皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「堕天させたくなる」

テール×テール」のドラキョンさんから
山南・千鶴キスへのSSを頂きました♪


山南さんって、近藤さんより年上ですよね。
若者の集まりの中で大人な山南さんは、最初から色々な意味でさぞ大変だったでしょうね。
(うちのコメディの山南さん位、はじけてれば別だろうけどww)

羅刹になって、ますます皆との隔たりと孤立を感じ、複雑な内面をもてあまして、ああいう挙動に出るようになったのか…

そんな山南さんの一端を窺わせる、さすがのドラキョンさんのSS―――続きからどうぞご堪能下さい^^



挿絵は感謝を込めてドラキョンさんへ進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。



堕天させたくなる




カット349堕天させたくなる



「山南さん、こんばんは。気持ちの良い夜ですね。」
夜、ひっそりと縁側に出て、冴え冴えと輝く月を眺めていたら、
今の私には不釣り合いではと思えるほど、普通の挨拶をされた。
雪村君は、何をもって気持ちの良い夜と評するのか。
月しか眺められない私に対する嫌味。
憐憫?どうせ何も考えていないのでしょうね。
目に飛び込んできた月の美しさをただ言葉に乗せただけ。
ここに私がいたから、それを伝えたのが私だったというだけ。

「本当に。月の光はとても優しい。」
私が何を考えているかなど、気づくこともない。
綺麗に感情を隠し、私は、雪村君が望んでいるであろう返事をする。
こういうことがあっさりできてしまうから、皆に「腹の底が見えない。」
などと評されてしまうのでしょうね。

雪村君は、そんな私の裏など見ようとはしない。
だから、私が笑顔を見せれば、機嫌が良いのだと思ってくれる。
にっこり笑って、
「本当ですね。淡い光ですべてを包み、曖昧にしてしまう。
かと思えば、物の奥底まで届いて、浮かび上がらせるような、
不思議な光ですね。」
雪村君、あなたという人は。
ぼんやりとしているかと思えば、今のような言葉を私に投げかけてみたり。
何もわかっていないくせに、何もかもを悟っているようであったり。
子供の様に泣いて、手間をかけさせたかと思えば、
母のように皆に安らぎを与えてみたり。

光を受け、様々な色と輝きを見せる水晶のようだ。
以前の私であったなら、子供の戯言と一笑に付したかもしれませんね。
それは、私があなたの一面にしか目を向けなかったからだったと、
今ならよくわかりますよ。
昏いこの場所に漂うようになって、私はあなたの内面の輝きが、
複雑に煌めくことに気がつくことが出来たのですから。
それは、思わぬ収穫だったと言えるかもしれませんね。

「雪村君は、月の光がお好きですか。」
「はい。日の光は元気をくれるような気がしますけど。
月の光は、山南さんがおっしゃったように、優しい気がします。」
雪村君なら、きっとそうおっしゃると思っていましたよ。
私の言葉を否定することなどないと。
月の光のように曖昧な微笑みで、優しい言葉を返してくれるとね。
私に優しい気持ちなんてものを思い出させてくれる・・・

でもね、雪村君。
君は少し無防備すぎやしませんか。
君のここでの立場を忘れてはいませんか。
君は、私たちに捕らわれた身なのですよ。

少しでも違っていたならば、君はあの月明かりの中、
我々に斬り殺されていてもおかしくなかったと、覚えていますか。
君が好きだとおっしゃった月明かりに照らされて、
骸となっていたかもしれないのですよ。
それに気がついてなお、君は月の光を好きだと言えますか。

ここでの生活とてそうです。
君はなぜそんな風に生き生きと我々の世話などできるのですか。
給金を貰っているわけでもなく、我々に義理がある訳でもない。
我々が綱道さんを探しているからとか、そんな言葉を信じているのであれば、
随分おめでたいと言わざるを得ませんね。

気がついていますか。
我々は綱道さんを見つけた後のことを、君と一切約束していないのですよ。
見つけた途端、二人とも斬り殺すかもしれない。
雪村君を人質に、綱道さんに無理を言うかもしれない。
下手したら、あなただけ、用済みだと言って殺すなどとは
思いもしないのですね。

あなたは、あの羅刹を目撃して、それを作り出したのが綱道さんだと知っても、
まだ綱道さんを信じているのですか。
あんなものを作り出す方に、正義があると?
清廉潔白だと信じ切れるのですか。
だとしたら、本当におめでたい。
親兄弟といえども、所詮は他人なのです。
信じられるのは己のみ。

