皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「火宅」

はい♪ 今回は「桜夢記」のロカさんから
土方さんと原田さんと千鶴ちゃんの三つ巴話を頂きましたーヽ(≧▽≦)ノ

ロカさんは只今受験に向けて頑張ってる最中だというのに、
そのお忙しい最中にキスSSを書いてくれちゃいました!
こんな素敵な三人のお話を読めて、こちらは幸運以外の何物でもないです^^
多忙中なのに、ホントにありがとうございました!
まさか2枚を組み合わせて、お話を作るとは思いもしませんでした。流石、ロカさん!


と言う訳で―――
今回は原千キスと土千キスの2枚が元で、おまけ絵も余分につけました。
こちらはどれもロカさんに進呈します^^


ではでは
続きから危うい三角関係、ご堪能下さい♪


昔この所に、菟名日少女と申す女ありしに。また其の頃、小竹田男子、血沼の丈夫と申しし者、かの菟名日少女に心をかけ、同じ日の同じ時、わりなき思ひの玉章を通はす。

                                            能楽『求塚』より

              火宅  

 瞳がその姿を追いかける。

 心というものはとても厄介なもの。思いがけない所へとところころと転がって行く。その行方が自分でもわからない。

 心は一つしか持てない……。

 それでは、想いは?



 いつからだろうか。心がざわめきだす瞬間がある。

 それはあの娘の何気ないしぐさだったり、その声音だったり、そこへ心が縛り付けられる。

 心が大きく揺れ動く。

 あれはまだガキだと自分へ言い聞かせながら、ふとした瞬間に男姿の中に閉じ込めたはずの女が、鮮やかな艶を帯びて顔を出して見せる。

 その刹那に心がかき乱される。

 それをあの娘はわかっているのだろうか……。

 女に不自由などしたことはない。たとえ一夜の限りだとしても、そんなことは互いにわかりきってのこと。だから、後腐れのない、そんな女がいればいい。ずっとそう思っていた。

 そう、自分自身がいつどうなるかなどわかりはしない。ならば、そこまでで終わらせるのが、男としての実と云うものではないのだろうか?

 色街の女ならば、そんなことは自分よりも心得ているのだろうが、原田は思う。

『ほんに原田さんはいけずなおひとやわ』

 そんな原田へわきまえもせずに恨めしげな言葉をかけた女がいたこともあったが、そんなことは自分が一番わかっていることだ。

―いけず……。意地が悪い、か……。

 そんなことは当たり前だ。あの場にあるのは色恋を装った駆け引きだ。色恋などではない。男によっては、そんな一言で心を動かされるのだろうが――――。

―俺にはお前たちが使う手管は通用しないんだよ。

 つまらない一言で興が覚めた。

 その夜から、その女の元へは通ってはいない。

 闇夜にだけ、花開く色街の女たち。自分で自分を哀れんで、救い出してくれるものを求めている者がいるのも事実だろう。

 だが、その相手を見誤ったなと原田はあの女のことを思う。

 見つけてしまったのだから、原田にとってどんなことをしても手に入れたいと思う女を。

カット284火宅1

 響く笑い声に視線を向ければ、その女、千鶴が平助と笑いながら洗濯ものを取りこんでいた。

 蝋燭の揺らめく光などではなく、明るい日の光が誰よりも似合う女だ。

 まるで子犬がじゃれあうみたいなその光景。

 それを見つめる原田の瞳に歪んだ笑みが浮かんだ。平助にはわかっていないかもしれない。

 千鶴は、無垢で、無邪気で、純粋で、だからこそ、どんな悪女よりもたちの悪い女だ。

 それがわかっていても心が動く。

 どんなことをしても掌中にしたいと狂気のような暴れ馬にも似た想いが湧きあがる。

 俺の女にしたい。どんなことをしても……。

 女の扱いが上手いだって、冗談じゃない。

 心底から手に入れたいと願った女には絡め捕られて動きが取れないというのに!

 いや、違う!

 この原田左之助が絡め捕れるなんて、柄じゃない!

 それならば……。



 今日は良く晴れてくれた。このところ雨が続いていたから、洗濯ものがほんわりと乾いてくれるのはやはり気持ちの良いことだ。

 きちんと組別にまとめて畳む。そして、幹部のものは別にして手早く整える。

 その手が、ふと止まる。そこにあるのは、あの人とあの人の……。

 そっと、それが特別の物であるかのように手を取ると、千鶴は誰もいないことを確かめて、その二つの隊服をそっとその手で触れた。

 願っても、望んでも、決して交わることのない想い。

 迷い、惑う心。

 それは千鶴だけの秘密。

 せめて今ひと時だけ……。

 恋しいという想いを初めて知った。

 愛しさが切なさと重なるのだと心が覚えた。

 誰にも知られてはいけない。

 恋しい想いは時に重たい荷になると自ら知ったからだ。

 重荷になりたくない。あの真摯な志の重たい荷になるくらいなら……。

 思わずその隊服を抱え込むように我とわが身を抱きしめる。己の手が………を抱きしめるように……。

「………………」

 唇が紡ぐのは誰の名前……?

