皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「紅・撫子」

「桜夢記」のロカさんから、お誕生日プレゼントを頂きましたー♪♪♪

只今、試験へ向けて猛勉強中でもあり、おうちの事にも忙しいというロカさん。
そんな時に、私の誕生日にまで気を割いて下さって、ホントーに有難くて感涙モノです!
心より感謝を申し上げます!


そんな大変な最中に、こんなほのぼのとした斎藤夫婦を書けるなんてw 流石ですね^^
ではでは―――
私には描けそうもないほんわりした雰囲気を、前フリのSSと一緒に、続きからどうぞ



挿絵は感謝を込めてロカさんへ進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。








 昨日、巡察の途中で花嫁行列にいき合った。
 こんな時勢だからだろうか。
 花嫁の装いがとても鮮やかで、華やかで、そして唇に注された艶紅が美しく見えた。
 花嫁行列に道を譲って、道端でその姿を見つめる大きな瞳。
「きれい……」
 無意識な呟き……。
 その一言に、この娘は紅一つ持っていなかったと思う。
 飾らなくても、充分に美しいことは知っている。
 髪も、瞳も、その姿も……。
 けれど、一番美しいのはその心。
 自分のことは誰も知らない。
 そして、ここに一人、幸福そうに微笑む花嫁よりも美しい娘がここにいることには誰も気づかない。


 
 昨日、巡察の途中で花嫁行列をみた。
 こんなに皆が生き急いでいる時代だから、手にした幸福が逃げ出さないようにゆっくりと彼女は歩んでいた。
 きっと、あの人を想い待っている人の元へ……。
「きれい……」
 鮮やかな紅が注された唇は幸福そうに微笑んでいて、思わずそう口にしていた。
 自分だって不幸ではない。
 着飾りたいと思っているわけでもない。
 ただ、ただ、ゆっくりと想う人の元へ確かに歩んで行く姿が眩かっただけ……。
 あの向こうにきっと二人で共に歩む確かな場所がある。
 そう思っていたら、あの人にこれを渡された。
 蛤貝に練り込まれた艶紅。貝の表面には桜の花が描かれている。
「こんな高価な物……」
 それでもその気持ちが嬉しくて、思わず胸に抱きしめていた。
 それを見て、彼は笑う。
 ここには誰もこないから注してやろうと、薬指で紅を唇に注してくれる。
 よく似合う。
 そう言って笑う顔が涙で滲んだ。
「私は何も返すことができないのに……」
 その一言に再び彼が笑う。
 紅はこうして……。
 彼の唇がそっと重なる。
 瞳を閉じて優しい感触に酔いしれながら思う。
 紅はこうして相手に返せばいいのだと。


カット336紅





撫子



 北国の冬に一輪の花が咲く。



 その小さな掌に収まった艶紅が練り込まれた蛤貝。
 これから二人だけで祝言を挙げようとした時、愛しい娘が殊更に大切そうな手つきで胸元から出してきた艶紅。
 懐かしい思い出の品……。
 あの長く辛い戦さの中でもこれだけは手放さないでいてくれたのか……。
 京の都でこの紅を千鶴へ手渡した時、貝殻の表面に鮮やかな蒔絵で描かれていた桜の花は、長い時の流れと共に散ってしまっていた。幾度も、その小さな掌の中で大事に繰り返し、その蒔絵模様を指でなぞる様子が見て取れるようだ。
 男装をしている千鶴が紅を注すことなど出来ず、ただ、ただ、その掌で慈しんでいたのだろう。施した蒔絵が消えてしまうほど……。
 それだけの年月が流れたのだ。
 だが、艶紅が練り込まれた蛤貝自体には傷一つない。
 あの銃弾や砲弾が激しく行きかう中で、このように小さなものを傷つけぬように護っていてくれたのか、そう思うと、斎藤の胸の奥に嘗てそこに描かれていたような優しい花が咲いたようだった。
 思えば千鶴とは不思議な縁で結ばれたものだ。
 あの雪が舞い散る凍てつく夜に、斎藤が羅刹を斬り捨てる瞬間を見てしまった哀れな少女。
 あの場で斬り捨てられても仕方のなかったか弱く幼かった少女は、己自身の力で自らの運命を切り開き、こうしてかけがえのないただ一人の女子として斎藤の眼前にいる。
 そうだ。あそこから全てが始まった。
 己の思いも、千鶴の思いも、全てがあそこから始まった。
 そうして、再び新しい始まりを千鶴とたった二人で迎えようとしている。
 花嫁として相応しい装いもさせてやれない。祝言を祝うための膳もない。
 あるのは、心優しい隣人が用意してくれた僅かばかりの祝い酒と千鶴が手にした紅だけだ。
 けれど、何一つないことから始めることが却って自分たちには相応しいような気がした。
 時代は変わり、人は移ろう。
 だが、その中には移ろわぬものが確かに存在している。
 斎藤はそれをずっと信じてきた、それは隣人が示してくれる優しい心根であったり、千鶴と斎藤が互いをいとおしむ心であったり……。
 その二つがいま斎藤の目の前で確かな形となり、実をむすんでいる。
 なんと我が身の幸いであることか……。
 ふぁり、斎藤の頬に淡雪のように優しく柔らかい笑みがこぼれ落ちた。



