は心底一人ぼっちだって思ってしまいます」
「!!」
 
解せぬのは―――お前の心。
普段は奴に嬲られ、時には無視されてもいるのに。
それでもあの男に優しくできると云うのか……。
その言葉自体は幼い表わし様であるものの、さながら奴の孤独の闇を理解していると云わんばかりだ。 
俺の腕に邪魔をされた彼女は、身を翻して逃げようとした。
 
「行かせぬ」
「斎藤さん!」
 
残りの手も塀について、彼女を腕の中に閉じ込めた。


カット433


互いの体温を感じ取れるほどの近さで、俺達は視線を絡ませる。
彼女は羞恥に駆られ、すぐに両目を固く閉じた。
 
「それほどまでに総司が気になるのか」
 
応えは無い。俺は雪村を塀に押しつけるように追い詰めた。
 
「答えろ。奴に手を取られてお前は嬉しそうにしていた。何故だ。俺の眼を見て答えろ」
「そのまま…です…ただ、嬉しかったんです。普段私をからかってばかりの沖田さんが、今日は優しくしてくださったので……」
「それだけか」
「はい……」
 
雪村は真っ直ぐな視線を俺に向けて応えると、この事は沖田さんには内緒にして下さいと呟いて、俯いてしまった。
 
そこへ背後に蠢く微かな人の気配。
敢えて姿を見せない奴の思惑が判らず、俺は苛立ちを募らせる。
ならば、と、一つの賭けに出た。
片手で雪村の顎を掴んで顔を上げさせ、逃げられない様に両脚の間に己の片膝を割り込ませる。
そしてそのまま華奢な背中を壁に強く押し付けた。
怯えた様に俺を見上げ、彼女は瞳を僅かに潤ませる。
俺はその瞳の奥の感情を読み取ろうと、彼女の内に俺自身を押し込まんばかりに覗きこんだ。

これは、あたかも―――。
衣擦れの音。
帯の結び目が解ける刹那の吐息。
足元に広がる絹の色。
そして淡い桜色と眩い白色を纏うお前の素肌。
刀を鞘から抜き放つほどの一瞬の内に、脳裏を過る俺の密やかな――――。
案の定、猛烈な殺気を含んだ視線が、再び俺の背に突き刺さる。
 
「お前は奴とはぐれて不安を覚え、加えて奴を置いて帰る事を厭うた。有体に申せ。お前は総司を好いているのか」
「そんな事は言えません」
「否、言える筈だ。それに俺はお前の世話役だ。万事知りおく必要がある」
「誰にもご迷惑はかけません。だから…自分の気持ちは誰にも……ましてや、斎藤さんには言えません!!」
 
きっぱりと、撥ねかえされた。
日頃は表に出さない彼女の芯の強さを目の当たりにして、俺はその言葉に偽りの欠片が潜んではいまいかと、雪村の双眸を改めて探った。
そこに浮かぶは困惑の色ばかり。
顔を動かせず、彼女は苦し紛れに視線のみを逸らした。
俺はそれを、総司を好いているのだと、肯定の意に捉えた。
 
「もう、いい。好きにしろ。奴を探すなら一人で探せ。俺は先に帰る」
 
どうせ奴はすぐ傍に居るのだ。
俺が立ち去れば、姿を現して彼女の元へ駆け寄るだろう。
そう思い、俺は拘束を緩めて雪村を腕の中から解放した。
 
「斎藤さん」
 
か細い声を背に受けて、俺は振り返ることなく歩き出した。
 
 
解せぬのは―――俺自身の心。
あのまま抱きしめて口づければよかったのに。
一言、お前を好いていると告げればよかったのに。
こんなにもあっさりと引けるものなのかと、己の心が解せなかった。
つまらぬ矜持とやらが俺の襟首を掴んで引き摺り回していたのかもしれぬ。
 
 

 
 
彼女の視界から姿を消し、俺は手近な繁みに身を隠した。
後は頃合いを見て、木に登るつもりだった。
 
ふいに視線を感じて、俺は頭上を仰いだ。
器用にも大木の枝葉に身体を隠す総司がそこにいた。
 
(やあ、一君)奴は唇だけを動かした。
(何をしている)俺も目で問うた。
(上がっておいでよ)奴は俺を手招きした。
 
音もたてずに木に登る。
そして、総司が腰掛ける太い枝のすぐ近くに俺も陣取った。
 
「尋問は失敗みたいだね」奴は皮肉な笑みを浮かべて囁いた。
「人の悪い奴だ。ずっと立ち聞きしていただろう?」
「一部始終、見聞きさせてもらったよ。以前から君が千鶴ちゃんに気があるのはわかっていたからね、どうにかして君らが二人きりになれる時間と場所を作ろうと苦心したんだよ」
 