ええ、だから私は信じてなどいません。
綱道さんのことも、あなたのことも。
幕府のことも、会津のことも。
だからなのでしょうね。
誰からも信用された気がしないのは。
信用を預けぬものを、誰も信用などしないものですから。

だからかもしれません。
あなたや、近藤さんのように、むやみと人を信用するものを見ると、
ときどき無性に腹立たしく思ってしまうのは。
大馬鹿者だと嗤っているのに、無性にうらやましいと思ってしまうのは、
なぜなのでしょう。

・・・だから嫌いなのですよ。
私に訳の分からぬ感情を植え付け、人の好い笑顔を浮かべるあなた方が。

・・・・・・いいえ、好きですよ。
私には手に入れられないものを持っているあなた方が。

笑顔を浮かべ、相槌を打つ私が、君の言葉を聞いていると、
笑顔を返す君を見ていると・・・。
ときどき無性に叩き堕したくなってしまうのは、どういう訳なのでしょう。
私を見る時に、君の瞳に怯えやおそれでも浮かんでいるのが見えたなら、
私はこんなにも苦しまなくても済むのに。

そんな澄んだ瞳を私に向けるのはおやめなさい。
月の光と同じく、穢れのないその瞳で私を見ないでください。
君の瞳が、私の奥底のきたないものを暴いてしまう前に。
その瞳を閉じてください。

「それでは、お休みなさい。山南さん。」
ああ、まただ。君は、眠るかもしれないけれど、羅刹の私は、
これから一日が始まることを、君はわかっていない。

「お待ちなさい。」
私は、すれ違う雪村君の腕を取ると、刹那、
見上げた雪村君の口を塞いだのだった。
でも、覗き込んだ君の瞳にあったのは、やっぱり驚きだけで、怯えはなかった。
どうして・・・。


カット287


「どうして・・・。」
どうして、は私の台詞ですよ。
どうして私と同じ場所まで堕ちてきてくれないのです。
そう喚いて叫んでしまえたら、どんなに楽なのでしょう。

握りこんだ掌に爪が食い込む痛みが、私を繋ぎとめる。
醜悪な内面を、化け物に成り代わった私を覆い隠すための、
戯れを気取った山南敬助の面を張り付けた。
「おや。雪村君に、私はどう見えているのですか。
私とて男ですよ。原田君や永倉君たちのように、女性を買い、
憂さを晴らすことができるならともかく、
ここに縛り付けられている身では、時にこうした衝動があっても
おかしくはないでしょう。
飢えた狼の前を、おいしそうな兎が無防備に歩いていれば、
襲いたくなるのも道理。」

私にできるのは、これが精一杯なのです。
笑顔という面をつけ、嘘とも真ともつかぬ虚勢を張る。
さあ、私の本質に触れたのです。怯えて見せてください。
君のそのしなやかな心こそ、私は恐ろしい。
それがあなたがた鬼のもつ本当の強さならば、
どうか堕ちた私にもその強さを下さい。
私の奥底に隠した恐れをどうか暴かないでください。

「おやすみなさい。」
「・・・・・・おやすみなさい、山南さん・・・。」

ああ、私を揺さぶるのはおやめなさい。
そんなあなただから・・・
時々無性に・・・
私は・・・




  1. 2013/10/01(火) 00:10:32|
  2. Kissシリーズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:2
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コメント

このSS,深いです!

ドラキョン様
全てのイラストに挑戦されるその姿勢だけでも頭が下がりますのに、現在upされている作品のどれもが高クオリティで、素晴らしいです。
今回の山南さんSSは、(読み手の萌とか好きキャラなどを抜きにして)心理描写においては一連の作品の中でも特に秀逸な出来栄えではないかと思うのは私だけでしょうか・・・。
大人のドラキョン節、堪能させていただきました(笑)
まだ発表されていない残りのキャラのSSが本当に楽しみです。応援しています(^^)/
  1. 2013/10/01(火) 01:43:51 |
  2. URL |
  3. 酔狂 #-
  4. [ 編集 ]

酔狂様へ

過分に褒めていただき恐縮です。賢い方がよかれと選んだ道でことごとく裏目に出たら・・・。変若水選択など、大博打もいいところですし。きっと凡人にはわからない複雑な心理状態になりそうかな・・と。とりあえず山南さんが気にしそうなところをてんこ盛りにして、複雑(乱雑?)に見せてみました。多分、山南さんが読んだら、駄目出しされること間違いなしです(笑)酔狂様を攪乱できたのなら、目論見は成功したと思っていいのかしら?いい方に解釈して、気分よく眠ることにします!ありがとうございました。
  1. 2013/10/02(水) 00:12:54 |
  2. URL |
  3. ドラキョン #-
  4. [ 編集 ]

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