皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「今宵は無礼講ですっ!」

テール×テール」のドラキョンさんから
土方・伊東おふざけキスへのSS頂きましたー♪


当初は「習作」で本家UPされてましたが、
こちらの我儘で、是非とも頂きたいと言った所、加筆訂正して、下さいました!
本当にありがとうございます!
こういうわいわいした群像劇風のお話って好きなんですよねー^^

では続きから、可哀相な土方さんと、隠れた男前源さんをお楽しみ下さいw


挿絵は感謝を込めてドラキョンさんに進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




今宵は無礼講ですっ!



某日 京島原 角屋の一室にて
「土方君、これはお遊びなんですよ。
さらりと楽しむ度量を見せてこそ、京の治安を守る新選組の副長と
言えるのではありませんこと。
そんな態度では、また『田舎者よ、成り上がりよ』と蔑まれてしまいますわ。
さあ、さあ、親睦を深めるという意味でも、
私たちが仲の良い所を見せることが大切ではありませんか。」
満面の笑みを浮かべながら、土方に迫る伊東。
「お、おいっ、冗談言ってんじゃねぇ。
俺にゃあ、そっちの趣味はねぇんだっ。」
「知っていましてよ。だ・か・ら・こそですわ。
(他人の手の入った相手なんて御免ですわ。)
この私が直々に武士としてのたしなみの一つ衆道について
手ほどきをして差し上げようと申し上げているのです。
本当でしたら、直に肌を合わせて手取り足取り教えて差し上げるところを、
初めてで恥ずかしがり屋の土方君に合わせて、
まずは口合わせからと申し上げているのです。
さあ、ここから第一歩ですわよ。さあっ。」
突き出された唇から思い切り目をそらすと、
「お、俺はこれ以上一歩も進む気はねぇ~っ。」
それを思い切り身体を後ろに反らせ、何とか回避しようとする土方。
ここまで必死な土方を見ることはまれかもしれない。

カット321

といったことが繰り広げられている上座を、
仲間たちはちらと視線を投げるだけで誰も助けようとはしなかった。


同じく上座に坐していたはずの近藤は、
とっくの昔に昔なじみの源さんの所へ移動して、和やかに話していた。
「源さん、飲んでいるかい。
いつも呑みに出かける時は留守を任せてばかりですまないな。
今日は思いっきり飲んでいってくれ。」
「今日は十分楽しませてもらっているよ、勇さん。
みんな賑やかにやっているね。
まあ若い連中の方がこういったことが必要だろうからね。
私は屯所でも、それなりに気晴らし出来るから。
それに、留守を任されると、私も頼りにされているのだなと思えて、
気持ちが引き締まるよ。」
「源さんのことは今も昔も変わらず頼りにしているよ。
彼らはまだ若いからな。源さんたちに手綱を引き締めてもらわないと。」
「それはトシさんがしっかりやっているから大丈夫だよ。
まあ、私でも役に立てることがあれば喜んで協力するけどね。」
「これからもぜひとも頼む。さ、さあ、飲んで、飲んで。」
上座で繰り広げられていることには一切言及しない近藤が、
あの二人をどう思って放置しているのか透けて見えてしまった源さん。
緩く頭を振り、『触らぬ神に祟りなし』と酒宴を楽しむことにした。


上座から一番離れた場所では…
(ありゃあ、千鶴にはちょいと刺激が強すぎるな……。
見えねぇように、っと。)
席を移動した原田は、己の身体を盾にして、千鶴の視界を遮った。
「よう、千鶴。ちゃんと飯食っているか。
今日は誰にも取られる心配はねぇからな。たんと旨いもん食っていけよ。
なんか食いたいもんがあれば頼んでやるぞ。」
「はい。ありがとうございます、原田さん。お料理とってもおいしいです。
皆さんからいろいろいただいたので、もうお腹いっぱいです。」
笑顔でそう答えた千鶴の膳は確かにもう空になっていて、
食後のお茶を飲んでいるところだった。

