皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「幻孕む花曇り」

Nさんから、薫・千鶴兄妹キス絵へSSを頂きました♪


千鶴もせっかく鬼なんだから、もうちょっと特殊能力生かした√があってもよかったよね、と思ったのは私だけではなかったようでw
もしかしたら、本編の前にこんなワンシーンがあっても…という、if設定の挿話。
Nさんが上手に料理してくれました^^

この後の波乱の長編への序章のような掌編―――どうぞ続きから堪能して下さい。


挿絵は感謝を込めて、Nさんへ進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




それは、何時か在ったかも知れない世界――

幻孕む花曇り


「千鶴!」
 其処は、一面の花畑だった。
 様々な小花が咲き誇り、甘やかな匂いが漂うその中を、一人の少年が何かを探す様に歩いていた。
「千鶴! 千鶴!! 何処に居るんだ!?」
 質素な身形ながらも、上質な着物を纏ったその少年は、後ろ頭に短く出来た総髪の髷を揺らし、尚も花畑に向かって呼び続ける。
 カサリ――
 小さく音がして、少年は弾かれる様に音の方向を見遣り――そして短く、だがホッとした様に息を吐く。
 其処には半ば花に埋もれる様にして、少年が求めた人影が、眠そうに目を擦りながら少年の方を見詰めていた。

「……此処に居たのか、千鶴」
「……かおる、にいさま?」
 側に駆け寄り、短く息を吐いて少年がそう言えば、『千鶴』と呼んだその少女は、今だ夢見心地なのか、舌足らずな声でそう返す。
「母さまが心配していたぞ? こんな所で何をしていたんだ?」
「あのね、お花を摘んでいたの!」
 かおるにいさま――もとい、『薫』と呼ばれたその少年が問えば、千鶴はぱあっと喜色の表情を浮かべ、脇に置いていた今まで積んでいたらしい黄色い小花の付いた花束を薫に示した。
「お花がね、可愛くて良い匂いがしたから! 摘んで行ったら母さまも喜ぶと思ったの!」
「……それで花を摘んだ後にそのまま居眠り、と言う訳か」
「うっ……」
 薫の突っ込みに、千鶴は言葉を詰まらせる。
 だが直ぐに何かを思い出した様にハッと顔を上げて、
「あ、あのね! 兄さまにも作ったの! 花かんむり!」
 そう言って千鶴はバッと立ち上がり、花束を一先ず地面に置くと、代わりに花束と一緒に在った少しばかり歪な花かんむりを薫に見せた。
「兄さまに似合うな~と思って、千鶴、一生懸命作ったの……だから……」
 花かんむりを両手で持ち、段々と尻すぼみになって行く言葉に、薫は微苦笑を浮かべて、
「……ほら」
 と千鶴の前で僅かに腰を屈めた。
「兄さま?」
「兄さまの為に作ってくれたんだろう? お前の手で、頭に載せておくれ」
「うんっ!」
 千鶴は大きく頷くと、小さな身体で精一杯背伸びをしながら、薫の頭に花かんむりを載せた。
「うん、良かった! 似合ってるよ兄さま!!」
「そ……そうか?」
 手を叩いてはしゃぐ妹の姿に、薫は何とも言えない表情を浮かべながらも、
「お前がそう言うのなら、そうなんだろう……有難う、千鶴」
 直ぐに薄い笑みを浮かべ、その頭をクシャリと撫でた。
「さあ、お前も気が済んだだろう。父さま母さまも心配している。帰るぞ」
「あ、は~い」
 千鶴は薫の言葉に地に置いていた花束を拾い、既に自分に背を向けて歩き始めていた薫の後を追い始めたが――

「――あ」
 不意に一陣の風が花畑を吹き抜け、千鶴は立ち止まる。
 そしてつと目を向けた先に広がる雲一つない青空を見て――その動きが完全に止まった。
 先を行っていた薫は、自分を追って来る気配が無い事に気付き、後ろを振り返った。
「如何した? 千鶴。早く行かないと――」
 振り返り、訝しげに問う薫に、しかし千鶴は薫と視線は合わさぬまま、何処か呆然とした面持ちで虚空(そら)を見つめている。
「おそらの、いろ……」
「? ――千鶴?」
「……怖い人が……一杯居たの……千鶴、一人ぼっちで……」
 その言葉に薫の眉根がきつく顰められる。
「誰も居なくて……心細くて……怖い人たちが、千鶴に――」
 段々と震え始めたその続きを遮る様に、薫が妹を自分の胸に抱き込んだ。
「……怖い夢を、見ていたんだな」
 呟く様にそう言って、兄は妹の背中を優しく擦る。
「大丈夫だ。此処は夢じゃない。お前を脅かすモノは、もう何も無い」
「……うん。有難う、兄さま」
 腕の中の千鶴の無邪気な答えに、薫は釣られる様に笑みを漏らし――そして僅かに身体を離して、
「千鶴」
「なあに?」
「今から俺が、お前に呪いをしてやろう」
「まじない?」
 小首を傾げ、問う千鶴に、薫は「ああ」と頷いて、
「怖い夢を見なくなる呪いだ。……少しだけ、目を瞑っていろ」
「うん」