目前の男は肩をすくめて俺に笑いかけた。
 
「お前の真意は何だ。お前は雪村を苛めてばかりではないか」
「焦れったくてね、君が。もっとはっきり言うと目障りなんだよね。自分の気持ちを偽って目の前に差し出された手を取るどころか見ようともしない。周りで見守る人間の事も考えなよ」
「そうか。だがお前には関係ない事だ」
「大ありさ。僕だけじゃなくて、周りの皆も迷惑しているのが判らない?あの子も君も態度をはっきりしてくれないと、誰もが先に進めないんだよ。あの子に想いを掛けているのは一人や二人じゃないってこと知っているでしょ?土方さんが君らに甘いのを良い事に、屯所内の空気を掻き乱すのも大概にしてくれないかな」
「俺や雪村がいつ掻き乱した。俺は一度もあの者に『男』として接した事は無い」
「問題はそこなんだけどな」
 
総司は顎で彼女のいる方角を指し示した。
彼女はその場にしゃがみ込み、肩を震わせていた。
やがて、堪え切れずに嗚咽しだした。
 
「斎…藤さん…さ…いと…う…さん……」
 
俺はその悲痛な声を耳にして思わず彼女の名を呼びそうになり、慌てて口に手を当てた。
 
「馬鹿だよ、さっきはどうして彼女を抱きしめなかったのさ」
「雪村は、自分の気持ちは誰にも言えぬと、ましてや俺には言えぬと言った……俺はお前こそが彼女の想い人なのだと思ったが…これは、一体……」
「しっ、彼女を見て」
 
雪村は手拭いで涙を拭うと、顔を上げて独りごちた。
 
「抑えるの、千鶴。抑えるの……。本当の気持ちを明かしては駄目…あの人の迷惑になるだけ。心の底に隠して、誰にも…誰にも……」
 
何が迷惑になるのだ…。何を抑えなければならぬのだ……。雪村、いや、千鶴……。
心中で呟いた筈の言の葉は、知らずに声となって漏れ出ていた。
 
「君さ、女なんて要らない、女の相手は面倒で煩わしいだけだと言ったでしょう」
「それはっ」
「うん、判っている。遊び女(め)は要らないってことだよね。でもね、あの子はいつも土方さんの傍に居るから、君と色男のやり取りをつい耳にしてしまうんだよね」
 
限られた付き合いの席を除けば、俺は色街へ出かけることもなく、そこで女を買うようなことも滅多になかった。
副長が心配して時々俺に女を勧めてくるが、煩わしいと断っていた。
だが、それをあの娘は誤解したと云うのか……。
惚れた女の帯なら何を躊躇うことなく解いてみせるものを―――。
 
「それに巡察の時でも、付文を一切受け取らないのは君だけだよ。普通は受け取るだけは受け取ってあげるのが礼儀っていうものなのにさ」
「その気もないのに、思わせぶりな事をする方がかえって礼を失すると思っただけだ」
「でも千鶴ちゃんはそんな君を見て、『女』としての自分の想いが伝わるのは不味い、とでも思ったんだろうね。君の新選組への想いや武士としての志の高さを、あの子は知っているから……。本当に君達は、二人揃って厄介な性質(たち)だよ」
 
俺は取り返しのつかぬ事をしてしまったような気がして、目前の総司と少し離れた場所に居る雪村の姿を交互に見遣った。
 
「ほら、さっさと降りて、あの子のところに行きなよ。局中法度に『恋スルベカラズ』なんて書いてないんだからさ」
 
その言葉を最後まで聞き終えない内に、俺は木から飛び降りた。
そして、力なく歩く彼女のところへ駆けていき、後ろから思い切り抱き締めた。
 
「千鶴!!」
 
事態が呑み込めずにただ身を硬くする娘に、俺は耳元で囁いた。
 
「また見つけたぞ。総司が見つからない以上、かくれんぼはまだ続く」
「斎藤さん…」
「どこにいようとも、何をしていようとも、俺はお前を見つけてこうして捕まえる。それで、いいか」
「はい…嬉しい…です……」
 
彼女が俺の言葉を果たしてどこまで理解したかは不明だ。
だが少なくとも、彼女が眩しいほどの笑顔を取り戻すだけの効果はあったようだ。
 
 

 
 
それから如何ばかりの間、二人抱き合って立っていただろうか。
奴の気配はいつの間にか消えていた。
 
やがて暮れなずむ空に気付き、彼女の手を取ってその場を立ち去ろうとした。
ふと、奴の居た木の辺りを見れば、朱色に染まって丸められた懐紙が下草の上に落ちていた。
 
ままならぬ体。ままならぬ時間。ままならぬ想い。
 
奴が俺や千鶴に何を思い、何をさせたかったのか――その歯痒い想いは、結局のところ俺に全て判ろうはずもない。
それでもこの白く小さな手だけは二度と離すまいと、心に誓った。
それはきっと奴の想いでもあると信じて―――。
 
 
 
 
(了)
  1. 2014/04/17(木) 21:43:37|
  2. 頂きもの
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  1. 2014/04/17(木) 22:39:19 |
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