店に無理を言って持ってこさせたのだろう。
呑兵衛の二人は、徳利片手にちまちまは性に合わなかったらしく、
しっかり酒瓶をぶら下げて現れた。
「今日は、皆でわいわい楽しむっていうんで姐ちゃん達は呼ばねぇって、
ひでぇと思わねぇか。これじゃあ屯所で飲んでいるのと変わらねぇだろうが。
なあ、千鶴ちゃんもそう思わねえか。」
「ば~か。千鶴は女なんだから、
姐さん達なんかいてもいなくても変わらねぇだろうが。
それにあいつらがいたら、千鶴とこうして楽しめねぇしな。」
「そりゃあそうだけどよ……。
まあ、そう言うことだから、唯一の女の子ってことで、
今晩は千鶴ちゃんと一緒に飲もうと思ってよ。付き合ってくれるよな。」
バシ~ッ
新八は思いっきり背中をはたかれた。
「千鶴を姐さんの代わりとか失礼なことを言うような奴は、
こいつと一緒に飲ませる訳にゃあいかねぇな。
新八、てめぇは、どっかへ行ってろ。
俺は最初から千鶴を愛でながらこうして酒を飲みてぇと思っていたぜ。」
原田は新八を邪魔だと言わんばかりに追い払いながら、
千鶴にはとろけるような甘い笑みを向けたのだった。

そんなことでへこたれる訳の無い新八は、移動などするはずもなく。
「じゃあ、千鶴ちゃんに酌してもらおうかな~。」
ぐいっと盃を差し出した。
「はい、もちろんです、どうぞ、永倉さん。」
千鶴は笑顔を浮かべ慣れた様子で酒を注いでやった。
「んんっ、ぷぁ~あっ、旨いっ。
やっぱ酒は綺麗な娘に次いでもらうのが一番だよな。」
「おいっ、新八てめぇ、なにさっさと千鶴に酌させているんだよ。」
「いいじゃねぇか。減るもんじゃねぇし。」
「千鶴のありがたみをわかってねぇ、お前が酌をさせると千鶴が減る。
間違いなく減る。絶対に減る。
いいか千鶴、新八なんざに酌してやる必要ねぇからな。」
千鶴はそんな二人の楽しい掛け合いをニコニコしながら聞いていた。

「はい。原田さんも一献どうぞ。」
「おっ、千鶴すまねぇな。」
「なんだよ、左之だって千鶴ちゃんに酌してもらってるじゃねぇか。」
「俺は千鶴の酌が一番だから、いいんだよ。
千鶴と姐さん達と一緒に見ていることが気にくわねぇ。」
「固いこと言うなって。楽しく飲めりゃあそれでいいじゃねぇか。
それとも何か。まさかとは思うが、左之。
千鶴ちゃんを独り占めしようって魂胆じゃねぇだろうな。
だとしたら、みんなにも教えてやらねぇといけねぇよな。」
ぎくっ!
「そ、そんなわけねぇに決まってんだろうが。」
くっそ~っ。なんでこういう時に限って、新八の奴鋭いんだよっ。
「そうだよなぁ。ということで、左之。
千鶴ちゃん囲んで楽しく飲み明かそうぜ。」
「お、おお、そうだな。飲もう、飲もう。」
原田の気遣いのおかげで上座の騒動には全く気が付いていない千鶴を囲み、
楽しい飲み会となったのだった。


ぐるりと皆を見回せる部屋の中央では……
年若い幹部三人が集まっていた。
「クスッ。あの土方さんの必死な顔。いいものが見られたよね。」
「総司っ。あんたが用意したというその籤、中身を検分したい。
副長と参謀の籤、出来過ぎている。何かからくりがあるのではないか。」
「え~っ。なんでそんなことがしたいのさ。
まさか一君、当たりを引きたいからずるしようっていうんじゃないよね。」
「そんなことは考えておらぬ。」