 今宵までの間に、この紅を注したのは一度だけ。
 あの時代の激しい時代の変革の波に浚われた京の都で過ごした日々……。
 そんな日々に花嫁行列を見た。その時、無意識に呟いた『きれい……』と云う言の葉。
 その一言に愛しいひとから手渡された大切な紅。
 あの頃はまだ斎藤と千鶴の周囲には沢山のかけがえのない人々が傍にいた。
 その大切な人たちはまるで櫛の歯が欠けていくように、一人、また一人と姿を消して、こうして残ったのは千鶴と斎藤の二人だけ……。
 そうして、これからも二人で寄り添い生きていくのだ。その証として、たった二人で挙げる祝言。
 艶やかな衣装もいらない。豪華な膳も、必要なんてない。
 あるのは隣人の心づくしの祝い酒と千鶴が大事に持っていたこの想いが詰まった大切な紅だけだ。
 それだけで充分。それ以上なんて必要ない。
 ただ望むことが許されるのならば、この場に皆がいてほしかった。
 近藤はきっと涙を流さんばかりに感激してくれただろう。
 土方は苦笑いしながら、「おめぇらは存外、似合いの二人なんだろうな」、と優しい声をかけてくれただろう。
 沖田はきっと「一君は意外に手が早かったんだねぇ」と憎まれ口の一つも叩きながら、それでもいつものように笑って「一君は一度決めた事を違えたりしないから、千鶴ちゃんは絶対に幸せになれるよ」と続けてくれただろう。
 原田や永倉、藤堂はいつものように騒がしく、それでも満面の笑みで二人を祝福してくれただろう。
 山南はきっと「私はこうなるような気がしていましたよ」と微笑んでくれたであろう。
 そして、井上さんは……。
 山崎さんは……。
 千鶴の脳裏に皆の笑みだけが浮かぶ。
 彼らが千鶴と斎藤へ送ってくれる言葉はただ一つだけ。
―幸せに……。
 千鶴の瞳から涙が溢れた。
 あゝ、人が願うことなど、こんなにも簡単で小さなことだけなのに、それを叶えることはなんと難しいのだろうか……。
 この静かで平穏な日々に新選組の皆が託してくれた沢山の願いと想いがこもっている。
 自分たちの幸いは皆が守ってくれたからこそ、ここにある。
 確かに優しいだけの日々ではなかった。それでも忘れない。
 いや違う、そうではない……。
 千鶴も斎藤も忘れることなど出来ないのだ。
 たくさんの尊くかけがえのない命が失われた。
 残された者が先に逝った者から受け継いだのは彼らの命だ。
 だから、これからも共に笑って暮らしていこう。
 斎藤と二人。
 共に年老い、こんな日もあったと語り合うような日がやってくるまで。
 平穏で静かに、自分たちの志を貫きながら、生きていこう。
 それが千鶴と斎藤の生きるということなのだ。



