皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「甘いご褒美」

今日から7月ですか~

…京都の方から祇園祭のお知らせを受けました。
確か去年も、他の方からのコメントで知ったんですよね。
―――早い、一年が早過ぎ;
つい先日は、窓の外からのセミの声で目を覚まされ『え!?もうっ∑(o'д'o)』と驚いたところです。

年々加速度のつく時間。
有効的に使わないと、あっという間になくなっちゃいますよね( ゚∀゚;)
ああ、ほんとーに何とかしないと;


さて閑話休題

今回はピクシブでお知り合いになった方から、沖千キスSS頂きました!
こちらでは初めましてですね。
あっま~い総ちゃんをありがとうございました♪
これからはこちらでもよろしく^^

2枚の挿絵は作者のゆゆきさんに進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。


では、どうぞ続きから、うちでは滅多に見れない可愛い総ちゃんをご覧下さいw




甘いご褒美




「いいお天気。今日はこの溜まったお洗濯を全部片付けなくちゃ。」

そう独り言を呟いて、私は井戸の傍らに小高い山を作っている洗濯物と向き合った。
ここ、新選組はなんと言っても男所帯・・・炊事もお掃除も、もちろんお洗濯だってみんなで交代でやっている。
やっては、いる・・・けれども。
どうしたって男の人向きの仕事ではないせいか、女の私から見たらいろんなことがお粗末になって見えてしまう。
お掃除は、はたきもかけないで拭き掃除をしたり、角の方になるとちゃんと拭いてなかったり。
食事の支度も・・・私もお料理はあんまり得意じゃないけれど、それでも、これでは食材がかわいそうというような料理が出てくる事もままある。
そして極めつけは、洗ってるのか洗ってないのかわからない状態で干されている洗濯物。
汚れが落ちていないまま干された着物を見ると、もういてもたってもいられなかった。

「これからは、私が全部洗いますから!!他の皆さんはお仕事もありますし、任せてくださいっ!!」

ついそんなことを言ってしまって・・・後で後悔しても遅かった。
これでもかと言わんばかりの洗濯物の山々山・・・。
さすがに平隊士の皆さんの分までは私に回ってこなかったけれども・・・幹部の皆さんの分だけでも相当な分量だった。
市中警護のために日々鍛錬に励んでいる皆さんは、稽古だなんだと言っては汗を流して、日に何度も着替えるのだった。

「でも、私に出来るのはこれくらいだし・・・毎日綺麗に洗った着物を着たほうが気持ちいいに決まってるよね!」

そう、自分を奮い立たせて、その洗濯物の山に向かっていった。
幸いな事に今は初夏の風吹く季節・・・ずっと手をつけていても、かじかむほどには水も冷たくない。
でも、洗濯物はお日様が出ている間が勝負!
手間取ってなんかいられないから、手早く次々とごしごしとこすって、汚れを落としていく。

そうして一枚二枚と地道に洗っていって、どんどん高くなっていくお日様に焦りながら手を動かしてようやく山が半分くらいに減った頃・・・ふと私の上に大きな影が落ちてきた。