二人が籤の箱を挟んで押し問答を繰り広げていると、平助がやってきた。
「えっ、なになに?まだあたり出てないのか?何色が出たら当たりなんだ?
あたりだと何がもらえるんだ?この鯛か?中見えっかな?」
片目で箱の穴を覗こうとする平助。
「平助はあたりが気になるの?あたりはね、好きな子と口づけする権利だよ、
とか言ったらどうする?」
「「えっ。」」
「そ、そうなったら俺……」
何を想像しているのか真っ赤になって目を泳がせ始める平助の視線は、
部屋の片隅で止まった。
「……」
「ねえ?なんで一君まで赤くなっているのさ。」
「お、俺は好いた女子と・・など……。」
「ふ~ん。女の子に限定してないけど?一君も想像したんだ。
好きな子との口づけを。」
部屋に響き渡る大声に、皆が斎藤の方を向いた。
「なっ……お、俺はそのようなこと……」
皆の視線を受け、これ以上はないと言うほど赤くなって俯いてしまった斎藤に、
「斎藤君、恥ずかしがることはありませんわ。
愛こそ、生きるための糧ですもの。さすが斎藤君、よくわかっているわ。」
上座から妙な援護が入り、ますます赤くなって俯く斎藤に、
皆心の中で同情した。

好奇心か、淡い恋心か、籤がどうしても気になっている平助は、
重ねて総司に尋ねた。
「なあ、これって、まだ同じ色の組み合わせって残っているのか?」
「うん。平助も引いてみる?運があれば、千鶴ちゃんとって可能性もあるよ。
駄目だと、新八さんとってこともありうるけどさ。運試しにどう?」
上座で繰り広げられる修羅場から目を逸らしつつ、
平助はどちらを取るか悩んでいた。

(同じ色…)
「総司……、本当に同じ色がまだ残っているのか。」
「うん、残っているよ。何?もしかして一君引く気?」
「……副長と同じ色が残っているというのであれば、アレは要らぬが…。」
上座にチラリと視線を向けた後、
「俺が引き当てて、……副長に句集を見せていただくとか、
……薬を格安で分けていただくとか我儘を言っても許されるだろうか。
それとも、……朝稽古に付き合っていただきたいとか、
……刀談義をしたいとか言ってみても怒られないだろうか。」
思っていることが全て口に出てしまっている斎藤を面白そうに眺めると、
総司はそっと耳打ちした。

「内緒だけどさ、あと一本だけあれと同じ籤が残っているよ。
教えてあげようか。」
「何っ、まことか、総司。だが、しかし…教えてもらうなど卑怯なことをして
当たりを手に入れても、きっと副長はそんな俺を許してはくださらぬだろう。
それよりも、ここは精神統一して己の運を全てかけて籤を引けば、
あたりを引き当てられるやもしれん。
だが……もし万が一外してしまったら……。
それは俺の副長に対する思いがその程度だということに……。
しかしこのような機会二度とないやもしれぬし……。」

総司としては手を籤へ伸ばしかけたり、やめたりする斎藤の様子が
おかしくて仕方がない。
どれを引いたとしても、残った籤は、あの二人のもっているものと同じ。
(だけどね、一君。それを引くってことは、
君の大好きな土方さんにお願いできるってことだけどさ、
もう一人のお相手もしなきゃならないってことだって、気がついてる?)
総司は、手にした酒で唇を湿らせながら、ニヤリと笑った。


部屋に戻ってきた井上は、先ほどから変わらず賑やかな上座に目をやり、
大きくため息をついた。
局長である近藤が諌めない以上、ここはやはり自分が動くしかないのか、と。
以前であれば、山南が綺麗な笑顔を浮かべて、
こんなことはさっさと処理してくれていたのに…。やれやれ。
もう一度ため息をつくと、井上は部屋の前を通りかかった店の者を呼び止めた。

