皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「のばしても」

夢幻泡影」浅夢さんから、土菊キスSS頂きました♪

やはり、この二人だとこのまま濡場へ直行なんですねーww
ここではお互いに想う相手がいての、オトナな関係―――浅夢さん、うちに来ている方たちの中でも一際お若いのに、こんな男女の機微を表現できるなんて! 貴方の先が楽しみです^^

しかしつくづく…やっぱり土方さんって、『こういう』関係が似合う人なんですねーw


では続きから、うちでは滅多にない艶をこちらのお話で補充して下さいませ♪



挿絵は感謝を込めて浅夢さんに進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




のばしても




 ───島原、角屋。

 客だけでなく、そこに呼ばれる芸妓とて上級の者しか足を踏み入れることが許されない揚屋の狭い奥座敷。

 その奥座敷の窓辺を我が物顔で占領する一人の青年───新選組、「鬼の」副長、土方歳三。

 彼は何かをするわけでもなく、ただそこで物思いに耽っている。何を考えているのかと問われれば、新選組のことと答える。───常であれば。

 しかし、今思考を埋め尽くしているのは。

 「───千鶴はんと風間のことどっしゃろか」
 「・・・、居たのか」

 随分と考えに没頭していたようで、他人の気配に全く気付かなかった。それだけ、自分の感情の中に閉じ込められていたというなら、かなりの笑い話だ。これが他人であれば「何をしている!」と怒鳴り散らしているところだ。

 などと考えたところで、ふと瞬きをする。

 「・・・酒を頼みはしたが、女まで呼んだ覚えはねぇぞ」

 頼んだ覚えのない「者」の姿に土方は凄むものの、相手の女───芸妓は、何処吹く風で微笑んで受け流す。慣れている、というふうに。

 芸妓───君菊は、笑みもそのままに、この時代の女性にしては低めの声で言葉を紡ぐ。

 「そないなことゆうたかていつものことやゆうのに。ほんにつれないお方やこと。島原に来といて芸妓も呼ばんと逆に怪しまれまっせ」

 暗に、いつも呼ぶくせに何故今日に限って呼ばなかったのか、と責めている。

 「『新選組の土方はんが角屋に入っていくところを見た』ゆう話が微かに聞こえたさかい、禿に確かめに行ってもろうたらほんまやったってゆうてきたんどすえ。いつもは逢状だしてくれはるのにどないしたんどす?」

 この君菊とは、ひょんなことから座敷で出会った。

 ある日、ふらりと一人角屋に現れた土方は、そこの者に、誰でもいいから芸妓を呼ぶように言った。

 暫く待ってやってきた芸妓は「君菊」と名乗った。

 島原の君菊といえば、将来は天神か太夫か、と目されている、最近名の売れている芸妓であった。

 ───北野上七軒町の舞妓で、自分が“何かと”贔屓にしている舞妓、「君菊」と同じ源氏名ではあるが。

 これを期に、たびたび逢状を出しては座敷に呼び、気が付けば手を出していた。

 しかし、こうして逢うようになってから気付いたことがある。

 彼女が纏う“気”と、今新選組で預かっている娘が時折醸し出す“気”が同じことに。

 その娘の名は、雪村千鶴。彼女の父、綱道と新選組にかかわりがあったため、これまたひょんなことから預かることになったが、近頃妙な人物に狙われるようになった。

 その妙な人物こそ、先程君菊の口から出た風間───風間千景なのだが。

 風間が現れてからというもの、千鶴が覚えていないと言っていた幼いころの記憶というものが蘇ったらしく、よくよく話を聞けば彼女は「鬼」らしい。そしてあの風間も、この君菊も同じく鬼だという。

 にわかには信じがたい事実が浮かび上がるなかで、以前の自分だったら確実に「厄介」と言える事実。

 ───雪村千鶴に対する、自分の感情。

 自分の正体がはっきりした今、千鶴は表面上なんでもないように振舞っているが、その実暗い影を落としている。

 己が何か言えればよいが、そういうわけにもいかない。

 それは、気付いてしまったから。千鶴の感情にも。

 こちらの都合で理不尽な状況を与えてしまっている自分達の身勝手な理由で連れまわすわけにもいかなければ、ましてや個人の感情で己の道に引き込むわけにもいかない。

 雪村綱道は幕府高官とも関わりがあった人物。その娘ともなれば、へたすると自分達よりも立場は上になる。そんな女、自分のものにできるはずもなく。

 鬱憤が溜まっていくなかで、彼女がいればそれでいいなんてある意味莫迦げた考えを持ちつつも、向こうが何も言ってこなければ自分も何も言わない現状にとうとう耐え切れず屯所を出てきた。

 「今夜は、どうしはります?」

 再び自分の思考に耽っていたところに、横から忍び寄る影がある。

 もう一度瞬きをして目の前をみれば、君菊が首にその細腕を回して顔を近づけている。

 この女は気付いている。己の気持ちも、千鶴の気持ちも。

 「・・・てめぇが勝手に来ておきながら、どうするもこうするもねぇだろうよ」

カット328のばしても

 この女は、全部知っていながらその体を、想いもしない男に開いていく。仕方がない、といえば、そうかもしれない。なにせ、この女も叶うには厳しい相手を、その心に住まわせているのだから。

 また思考が何処かに飛びそうになるのを、君菊の柳腰に腕を回してつなぎとめる。

 その拍子に、空になっていた酒瓶が倒れる。

 「千鶴はんの気持ちにもあんさんの気持ちにも気付いていはるのに、なぁんも言わんとただ黙ってるだけ。何も言わんことが逆に互いを傷つけてるてわかってはるのに・・・っ」

 君菊のその言葉を聞きたくなくて、土方は自分の唇で彼女のそれを塞ぐ。

 「・・・てめぇも似たようなもんだろ」

 『芸は売っても色は売らぬ』という島原の女であろうと、場所が場所だ。そういう機能だって働いている。君菊の抵抗がないのをいいことに、その柔肌を暴こうと袷に手を入れる。

 不意に、極々小さな音が耳に届く。気配を探れば、女。おそらくは角屋の者。かわりの酒を持ってきたのだろうが、土方はこれ見よがしに君菊を押し倒した。

 その瞳に宿るのは、凶器にも似た欲情。

 そして、囁いた。冷徹ともとれる、低い低いその声で。

 「どうせ互いに『仮初め』なんだ。今だけ俺を見てろよ」

 薄暗い部屋の中で、帯を解く大仰な音が響いた。

カット283



 真実(ほんとう)には、届かない。のばしても。





  1. 2013/08/31(土) 10:29:07|
  2. Kissシリーズ
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