「よく一人でそんなに洗う気になるね。こんな面倒な仕事を一人でやるなんて、君って本当に変わってるよね。」

そう声をかけてきた人物・・・洗いかけの洗濯物を手に持ったまま、上を見上げると私に大きな影を落としているその人と目が合った。

「・・・沖田さん、私に何か用ですか?私、今忙しいんです!」

私はいつも意地悪されていることを思い出して、つっぱねるように少し強気でそう言った。
沖田さんは私を見つけると、いつも何かとちょっかいを出してくる。
この新選組に厄介になってからしばらくは、二言目には『斬るよ』『殺しちゃうよ』と言ってくるこの沖田さんが怖くて怖くてしょうがなかったのだけど、どうやらこれは彼の天邪鬼な性格が出た口癖らしいと気がついてからは、それほど彼に恐怖を感じなくなった。
彼は私をからかっては面白がって『千鶴ちゃんはちょっとからかうとむきになって、ほんとに可愛いね。』などとしれっと言ってきたりする。
その言葉を真に受けるわけじゃないけれど、どうしても男の人に『可愛い』だのなんだのと言われては、私の意志とは無関係に顔が赤くなってしまうのもしょうがない事じゃないのかなぁ。
でも、それはまた沖田さんの思う壺の行動なワケで、それを理由にまたからかわれるという関係だったりする。
からかわれるのは恥ずかしいし、ちょっと悔しい時もあるけど・・・でも、実は嫌ではなかったりする。
この知らない土地で一人ぽっちの私を、そうやって何かと相手してくれてるのかな?と思うと、どうしたって彼を憎む事なんかできなくなった。
それに、天邪鬼な沖田さんが私をからかうって事は、逆に考えれば『私にかまってほしい』って事だよね?
・・・なんて考えると微笑ましい気持ちになって、どんないたずらをされても自然と許してしまうのだった。

「何か用がないと、千鶴ちゃんに話しかけちゃいけないの?君ってそんなに冷たい子だったんだ?」

つっぱねたからといってそこで引き下がる沖田さんじゃないのは、もうわかっている。
沖田さんは私の冷たい言動を非難するようにがっかりした顔をしている・・・けれど、その目だけはからかう獲物を捕らえた楽しげな微笑をたたえている。
でも、私だっていつもやられているばかりではない。
今日はちゃんと、沖田さんをぎゃふんと言わせる策があるのだ。

「ええ、私は今、とっても冷たいんです。ほら!!」

そう言って、私は今までたらいの中で洗濯物と格闘していた手を、沖田さんの頬に当てた。


カット288甘いご褒美


「!!つめたっ・・・。ちょ・・・君の手、冷たすぎるよ。」

沖田さんはびっくりした顔をしている。
『うふふ、いつものお返しですよ。』そう言って、いつも沖田さんがするように口の端をにぃっと上げて笑って見せた。
私はいつも猫みたいな沖田さんに弄られて遊ばれているねずみみたいなもので、気まぐれな彼に翻弄されてばかりいる。
けれどねずみだって、いざとなったら猫に噛みつけるんですからねーっ!!
ついに、ついに・・・あの沖田さんに一杯食わせる事ができて、私はこみ上げる喜びを抑える事ができなかった。
あの沖田さんが私にやられっぱなしで終わるわけがないってわかってたはずなのに、私は勝利を喜ぶあまり、その事を完全に失念していた。

「・・・ふぅん、千鶴ちゃん・・・僕にそういうことしていいと思ってるの?」

そういうと、沖田さんはすばやく手を伸ばして自分の頬に触れた私の手を上から押さえつけた。

「え??ちょっと・・・は、放して下さい。」

思わず手を引っ込めようとするけれど、沖田さんの力に私が敵うわけもなく、彼の手に縫い付けられてしまったかのように私の手は彼の頬に固定されてしまった。
二度、三度とぐいぐいと身をよじって手を自分に戻そうとするけれど・・・全くびくともしない。
そんな私の姿を彼はにんまりしながら見ている・・・。
私はただ、ちょっと沖田さんに冷たい手で触ってびっくりさせたかっただけなのに・・・だ、だってこの状況って・・・。
他の人から見られたら、誤解を受けそうな事をしていたと言う事に、今更ながらに気がついた。
気がついたけれど、それはもう後の祭りだった。
そう・・・追い詰められたらねずみだって猫に噛み付く。でも、その後は・・・?
どう考えたって、ねずみが猫から逃れられるわけがない・・・。
きっと、ねずみは噛み付いた分だけじっくりと時間をかけていたぶられて、最後には猫の餌食になるんだ・・・。
背筋にぞっと冷たいものを感じながら、猫に食べられるのをじっと待つねずみになった気分だった。

「いやだよ。君のほうから、僕の頬に触れたんじゃないか。何いまさら恥ずかしがってるの。」

そういうと、沖田さんはにっこりと微笑んでくる。
知らない人が見れば、なんとも善良な微笑みに見えるだろうが・・・今の私には悪意の塊にしか見えない・・・。
目が笑っていない時の沖田さんの微笑みは、文字通りの意味を成さないのが常なのだ。

