皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「その答えはあなた」

今回お初の、伊能縁 玖音さんからの頂き物です♪

小説投稿サイトに、デフォの千鶴ではない、ちょっと特殊設定のオリジナル色の濃い千鶴の長編を投稿しているだけあって、今回のこちらのお話も少々いつもの皆さんのお話とは傾向が違うかも。
新選組の連中が、悪者になっている話が苦手な方は、読むのに注意して下さいね。


天霧さんのキスイラストに寄稿して下さったので、Kissシリーズに含めました。
が、お相手が千鶴ということで、ちょっとだけ顔を描き直してみました。その違いわかるでしょうかw

では、現実だったら、こんな√もあるだろうなあ、と思わせるような少しほろ苦い天千―――
続きからどうぞ♪


挿絵は感謝を込めて、玖音さんへ進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




その答えはあなた



「そろそろ限界だろ?」



「綱道さんは見つからず、揚句に鬼まで呼ばれちゃあな」



「千鶴が本当に綱道さんの娘の『千鶴』かどうかもわからないしな」



「良い子だけどな、俺たちに隠していることもあるみたいだから」



「これ以上、置いといても新選組には何の得も無いでしょ」



「副長、如何しましょう」



「そうだな……………」



いつものように静かに盗み聞いていた千鶴はおもわず息を吐き出した。

つい最近、彼らが幹部会議を千鶴に知られないように内密で行っていることには最初から気づいていた。
千鶴に隠していたということは、話し合いの内容が千鶴に聞かれたら困ることだから。だから彼らは話し合っていたのだろう。
元々、男所帯に性別を隠して女を住まわせることでさえ負担が大きいのだ。彼らがかなり苦労していたのは千鶴が一番理解していた。

仕方ない、殺される前にどうにかして逃げるしかない。



「あいつの処分は、近藤さんとも話し合って決める。おめぇらはいつもみたいにしとけ」



新選組のためならば非常な決断をする土方のことだ。千鶴は間違いなく殺されるだろう。



(身から出た錆、かな。もう、戻れないみたい。私はまだ、死ぬわけにはいかない。みなさんには申し訳ないけど、逃げよう)



そう思った千鶴は、さっそく行動を開始した。






新月の夜、千鶴は荷物を纏めて塀をよじ登って越えると屯所を後にした。


あれから数日たっている以上、もう処分が決められている可能性が高いと判断しての逃亡だった。
頼る当てはないといえば嘘になるが、ひとまず千鶴は新選組の付近に宿を確保していた。
その宿に逃げ込むと、小袖姿に着替えて化粧も施し、男から女に戻った。これも、脱走しようと決めてからひそかに購入したものの一つだ。
彼らは千鶴が小袖を持っていることは知らず、男装したまま逃げ回ると思っているはず。
とにかく、今は静かに状況を判断しようと思った千鶴は、その宿で眠った。






翌日の早朝から、彼らはすでに動き出していた。


千鶴の姿が見えず、逃走したと分かった彼らは京中で前髪の背の低い男の子を必死に探し回っていた。
小袖姿で高下駄をはいて身長を誤魔化し、化粧もして女に成りすましている千鶴は気付かれるはずもなく、彼らは監察方も動かして必死に探し回っていた。


茶屋で千鶴を探している藤堂をやり過ごしながら、これからどうするか千鶴は必死に考えていた。
江戸の家は場所を知られている以上、戻れる場所ではない。あそこにはたくさんの思い出の品があるが、諦めるしかないだろう。
何とかお千に会えないかと願っていた頃、意外な人物に会った。



「あ…」



「これは、ご無沙汰です」



茶屋を出ようとしてすれ違ったのは、天霧だった。
千鶴の女の姿に多少驚いてはいたが、それほど動揺した様子は見せず、周囲を見渡して千鶴をそっと連れ出すとさりげなく気遣いながらも淡々と問う。



「聞きました。新選組を抜けたそうですね。今も彼らが必死に探し回っていますよ」



「……………皆さんが私の処分を考えあぐねていて、このままでは殺されるかもしれないと思ったので」



「私達は何度も忠告したはずです。人は信用ならないと。ですが、君は耳を貸さなかった。これが、その結果です」



「そうですね。私は愚かだった。彼らが冷酷になれるということを、都合よく忘れていたのですから」



天霧は何度も警告してくれたのに、耳を貸さなかった過去の自分が恨めしい。
結局彼の言うとおりになったのだから余計につらい。
うつむきながら寂しげに微笑めば、天霧はそっと頬を撫でてくれた。
それだけで、深く傷ついていた千鶴を慰めようとしてくれているのが分かる。