カット313a

 その言葉に素直に目を閉じた妹の額に、兄が静かに口付けを落とす。妹はそれを避ける事は無く、少しだけ擽ったそうに身を震わせ――そして目を開けた。
「兄さま……?」
「これで俺は何時もお前と一緒だ。お前が怖い夢を見た時は、きっと俺がそいつらを全部やっつけてやるからな」
 力強い薫の言葉に、千鶴の顔に喜色の色が浮かぶ。
「うん! 有難う!! 兄さまも千鶴を守ってくれるのね!?」
「兄さま『も』?」
 喜び一杯の千鶴の言葉に、しかし薫は眉根を顰めて、
「如何言う事だ? 千鶴。まさか俺以外にお前を守る者が居たと言うのか!?」
「えっと……駄目、なの?」
 薫の不機嫌の意味が分からない千鶴が、困惑気味に問い返す。
「当たり前だろう!!」
「ひゃっ!」
 薫の怒気に当てられ、千鶴が小さく肩を竦めた。
「雪村一族の次期頭領たるお前を守るのは、兄で有るこの俺の役目なのだ! それを――」
「――大丈夫だよ?」
「――な」
 無邪気に、だがハッキリと遮る様にそう言われ、薫が僅かに目を瞠る。
「『おそらのせなか』は、ちゃんと千鶴を守ってくれたよ?」
「おそらのせなか……だと?」
 困惑する薫に、千鶴は「うんっ!」と元気に頷いて、
「おっきくてね、ちょっと怖かったけど……だけどすっごく安心なの。千鶴をずっと、守ってくれたの」

カット361幻孕む花曇り

 「だからね、大丈夫なんだよ?」と続けた千鶴に、薫はいよいよ困惑の色を濃くした。
 暫くの間何か言いたげに口をもごもごと動かしていたが、結局言葉にする事を諦めた様だった。
「……まあ良い。それがお前を守ったと言うのなら、それはそれで良いだろう」
 代わりに薫は大きく息を吐いて
「だが千鶴。次は必ず俺に言え。どんな小さな事でも全部だ。……お前に何か遭ったら、一族は――」
 其処で薫は小さく頭を左右に振って、
「――いや、そうでは無いな。お前に何か遭ったら、父さまや母さま……そして俺が、とても悲しくなるだろう。お前が一人の時に何か危ない目や苦しい目に遭ったのだとしたら……悔やんでも悔やみ切れん」
「兄さま……」
「良いな? 千鶴。決して一人で苦しむんじゃないぞ?」
 念を押す薫に、千鶴は数瞬パチパチと目を瞬かせていたが、
「うんっ、分かった! その時はきっと兄さまに言うからね?」
 やがて満面の笑みでそう答えた。
 その笑みに薫も満足げに微笑み、ガシガシと妹の髪を撫でて、
「……よし、ではもう行くぞ。母さまたちを待たせては行けない。良いな?」
「うん!」
 そして二人は手を繋ぎ、連れ立って花畑を後にして行く。
 そんな幼い兄妹を雲一つない浅葱の空が、優しく見守っていた――

 江戸の昔、陸奥の山奥にひっそりと栄えていた、とある一族が在った。
 太古の昔より、朝廷と時代(とき)の権力者に食い込み、生き長らえて来た異形の種族――【鬼】。
 特に陸奥に栄え、『雪村』の名を冠したその一族は、江戸幕府の開祖・家康公以来の庇護を受け、人間(ひと)の世から隔離されながらも、安寧の日々を過ごしていた。
 だが、長い時を経て訪れた時代の流れは、『箱庭』の中で暮らしていたこの幼い兄妹までをも、その奔流の中に巻き込んで行く。
 稀なる異形の能力(ちから)を受けて生まれて来たこの幼い鬼姫が見た夢が、現実の物となるまで、あと少し――


  1. 2013/10/24(木) 19:11:54|
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  1. 2013/10/24(木) 23:26:49 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

N様♪

おはようございます。
挿絵お受け取りありがとうございます。
千鶴の鬼的要素や、折角の刀の使い道を、今回の劇場版では大分出しているようだと聞きました。
やっぱりゲームユーザーから同じような要望が出ていたんでしょうかねw

のろのろ台風がいろんな被害を撒き散らしながら週末襲来しそうですが、どうぞそちらも充分お気をつけて下さいね。
  1. 2013/10/25(金) 11:11:58 |
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  3. ちょこ #-
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