「え・・・あ・・・わ、私、そんなつもりじゃ・・・。このままじゃお洗濯もできないし、は、放してください。」

それでも、このまま猫に食べられるのなんて嫌だ。
手のひらは縫い付けられても、口まできけないわけじゃない。
私は精一杯の反論を試みる事にした。
けれども・・・そもそも、到底口で勝てる相手ではなかった。
私はそのまま、見事なまでに返り討ちにあってしまうのだった。

「いやだって言ったよね?それに、君の手は本当に氷みたいに冷たいよ。こうして僕の熱で温めてあげる。
僕も冷たくて気持ちいいし、一石二鳥だよね。ほら、左手も貸してごらん。」

そういいながら、沖田さんは私のもう一方の手も捕まえようと手を伸ばしてきた。
私は思わずサッともう片方の手を自分の背中に隠したけれど・・・私より体が大きくて、その分腕も長い沖田さんに隠し通せるものではなかった。

「えええ!!!い、いやです。きゃ・・・きゃあ・・・。」

私の背中にあったはずの左手はあっさりと沖田さんの手につかまって、私たちの間に引きずり出されてしまった。
私の右手は沖田さんの左頬と左手の間に、私の左手は沖田さんの右手にぎゅっと掴まれている。
・・・えーっと・・・これって・・・これって・・・。
私の頭の中で、思考が巡るましくぐるぐると回っている。
だってだって・・・だ、男女で手を握り合って・・・頬に手を当てて・・・ま、まるで何か・・・こ、恋人同士で見つめ合ってるみたいじゃない!!
そう思うと、頭にかぁっと血が上った。



そんな私にとって、さらに混乱に拍車をかけるように井戸にほど近い廊下から声が聞こえてくる。
この声は・・・どうやら土方さんと斎藤さんのよう・・・。
なにやら今度の任務についてあれこれと相談しているようだけれど、今の私には全くどうでもいいことだった。
今、私にとって一番重要なのは、沖田さんとこうしているこの姿を見られてはいけないという事。
私たちは廊下側からすると井戸の陰に隠れるようにしゃがんでいるので、この姿はかろうじて見えていないはずだけど・・・。
見つかってしまったとして、この状況を「正しく」「上手に」「誤解を招かずに」説明できる自信なんて、全くなかった。
と、とにかく、こんな所を目撃される前に一刻も早く沖田さんに手を放してもらうしかない!!

「は、放してください。た、ただでさえ、こ、こんな状態・・・誰かに見られたら・・・廊下に土方さんたちがいるんですよ!」

「うん、そうみたいだね・・・あれ?一君は、何か気がついたみたいだよ?こっちを気にしてるみたいだし。」

もちろん沖田さんも廊下に彼らがいる事に気がついている。
しかも、気配に鋭い沖田さんは、私以上のものを感じ取っているようだけれど・・・だからと言って、私の手を放す気はないらしい。
私が真っ赤になりながら必死に願っても、沖田さんはニヤニヤと面白そうに笑っているばかり。
沖田さんだって、私とこんな所を見られたら困る・・・と思うのに!!
一体、どういうつもりなの??

「誰かに見られたら、どうなの??千鶴ちゃんは何か困る事があるの?」

沖田さんは平然とそんなことを言ってくる・・・。
・・・それは、沖田さんは私とのこんな所を目撃されても困らないという事・・・なの・・・??
沖田さんは私の目をじーっと見つめながら、私がどんな答えを返すか待っている。
あまりにじっと見つめられて、私は居たたまれない・・・。
でも、困るか困らないかと聞かれれば、この答えしかなかった。

「・・・ど、どちらかというと、困ります・・・。」

でも、沖田さんは納得しない。
その理由を聞いてくる。

「どうして?」

「どうしてって・・・。だって、なんで私の手が・・・そ、その・・・沖田さんの頬にあるかなんて・・・どうやって説明したら・・・。」

私が真っ赤になりながら、しどろもどろに答える様を沖田さんは楽しげに見ている。
もう・・・どうしていつもこうなっちゃうんだろう。
今日こそは一本とったはずだったのに・・・今ではその勝利の喜びも忘れる程に形勢逆転されている。

