皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「溢れる想い」

今回、山千SSを寄せて下さったのは、桶乃ハシさん。
うちではお初ですねー♪ ありがとうございます^^

ゲーム内では、怪我して以降の山南さんは鬱屈し通しで、総ちゃん以上にグサッとくるイヤミを千鶴に言い続けますが、心中はどうだったんでしょうねえ。
もし山南さん√があったら、冷たい言葉の裏にはこんな本音があったのかも…とか思うと萌えますねwww

そんな別√を想像させる甘い山千♪
続きからどうぞご堪能下さい。


挿絵は桶乃ハシさんに感謝を込めて進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。




溢れる想い



 自分の部屋から出て、よく月の見える縁側で足を止めた。今日の月は満ちている。今は誰も部屋から出るような時刻ではない。その時刻が、一番自由な時であり、考えを巡らせる時刻でもある。
 羅刹になってから、大分時が経った。腕が治ったものの、悩みの種は尽きない。使い勝手の悪い羅刹隊は、活動時間の夜さえも殆ど動けない。変若水の研究でさえ、殆ど進んでいない状態。これでは何のために、羅刹になったのか。存在意義すら揺らいでしまう。志の為に歩みを止めないと決めたが、腕を怪我している時と同様、今も役に立っていないような気がして、たまらなく不安で仕方がない。今は血に狂うことがなくとも、いつか自分も血に狂い、完全に役に立つことさえ出来なくなる事を恐れている。
 しかし、最近その揺らぎを抑えてしまう者がいる。必要とされることが、思っている以上に支えとなっている。
──こちらへ向かって来る足音が聞こえる。それは少し急ぎがちで、だからとはいえ、足の速度はそれ程早くもなく。こんな歩き方をするのはただ一人。食事を運んで来る足音が、いつから楽しみになったのだろうか。その足音を聞き分けられるようになってから、こちらへ向かって来ていることが分かると、心弾む自分がいる。しかし、もう食事を済ませており、普通の人間ならば既に寝ているはずの時刻。

「山南さん、ここにいらっしゃったんですね」

 頭の高い位置に結った髪を揺らし、少女が微笑みかける。男装をしてはいるものの、声は明らかに女のもので、少年と言い張るには苦しいことだと今更ながら思う。

「こんな夜更けにどうされたのですか? 雪村君」

 躊躇いがちに、こちらへ目を向ける彼女だったが、それは一瞬で、にこやかに答えた。

「山南さんに頂いてほしくて持ってきました」


カット323溢れる想い


 差し出されたのは小さな包。両手で受け取る。中身が気になり、視線を送った。

「金平糖です。今日はみなさんからたくさんのお菓子を頂いたんです。それで、私だけ食べてしまうのも勿体無いと思ったので、山南さんにも食べてもらいたくて持ってきました」

 自分を見つめる眼には、仄かな熱を感じる。その熱は自分の感情に静かな火を付ける。
 それを感じ、刺のあるような口調に変える。

「他の隊士と召し上がってよかったのでは?」

 はっとしたような顔で、彼女は視線を逸らした。
 彼女の好意に気づいてから、何度刺のある口調で話しただろうか。それでも、彼女は機会があればめげずに話しかけて来る。それに憤りを感じる。よりによって、何故羅刹である自分なのかと。

「山南さんに、食べて欲しいんです」

 その言葉にどきりと心臓が跳ねる。彼女の好意は胸を焦がす。必要としているのは他の隊士でなく、自分なのだ。自惚れではない、と思う。そう思わされる言葉や仕草から、確実なものを口にされていなくとも分かる。それがどんなに嬉しくて苦しいことか。彼女を捉えたい衝動が、湧き水のように溢れそうで、蓋をする。

「貰い物ですけど、まだたくさんあるので……よかったらご一緒に如何でしょうか?」

 茶の誘いだと言うのに、真面目な顔をして、真っ直ぐこちらの目を見つめて来る彼女。思わず、視線を外した。純粋な綺麗な目で見つめられると、先程閉めた蓋を開けてしまいそうだった。
 もし、自分が彼女を捉えれば、彼女の笑顔を奪うだろう。自分の道に光などない。険しくて、先の見えない暗闇ばかりだ。そのような道に、彼女を誘い込むことなどあってはいけない。

「そのような気を使わなくても結構ですよ。私には、やるべきことがたくさんありますからね。菓子を食べる時間など割けません。それに、君は羅刹ではないのですから、寝ていた方がいいと思います」

 これ以上、近づいて欲しくはない。自分が捉えてしまいたくなる前に、嫌われてしまう方がいい。
 彼女は眉を下げて、口をへの字に曲げている。しかし、それは束の間。意を決したように、一度唇を噛んだ。

