皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「一緒にいてくれてありがとう」

テール×テール」のドラキョンさんから
千鶴と薫のカラーキスイラストへSSを頂きました♪

今回のこのお話は、ドラキョンさんのサイトでは3回連載となっていましたが、
うちへはその最終話―――イラストテーマのお話だけ頂いて参りました。
勿論、これだけで読めるお話ではありますが、前2話が気になる方は是非本家へ飛んでお読み下さいね!

薫にもこんな優しい幸せな過去があったらいいなあ…と、つくづく思わせるお話です。
続きからどうぞご堪能下さいませ^^



挿絵は感謝を込めてドラキョンさんに進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。


一緒にいてくれてありがとう



雪に閉ざされた冬を越し、木々が芽吹き始めたころ、
二人は連れ立って菜の花畑へやって来た。
この菜の花は雪の積もる前、春になったら二人で見に来ようと誓い合って、
蒔いたものだった。それが今を盛りと満開になっていた。
二人は微笑みあうと、思い思いに遊び始めた。

「ちーずーる。」
「かおるっ。」
しゃがみこんでいた千鶴が、薫の声掛けと同時に立ちあがった。
千鶴には薫が来ることがわかっていたかのような頃合いだった。
顔を見合わせると、二人はふふふっと笑い合って、
背に回した手を互いに差し出した。
薫の腕には両手一杯の菜の花があった。
千鶴の手には、つたない出来ではあったが、愛らしい花冠が握られていた。
「「あげるっ」」
二人で同じことを考えていたのが嬉しくて、同じ言葉を言えたのが可笑しくて、
二人はまた笑った。


カット387一緒にいてくれてありがとう


「薫、ちょっと待ってね。うんしょ、薫、ちょっとだけ屈んで。」
「いいよ。」
薫がかがむと、千鶴は花冠をそっと薫の頭に乗せた。
「はい。千鶴。」

千鶴から両手いっぱいの花束が千鶴に手渡された。
「ありがとう薫。これ持って帰ってお浸しにしてもらおっか。」
にっこり笑ってそんなことを言う妹に、薫は頬を膨らませた。
「駄目っ。これは食べちゃ駄目なのっ。わかっているくせに。」
「嘘だよ。薫からの贈り物を食べたりしないよっ。」
いつもからかわれてばかりの薫をからかうことができた千鶴は、
嬉しそうに笑った。
「わかんないじゃないか。千鶴は食いしん坊なんだからっ。」
「く、食いしん坊なんかじゃないもん。」
「こんなきれいな菜の花を見て、お浸しが出てくるのは、
食いしん坊だからだろう。」
「ち、ちがうもん。薫が私にお花いっぱいくれるって分かっていたんだもん。
薫、お浸し食べたいなって思ってたもん。」
「僕だって千鶴が花冠をくれる気だってわかっていたよ。
お浸し食べたいなって思っていることもね。」
「本当に?」
「千鶴こそ本当か?」
口ではそんなことを言いながら、二人にはちゃんとわかっていた。
どっちも本当のことだと。


何しろ、二人は母の胎内にいる時から、
ずっと言葉を介さず話してきたのだから。
温かな海の中を揺蕩っている間、同じ空間にいる互いを意識し合っていた。
何をしなくても相手のことは何となくわかっていた。
もう少し、大きくなってくると、互いの存在を
はっきりと意識できるようになってきた。
でも互いがとても近くて、幼い二人には、
それがどちらの意識なのかはっきりと認識することはできなかった。

そんな時だった、二人を包む胎内がキュッと縮まる気配がしたのは。
そっと意識を外に向けると、自分たちを宿してくれた母がたいそう嘆いていた。
その理由は、胎内に響く母の声や、外から響いてくる父の声を聞いて分かった。
自分たちが二人を悲しませている。
それは、二人にとっては青天の霹靂だった。
ただ、二人で胎内にいるだけなのに、それがいけないことだと言われても、
二人にはどうすることもできなかった。

千鶴は、母の感情に引きずられて、胎内で泣いた。
『そんなに泣いていたら、弱って死んでしまう』と薫が訴えても
千鶴は泣き止もうとしなかった。
『二人でいるのが悪い事ならば、私が死んでしまえばいいんだよ』
千鶴がそんな風に思っていることが、薫にはわかってしまって、
そんな風に千鶴を悲しませるのが、大好きな母であっても許せなくて、
薫は思いっきり母の腹を蹴飛ばした。
薫が蹴飛ばしたのが効いたのか、その後父母は、
二人共生み育てることを選択してくれて、二人は安堵したのに、
それをまわりが許さなかった。