「どうもこうも、ありのまま話せばいいじゃない?それとも、みんなが何か『勘違い』しちゃうと思ってるの?」

『勘違い』の所に、とても笑って聞き逃せない含みを持たせて言うと、クスクスと面白そうに笑う沖田さん。
私がなんで焦って手を離して欲しいのか沖田さんはわかっている、その捉え方はきっと違うけれども。
そう、私はみんなに『勘違い』されるのが怖い。
・・・沖田さんのことは嫌いじゃない・・・むしろ、気になって気になってしょうがない人になってしまっている。
けれど、沖田さんは私をそんな風に思っているわけはないし、もちろん恋人同士でもない。
だから、皆に『勘違い』されて、そして皆の前ではっきりと迷惑がられて否定されてしまったら・・・私はこの気持ちを『気づかれない自信』がない。
私はこの気持ちを『気づかれる』のが怖い。
臆病な考えかもしれないけれど、私は今のままでよかった。
例え沖田さんのたった一人として好かれなくても、嫌われていないと思える今のまま、こうして彼にかまってもらえるならそれで十分だった。
だから、今のこの関係が壊れてしまう事が怖くて、私は沖田さんに全面降伏していた・・・。

「そ、そんなこと・・・うぅ・・・沖田さん・・・いじわるしないでください・・・。」

「・・・くすくす・・・ほんと、かわいいね。可愛くてしょうがないよ、君って。」

私が降参した事で満足したのか、沖田さんは掴んでいた私の両方の手をぱっと放した。

「はい、じゃあ温まったみたいだし放してあげる。」

確かに・・・かじかむほどではなかったけれど、冷え切っていた私の指先は、沖田さんのぬくもりで温かさを取り戻していた。

「・・・あ、ありがとうございます。」

温めてもらった事よりも、放してもらえた安堵感の方がよほど強かったけれど、とりあえずお礼を言った。
すると沖田さんはちょっと意外そうな顔をしたけれど、すぐに何か思いついたようにまた意味ありげな笑みを顔に浮かべた。

「ちゃんとお礼が言えるなんて、いい子だね。でも僕・・・それだけじゃ足りないな。」

「え?足りないって何が・・・?」

思わず聞き返して、しまったと思った・・・。
もしも、今言った言葉を引っ込められるなら引っ込めたい・・・でも、もう手遅れ。
沖田さんは舌なめずりをする猫のように、目を細めて私を見ている・・・。

「お礼、だよ。君の手を温めてあげて、僕の頬はこんなに冷たくなっちゃった。温め直してくれる?」

・・・い、嫌な予感がする・・・。
沖田さんにただで何かをして貰えた試しがない・・・。
別にしてくれなくてもいい事をしてくれて、お返しを要求するなんてひどいと思うのに・・・大体、その要求は突拍子もないものばかりで・・・。

「・・・私にできる事ならしますけど・・・どうやって、ですか?」

恐る恐る聞いてみると・・・

「してくれるの?ありがと、こうするんだよ。」

「!?」

カット268


!!!!!!!!!


一瞬、何が起こったのかわからなかった・・・。
本当に、わからなかった・・・。
けど、私はその一部始終を見ていた。
だって、あまりに突然の事で、目を閉じる暇もなかったんだもの。
だから・・・全てが終わって、沖田さんの顔がぱっと離れて、私の瞳をのぞきこんできて・・・それで、ようやく今何があったのか理解した。

彼の伏せた瞳の長い睫と、私の睫が絡み合うくらいに顔が寄って来たと思ったら・・・。
「あっ」と思ったときにはすでに遅く、声をあげる事は彼の唇によって封じられた。
それは私が今まで経験した事がない、とても甘美なものだった。
今まで食べたどんなものよりも柔らかくて、甘くて、艶やかに濡れた感触・・・それが優しく私の唇を覆った。
一瞬だけの軽い口付け・・・
でも、最後に沖田さんは私の唇の感触を確かめるように、そっと食んでからその唇を離した。
そう・・・私の唇は沖田さんによって奪われていた。

私は少し遅れて全てを理解し、それと同時に顔から火が噴出しそうなほど真っ赤になった。
だ、だ、だってそうでしょう!?
ま、まさか・・・唇を奪われるなんて・・・しかも、こんなにも突然!!

