皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「ねこの寝ごころ」

まそほさんからの頂き物です♪


今回使ってもらったイラストは、21年飼っていた猫が亡くなった時に、つい描いてしまったものです。
膝の上に乗っかると、こっちが下ろすまで丸くなって寝ているコでした。
絵の中でもお話の中でも、私の代わりに一君に抱っこされて、ずっと夢を見ていられるといいなあ(^-^)

そんなにゃんこに、つい羨望の言葉を呟いてしまったちーちゃんの運命や如何にw

どうぞ皆さんも天然な一君と共に、続きからほのぼのして下さい^^



挿絵は感謝を込めて、まそほさんに進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




ねこの寝ごころ




 事の始まりは、千鶴が不用意に発した言葉からだった。


 縁側に腰掛けて、ひざの上に猫を乗せて。
 斎藤が、珍しくくつろいだ姿を見せている。
 傍らにお茶を運びながら、千鶴は小さな呟きを漏らした。
「いいなあ……」

カット196

 丸くなって目を閉じている猫に向けられる斎藤の眼差しは、どこか温かい。
 誰はばかることなく彼に甘えられる、それを許されている猫がうらやましくて。
 つい、こぼしてしまった本心だった。
「気持ち良さそう……」
「替わるか? こいつをあんたに渡そう。そこに座れ」
 そう言って自分の隣を指し示す斎藤に、千鶴は慌てて言い添えた。
「あ、違います。猫ちゃんが、斎藤さんのおひざに乗せてもらえていいなあ、って……あ」
 自分が何を言ってしまったのか、気づいたのは言葉の終わり。
 斎藤は目を丸くして千鶴を見つめている。
 視線を受けて、狼狽しながら言い訳をしようとして────。
「いえ! あの今のは私も斎藤さんのおひざに乗せてもらいたいとか決してそういう意味で言った訳ではなくて猫ちゃんがとても気持ち良さそうでうらやましいなあってあの」
 千鶴は墓穴を掘った。
 斎藤は黙って千鶴を凝視している。
 その顔からは感情が読めなくて、今の言葉が斎藤にどう受け止められたのかわからなくて、怖い。
 居たたまれなくなった千鶴は、持っていた盆で顔を隠した。
「あの、私、もう行きますね、おくつろぎのところをお邪魔してしまって、すみませんでした」
 ここはもう逃げるしかないとひざを着いたまま向けた背中に、斎藤の声が掛かる。
「待て」
 低く響くその声に、千鶴は思わず動きを止める。だが振り返る勇気はなくてそのまま固まっていると、背後で斎藤の動く気配と、衣擦れと共に湯呑を置く音がする。続いて聞こえたのは猫の鳴き声、それからまた、斎藤の声。
「雪村」
 名を呼ばれて、千鶴はゆっくりと振り向く。恐る恐る盆を下ろすと、斎藤と目が合った。
「座れ」
「は……え?」
 低くこもった声に返事をしかけて、千鶴は戸惑う。
 斎藤のひざの上に、もう猫はいない。
「猫ちゃん、どかしちゃったんですか?」
「…………」
 斎藤は黙して語らない。
 千鶴は、自分が何をどうすればいいのか、まったくわからない。
「あの……」
「盆はそこに置け」
「あ、はい」
 とりあえず指示に従って中腰のまま体を捻り、盆を斎藤とは反対の脇に置いたところで、いきなり腹に回って来た手に後ろから引き寄せられた。

カット420ねこの寝ごころ

「きゃっ!」
 体勢を崩して尻を着いたのは、縁側に腰掛けたままの斎藤のひざの上。
「さっ、斎藤さん!?」
「…………」
 斎藤は明後日の方を向いて、千鶴と目を合わせようとしない。
 というよりは、千鶴と斎藤の身の丈の差で斎藤が千鶴の方へ顔を向ければ──触れてしまう。
 近すぎる顔をうつむけて、両の拳を胸の前で握りしめて、千鶴は身を硬くする。

 斎藤のひざの上で眠る猫がうらやましくて、ほんの少し、自分が猫になりたいと思った。
 それは確かに思ったけれど、この状況は一体────。

(さっ、斎藤さんて、こんなことするような人だったの……?)

 事態が呑み込めなくて混乱しまくる千鶴に、斎藤が言った。
「網道さんの行方が杳として掴めぬ現状で、あんたが父親に甘えていた頃を懐かしく思うのも無理からぬことだろう。気持ちはわからぬでもない」

 ……………………千鶴は脱力した。

 いや、斎藤は悪くない。まったくもって悪くない。
 斎藤は斎藤なりに、未だ父との再会が叶わない千鶴が寂しがっているのだと思い、慰めようとしてくれているのだ。
 そもそもひざの上に乗せてもらって甘えられる猫がうらやましい、などとはまるきり子供の言い分で、年頃の娘が口にすべきことではない。斎藤に幼子のように扱われても、というかあやされても、仕方がない。
 仕方はないけれど、父を慕うのと同じ思いで斎藤を見ていたと思われるのは千鶴にとってはかなり心外で、そこは否定して訂正したいところだが、そうするとせっかくの斎藤の厚意を無にすることになる訳で……。
 肩を落として、力無く頭を垂れる。
 その拍子に斎藤にもたれかかる格好になって、千鶴はまた胸を高鳴らせる。だが着物越しに伝わる斎藤の、千鶴を上回る鼓動のその速さに違和を感じて、ふと冷静になる。
 体の大きさの違いからして千鶴より斎藤の方が心拍が速いのは当然なのだが、それにしても速すぎる。そう考えれば、体も少し熱を帯びているような気がする。
「あの、斎藤さん?」
「なんだ?」
 呼吸に乱れはないし背けたままの顔色はうかがえないが、念のため、千鶴は斎藤に問うてみる。
「どこか、体の調子が悪い、ということはありませんか?」
「いや。少し肌寒さを感じてはいるが」