 そして、次の瞬間に我にかえった。なんて、愚かなことを……。

 こんな姿を見られては誰にどんな誤解を受けるかわからない。慌てて再び隊服を丁寧に畳みこむと、千鶴の心が揺れる。

 もし、もしも、こんな形ではなく出会っていたならば違っていたのだろうか……。

 だが、出会ってしまった。こんな形で……。その罪深さに千鶴の心は震えた。

 自分が望んでいるものの意味がわからないほど恥知らずにはなりたくない。

 そうして思う。心は何故に一つしかないのだろう。けれど、想いは……?



 先刻まで外から笑い声が響き渡っていた。

 ったく、この忙しい時に千鶴も平助も騒がしいことだ。急ぎの書状をしたためる手を休めて、土方は思う。

 この所、雨が続いて洗濯ものが溜まっていた。朝から千鶴が額に汗して、洗濯や掃除にいそしんでいたことは知っている。大量なそれを取りこむのも一仕事だ。見かねた平助が手助けをして大騒ぎになったってところか……。

 そんなことを考え、空を見つめる土方の瞳が剣呑な色を帯びた。

 千鶴は大空を飛ぶ羽を手折られた小鳥だったはずだ。

 それが、今ではどうだ……。

 囚われの鳥はいつの間にか、飼い主を逆に飼いならして、籠の外へと繋がる鍵を容易く解かせてしまった。

 なんてぇ様だ。土方は一つ嘆息する。

 籠の鳥は一体、その飼い主をどんな手管でたぶらかしたのだろうか―――。

 土方にあの小鳥を天へ戻すつもりなどない。第一、手放そうなんて考えられるものか。

 あの娘は気が付いているのだろうか。いつの間に、あんな色香を身につけたのだろうか。まるで瑞々しく清廉な花が一気に開いたように……。もう男装も限界の時が来ているのかもしれない。

―お前の中にある女がいつ目を覚ました、千鶴。

カット285火宅2


 ギリッ! と筆を持つ手に力が入った。土方の元へ茶を運ぶ時、振り返る瞬間、そこに千鶴の女が見える。

 その微かな女の色香に、迷い惑うなど、この新選組の副長ともあろうものが……。

 まだ子供だと思っていた。

 父親を恋しがる単なる小娘のままで時が止まる訳があるまい、そんなことにも思い至らなかった己に苛立ちが募る。

 籠の鳥が再び羽ばたこうとしていることに、それが自分の中で許せぬことになっていることにどうして気が付いてしまったのだろう!

 鎖につなげばいいのか、それとも本当に羽ばたくことが出来なようにその羽を斬り落とせばよいのだろうか……。

 いや!

 そんなことが出来るわけもない。

 ならば、どうする……。



「原田さん、雪村です。失礼してもよろしいですか?」

 千鶴の声。かつてはあったはずの警戒心の欠片もない。それが原田の感に触る。

「千鶴か。あゝ、かまわねぇぜ」

「失礼いたします」

 丁寧な言葉と共に障子が開かれる。きちんと坐して頭を下げた千鶴の白く細いうなじが見える。

 雪のように白い肌。そこへ口づけることのは誰なのだろう。そう考えるだけで嫉妬の念で目の前が赤く染まる。

 千鶴はその両手に大事そうに原田の分の洗濯ものを抱えていた。

「お洗濯ものをお持ちしました。隊服のお袖の所がほつれていましたので、あの、繕わせていただきました」

 微かに紅が注す頬。それはどんな意味だ、千鶴。原田は心の内で問いかける。

「ご、迷惑でしたか……」

 困ったような千鶴の表情に、誰にも渡したくねぇ、と一人ごちる。

「え、」

「ありがとうよ。これは礼だな」

 そのまま千鶴を力任せに抱き寄せると、抗う間も与えずに深く口づける。

カット269


 息も出来ないほど強く、まるで千鶴が己のものだと印をつけるように!!

「……!!」

 腕の中の千鶴が抵抗するように僅かに身じろぎしたが、力でねじ伏せた。

 甘い、甘い、千鶴の唇。味わうことが出来るは自分だけだ!