「な、な、ななな・・・なにを!?!?」

「くすくす・・・可愛い女の子との口付けは、男の気持ちを熱くさせるんだよ。知らなかったの?」

私が口をパクパクさせながら何とか抗議すると、沖田さんはとても愉快そうにそう言った。
うぅ・・・女の子の・・・私の大切なものを奪っておいて、それはいくらなんでもひどいんじゃないでしょうか・・・。
私は恨みがましい気持ちでいっぱいになった。

「し、し、知りません、そんな事っ!!そ、それに・・・わ、私・・・初めてだったのに・・・。」

沖田さんは私のす・・・好きな人だけど・・・こんなのってあんまりじゃない・・・。
思わず恨みがましい目になるけれど、今ばかりは私を責められないはず。
けれど、沖田さんは私がそんな顔で見ても、どこ吹く風としれっと言ってのけた。

「うん、知ってる。だから、絶対に僕が欲しかったんだ。」

・・・・・・・・・。
もう、もう!!沖田さんったら一体どういうつもりなの!!?
『だから欲しかった』ってどういう意味なのよ。
私はもう、完全に混乱していた・・・だってだって、私の初めてが・・・大切なものが・・・こんなにも簡単に奪われて・・・。
だから、次に沖田さんが言った意外な言葉を、私は危うく聞き逃す所だった。

「・・・僕も初めてだったんだから、おあいこだよね。」

ますます私の頭は混乱した・・・。
お・・・沖田さんも初めて・・・?まさか・・・そんな・・・冗談だよね?

「!?え?え?沖田さん・・・今、なんて??」

そうよ、これはいつもの沖田さんの冗談に決まっている。
確かに、沖田さんの女性の噂は聞いた事はないけれど・・・他の方々のいろんな噂を耳にしている私には、とても信じられない。

「だーめ。大事な事は一回しか言わないよ。」

「今、おあいこって・・・沖田さんも初めてって・・・。」

私はどうしても、今聞いた事が信じられなくて・・・同じ事をおうむ返しで聞いた。
すると、沖田さんは・・・とても沖田さんらしからぬ事に、私からついっと目を逸らすとむきになって話を逸らしたのだ。

「も、もう!!それ以上言ったらお仕置きだよ。」

あれ・・・?
沖田さんの頬って、さっきはあんなに赤かったかな・・・??
混乱しすぎで回らない頭で、そんなことをぼんやりと思っていた。
すると・・・

「・・・それより千鶴ちゃん、洗濯が全然進んでないんじゃない?」

「え?あ・・・あーっ!!!」

すぐに平静を取り戻した沖田さんに指摘された私の手元には・・・全く持ってやりかけの洗濯物の山・・・。
今日中に終わらせたい私の山積みの仕事が、私を否が応にも現実に引き戻した。

「もう、お天道様が真上に来ちゃうよ。今日中に片付けたいなら、頑張らないとね。」

「そ、そんな・・・もう、沖田さんが邪魔するからじゃないですかっ!!」

さっきまでのやりとりはなんだったの・・・と問いたくなる調子で、沖田さんの顔はいつものにやにや笑いをしている。
本当にこの人は・・・わ、私をどうしたいの!!
もう、今度こそ邪魔をされては困ると、沖田さんが何を言ってきても相手をしないと心に決めた。
・・・はずなんだけど・・・。

