皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「約束のキス」

今回の方はお初の「閏年の雪」の瑠璃さん
子供時代の千鶴と薫のキスへのSSを下さいました♪


薫は沖田√以外では、ほぼ関与してこないし、平助√の綱道さんとも違って関係改善の話はないキャラなので、まあある意味ブレのないキャラではありますよね。
でもだからこそ、記憶を持って生まれ変わったとしたら、今度は間違わずに―――と思うんじゃないかな、と。
ごく普通の妹思いのおにーちゃん、そんな薫もいいですよね。


では続きから、薫の妹離れの第一歩をご覧下さい^^



挿絵は感謝を込めて瑠璃さんへ進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




約束のキス



「あ、ねえ薫。この景色、懐かしいね」
「んー?」

昼休みのことだった。
弁当を食べ終えた千鶴と薫は、
二人並んで別々の雑誌を読んでいた。
薫が千鶴の声に反応して、妹の雑誌を覗き込むと。

「――ああ、本当だ。懐かしいな」

一面に広がる黄色の花畑。
薫はふと目元を和らげた。

それは遥か昔のこと。


「ねー、薫ー! 
待ってってばー!」

花束を抱えた千鶴が、
花冠をかぶった薫の後を追いかける。
一生懸命になって走るが、ふたりの距離は離れるばかり。

「ああもう! 本当に千鶴はドンくさいなあ!」
「違うよ! 着物だと、走りにくいの!
 薫は袴だから、走りやすいだけだもん!」
桃色の着物を着た千鶴はぷうっと頬を膨らませる。
確かに。
薫は自分の緑色の袴を見下ろした。
ちょっと考え、ずかずかと千鶴に近づく。
そして。
「分かったよ。これなら、はぐれないだろ」
そう言って千鶴の手をぎゅっと握りしめる。
「薫?」
千鶴はきょとんとして薫の顔を見上げる。
「これからはこうして、手をつないでてやるから。
 そしたらお前がべそかくこともないだろ?
 僕もお前を探して後戻りすることもないし。
 こういうの、なんて言ったっけ…
 そうだ! 二石一鳥だ!
 隣のおばさんが言ってた」
「じゃあ、薫、これからはずっと手をつないでてくれるの?」
「ああ。お前がドンくさいからな」
「だからドンくさくなんかないってば!」
千鶴は少しむくれるが、すぐに笑顔になる。
「でも嬉しいな。
 これからも薫がずっと傍にいてくれるってことだもんね」
えへへと笑う妹が無性に愛しくて、
薫は妹の額に口づけた。


カット313d


「かおる?」
案の定、千鶴は少し驚いた表情になる。
「向かいのおじさんが言ってた。
 約束の証拠だって」
「約束の証拠?」
「そう。これで絶対に約束を守るねって意味になるんだ」
「そうなんだ。じゃあ、私もやる。
 私も、薫と一緒にいたいもん」
そう言うと千鶴は、少し背伸びをして薫の頬に口づける。
そして顔を見合わせるとどちらからともなく笑いあった。

「薫ー! 千鶴ー!
 そろそろお昼にしましょう!」
「はーい!」
「今行くよ! ほら、千鶴」
千鶴は薫が差し出した手をぎゅっと握る。
そして二人は、大好きな両親が待つ方へと駆けていくのであった。


「…あの頃は、あんなことになるなんて思わなかったなぁ…」
千鶴は写真をながめたままぽつりと呟いた。
「僕もだよ。
 まさか千鶴が男装して男所帯に入り込んで、
 さんざ雑用をさせられたあげくに、
 約束破って、僕の忠告をきかないで、
 君に一番意地悪していたやつのとこに嫁ぐなんてさ」
「私だって、薫が女装してるなんて思わなかったもん」
傍から見れば、軽口をたたき合っているようにしか見えないが、
2人の瞳はとても切なそうな色をたたえていた。


あの後。
結論から言うと、
2人の約束は果たされなかった。
雪村の里は火の海になり、
薫と千鶴は別々の家に引き取られた。
十年近くたって、再会を果たすことはできたものの、
薫の妹に対する憎しみが膨れ上がってしまったがために、
2人が再び心を通わせることはできなかったのである。

けれども、神様の計らいだろうか。
2人は生まれ変わり、また双子として再会することができた。
そして、また幼少期を共に過ごせた。
薫は再び養子になって、離れ離れになってしまったけれども、
2人は定期的に会うことができた。
高校生になって、同じ学校に進学し、
今ではこうして毎日のように一緒に昼食を取っている。
今生の薫はあのころよりはひねくれておらず、
千鶴に対して少し厳しく、
他の男子生徒に対してかなりキツイくらいですんでいる。
――気に入らない相手の名前を、『抹殺ノート』に書くことは行き過ぎだと思うけれども。


「千鶴、今度、そこに行ってみようか」
昔のこと、今のことを思い出しながら笑っていると、
唐突に薫がそう声をかけてきた。
「え? いいの?」
「そうだよ。お前、すごく行きたそうな顔してるし」
「え? そ、そうかな?」
「全くお前は…。
 いつもそうやって顔に出るんだから。
 だから昔も今も、沖田のやつにいいようにからかわれるんだよ」

