皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「遠い月」

泡のあるしあわせ」の碧さんから
天霧×君菊のキスSSです♪


平千√のBADENDのその後…という感じでしょうか。
SSだというのに、すごくお話の奥行きを感じさせるのは、相変わらず碧さんの筆の巧みさですね^^
それもそれを天霧と君菊さんで語るとは。
先にお話を読んで、是非キスシリーズに入れたい!と思った二人のショットです。

―――が、意気込みに反して、天霧の顎鬚に足をすくわれた私;…おまけ絵はそれの埋め合わせになってるでしょうか(^^;


夜のしじまに流れる悲哀を救う天霧さんの大人のキスは、どうぞ続きからご堪能下さい^^


挿絵は感謝を込めて碧さんに進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




遠い月



そこは咽るような血の海だった。
おびただしい首を切られた羅刹の屍。


灰の砂の上に、二本の刀。


雪村千鶴はその二つの刀の一本に寄り添うように倒れ・・・絶命していた。



風間の腕の中には八瀬の姫。
初めて見るその鬼の姿は、白髪も肌も着物も涙さえも赤く染めていた。
姫の胸にはひときわ大きな紅の華が咲いて、その傍らに風間の童子切安綱があった。


カット340遠い月


「お前は最後までお前のものか。・・・最期ぐらいオレのものになれ」
「私は・・・私・・・。けれど・・・あなたと・・・やく・・・そくは・・・・守りたかった・・・」


風間からの口づけを受け取りると、体から力が抜け姫の体から砂がこぼれる。
ゆっくりと、ゆっくりと。
羅刹の血はそこまで彼女を蝕んでいたのか。
鬼ではなく羅刹として最期を迎えた彼女を風間は瞬き一つせずに見送った。

そして、それを見ていた女が一人。


「・・・忍びの本能か。急所を外したな」


そうは言うものの、女はこのまま捨て置けば間もなく事切れるほどの深い傷だ。
が、風間は彼女を連れて来いと私に言った。
ここから西の里に帰るには大きな危険を抱えることになる。
今までの風間ならそうはしなかったはずだ。

--『生きて』



姫の声は誰の胸に届くのか。





鬼の里は静かだ。
特に西の里は。京の里は都に近いからか・・・主である姫があのお方だったからか、それでも賑やかだった。

思わず思い出した景色に当たり前に入り込んでいる、ころころと笑い声を立てる笑顔に傷がうずいた。
ここに来てどれぐらいなのか。
季節は確実に一つ進んでいる。


鬼ではない私の体はあの傷を癒すのに随分時間を掛けた。
今は起き上がることも、身の回りに不自由はない。
握ることのできなかった短剣に力を込めることもできる。

それをせずに生きながらえている。


ここにいる意味はなんなのか。
何度、どれほどに時間を掛けても答えは見つからない。
が、体が動くようになれば京に戻らねばならない。
明日にでも伝えよう。
そんな事を考えていれば寝付けるはずもなく、中庭に出ていた時だった。


「その姿では体を冷やします」


突如感じる気配。
それと肩に掛けられた羽織。


「天霧・・・」

風間はキセルの香りをわずかに纏わせるが、彼は何もない。通り過ぎる風のように。


「また夢、ですか」

問いではない、確信を持っている言葉に違うともそうだとも言えず頷いた。
この里で、何かと気遣い傍にいてくれたのは天霧だった。
今は彼が隣にたたずむことが自然だと思えるほどに。


「今夜は満月ですね。少し、月見に付き合いませんか?」

その言葉に空を見上げれば、神々しいほどに光る月が満ちていた。
眠れぬ夜を一人で越すよりはいいのかもしれない。
天霧は私を縁側に促し、酒をとその場を後にした。



久しぶりに飲むお酒に少し喉が痛い。
毎晩男相手に飲ませていたのが、あまりにも遠い昔のように思える。
緊張と駆け引き。それが苦痛だとも思わなかった。
全てが姫様の役にたつのであれば。


「千姫を思いだされてましたか」


その声に驚いて彼を見ると、天霧は冷えた笑みで私を見ていた。


「思い出したくない、つらい日々だったのですか?あなたと千姫が過ごした時間は」


突き放すように言い捨て、彼はーー微笑んだ。


「違うでしょう?あなたが一番側で見ていたはずです。千姫のすべてを」


見ていた。確かに私が誰よりも千姫のすべてを知っていた。


「あなたが思い出さなくて、誰が彼女を憶えているのです」


天霧の声は静かに私の心の底に響く。
響いて振るわせる。


「私が知る千姫はやんごとなき姫君で、無駄に親切で、幼い頃風間にほのかな恋心を抱いた・・・ぐらいしか知りません」
「・・・!姫様ご本人が自覚がなかった事を・・・」

思わず上げた声は、此処最近なかった少し大きな声だった。
夜中の屋敷に響いた声は、自分でもどこか楽しげだった。

あぁ・・・。
私は何を呆けていたのか。
姫様の事をなかった事としたかったのか。

最期の最期まで姫様であろうとした主と過ごした時間を。


「姫さまは、無駄に親切なんかではありません。情に厚いだけです」


それから私は長い時間を掛けて、姫様の話を天霧相手に話した。
彼が用意した徳利が空になっても。
月は高く、そして傾いて。

「姫さまは・・・本当に・・・本当は・・・風間との・・・・」

いくつ、話しても足りなかった。いくつ話しても尽きなかった。
楽しかった事を。驚かれた事を。心を痛められた事を。
自分の事は後回しに、人の事を心配されてばかりの優しい姫だった。


「あなたは、呆れるほどに千姫に尽くされていたのですね」

不意に触れた天霧の指が、私の頬をなぞった。
冷えた液体が一緒に滑る。

「自分がずっと泣いてる事も知らなかったのですか?」


それの正体が涙なのだとそう言われても理解できなかった。
涙は自在に操るものだった。


「千姫の忍びで、島原の太夫だった君菊は仙台で死にました。ここにいるのは菊月です」


天霧は涙を拭きながら、私を引き寄せた。


「ここに居なさい。この西の里に」


私は瞼を一度閉じて、息を飲み込んだ。
それを追いかけるように、天霧が唇を重ねた。


カット325


「夜中の悲鳴はもう聞きたくありません」


涙を拭っていた手は背中を抱き。
側にいることになれた気配は私を混乱させ、安心させる。


『生きて』


彼の腕の中、私は姫様の声を聞いた気がした。


「千姫の記憶と共に。私と、ここで」

生きねばならない。姫様の分までではなく。
私が生きていく限り、姫様は生きつづけるのだから。



<FIN>
  1. 2013/09/16(月) 11:24:44|
  2. Kissシリーズ
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コメント

碧様

初めまして。碧様のSSにコメントさせていただくのは初めてになります、香西香住です。とても大人びた文章で感動致しました。私にはこういう完シリアスは書けないので本当に尊敬してしまいます。碧様の世界に酔わせて頂きました。ありがとうございます。
  1. 2013/09/17(火) 00:04:11 |
  2. URL |
  3. 香西香住 #PBl13R7o
  4. [ 編集 ]

>香西香住さま

こちらこそ、初めまして。
香住さまのお話にいつもクスリと楽しく読ませて頂いてます。

私は関西人でありながら笑いのセンスがありません~
なので楽しく笑える文章を書くのが本当に難しくて・・・。

今回は少し重い話でしたがコメント頂けてうれしかったです。
ありがとうございました♪
  1. 2013/09/17(火) 11:42:45 |
  2. URL |
  3. 碧 #cvznxSWw
  4. [ 編集 ]

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