「邪魔だなんてひどいなぁ。わかったよ、僕も手伝うから。こっちの分はもう干していいの?」

意外なことに沖田さんはそういうと、すでに洗い終えて後は干すだけ、と分けてある洗濯物の山を抱え込んだ。
正直一人では大変すぎる量のお洗濯・・・しかも干せる時間が限られている今、この手伝いはありがたかった。
・・・でも、沖田さんのお手伝いには、必ず報酬が必要だと言う事もすぐに思い出して・・・。

「え・・・はい・・・!!?
い、いえ・・・や、ややや、やっぱりいいです!!そ、そ、そんな事しても、もう何もお礼なんか出来ませんからっ!!」

私は慌てて断ろうとした。
だって、またさっきみたいな事をされたら・・・困ってしまうから。
嫌じゃない・・・けれど、ここにいなければいけない今は、まだ・・・。
自分の気持ちを出してはいけない今はまだ・・・そういうことをされては困ってしまうから。

「え?またお礼してくれるの?さっきの続き・・・とか?」

私が断った理由を察して、すぐに沖田さんは茶化してくる。
からかわれてるってわかっているのに、私はまた呂律が回らなくなるくらいに慌てて否定する事になるのだ。

「!!!そ、そ、そそそ・・・そんなのだめです!!!もう、邪魔するんならあっち行ってくださいっ!!!」

私は耳まで真っ赤になりながら、沖田さんの手から洗いたての洗濯物を奪おうと手を伸ばす。
けれど、全く私の指先も触れないほどに、ひょいと軽く交わされてしまった。
奪い取らねば、また恩を着せられて、何を要求されるかわからないのに・・・。
けど、沖田さんは『やれやれ、参ったな』と少し困った顔をして、

「もう、冗談だよ。さっき十分もらったから、今日は君のいう事、何でも聞いてあげる。」

そして沖田さんは一瞬地面に視線を落としてから、神妙な面持ちで上目遣いで私を見ると、

「・・・ごめんね、千鶴ちゃん。僕とは嫌だった?」

急にそんなことを言った。
その顔はさっきまでの、いつもの何か企んでいるような笑みなど一切浮かんでいない真剣な顔だった。
私は少なからず、動揺した。
正直、いつも飄々としている沖田さんにこんな顔をされると・・・なぜかこちらが焦ってしまう。

「・・・ちょ、ちょっとびっくりしただけで・・・い、嫌とかそんな・・・。」

私はしどろもどろになりながら、そう答えた。
・・・そう、『嫌じゃない』・・・のだ。
むしろ、私の気持ちは・・・どちらかと言うと、その反対で・・・。

「ほんとに?嫌じゃなかった?」

沖田さんは眉根に皺を寄せて私の顔色を伺うように何度もそう聞いてくる。
まるで、私に「嫌だった」と言われるのを怯えているようにもみえるけれど?
そんな怯えた顔で聞かれれば、私も正直な気持ちを口にするよりなかった。

「・・・ほ、本当です。」

「本当にほんとう?」

も、もう、なんなの!!
そんな・・・いたずらがばれて叱られるのを怯える少年みたいな目で私を見ないで!!

「も、もうっ!!そんなに聞くくらいなら、しないで下さいっ!こんなに突然じゃなかったら、私だってもっと嬉しかった・・・い、いえ・・・」

思わず口が滑って本音が出そうになってしまい、慌てて口をつぐんだ。
でも、沖田さんは私の気持ちをしつこいくらいに確かめてようやく安心したのか、もうそれ以上は聞いてこなかった。

「ん?・・・突然したのはごめんね。でも僕は初めては君とがいいなって思ってたから。」

そういうと、沖田さんは今までに見たことがないくらい清清しい顔で笑っていた。
それはまるで、本当にあどけない少年の顔で・・・沖田さんのその笑顔から目が離せなかった・・・。
私よりずっと年上で、ずっと大人で、どんなときでも飄々としている沖田さんのはずなのに。
私は胸がきゅっとなって、同時に鼓動が高鳴った。
それはさっき口づけをされた時の何倍も大きな音で、私の心の変化をしらせた。
私はどうやら唇だけではないものまで、奪われてしまったらしい・・・。
うすうす感づいてはいたけれど・・・決定的に、持って行かれてしまった・・・。
沖田さんにその気があるのかないのかはっきりしないけれど、私の心は完全に射止められてしまっていた。

それに、今また、沖田さんはとんでもない事をさらっと言ったような気が・・・?