「総司、トシさん達の方は埒が明かないようだから、
こちらはこちらで籤の続きをしようじゃないか。」
部屋の真ん中で無邪気な笑みを浮かべる総司に、声をかけながら近づいた。
「おお、源さん確かにそうだな。あの二人も仲良くやっているようだし、
心配はいらんだろう。じゃあ、皆で籤の続きをしようか。」
近藤も井上の声に反応して総司の傍へやってきた。
「えっ、あ、井上さん、近藤さん。
続きは、あの二人を見てからでもいいんじゃありません?
きっとみんなもあの二人を見たいな~、って思っていますって、ねえ?」
総司のこころなし上ずった声が聞こえていないのか、誰も返事をしてくれない。
「ねえってば・・・。」
返事を貰おうと声を重ねるが、答える声はなく…。
「皆、あの二人には特に関心を払っていないようだね。
これ以上皆を退屈させてはいけないよ。さあ、籤を再開しようか。」
「あ、でも、その…。」
妙に歯切れの悪い総司。
「どうしたんだい、総司。籤を続けちゃまずい事でもあるのかい?」
柔らかい問いかけだが、幼い頃からの習いで総司にはわかった。
これは何と返事をしても叱られる前兆だと。こうなれば…。
総司は覚悟を決めて、籤の箱を突き出した。

井上は、皆に声を掛けた。
「さあ皆、籤引きを再開しようじゃないか。」
「おっ、もう籤は終わりかと思っていたぜ。」
「籤、ひいちまっていいのか?」
「あたりはまだ出てないんだって、さっき総司が言ってた。」
「副長は…赤。」
などと皆が総司と箱の周りに集まってきた。
その後ろから、邪魔にならないように近づいてきた千鶴に気がついた平助が、
大きな声で千鶴を呼んだ。
「じゃあ、千鶴から引かせてやろうぜ。いいだろう皆。」
「おお、雪村君からか。」
「いいぜ。」
「ほら、早く引いてみろよ。」
皆が千鶴に声を掛け、前へ押し出そうとすると、
制止の声が思わぬところからかかった。
「いけないよ。雪村君は皆の好意でこの場へ来ているけど、
隊士ではないのだから。皆より先に引くのは、序列を乱すからね。
雪村君も、立場をわきまえなさい。」
穏やかな口調だが、珍しい有無を言わせぬ井上の言葉に、皆黙り込んだ。

気まずい雰囲気を打ち払うように、近藤が咳払いを一つして、声を上げた。
「では、皆で一斉に引いて、早く雪村君に回してやればいいのではないかね。
さあ皆、籤を持って。ほら、総司も。」
近藤は、何故か籤へ手を伸ばすのをためらっている総司にも声をかける。
皆は、箱から出ている先を一つずつ掴むと、近藤の掛け声とともに引き出した。
「うわっ、俺、赤だった。」
「俺も、赤だぜ?」
「皆、赤いな…。」
「…同じ。」
引いた籤の先を皆が確認する。
そして上座の二人の手にある籤にも注目が集まる…。
見間違うことはない、赤である。

「おいおい、総司。こりゃあいったいどういう訳だ?」
「まさか、お前・・・。」
「何?これってみんな当たりってこと?」
「…副長と同じ籤…。」
「冗談だろう?俺はあの人の相手は御免だぜ。」
「…あ、あれ~っ?お、おかしいな~。もしかして僕間違…」
誰からの視線も避けつつ、そら恍けようとする総司に、皆の視線が突き刺さる。

そんな気配に、なんとか状況の打開を目論んでいた土方が
気づかないはずはなく、先ほどまでじゃれ合っていた相方を置き去りにして、
総司達の所へすっ飛んできた。
「そ・う・じ~っ。やっぱりてめぇのつまんねぇ悪戯だったんだなっ。
近藤さんを差し置いて、いの一番に俺んとこへ持って来やぁがったから、
なんかあると思ってたんだが、
まったく下らねぇ悪戯に付き合わすんじゃねぇよ。」
「ちぇっ、もう少しだったのに…。」
今までの鬱憤を晴らすように文句をぶつける土方に、
ブスッとして総司はそっぽを向いた。