その時が来て、ずっと一緒にいようと誓っていた二人だったけれど
この時ばかりはそれは叶わない。
千鶴を苦しい胎内に長く留めるのが可哀想で、薫は千鶴に先に出るよう勧めた。
暫くすると外から、千鶴の誕生を喜ぶ声が聞こえてきた。
その時、ふっと薫は思った。
このまま、僕はここに残って、生まれない方がいいのではないかと。
生まれれば父母を悲しませてしまう。
だったら、ここに長く留まって死んでしまったほうが
千鶴の為にもいいのではないかと。

そんなひどく後ろ向きな感情に身を任せてしまおうかと思った時、
薫の脳に『そんなの駄目っ!!』と大声が響き渡った。
『駄目っ、一緒に生まれるのっ。ずっと二人は一緒だよ。』
その声は忘れようにも忘れられない千鶴の声だった。
『でも…』まだわずかに残っていた負の感情から素直に慣れない薫に、
『だったら、私も一緒に・・・。』濁された言葉までわかって、
今度は薫が大声をあげた。
『駄目だっ。』その声に押されるように僕の身体は、外へ押し出された。
『じゃあ、出てきて。そこはもう苦しいでしょ。二人で一緒に生きよう。』
そんな千鶴の優しい言葉に甘えて、僕は外の世界に生まれ落ちた。

案の定、僕の誕生は、千鶴の時ほど喜ばれなかったけれど、
それでも父母が僕の誕生を心から喜んでくれているのは伝わってきて、
僕は嬉しかった。

その後も、優しい僕の妹は、僕と引き離されようとするたび、
自分の命と引き換えにそれを阻止していった。
僕は、千鶴のそんなやり方に異を唱えたけれど、
思いのほか頑固な妹はそれを聞き入れてはくれなかった。
千鶴に言わせれば、
『大した力がない今は、それしか運命に抗う方法はないから』
とのことだったが、千鶴を命の危険に晒してまで、
僕は生きていたくはなかった。
だから、僕は千鶴に命を掛けさせないために、
僕が強くなろうと誓った。
僕の命を狙うものから身を守るため、僕は強くならねばならない。
そして、千鶴といつまでも一緒にいるために、
僕は賢くあらねばならないのだった。
強く優しい千鶴の為に、僕は何にも負けぬ強い鬼になると心に誓ったのだった。


そして、約束の日   
その正月、父母は、僕らを抱いて喜びの涙を流した。
僕らも泣いた。僕らは泣きながら、微笑みあった。
ようやく僕らの念願がかなったのだ。
この日を境に僕らは決して離れ離れになることはない。
それは待ちに待った日だった。

穏やかな春の日差しに、そんなことを思い出していると、
「か・お・るぅ。また思い出していたんでしょう。もうっ。
そんな悲しいこと思い出さなくてもいいんだよ。
これから私たちずっと一緒でしょ。」
「うん、そうだね。」
「これからいっぱい遊ぼうね。いっぱい楽しもうね。」
千鶴から当たり前のように差し出される愛情に、
僕はずっと浸っていたいと思った。

だから
「うん。そのためにも、僕は誓うよ。
雪村の頭領になる千鶴をずっとそばで支える。
千鶴を傷つけるものを何人たりとも許さないよ。
小さいころ僕のことを命がけで守り続けてくれた千鶴を、
これからは僕が命を懸けて守り通すよ。」
僕が真面目に誓ったのに、千鶴はきょとんとして僕を見返した後、
クスクスと笑いだしたのだった。
「私は薫がずっと一緒にいてくれればそれでいいよ。
今まで一緒にいてくれてありがとう。これからもずっと一緒にいようね。」

そう言って笑い続ける千鶴にちょっとムッとしながら、
僕は千鶴の額にそっと口づけた。

カット313b

口づけがくすぐったかったのか、
千鶴は僕の口づけた額を撫でながらまた笑った。
そんな千鶴を見ていたら僕までおかしくなってきて、二人して笑った。
この口づけに込めた誓いは本物。
千鶴が本気にしてくれなくても構わない。
これは僕だけが知っていればいいことだから。
愛しい千鶴が、いつまでも僕の隣で笑っていてくれることこそが
僕の願いなのだから。


  1. 2013/12/12(木) 10:54:35|
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