「風間と千姫があなたを探しています。
 本来ならば、私はきみを風間のもとに連れて行かなくてはいけないのですが、君は風間と対等の位置にあり、ここにいるのは君です。
 だから君が選んでください。どちらのもとへ行くのか。言うまでもないでしょうが、このままでは捕まってしまいますよ」



「私、は……………」



風間のもとへ行くことに対しては戸惑いしかない。
彼が悪い鬼ではないとはわかっているが、それでもあの強引さは苦手だ。だから答えなど、一つしかなかった。



「連れて行ってください。私を、お千ちゃんの元へ」



「分かりました。八瀬の郷まで送りましょう」



答えなど、最初から決まっていた。



「千鶴ちゃんっ!」



後ろから慣れ親しんだ声で名前を呼ばれ、一瞬肩がビクつくが、天霧がそっと寄り添い、盾になるように沖田と原田の前に立ちふさがっていた。


カット423その答えはあなた


振り返ると、そこには怒りと殺気を振りまく沖田と、苦しげに顔を歪めた原田がいた。



「千鶴! お前ほんとに―――」



「私は、みなさんを信頼していたのに、どうして何も言ってくださらなかったんですか?」



原田が怒鳴りかけたが、悲壮な声で千鶴は淡々と問いかけた。
その瞳に映る感情は、間違いなく悲しみと苦しみ、そして絶望だ。
それを見た原田は何も言えず、鋭く彼女をにらんでいた沖田がかわりに言う。



「君だって、僕達の会話を盗み聞きしてたんだから、おあいこじゃない?」



「そうですね。もう今更です。ですが、私もこれで反省しました。
 人間は信用できない。それが学べたのですから。では、これでお別れです。今までお世話になりました」



千鶴は涙を耐えながら頭を下げると、天霧が千鶴を肩に抱き上げた。そして、愚かだと言いたげに首を振った。



「君たちは愚かですね。もし本当に姫が偽物ならば、我々が姫を狙うことなどなかった。
 君たちは裏切ったのですよ。何の罪もない、献身的に尽くしてくれた一人の女性を」


天霧はそう言うと、声も出さずに震えながら泣いている千鶴を連れてその場を去った。
二人からの濃い視線は感じられても、千鶴はもう二度と、二人の顔を見ようとはしなかった。

何故、今回自分が冷静でいられたのかようやくわかった。
彼らの裏切りがあまりも衝撃的で、きちんと受け止めることが出来なかったのだ。だが、今なら分かる。
沖田と原田に向けられている視線は、裏切り者に向けられる、拒絶と怒り、悲しみが感じられたのだから。


激しくしゃくりあげる千鶴の背中を、天霧は優しくなでてくれていた。








それから一年。

八瀬に逃げてきた千鶴は千姫に仕えることが決定し、僅か一年の間に死にもの狂いで忍びの技を身に着け、一人前の忍びとして動いていた。
今では千姫の忍びとして諜報活動などを行うことが多い。

後に分かったのだが、新選組は千鶴を捕らえ、拷問の末にすべてを話したもらおうという決定になっていたらしい。
ところが、その決定を下した数日後に千鶴が屯所を抜け出したので幹部は慌てて千鶴を探し回った。
千鶴は天霧の手を取り風間の元に行ったことになっていて、彼女は裏切り者として新選組内で名が知られていた。

今でも新選組幹部とは京で会うことが度々あったが、それでも千鶴は彼らを徹底して避けていた。
山崎とは一度遭遇したのだが、千鶴はその時責められて思わず怒鳴ってしまったのだ。

「裏切ったのは、あなたたちだと」
 
山崎から逃げて千姫の元に戻った千鶴だったが、その日は一晩中泣いていた。




それから、千鶴はすっかり変わってしまった。

天真爛漫で純粋で人を疑うこと知らなかった彼女は、今では千姫でさえも少し扱いに悩む冷酷な忍びになっていた。
この一年、体を鍛えた結果、新選組幹部に並ぶ実力を手にして、背も高くなり、胸も大きくなった。
化粧で顔を変える技も覚え、髪も腰より長くなっていた。常に周囲を警戒し、千姫にしか心を許さない千鶴は、氷姫とすら裏で呼ばれるほど変わってしまっていた。

雪村 千鶴という名前は捨て、雪華と名乗った。

それは全て、新選組がきっかけだ。

彼女の心を大きく傷つけて今の彼女へと変えたのは、間違いなく新選組だった。






その日、雪華はぼんやりと月を眺めていた。

あれからもう一年。
新選組を思い出すと今でも心が張り裂けそうになる。
千姫のために動いている時間は忘れられているのに、こうして暇なときには思い出してしまう。
あの頃と見た目も中身も随分変わったのに、新選組に対するこの心だけは変わらなかった。