 …………それは悪寒なのではないだろうか。

 ぎこちなく、それでも笑顔を浮かべて、千鶴は斎藤に言った。
「斎藤さん、あの、お気遣いありがとうございました。斎藤さんのおかげで元気が出ました。だから、もう」
「もう行くのか」
 千鶴の腹に回って支えになっていた斎藤の腕が、千鶴の体をとらえる枷と化す。
 その熱さに、千鶴は再度問いかける。
「斎藤さん、ひょっとしたら、熱があるんじゃありませんか?」
「いや、どこも具合の悪いところなどない。……だが、あんたは温かいな」
 頬ずりするようにあごを寄せられて、千鶴は確信する。
 このキャラのブレ……いや、一連の斎藤らしからぬ言動は、おそらく発熱のためだ────。
 蘭方医の娘として、千鶴は説得を試みる。
「寒いのでしたら、一度お部屋に戻りませんか。それで少し休まれて」
「もう少し……、あと少しだけ、このままで……」
「やっぱり斎藤さん、相当高い熱ありますよね!?」」
 その台詞まではあと六章くらいある。ここではまだ早い。
「特に具合の悪さは感じない、と言っている」
 傍目には駄々をこねる千鶴をひざに抱いてやって斎藤があやしているようにしか見えない、しかして実態は逆、というこの構図。
 幼子か猫かといった扱いだとしても、『斎藤さんにおひざ抱っこ♪』なんてオトメが心ときめかせる劇的境遇のはずなのに、危機的状況にしかなっていないのは何故なのだろう……。
「あの、斎藤さん、そろそろ下ろしていただけませんか? もしも誰かに見られでもしたら……」
 誰に見られても面倒なことになりそうな気がする。
 それはもう、色々と。
「斎藤さん?」
「…………」
 返事がない。既に、ただのしかばねとなりつつあるようだ。
「斎藤さ~ん!」
 陽ざしの降りそそぐ縁側で、千鶴は懸命に、しかし声は抑えめに、斎藤の名を呼ぶ。
 普段は冷たく厳しい言葉や態度で一線を引く斎藤が、ここまで近い間合いに自ら千鶴を入れてくれた──たとえそれが誤解からだとしても、今の斎藤が、おかしな具合に常とは異なっているとしても──その事実は少なからず千鶴の胸と目頭を熱くしたが、状況が状況だけに、違う意味でも泣きたい。
「斎藤さーん……」
 通りがかった監察隊士二人組の手を借りて斎藤の腕から脱するまで、猫の声にも似た千鶴の呼び掛けは続いた。




  1. 2014/03/01(土) 10:54:12|
  2. 頂きもの
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:3
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コメント

まそほ様へ♪

こんにちは!酔狂元乙女です。
ごめんなさい、長くご無沙汰しておりましたがお元気でしょうか?
3月の声と共に、こうして楽しい新作を拝読できましたこと、嬉しく思います。

アハハ!と本当に楽しく読ませていただきました。
この熱に浮かされた斎藤さんは、以前に書かれたSS「そして今日は明日へと~」の、狸と酔った斎藤さんのお話を彷彿とさせられて(笑)
あのカワイイ斎藤さんが戻ってきて嬉しいですヾ(*´∀`*)ノ
彼はこういうことでもなければ、動いてくれない人ですものね^^;
で、ズレた掛け合いが楽しくて。ゴメン、千鶴ちゃん。心中は察しますが、すれ違う二人はやっぱり楽しい(笑)

そして、まそほさんのいつもの端正な文章に、今回は所々に「崩し」が入っていて、そちらにもニヤリとしてしまいました。

いつも丁寧な創作をされるので、一つ一つにとても時間がかかると拝察しますが、どうぞこれからも素敵なお話を作り続けてくださいね。
次回作を心待ちにしております!
  1. 2014/03/01(土) 14:30:43 |
  2. URL |
  3. 酔狂 #-
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  1. 2014/03/01(土) 23:58:20 |
  2. |
  3. #
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酔狂元乙女様♪

 こんばんは、まそほです。
 こちらの方こそ音沙汰なしで失礼しておりましたm(_ _)m
 リアルの事情で、しばらくウェブ活動含め色々控えておりましたもので(^^;)
 さて、ちょこさんにもお話ししてたのですが「どうしたら斎藤一の理性は吹っ飛ぶのか」を考えた結果、今回はこうなりました♪
 理性は吹っ飛んだけど意識も糖度も吹っ飛んだ、という……(T▽T)
 そして私の語り口だとハイテンションコメディとか無理なので、まあこんな感じで。
 『そして今日は~』と合わせて「私の書くザンネンな斎藤さん」と称してますが、ご笑覧頂けたならうれしいです(^O^)/
 コメント、ありがとうございました(^^)
  1. 2014/03/02(日) 00:02:46 |
  2. URL |
  3. まそほ #RsoBnYRY
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