「ぼくがどうかした?」

「「わっ!」」

いきなりの第三者の介入に、二人はそろって声を上げた。
しかも今話題にしていた人物ときている。
突然現れた沖田は、千鶴の雑誌をひょいっと覗きこむと、
薫に向かって悪戯っぽく笑った。
「二人でデートの相談?
 いいなあ、僕も交ぜてよ」
「お…沖田!いきなり後ろに立つな!」
現世でも千鶴の恋人となった沖田に、
薫はものすごい剣幕で突っかかる。
そんな薫を無視して、沖田は千鶴に話しかける。
「千鶴ちゃん、お花畑に行きたいの?
 そういえば昔もよく二人っきりで行ったよね。
 また今度、二人で行かない?」
「それ以上、千鶴に寄るな、触るな!
 妹が穢れる!」
「うるさい義兄さんだなあ」
「義兄さん言うな!」
禁句を発した沖田にヘッドロックをかけようとした薫だが、
逆に沖田にヘッドロックをかけられている。

「さ、邪魔者もいなくなったし、
 千鶴ちゃんは僕と二人でデートの約束しようか」
「え、ええっと…」
「僕を無視するな!」
「うるさいね。女装癖のある人が『僕』とか言わないでくれる?」
「今はないっ!」
「あ、あのですね、沖田先輩」
わたわたと千鶴は二人に駆け寄る。
いつもならこの攻防戦は平助や斎藤、
時には原田や土方がおさめてくれるのだが、
今日は自分で何とかしないといけない。

「どうしたの、千鶴ちゃん」
「あの、お気持ちは嬉しいんですけど、
 その、この場所には薫と二人で行きたいな…って思って」
「何それ。僕は邪魔者ってわけ?
 千鶴まで僕をのけものにするんだ」
「そ、そうじゃないんです。
 な、なんていうかその…」
「二人だけの思い出の場所だから、二人で行きたいってわけ?」
「え?」
「誤魔化そうとしてもだめだよ。
 顔にしっかり書いてある」
そう言って沖田は千鶴の頬をつんとつついた。
「二人の思い出の場所って言うなら、仕方ないね。
 今回はこれで手を引くよ」
「いいんですか?」
「僕も、君たちの小さい頃の思い出に入り込むほど無粋じゃないよ」
「…総司さん…」
「その代わり、次の週末は僕をそこに連れてってね。
 で、この先三カ月の週末は、全部僕のために空けてもらうから」
「え…はい…」
「おいこら! 僕を無視して話を進めるなぁっ!」

そして週末。

「わぁ、きれい!」

一面に広がる花畑に、千鶴は感嘆の声を上げた。
桃色のワンピースを着て花畑を駆けまわる千鶴の姿は、
何年もの時が経っても、着物から洋服に変わっても、
少し年が上になったとしても、何の変わりもない。
薫にとってはたった一人の大切な妹だ。

「千鶴、あの時みたいに花冠作ってよ」
「花冠? いいよ、ちょっと待ってね」
そう言うと千鶴は花畑にすわりこんで、
ゆっくり丁寧に花冠を作りだす。

その姿を見ながら薫は思う。
遅かれ早かれ、千鶴は再び沖田とともに人生を歩みだすだろう。
前世からあんなに思いあってきた二人だ。
現世では同じ道を歩まないという方がおかしい。
頭の中ではどこか納得しかけているのだが、
もう少し兄妹二人でいさせてくれないだろうか。
こっちだって、ようやく心を通わせることができたのだから。
昔、彼女を憎んだ分だけ、素直に愛せなかった分だけ、
現世では二人の時間をくれないだろうか。
そう思うとついつい、千鶴の周囲にいる男にひどい態度を取ってしまう。

珍しく感傷的になっている自分に苦笑していると、
千鶴が出来上がった花冠をそっと頭にのせてくれた。
「あ、できたんだ。ありがとう、千鶴」
「いいえ、どういたしまして」
そう言う千鶴の手にはあまった花が握られている。
花冠を載せる自分。
花をもつ千鶴。
あの時と同じ光景ではないだろうか。
そういえば、あの時は…。

「ねぇ、千鶴。 一つ、約束してくれない?」
「なぁに?」
「僕が沖田を認めるまで、千鶴は僕の傍にいるっていう」
「…認めてくれるの?」
「一生かかるかもしれないけどね」
「…」
「で、約束するの? しないの?」
「…するよ。いつか総司さんを認めてくれるなら」
「よかった。じゃ」
「?」
顔をずいっと近付けた彼に、千鶴はわけがわからないという顔をする。
「何ぼさっとしてんのさ。約束の証拠」
「え? 今もするの?」
「当たり前だろ。ほら、早く」
「うう~」
恥ずかしいのか、千鶴は周りを見回して、
素早く薫の頬に口づけた。
「ありがと。じゃ、僕も」
そう言って薫も千鶴の額に口づける。


カット344約束のキス


目をつぶった時、昔、口づけをしたときの自分たちの姿が、
一瞬、まぶたの裏に浮かんで消えた。






  1. 2013/09/23(月) 10:36:55|
  2. Kissシリーズ
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  4. | コメント:2
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  1. 2013/09/23(月) 21:17:24 |
  2. |
  3. #
  4. [ 編集 ]

瑠璃様♪

こんばんは!
そちらこそ勉強でお忙しいでしょうに、貴重な時間を寄稿に、ありがとうございました^^
また何かこちらに寄せてもいいお話ができましたら、どうぞお気兼ねなく。
これからもよろしくお願いしますね。
  1. 2013/09/24(火) 19:32:22 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

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