皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「Blár Himinn Kyssa」

はい♪ 頂き物でーす(*^o^*)

今回は「桜夢記」のロカさんから
最近のうちでの平ちゃんの扱いに対する救済SSですwww
この二人は確かに一番ふつーのカップルっぽいデートが似合いそう。
可愛い二人のお話をありがとうございます♪

それにしても確かに、何を描いても、平ちゃんだけは可哀想なシチュエーションになってしまう…^^;
愛が足りないかな~と思ってはいたんですが、でも、今まで描いたキスシーンは何げに平千が一番多いんですよね。
いちゃいちゃは描けないのに、一気にキスシーンって…; 何故v
―――因みに―――もしかして、総ちゃんとの…って一回も描いてなかったかな?
  

◆いつものように、挿絵はロカさんに進呈します^^




Blár Himinn Kyssa


千鶴が彼であり幼馴染でもある藤堂平助と付き合い始めて三ヶ月……。

 キスはおろか手をつなぐことさえままならない。

 そうして千鶴は心のなかでこの三ヶ月間を振り返ってみる。二人でしたことを指折り数えた。

 一緒に学校へ行って、一緒にお弁当を食べて、部活に一緒に出て、終わると家まで一緒に帰る…………。

 まるでエンドレスループのようだ。

 これではいままでと状況が全く変わってない。

「私って……」

 そこで停滞していた思考が動き出した。

 だって平助は自分から手すら繋いでくれないのだから、もちろん千鶴からそんなことが出来るはずもなく、三ヶ月も経ってしまった……。

 これで自分たちは本当に付き合っていると言えるのだろうか?

「平助君から見て、魅力ない、の……」

 雪村千鶴、16歳。乙女ならでは悩みであった(笑)

 そんなとき、千鶴は聞いたのである。

 横浜にある世界一大きな時計としてギネスブックにも載っている観覧車の伝説を!

 その観覧車がちょうど頂点に辿り着いた時が夕日の落ちる瞬間で、その時にキスしたカップルは必ず幸福になれる。

 だから、この噂を聞いた時に心の中であることを決意したのだ。



ゴールデンウィークというのはなんだか特別な気分がする。

 出かけた街には人が溢れかえっているけど、冬から春を通り過ぎて軽くなった装いにあわせて気分まで軽くなったようだ。

 今日のデートは横浜、みなとみらい方面。6月2日の開港記念日にあわせて、催される港まつりにいきたいと珍しく千鶴からねだった。通常よりも人出は多いのもわかってる。観覧車がある遊園地もランドマークタワーのすぐ近くだし、何より、千鶴が希望したその日は港まつりのメインとも云える仮装行列が行われる日だ。

 あまり人ごみを好かない千鶴がどうして、と思わないわけでもなかったが、中華街も覗きたいという一言で平助は落ちた。

 ゴールデンウィーク中に中華街の店に入って食事をするのは、予約を取るだけでも一苦労だが、そんなことをしなくても肉まん、あんまんに始まって、路上で食べたいものが選び放題である。(ちなみに飲みものも、である^^;)


カット255Blár Himinn Kyssa

「たまにはこんなのもいいかもなぁ」

 その巨大さで評判の江戸清のブタまんを満面の笑みで頬張りながら平助は言う。ちなみに千鶴は半分も食べ終わらない内にもてあまし気味であった。

―平助君。さっき、ゴマ団子も買って食べてたよね。

 半分以上残ったブタまんを恨めしげに見つめながら、思わず千鶴は感心したように平助の食べっぷりを見つめていた。

「あれ、千鶴。もういんないの?」

 ぺろりとその巨大なブタまんを平らげてしまったようで、ブタまんとなぜか無言で見つめ合っている千鶴へ声を掛ける。

「う、ん。もうお腹いっぱいで……」

「んじゃ、俺もらっていい?」

 あれだけ平らげていて、まだ入るんだと半分感嘆しながら思うと、うん、と頷いて食べかけのブタまんを手渡す。

「うっまーい!」

 ばぁふっ! と音がするんじゃないかというような勢いで大口を開いて被りつくと一言!