「・・・!?私がいいって・・・そ、それってどういう・・・。」

私は思わず問いかけたけれど、沖田さんは答えてくれないまま洗ったばかりの洗濯物の山を持って、物干し台の方へ行ってしまった。
さっきまで水につけっぱなしで冷えていた手は、彼に温められた以上に火照って、もう全く水の冷たさを感じなくなっていた。
もうこの火照りは、彼を見るたびに繰り返されてしまうのだろうと、私はそう感じていた。

<Fin>
  1. 2013/07/01(月) 16:18:22|
  2. Kissシリーズ
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  4. | コメント:4
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コメント

ありがとです~。

こちらでは初めまして~。
何か感想とか言いたいときはここでいいのか、それともメールフォーム?と悩んでいたら、書き込むのが遅くなりました・・・(^^;
こちらのサイトを覗いてると、サイト主のちょこさんのお話ももちろんそうですけど、他の素敵な語り手さんのお話も読めて、とても両得気分です♪
そんな中に、突然押しかけて、この企画に参加させていただいて、なんとお礼を言っていいやら・・・厚かましくてすみません。(^^;
ちょこさん、私のベッタベタに甘い話に、こんなに素敵なイラストつけてくださって!デレてる総司は、ここではレア物なのですね♪
総司の焦ってる顔が可愛い過ぎて、千鶴も嫁にしたいくらい可愛すぎて・・・ああ、もう携帯の待ち受けにしちゃいました(*ノノ)
そして、こんな話でも読んで「拍手」ボタン押してくれた方ありがとうございました。
大人でビターな恋愛話の多い中、ちょっと子供じみてますが・・・うちの総司と千鶴はずーっとこんな感じですwここの片隅で可愛がっていただければと思います。
今回はありがとうございました~(o*。_。)oペコリ
  1. 2013/07/03(水) 23:42:08 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #-
  4. [ 編集 ]

ゆゆき様♪

こちらこそ今回はありがとうございましたー^^
おまけのお受け取り&支部でのUPもありがとうございます。

うちでは滅多に見れないデレた可愛い、歳相応の総ちゃんを堪能させてもらいました♪
他の方からも、『何もなければ総ちゃんもこんな青年らしい恋が楽しめたのかな』とか『沖田さんが照れている、可愛い』とか好評な感想を多々頂きましたよ。
これからもどうぞ、素敵な沖千を書いていって下さいね。

そして、これからはこちらにもどうぞお気軽に声を残して下さいな^^
ここでも、メールでも、拍手コメントでも、どこからでも構いません。
ではでは
今回のキスシリーズでも他でも、何か降ってきましたら、またどうぞ~(^-^ゞ

  1. 2013/07/04(木) 09:48:20 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

わわわっ(喜)

他の方からも、そのような温かい感想をいただけていたとは!!きょ、恐縮です(〃д〃)
本当はもっと書いてみたいのですが・・・なにぶんキャラの把握が薄いもので(ぇ)実は黎明録とかまだやっていないもので(ぇ)
口調の把握さえちゃんとできてれば、あの人の話とか、この人の話とか書いてみたいのあるのですが・・・
もっと彼らのことについてよーっく勉強したら、また参戦させてください、えへへ♪(●´ω`●)ゞ
  1. 2013/07/05(金) 23:38:56 |
  2. URL |
  3. ゆゆき #-
  4. [ 編集 ]

ゆゆき様♪

いやいやいや、支部の方でも高評価じゃないですか?
ブクマも閲覧数も伸びていて、挿絵を載せて頂いたこちらこそ光栄です^^
こうなったら、もっと書くしかないでしょうwww
「あの人」「この人」―――誰なんでしょう。
楽しみにしていますので、是非読ませて下さいね!!
  1. 2013/07/06(土) 10:10:30 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
  4. [ 編集 ]

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