「私は大丈夫です!」

 身を乗り出すように、彼女は一歩踏み出し、こちらへと近づく。迷いのない瞳は輝いていて、真の強さが出ている。が、不安の色が出始める。

「ただ、最近の山南さんは元気がないような気がして……私に出来ることではないかもしれません。それでも、お話だけでも聞かせて下さい! 少しは気が晴れるかもしれません」

「気が晴れなかったらどうするのですか?」

 敢えて、意地悪な質問をする。これで、踵を返してくれるといい。

「……お傍に居させて下さい」

 耳に心地よい高い声が、耳の奥まで響いた。彼女を見つめると、恐れのない瞳が向けられている。
 あぁ、そうだ。こうと決めたら頑なな彼女は、決して弱くない。それが確信出来ると、勝手に蓋が開いた。どうしようもない感情が、体中を駆け巡る。
──もし、化け物が彼女に手を伸ばすことを許されるのなら、捕まえても笑顔が消えないのなら、今すぐ捉えたい。

「君には……敵いませんね」

 彼女から「えっ?」と小さく声が漏れた。

「今日は雪村君の行為に甘えようかと思います。ですが、話したいことはあまりにたくさんありますから、君は眠れないかもしれませんね」

 大きく目を開き、満面の笑みが溢れる。その笑顔は周りを明るくし、花が咲いたかのように鮮やかな景色に変わる。

「はい! ではお茶を用意してきます」

 そう言うなり、彼女は駆け出す。今、一度捉えてしまいたい瞬間だった。生き生きとした真っ直ぐな瞳、今にも歌いだしそうな微笑み。
 気づけば、彼女の腕を掴んでいた。驚いた表情でこちらを向く彼女に、唇で捉えた。


カット287


 柔らかな、唇の感触。これを味わってしまって気づく。たった今捉えたのではなく、既に捉えられていたことに。



  1. 2013/08/22(木) 11:21:15|
  2. Kissシリーズ
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:4
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コメント

挿絵を見た瞬間からニヤニヤが止まりません。山南さんのなんとも言えない表情がたまらないです! 千鶴ちゃんの微笑みも可愛らしい! それに、二人のやりとりしている所の表情をよく捉えられていて、素晴らしいですね。流石です!
本当に、こんな素敵なイラストをありがとうございます。

お陰様で、今書いてる続きがサクサク進みそうです。
手を抜かずに頑張ります!


  1. 2013/08/24(土) 11:24:50 |
  2. URL |
  3. 桶乃ハシ #yl2HcnkM
  4. [ 編集 ]

桶乃ハシ様♪

おまけ絵も気に入ってもらえたようで良かったです。ありがとうございます^^
何か真面目な山南さんって、ちゃんと描いた事がないような気がして(SSLは意味合いが違うし)、うまく描けているかどうか変な緊張感がありましたw
うちでは「似非変若水」の山南さんがデフォなもので(^-^ゞ

次の作品も楽しみにしています。
また是非素敵なものを読ませて下さいね^^
  1. 2013/08/24(土) 20:23:26 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

初めまして桶乃ハシ様。 酔狂元乙女と言います。

山南さんって、怪我がなくても羅刹でなくても、結局は土方さんの影に押されて損な役回り・・・と言うイメージなのですが、案外千鶴ちゃんのような子はちょっと影のある知的な大人に引かれる部分を持ち合わせているんじゃないかと思います。
もっとも彼女の場合、初恋は平助くんや斎藤さんってイメージがあって←私見です(^_^;)、だから2番目3番目の恋ならば山南さんは大いにあるぞと!?

今回のお話、「その言葉にどきり~蓋をする。」までの2行、素敵な表現だなと思いました。
山南さんの大人の恋心、ごちそうさまでした。次回作楽しみにしています♪
  1. 2013/08/25(日) 21:43:37 |
  2. URL |
  3. 酔狂元乙女 #-
  4. [ 編集 ]

初めまして、酔狂元乙女様。

そんなに嬉しいお言葉を頂けるとは思いもしませんでした。嬉しすぎて大いに動揺しております( ;∀;)←嬉し泣き

確かに、千鶴ちゃんが山南さんを真っ先に好きになるとは想像出来ませんよね。徐々に山南さんの良さに気づいて、もっと彼のことを知ろうとするのではないかと思っていました。その中で良いハプニングがあれば千鶴ちゃんは山南さんに惚れるのではないかと。それに、時々見せる彼のデレは破壊力あると思いますし(笑)

次回はさんちづではありませんが、気長にお待ち下さい。コメントありがとうございました!
  1. 2013/08/25(日) 22:42:09 |
  2. URL |
  3. 桶乃ハシ #yl2HcnkM
  4. [ 編集 ]

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