 それを見つめがら、これは違う! と思う千鶴だった。

 人ごみに押されながら、ブタまんに齧り付くなんて千鶴の予定には入ってなかったのに……。

 せめて、せめて、マンゴープリンとか、タピオカ入りの飲み物とか、杏仁ソフトとか、平助は男の子だから肉まん系を食べるは仕方がないとしても。どうして中華街でも一番大きいサイズのものを二人でチョイスしてるんだろう。

 これって、付き合う前と変わらない。ただ周りに部活の先輩や先生。双子の兄である薫がいないだけだ。

 どこで間違えちゃったの!!

 せっかく横浜に来ているんだから、もう少し雰囲気のある場所でお茶するとか、港の方へ行くとか……。いや、中華街にいるんだから元町へ行ってもいいはずだ。

 そう、いくらでも彼氏彼女らしいデートの仕方があるはずなのに!

 それがどうしてこんなB級グルメ食べ歩きツアーみたいになっているのだろう……。

 今日こそは! と云う決意があればこそ、薫が千鶴の服装にチェックを入れないように親友の千姫の家に夕べは泊って、いつもより少しだけ大人びた服を選んで、本当に少しだけど化粧もしてきたのに……。(可愛い色のグロスを見つけて、つけてきたけれどブタまんに齧り付いた時に落ちてしまったに違いない)

 それにとうの平助自身が、千鶴がいつも違うということに気づいてない(T_T)

 何だか隣を歩くカップルの手がしっかり繋がれているのを見つめながら、平助君はやっぱり流れで私と付き合ってるのかな? などと思ってしまう。

「あー、千鶴! もしかして、別なもん喰いたかった? 俺、買ってこようか?」

 見事な食欲で中華街一大きいブタまんを一個と約三分の二、平らげると平助は黙り込んでしまった千鶴の顔を覗き込んだ。(1個食べれば大抵の人物なら満腹以上になる代物であるが、ま、例外もあるものだ^^;)

「ううん! もうお腹いっぱいで入らないよ。それより、あっちを見に行かない!」

 こうなったら、自分から行動を起こすしかない。そう覚悟を決めて、千鶴が平助の手を取ろうとしたら、二人の間の僅かな隙間を、どう見てもおばちゃんとしか云えない集団が無理やり割って入る。

 ドン! と千鶴は半ば突き飛ばされたような状態だ。

 却って平助との距離が離れてしまった。

「もう、本当に最近の子はちゃきちゃきしてないんだから! こんな所で突っ立ってたら通る人の邪魔でしょう!」

 そうして千鶴を一睨み!

 どうして~。千鶴は泣きたくなった。自分はただ普通のカップルのように平助と過ごしたいだけなのに……。

「大丈夫か? 千鶴!」

 慌てて平助が走り寄る。

「うん」

「ったく、何も俺たちの間に入ってくることないじゃん! 立ち話してる奴なんて山ほどいるのに」

 どこかの店に予約でもしているのだろうか。その集団は千鶴と平助だけではなく、いろんな集団にぶつかりながら進んで行った。唯我独尊とはああいうことを言うのだろう。

「うん。そう、だよね」

「怪我とかしてないか、千鶴」

「大丈夫だよ。それより平助君、お店に入れるかわからないけど、どこかでお茶でもしない?」

 気分を切り替えようとさりげなく提案してみる。

 さすがにあれだけ巨大なブタまんを食べた後となっては咽喉が渇いた。

「そうだな。えーと、千鶴はここで待ってろよ。どっか空いてるとこないか、探してくる!」

 周囲を見回して、千鶴の返事も聞かずに走って行ってしまった。千鶴には平助を止める間もなかった。

 そんな平助のいつもと変わらぬ様子に、なんだかどっと疲れが増した千鶴だった(^_^;)