「あら?これはどういうことなんですの。
どうして当たりがこんなにたくさん…。」
土方を追いかけて降りてきた伊東も、皆の手に握られている籤に目を丸くした。
事の顛末を語ろうとしない総司を見やって、井上は小さくため息をつくと、
伊東に頭を下げた。
「伊東参謀。すみませんね。どうやら総司の奴が、
当たりと外れを入れ替えて作ってしまったようでして。」
「まぁ、じゃあ何ですの。私は外れを引いて、
糠喜びをさせられたということですの。」
「結果としてはそうなりますね。
でも、外れを引いた人に少しでも喜んでもらいたいと
思っての事のようですから、今回は大目に見てやってください。」
「伊東さん、私からも謝る。総司のちょっとした悪戯心だと思います。
私から後で叱っておきますので。」
近藤からさっさと頭を下げられてしまい、
伊東としても振り上げた拳の下ろしどころがなくなってしまった。
「ま、まあ、局長自ら頭を下げて下さったことですし、
お酒の席でのことをあれこれ言い募るのは無粋ですものね。いいでしょう。
今夜はそれなりに楽しめたことですし、
沖田君の悪戯については水に流しましょう。
ですが、何だか興が削がれてしまったので、
私、今夜はこれで失礼させていただきますわ。またの機会にねっ、土方君。」
そう言うと、伊東は怪しい流し目を土方に投げかけ宴をあとにした。

「ふうっ、助かったぜ、源さん。あんたが気を利かせてくれたおかげで、
あいつの悪ふざけから逃れることができたぜ。」
土方は大きく息を吐き出すと、肩の力を抜いた。
その横では、皆が外れとわかった籤を放り投げ、だらりと力を抜いていた。
「なあ、総司。籤って、結局当たり入れてなかったのか。」
絶対に当たりが入っていると疑っていなかった平助が、
空になった籤の箱を恨めしげに見つめて、総司に詰め寄っていた。
「そんなの必要ないじゃ…」
投げやりに答える総司の傍に転がる箱を取り上げた井上が、
箱を振ってみると、中から、カラカラと音が聞こえた。

「おや?まだ中に籤が残っているようだね。物は試しだ。
雪村君はまだくじを引いていなかっただろう。籤を引いてごらん。」
籤以外に何か入れただろうかと首をひねる総司。
面白そうだと箱を見つめる他の面子。
千鶴は戸惑ったが、井上の笑顔に励まされるように、箱の中に手を入れてみた。
手に何かが当たり、千鶴はそれを引き出した。
千鶴が取り出したのは、角屋で出されている塗箸だった。
「あれ?これって・・・」
千鶴が手にした思わぬものに驚いていると、井上が笑って言った。
「残り物に福があるっていうのは本当だったみたいだね。
今夜、皆と違うくじを引き当てた君が、当たりだよ。」
周りから、わあっと歓声が上がる。
「やったな。千鶴、当たりだって。」
「よかったな、千鶴。」
当たりと言われてうれしくなって、千鶴は微笑んだ。

「なあ、それで当たりって何がもらえるんだ?」
好奇心いっぱいに平助が訊ねれば、井上が懐から何かを取り出した。
「急なことだったから大したものは用意できなかったんだけどね。」
井上が千鶴の手に乗せてくれたものは、小さな紅だった。
「私がもらってしまっても?」
「いいんじゃないかな。他の者には用のないものだろうからね。」
千鶴が自分を取り巻く皆の顔を見回すと、皆、笑顔で頷いた。
「ありがとうございます。」
千鶴がそっと蓋を開けると、目に鮮やかな朱が明かりに照らされた。
「綺麗な色だな。」
「井上さん、あんたいつの間に…。」
「さっき店の者にお願いして用意してもらったんだよ。
こう言うものは好みがあるからどうかと思ったんだけど、
いつも頑張ってくれている雪村君に一つくらい送ってあげたくてね。」
「井上さん、流石。」
「さらっとこういうこと出来ちまうのが大人だよな。」

