皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「僕を殺して、もう一度君に逢う為に」

Nさんから、沖千の頂き物です♪
いつもはニッチなCPを取り上げる事の多いNさんが、今回極めて王道な沖千を書いてくれました^^


沖田さんと言えば、労咳がつきもの。
今回のイラストも、「変若水を飲まず、江戸で療養生活に入った沖田さんと千鶴」辺りを妄想して描いたので、
NさんのこのSSは、その私の妄想に的中でした!
文章にしてくれて、ありがとうございます。

ではでは、そんな切ない沖千を、続きからどうぞ。



挿絵は感謝を込めてNさんへ進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




僕を殺して、もう一度君に逢う為に


カット413僕を殺して、もう一度君に逢う為に

「僕には、『何も無い』んだ」
 不意に僕がそう言うと、傍らで僕の薬と湯呑みを載せた盆を置こうとしていた、君の動きが止まった。
「僕には他に何も無いから」
 もう一度そう言うと、その大きな眼がパチパチと瞬く。
「沖田、さん?」
 戸惑う君の言葉と視線を受けながら、僕は言葉を続ける。

「新選組の為に――近藤さんの為に、浪士たちを斬る。それがどんなに重い事でも、僕にはそれが必要だったんだ。『近藤さんが期待してくれている』――その思いが、必要だったんだ」
 寝床の中から伸ばした自分の腕は、思った以上に白く、そして骨張っていた。
 ちょっと伸ばしただけで怠さを感じる自分の身体に、何故か涙が零れそうになる。
 僕の身体を冒した結核とやらは、僕の『全て』を奪って行った。
 新選組の一番隊組長として、近藤さんの為に刀を振るう――それが出来なくなった今、組を追い出され、治るかどうかも分からない療養の日々を送っている。
 理由は偶然だったけど、何処かで望みを繋いでいた変若水すらも、僕の病を治してはくれなかった。

「人を斬れなくなった。近藤さんの側に居られなくなった。だからもう――」
「違います!」
 「――僕には何も無いんだ」そう続けたかった僕の言葉は、君の甲高い声に遮られる。
「そんな事無いです! 沖田さんに『何も無い』なんて事は無いです!!」
 悲痛な叫びにも似たその声に、逆に僕の心がスゥッと冷めて行く。

「君は何を知ってるの?」
「……え」
「君が僕の、何を分かっているって言うのさ」
「おき、たさ」
「新選組でも無い『他人』に、何が分かるって言うのさ。――ああ、そう言えば、君は『人』ですら無かったんだよね。あ~あ、戦いの事はどうにも出来なくてもさ、君が居なかったら、少なくともあの鬼たちとは戦わずに済んだんだよね? そう言えば」
 伸ばした腕を下げ、気怠い身体を身動ぎして君の顔を見つめれば、案の定、君はビクリと身体を震わせる。

 ――ああ、君は変わらないよね。
 僕を見る度、接する度に、そうやって怯えた目で僕を見てる。
 か弱い仔猫。憐れな虜囚。
 役立たずで、他人の顔色ばかり窺って。バカバカしいまでにせっせと雑用をこなして。なのに何時の間にやら、この人斬り集団の中に『居場所』を作ってしまった。
 腹が立つよ、本当に――
「君の所為だよ」
「――え」
 君の鳶色の瞳が、僅かに見開かれる。
「死ぬ事なんて怖くなかった。僕には『何も無い』から――戦って……人を斬って、近藤さんの為に死ねるなら、それで良いって思ってたんだ」

 なのに、今は――

「――怖いんだ」
「おき……たさん?」
「如何してだろうね。今になって、今頃になって、「死ぬのが怖い」なんて思い始めてる。若し地獄なんてモノが本当に在るならさ、煉獄の炎に焼かれても、八つ裂きにされても仕方ない事ばかりして来たのにね……自分の番になったらこの体たらくだよ」
「あ、あの……っ」
「君の所為だよ」
 驚きと困惑と――そんな感情が混ざった様な君の頬に、僕はもう一度手を伸ばす。
「君が、悪いんだ」

 『うつろ』の僕に、『君』と言う存在を吹き込んだ――

 滑らかな肌はほんのりと暖かく、自分とは違う『生』を感じさせる。
 表情を変えないまま暫く為すがままにされていた君は、不意にそんな僕の手を取り、導く様に――

「――え」

 気が付いたら、抱き締められていた。
 思っていたより僕は弱っていたらしい。
 本当なら片手で一捻りの筈の小さな君に、寝床から半身を引き摺り出される様にして――抱き締められていた。

「……沖田さんが、どれだけ私に憎まれ口を叩いても」
 呻く様に、囁く様に――その声は、僕の耳に滑り込む。
「…………例え沖田さんが、『全てを無くした』と思っていても」
 抱き込んだ僕の頭を撫ぜる手は、あくまでも優しく。