「撫子……だったのだな」
 盃を交わした斎藤がぽつりと呟く。
「え……」
 その千鶴の紅を注した唇に、斎藤がそっと指を伸ばした。
「い、や……。この、紅、の色だ」
 千鶴の頬が淡く染まっているのは交わしたばかりの酒のせいなのか、それとも恥らっているからなのか……。
「ご、ぞんじでは、なかったのですか……」
 あの日、生まれて初めての口づけを交わした。
 今となっては遠く懐かしい思い出。
 紅を口づけで返してくれればよいと言ってくれたのは斎藤だったのに……。
「いまも変わらぬが、俺はどうも、このような事には不得手で……。何を、送れば良いのかも、わからず……。あの日、この色だけがお前に似合うと色だと思い、これを手にしていた……」
 俯きながら、言葉の一つ、一つをゆっくりと、それでも誠意を込めて紡ぐひと……。
 そんな、誠実で心やさしい夫になったばかりの愛しい人を柔らかな笑みを浮かべて見つめれば、いつも以上に顔に顔が紅い。
「あの、ときは……。ただ、必死で、お前に似合うきれいな色を選びたいとしか……。故に、色が撫子、であった、とは、思わず……」
 そのように必死で言葉を繋ぐ斎藤は、いつの間にか耳まで真っ赤だ。
 なんて愛おしい人なのだろう。千鶴は思う。だから……。
「ご存じいらっしゃい、ますか……、一さん」
「なにを、だ……」
「撫子の花の、意味です」
 その笑みを浮かべた妻となったばかりの愛おしい娘に向ける。千鶴は柔らかな声音で言葉を続けた。
「撫子の花の意味は……」
 ふぁり、千鶴が斎藤へとほんに僅かわずかばかり近づいた。まるで嘗て紅を送った時に斎藤が千鶴へそうしたように……。
「可憐と貞節……」
 その言葉に斎藤が嬉しそうに微笑んで、優しく千鶴の唇に己のそれをそっと重ねた。
 あの懐かしい日と同じ。
 愛しい妻から紅を返してもらうために……。

カット337撫子



 春まだ遠い雪深い北国に可憐な一輪の花が咲く。その花は色あせることもなく、枯れることなど決してない。



  1. 2013/09/12(木) 11:03:45|
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  1. 2013/09/12(木) 13:49:38 |
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  1. 2013/09/12(木) 20:14:36 |
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酔狂元乙女様♪

こんばんはー♪
リアルで御多忙中に、コメありがとうございます。
イラスト褒めて頂き、どうも。これもロカさんの本文あってのことです^^

他の方へのコメ―――そんな風に感じる事ないと思いますよ。私も感想言ってもらえるのは嬉しい方ですし。今後も酔った勢いでも何でもw どうぞどんどん書き込んで下さい。
お初の方もまだ控えていますよ~www

過去イラスト使用もどうぞ♪ 何を使ってくれるのか、楽しみにしてます。
いや、その前に幕末の『いろは歌』の完成が先ですね^^
読みたくてうずうずしてますので、お仕事に影響しない程度に頑張って進めて下さいねー
UPを正座して待っております♪
  1. 2013/09/12(木) 23:45:16 |
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ロカ様♪

お忙しい中、すぐに取りにいらしてくれてありがとうございます^^
『紅』の方は誰のver.でもいいように、あえてちーちゃんだけにしました。
可愛いと言ってもらえて、ほっ。

来年…また、というのは嬉しいですが、そんなにすぐまた誕生日が来るのは遠慮したいw
ともあれ、来年は何の憂いもなく創作に励んでいられますよう、今を頑張って下さいね!
この度は本当にありがとうございました^^
  1. 2013/09/12(木) 23:55:01 |
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  1. 2013/09/18(水) 02:19:49 |
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ロカ様♪

『最後の追い込み』…うう、怖い言葉だ…そんな忙しい最中にUPありがとうございます^^;
こちらに覗きに来るだけでも、ますます時間がなくなりそうですね。
しかし、台風一過やっと涼しくなり、いろいろと最適な季節、試験勉強もはかどる事を祈ってます♪
全てがうまくいったら、『時の娘』の続編を!
  1. 2013/09/18(水) 20:53:22 |
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