何度千姫が慰めてくれても、何度君菊がヤケ酒に付き合ってくれても、この心だけは消えなかった。

傷は癒えたはずなのに、苦しくて苦しくて仕方がない。



「どこで間違ったのかしら」



いまさら思う。

どこで間違ってしまったのだろう。

何を間違わなければこうなることはなかったのか。答えを探し続けているが、見つからない。
探す気も失せた。変わらない事実は一つ、もう彼らとは会えないということだけ。だから、その事実だけで良い。



「今更、戻れないもの」



淡々と言い、諦める。それでも、涙は枯れない。

頬に伝う涙が鬱陶しくても放っていると、背後から伸びた手にそっと拭われる。そのまま背後から抱きしめられ、その優しい手を上からつかむ。

その温もりに、その優しさに何度助けられただろう。

千鶴が新選組から逃げたことにより、風間と千姫の関係も変化した。
風間は千鶴がどこかで死んだと思い、渋々ながら千姫と婚約した。
後に雪華のことを知って怒り狂ったそうだが、今更約束をたがえられずに千姫と婚姻の儀を進めるべく準備は滞りなく進んでいた。
その準備のために雪華はこのごろよく出かけていたし、天霧も何度かここに来ていた。

雪華が決して警戒心を抱かない存在、それは千姫以外に一人だけ、天霧だけが雪華に決して警戒されない存在だった。



「心はまだ癒えませんか?」



「癒えました。けれど、涙だけは止まりません。後悔しているからでしょうね」



ここ最近になって、千鶴はようやく新選組に文を送った。
返信なんて求めない、別れの文だ。約束と今までお礼、そして、一言だけ責めた。

『裏切ったのが私だというが、私からしてみればあなた達が先に裏切ったのですよ』

答えなど、もう出ない。



「私は、これから一生千姫に仕えます。もう誰も、私は信じない」



「私のこともですか?」



辛そうに聞かれてしまい、思わず振り返って否定していた。



「あなたは違います! だって、私を助けてくれました。だから、あなたを疑うことなんかできません」



疑えない、嫌いになれない。


だって、この人は私を支えてくれた、私を助けてくれた、誰よりも優しい鬼。
新選組と決別した自分をずっと支えてくれた、ずっとそばにいてくれた。
そんな天霧に対して、雪華は決して言えないが隠すこともできない淡い思いを抱いていた。



「それはよかった」



安堵の微笑を浮かべ、天霧はすっかり長くなった雪華の髪を愛おしむように撫でた。そのまま、口づける。

カット325b


「!?」



「私は風間が婚礼を終えた際、天霧家に戻ることになりました。
 これからは、天霧家当主として生きていきます。妻もめとらなければなりません」



その言葉に、心が痛む。彼への想いを自覚したのは最近なのに、これはひどい。
口づけて期待させて、それからどん底に落とされたような気分を味わわれ、胸が酷く痛む。



「私に釣り合う身分の女鬼は、氏は持たなくても純血の女鬼であることが条件です。
 ならば、私はあなたを妻に迎えたいと思っています」



予想外の展開に目を見開き、思わず昔の自分に戻って聞き返す。



「私、を?」



「ええ。孤独に苦しむあなたを救いたい。
 何より、誰よりも愛おしいあなた以外、私は選びたくない。私を、選んでくれますか?」



優しすぎるその声に、千鶴は無言で答えた。
天霧の唇に自らの唇を押し付け、涙を流す。それは、嬉し涙だった。

誰よりも優しい腕の中で微睡みながら、千鶴は一年ぶりの穏やかな寝顔で眠っていた。
それを見守る優しい視線に、注がれている熱い想いを感じさせられ、千鶴はようやく心の傷が癒えたように感じた。

何度も何度も後悔もしたが、その先に答えを見つけた。









全ては、あなたと添い遂げるためだったのだと。






  1. 2014/03/06(木) 17:26:04|
  2. Kissシリーズ
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  1. 2014/03/12(水) 13:21:47 |
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玖音様♪

気に入って頂けて何より^^
天霧さんを文章にある通り、カッコよく描けていたなら幸いです。
あまり、天霧さんは描いてないので、ちょっと自信なかったんですが…
お話の方はまたいつでもどうぞ(^-^ゞ お待ちしております。
そちらの連載も頑張って下さいね。
  1. 2014/03/12(水) 22:41:08 |
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  3. ちょこ #-
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  1. 2014/03/25(火) 20:50:26 |
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  1. 2014/03/25(火) 20:50:51 |
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  1. 2014/03/25(火) 22:29:27 |
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玖音様♪

はい、お話の方は確かに受け取りましたので、ご安心を。
こちらへ届いている2つのコメントは、全く同じ内容ですよね?

また、UPまでに時間を少し頂きますが、どうぞ気長にお待ち下さいね(^-^ゞ

ではでは、素敵な作品ありがとうございました^^
  1. 2014/03/25(火) 22:53:11 |
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