皆が感心していると、
「なあ、千鶴。それちょっとつけて見せてくれよ。」
平助が照れながらお願いをしてきた。
「駄目だよ。雪村君の紅を付けた姿を見られるのは、
そういう関係になった者だけだよ。」
井上が皆を代表した平助のお願いをぴしゃりと却下した。

その一言は、そこにいる皆の恋心にそっと火をつけた。
瞬間、皆の雰囲気がふわりと変わったのを感じた井上は、小さく笑った。
「さて、雪村君に一番似合う紅を贈れるのはいったい誰なんだろうね?」
その未来が遠くない日に訪れることを願いながら、
井上は若い彼らに優しい眼差しを向けたのだった。

カット381今宵は無礼講ですっ


  1. 2013/12/02(月) 11:31:02|
  2. Kissシリーズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

ひゅーぅ♪

あっはは、めいっぱい笑わせていただきましたヽ( ´¬`)ノ
ちゃんとちょこさんの挿絵の通り、全員の酒宴でのシーンがあって、しかもそれぞれに個性がちゃんと出てて・・・どんなキャラがきてもどんと来いのドラキョンさんだからこそのお話でしたね~。
やっぱり個人的には、一君と総司と平助の部分が好きですw(←大人組みよりも学生組みが好きなので)土方さんと同じ色のくじを引いて、色々お願いを聞いてもらおうとする一君がおもしろい・・・wwwでも、彼は真剣なんですよね・・・ああ、この真剣に悩んでいる姿をこの目で見てニヤニヤしたいです。
(私もちと考えてみたんですが、土方さんと伊東さんを同じくじにするからくりが思い浮かばず・・・ああ、そうか。全部同じ色だったって事でいいのかと、目からうろこ!小難しく考えすぎました・・・むむむ。)
そして、今回の話の一番の主役はなんと源さん!!裏方なイメージが強いですけど・・・でもこの面子では一番の大人でもあるし、普段は立場をわきまえてしゃしゃり出てこないだけで、やんわりとした物腰だけど実は若い衆の手綱を締めてくれてそうです。(そういえば、随想録の猫の話だとみんなを叱ってましたよね、確かw)
千鶴ちゃんを喜ばせた手際といい、亀の甲より年の功でしょうかwあ、いや失礼・・・源さんもまだまだ男盛りでしたね☆彡
源さんは千鶴ちゃんに娘のような感情しか持ってないようなのでw、安心してあったかい気持ちになりました♪愉快で素敵なお話、ごちそうさまでした!
  1. 2013/12/15(日) 23:55:04 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #EYMZMP9E
  4. [ 編集 ]

ゆゆき様へ

ゆゆき様、コメントへのお返事が大変遅くなりまして申し訳ありません。
色々なお話を詰め込んだだけのものでしたが、お楽しみいただけたのなら何よりでした。
一君のお願いは、もっと過激なものも考えた(BL的な?)のですが、私にはちと荷が勝ち過ぎたようで、早々に断念。きっと一君ならこんな程度の我儘言うのもためらってくれるに違いないと。総ちゃんにはいいカモですよね(笑)
源さんのお話は…、最初のキスはさらりと流してしまったので、ちょっとキスが足りないかなと、急遽加えたんですよ。実際、源さんも、総ちゃんを連れて行ったなんてお話も残っているようですので、それなりに大人としての楽しみ方をご存じなのではと思いまして。それに、悪戯する総ちゃんを叱れる人って、限られてますものね。
でも、このお話のせいか後日、本当にお箸を使ったくじを引くことになったのは笑い話です。(外れてよかった!)
コメントを寄せていただき、とても嬉しかったです。
  1. 2013/12/25(水) 00:37:04 |
  2. URL |
  3. ドラキョン #-
  4. [ 編集 ]

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