「……! ァ!」

 何が起きたのか、瞬間はわからなかった。

 口の中に広がる鉄錆のような味。そして、感じる唇の痛み……。

 その一瞬で、千鶴は勢いをつけるような形で原田から身を離した。その大きな瞳に映るのは驚きとおそれ、か。

「槍の穂先への口づけか。お前との口づけは……」

 原田の唇からは血が流れていた。

「わ、わた、し……」

 逃げ場を失った千鶴が原田の唇を噛んだのだ。

 僅かに後ずさった千鶴の唇へ原田の指が伸ばされた。そうして、愛おしげにその唇をそっと撫でた。触れられた所がまるで火傷でもするかのように熱い!

「俺の血が紅のようにお前を飾ってる……」

「……!」

 千鶴は身動きが出来なかった。原田の瞳は穏やかで、千鶴を責めてはいなかった。

 だが……。

「お前を誰にも渡さない……。お前が女子へ戻る時、俺がお前を飾ってやる。それが俺の血の紅だとしてもお前を彩るのは俺一人だ」

 原田はそう云って笑った。

「わた、し……。失礼、します!!」

 千鶴はそのままばたばたと部屋を飛び出して行った。。

 その後ろ姿を見送りながら、原田は思う。最初に印をつけたのは俺だ……。

 甘く。そして痛みを伴う口づけ。なんて自分には相応しいのだろう。



 千鶴がいつものように土方の元へ茶の支度をして訪れたのは、いつもより幾分遅い時間だった。

 あれだけの洗濯ものを片付けていたのだ、仕方あるまいと思いながらも、土方は千鶴の様子がいつもと僅かばかり違っている事に気が付いた。

「何かあったか」

 言い逃れは許さないという意味を込めて、千鶴を土方は見つめた。

「い、え……」

 そのままだんまりを決め込んで、一見、いつも通りに茶を入れて土方へと差し出す。

 その白く細い手首。そこへ己の物だと印をつければ、この鳥が飛び立っていくことはないのだろうか……。そんな想いが土方の脳裏へ浮かぶ。

 土方は薄く笑った。

 手鎖をつけ、足枷をはめ、羽を絶ち切っても、飛び立とうとする心を縛ることは出来ない。心が飛び立ってしまっては意味がない。

 千鶴が入れた茶を呑みながら、ふと違和感を覚えた。千鶴の唇……。

 その唇に僅かばかりの朱色が艶を放っている。だが、あれは血、だ……。

「千鶴……」

「はい」

「いや、いい……」

 問い詰めた所で答えはしないだろう。千鶴はそう云う女だ。

 誰かに唇でも奪われたのだろうか……。

 波立つ心を押さえつけて、それでも平静を装ってなんとかいつもよりも苦い茶を飲み干した。

「他にご用はございませんか?」

 飲み終わった湯のみへと盆の上へと片付けながら、いつものように千鶴が土方へと問いかける。

「そうだ、な……。千鶴」

「は………!」

 顔を上げるとそこにあるのは菫の瞳。そして、重なる唇。

カット270


 土方の手が千鶴の右手をやんわりと押さえていた。それなのに、まるで動かない身体。まるで先刻、原田に口づけされていた時のように。

 違っているのはただ土方の唇は柔らかく千鶴のそれに触れているだけだ。

 けれど、次の瞬間!

