皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「袖ふれば」

今回頂いたSSは、キスSSではありません。

「ザキさんの隊服ってどーなってんだろ」から思いついたお話を書いてみた―――と、サイトをお持ちでないまそほさんから聞いて、埋もらせるのはもったいないので、うちでUPさせてもらう事にしました♪

このSS、まそほさんから言えば、みゃうさんの「陽だまり」のザキさんver.だそうですが、
ただ見守るだけの斎藤さんと、ちゃんと自分の形跡を残すザキさんの、まそほさんの書き分けににやりw

そのザキさんに年の功を感じるのは私だけかなーwという崎千SSは、続きからどうぞ。



挿絵は感謝を込めて、まそほさんに進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




袖ふれば


 目を開けて、そこが見慣れた自分の部屋ではないと気付いて、千鶴は幾度か瞬く。

(あ……れ……?)

 軽く混乱しつつ、座ったまま上体を伏せた姿勢から起き上がると、衣擦れと共に背中を滑り落ちるものがある。
 途切れている記憶を辿って、薬や医術書の保管してある小部屋に居たことを思い出し、更に文机に向かっていたことを思い出す。

(寝ちゃってたんだ、私)

 一体どれくらいの間眠っていたのだろう。
 額に手を持っていこうとしてうつむきかけ、その視界に浅葱色を映して、ふと目を留める。
 自分の身にまつわる、それはまぎれもなく。

「隊服……?」

 拾い上げて両手に持ってかざしてみる。

「どうして隊服がここに……?」

 思い出せない、というより、わからない。
 先程背中を滑っていったものがこれならば、うたた寝している千鶴を見つけた誰かが掛けてくれたのだろうか。
 そういえば、千鶴が枕にしてしまっていただろう書付けも書き物の道具も、文机の上にはない。脇に片付けられている。

(でも、どうして隊服……?)

 頭の芯の部分でまだ目覚めていないような感覚が邪魔をして、疑問には思うものの深くは考えられない。心の内で『どうして?』と繰り返しながら、しばらくぼんやりと隊服を凝視し──千鶴はおもむろに立ち上がる。
 引き戸を閉めた小部屋に一人で居るのに首を廻らせて辺りを見回し、それから隊服の袖にそっと手を入れてみる。両腕を通して羽織り、肩と襟を整え、真っ直ぐに立つ。
 やはり千鶴の身体には大きく、袖も余っているが、大き過ぎるという程ではない。
 姿見で見られないのが少し残念だったが、その場でくるりと回って、袖や裾をはためかせてみる。

(あっ……)

 瞬間、不意に思い出す、それは───。

『山崎さんは、あの隊服を着られることはないんですか?』
『支給はされている。だが着たことはないな』
『……なんだかもったいないですね』
『なにがだ?』
『あ、いえ。なんでもありません』

 話の発端が何だったのかは覚えていない。
 だがそんな遣り取りがあって、他の用を済ませに山崎は部屋を出て行き、その後千鶴は一人残って文机に向かった。

(ひょっとしたら、これは山崎さんの……?)

 染みも綻びもない、きれいに折り目のついた、真新しい隊服。
 もう一度袖を振り上げれば、肩からずれた衣が落ちかけて、千鶴はその一端を手のひらに握り込む。

 ──他の何物でもなく新選組隊士の象徴である浅葱色の隊服を、わざわざ千鶴に着せ掛けてくれた、その意味は。

(わからない、けれど)

 腕を抜いて前に引き寄せた、その隊服を。
 千鶴はぎゅっと胸に抱きしめた。


   *  *  *  *  *


(やはり着てみたかったのか……)

 千鶴の様子を伺いに来て、一部始終を目撃することになった隊服の持ち主は、心の中で呟く。
 千鶴が隊服を通して寄せる憧憬の気持ちには、彼自身覚えがなくもない。表に立つことはない役目柄、自分の装束としての執着心は特にないが、新選組を象る物としての思いは彼にもある。
 しかしながら。
 一度も袖を通したことがないとは言え自分の持ち物には変わりのないそれを、あのように胸に抱き込まれるのを見るのは、何やら面映くて。
 頬に赤みがさしてくるのを自覚して、山崎は無言でその場から立ち去った。

カット365袖ふれば


  1. 2013/10/26(土) 11:33:24|
  2. 頂きもの
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

ありがとうございます(^▽^)

ちょこ様

 こんにちは。
 拙作をお引き受け下さってありがとうございましたm(_ _)m
 「でも隊服って全員支給だよねえ?」という辺りから、で、どうせなら千鶴ちゃんに着せてみちゃえ! と書いてみたものです。「山崎烝の○○」って響きだけで他隊士のものよりもレアに感じるのは私だけだろうか…(^^;)
 付けて頂いたイラストの赤面ザキさんと千鶴ちゃんの表情にニヤニヤニヤニヤとしております。画面の前で、ひたすらニヤニヤにまにま…適する言葉が他に思いつかない自分の文才の無さが恨めしいですが、ふたり共可愛い過ぎる…(>▽<)
 今回はなにもやらかさなくて、そちらでも安堵(毎度毎度すみません)。
 重ねて御礼申し上げます、ありがとうございます。


お読み下さった皆様、拍手下さった皆様

 今作、前の掲載作をご覧頂き、更には拍手まで頂き、ありがとうございます(^^)
 薄桜鬼の魅力とちょこさんのイラストの引力により、一作限りのつもりが思いがけず数を重ねております。
 時代を強く意識するせいか、近年には廃れている(んじゃないかと思われる)ような文語表現の多用や現代では省略形で定着している言い回しを大元の形で書いたりするなど、目障りな部分もあるかと思いますが、同人作品の事とご容赦下さいませm(_ _)m
 重ねて御礼申し上げます、ありがとうございます。
  1. 2013/10/27(日) 17:24:06 |
  2. URL |
  3. まそほ #RsoBnYRY
  4. [ 編集 ]

まそほ様♪

挿絵、にまにまして下さって、ありがとうございます。
当初チビキャラギャグ絵にしようかと下描きまでしたのですが、隊服を抱いているちーちゃんはいつものままの方がいいかな、と思ったらこうなりました。
気に入って下さったなら何よりです^^
可愛いのは、絵よりもまそほさんの書くふたり。次回も私が可愛く描けるのか…少々心配ですがw 
またしばらくお待ち下さいね。
  1. 2013/10/27(日) 23:06:34 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

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