「私はきっと、沖田さんの側に居ます。――だから、沖田さんが『全てを無くす事は無い』んです」


 ――――ああ、君は本当に――――


「……そうだね」
 何故か可笑しくて、ちょっぴり吹き出しながらそう言えば、「……そうですよ」と不貞腐れた声が頭の上から降って来る。
「それに、近藤さんも土方さんも……新選組の皆さんは、みんな沖田さんの帰りを待っているのですから。だから……そんな事を仰らないで下さい」
「ははっ、近藤さんはともかく、あの土方さんが僕を待ってるなんて思えないけどなあ。寧ろ「厄介払いが出来た」って喜んでるんじゃないの?」
「もう……! それだけ減らず口が叩けるのなら、もう大丈夫ですよね?」
 機嫌を損ねてしまったのか、そう言って離れようとする君の腕に、僕は緩く手を掛ける。
「沖田さん?」
「もう少し、このままで居てよ」
「ですが、もう直ぐお薬を飲まないと――」
「……ね? 少しだけだから」
 見上げる様に少しだけ甘えた声音を作ってみれば、忽ちその目元がほんのりと赤味を帯びる。
 君は数瞬戸惑う様に視線を辺りに這わせていたけれど、やがて諦めた様に浮かし掛けた腰を再び下ろし、僕の頭を自分の胸に抱える様に抱き締め直してくれた。
「もう少しだけ……ですからね?」
「うん、ありがとう」
 さらさらと僕の髪を撫でる感覚が、心地良い。

「ねえ、千鶴ちゃん」
「何ですか? 沖田さん」
 ふと呼び掛ければ、頭の上からまるで子供をあやす母親の様な声が降って来る。
 その声に僕の方が年上の筈なのに、と何だか気恥ずかしくなって、
「……何でもない」
 つい素気なく返してしまえば、君はやっぱり母親みたいな声で「……変な沖田さん」と呟いた。

 ――トクン、トクン……
 着物の上から聞こえる、少しだけ早い君の鼓動に耳を澄ます様に、僕は静かに目を閉じる。
 一定の速度を紡ぐその旋律と、僕の頭を撫でる君の手の暖かさに、僕はとろとろと久しく来なかった心地良い眠気を感じていた。

 ――ねえ、千鶴ちゃん。
 君はああ言ってくれたけど――僕はやっぱり、もうじき死ぬんだと思う。
 受け容れた訳じゃ無い。怖いのも変わらないよ。
 だけどやっぱり、僕の身体の事は、僕が一番良く分かってるからね。

 悔いは無いよ――誰よりも尊敬してる近藤さんの為に、僕は力を尽くせた。
 人斬りなんて呼ばれる様にはなっちゃったけど、それさえも、僕にとっては誇りだと思う。
 だけど――少しだけ、未練は有るかな。
 君を置いて逝ってしまうだろう事を――こんな事なら、もう少しでも優しくしてあげれば良かった、って。
 あ~あ、僕がこんな身体じゃ無かったらなあ。
 もっともっと近藤さんの為に浪士たちを斬って、もっともっと――そう、誰にも君を渡さずに済むよう、守ってあげられるのに。

 ――ねえ、千鶴ちゃん。いっそ君が僕を殺してくれないかな?
 どうせ死んじゃうなら、戦いでも病にでも無く、君の手に掛かって逝きたいよ。
 戦いでも病でも、多分どっちで逝っても後悔すると思うけど……若しも君から殺されるなら、「それも良いかな」って思える気がするから。
 ……な~んてね。……うん。そんな事言ったら君が悲しむって分かってるし、本当にその時になったら、そんな事言わないと思う。
 きっとね、どんな形でも君を守る――守りたいって思って逝くと思うから。

 そして出来る事なら――ああ、でも、今は良いかな。
 君の温もりが、すっごく気持ち良いから。
 今は少しだけ眠らせてよ。君の手で、少しだけ。


カット406


(僕を殺して、もう一度君に逢う為に)


  1. 2014/02/16(日) 09:39:01|
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  4. | コメント:2
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コメント

どうも、メールを頂き参りました。
しつこくも送った創作に素敵画をありがとうございます。
まあニッチと言うか、マイナー好きなのは否定しないです。(笑)
ちょこさまの妄想に( ゚д゚)ビンゴーだったのならなおよかったです。
画像も頂戴していきます。また何か「降って来た」ら宜しくお願いします。(←
  1. 2014/02/16(日) 21:15:32 |
  2. URL |
  3. N #sugSc65U
  4. [ 編集 ]

N様♪

マイナーでもメジャーでもw また素敵なお話ができましたら、どーぞどーぞ♪
是非読ませてやって下さい。
今回は、切ない沖千ありがとうございましたー^^
  1. 2014/02/17(月) 14:56:26 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

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