「! いた、……」

 千鶴の口に広がる先ほどとは違う血の味。それは千鶴の血の味だ。土方が千鶴の唇を噛んだのだ。流れる血が先刻とは違う色の紅を千鶴の唇を飾る。

「お前にはこちらの紅の方が似合う。紅を注したくなったら、いつでも俺の所へ来ればいい」

 千鶴は大きく瞳を見開いた。

「ひ、じかたさん……」

 それに土方は微かに笑って見せた。そして、自分の唇に付いた血をそっと拭う。注した紅が口づけた相手に移ってしまった時のように―――。

「お前に似合う紅を注してやることが出来るのは俺だけだ……」

 千鶴はそんな土方の姿を呆然と見つめていた……。

 開かれた籠から、囚われた小鳥が飛び立つことが出来ないようにするための方法はただ一つ。

 その心ごと虜にしてしまえばいい。



 千鶴はそっと唇に触れる。

 そこへ二つの印が刻まれた。

 痛みとともに刻み込まれた跡……。

 これは罰なのだろうか。

 けれど与えられた感触も、触れた想いも真実で、それ故に心が震える。

 今、己は何を考えているのだろう、か……。

 ふと、千鶴は開いた障子の向こうへと視線を映した。

 気が付けば、辺りは暗闇に覆われている。

 灯りをつけなくては……。

 そうして、千鶴は不意に闇の中に大きな篝火の中へ飛び込んでいく蝶の幻を見た。

 まるで菟名日少女のように焔へと自ら飛び込んでその姿……。

「彼方へ靡かば此方の恨みなるべし……」

 千鶴の唇から『求塚』の一節がこぼれ落ちる。一方を選べば一方の恨みとなる……。

 原田も土方も、新選組に欠けてはならない存在だ。

 どちらを選べばいい。

 どちらへ自分の心は向かおうとしている。

 ころころと転がり始めた千鶴の心。

 自分は誰を選んで、誰を選ばないのだろう。

 それとも、誰も選ばずに……。

「住みわびぬ我が身捨ててん津の国の生田の川は名のみなりけり」

 心はころころと転がるもの。

 そんな心は一人に一つ、けれど想いは……?

 千鶴は千鶴の心を見ることが出来ない。

  1. 2013/06/25(火) 18:02:23|
  2. Kissシリーズ
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  4. | コメント:8
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  1. 2013/06/26(水) 05:00:02 |
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ロカ様♪

挿絵のお受け取り&UP、ありがとうございました!

そうなんですよね、同じ一枚の絵で基本同じキャラなのに、やっぱり書く人によって皆違うキャラになっているんですよね。面白いですよねー
「他の人のお話も読みたい」と言う提案を受け入れ公募した事が、私にとってもすごく楽しい試みになってます。やってよかったー^^
こちらにはまた別の原田さんもまだあるんですよ~w 早くUPしたくてわくわくしてます。
それにしても、今の所の一番人気はやっぱり原田さん、流石ですねw

しっしかし、そのMURAさんの感想は言われてみれば…ですが、それをコメディですか!? ううっ原田さんと土方さんが哀れ~www←

この所、『元気と時間がある内にできるだけ描いておこう!』推進期間なものでw頑張ってますが、
勉強で疲れたロカさんの気慰みに、少しでもなってれば何よりです。
そちらこそ、こんな時期に風邪などひかれないように。
無理せず、頑張って下さいねー^^
(ところで、十二国記の新刊でるんですか!? ずっと待ってたんですよーいつ!?)

  1. 2013/06/26(水) 16:59:15 |
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  3. ちょこ #-
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  1. 2013/06/26(水) 17:35:25 |
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ロカ様♪

早々にお返事ありがとうございます!

さっきまで大雨だったんですが丁度上がり、夕飯何か買いにいかなきゃ冷蔵庫内、ビールとワインしかないぞっ!という状態だったので、これからついでに本屋まで足を伸ばそうかと思います^^
久しぶりにわくわくする本を読めそうだ♪

ではでは行ってきまーす!


  1. 2013/06/26(水) 17:47:51 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
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噛みたいし、噛まれたいです

いや、私の中の二つの欲望を満たしてくれた作品でしたあ。(40過ぎた女が言う言葉ではないかも?)この作品中、原田さん=Mで土方さん=Sなんですかね?困ったなぁ・・・。(困るなよ。)私の中では土方さんはMっぽい感じなんですけど。次回作では苛められている土方さんを見たいです。
  1. 2013/07/02(火) 13:32:36 |
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  3. KYOKO@WA #mQop/nM.
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KYOKO@WA様♪

わっ私もこの2枚のイラストから、こういうお話ができるとは思ってませんでしたw
これはひとえに、SSの作者ロカさんの手腕。
しかし、原田さんと土方さんってば、そういうくくりで見られるとは…www
苛められる土方さんを見たいのなら、ここは是非ロカさんにリクエストしてみましょうか^^
  1. 2013/07/02(火) 19:46:17 |
  2. URL |
  3. ちょこ #-
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ちょこ様の土方さんは基本的に・・・

ドSですよね。(ごめんなさ~いv-217

私の友人によると、ドMの喜びを知らない人はドSになれないv-12のだそうで、きっとドMの才能もちょこ様の土方さん(絵的)はあると思うんです。(きっと、あると思うv-238

きゃ~v-42

  1. 2013/07/04(木) 13:50:25 |
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  3. KYOKO@WA #mQop/nM.
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KYOKO@WA 様♪

基本的に、私が描くキャラってどれもドSが多いかも…www

う~む、しかし、ドMの土方さんは想像できないですねえ(;-ω-)ゞ
  1. 2013/07/04(木) 23:09:16 |
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  3. ちょこ #-
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