「これ、可愛い」

 戻ってきた平助が見つけてきた店は、本当に小さい花茶を扱っている店だった。下の階が茶葉の売り場になっていて、上で本格的な中国風なお茶が楽しめるようになっている。お茶には小さな点心が付いていた。可愛らしいフォーチョンクッキーと開口笑(揚げドーナツのような菓子)だ。

 透明のポットの中には綺麗な花が咲いている。一般に工芸茶と呼ばれる中国茶の一種だ。

「これは、蝶恋花、というお茶です。ジャスミンティーがベースになっていて、その上に千日草の花が開くようになっていて、その上にジャスミンの花が一輪あしらわれているんですよ。まるで蝶が花に止まっているみたいでしょう」

 店主と思しき人物が自ら説明してくれる。

 花の上に蝶がいる。そんなポットの中を見つめているだけで幸せな気持ちになって、飲んでしまうのがもったいないようだ。

「あ、あの! これって下のお店でも買えるんですよね?」

 これは自分だけではもったいない。是非、千姫にも飲ませてあげたい。勢い込んで千鶴はその優しそうな店主に尋ねた。

「はい。いろんな種類がありますから、お茶とお菓子をゆっくり楽しんでから、お買いものをなさってくださいませ」

 ぺこりと頭を下げると、彼女は狭い店の中の他のテーブルへと踵を返した。

「平助君。ありがとう、こんな素敵なお店を見つけてきてくれて」

 おいてきぼりにされた時には泣きたい気持ちでいっぱいだったのに、今では感謝の気持ちでいっぱいだ。

「あ、いやぁ。ここってさぁ、お茶っぱの店じゃん。ここなら、どこか、店わかるんじゃねぇかと思ってさ。聞いたら、ここでお茶が飲めるっていうし――」

 ようは行き当たりばったり……。

 千鶴はがっくりと肩を落とした。茶葉を扱う店だから、飲める場所もわかるのじゃないかという発想だったわけか……。

 それにこんなに綺麗なお茶をお茶っぱといいますか?

―平助君の鈍感!!

 勢い! パキッと割ったフォーチョンクッキーの中身を取り出しながら、そこへ書かれている言葉にますます千鶴は肩を落とした。

 そこにはこう書かれていた。

『人事を尽くして天命を待つ』

 これ以上どう人事を尽くせって言うのぉ!!

 千鶴はそのままテーブルに突っ伏したい衝動にかられた。

「あれ、これってなんか入ってんだ」

 同じようにパキリとクッキーを割った平助が呟く。

「フォーチョンクッキーだもの」

「なに、それ? 占いとか?」

「そう、占いが入ってるお菓子なの。平助君のはなんて書いてあったの?」

 見せてもらおうと手を差し出す。やはり男子は女子よりこういったものに疎いようだ。平助は躊躇いなくその中身を千鶴へと渡す。そして、どれどれと千鶴はその文面を読みだした。

「えーと。『心ここに在らざれば、視れども見えず、聴けども聞こえず、食らえどもその味を知らず』って……」

「それって俺が鈍感ってこと……。まさか…、あはは」

「そ、そうだよねぇ。あ、はは……」

 二人でしばし乾いた笑いを洩らす。

 何だか駄目押しをされたような気分だ。

「取りあえず、お茶を頂こうか……」

「あ、えー、そうだな。咽喉、乾いたし……」

 ポットからやはり愛らしい茶器にお茶を入れる。ポットのなかでは花が揺れて、まるで今の千鶴の心の中を表しているみたいだ。

―やっぱり、流されてるだけなのかなぁ。私たち二人……。ううん! 駄目、そんなこと考えちゃ、これから遊園地に行って、観覧車に乗ったら平助君を押し倒……。

 そこまで考えが及んで、ボン! と音を立てるように千鶴に顔が一気に赤くなった。

「あれ、千鶴。顔、真っ赤だけど?」

 そこへ全くさっきの占い通りに、鈍感の烙印を押された平助が千鶴に考えなしで問いかけたのだった。

「平助君なんて! 知らないッ!!」

 思わず、そう叫んだ千鶴を誰も責めることは出来なかっただろう(笑)



 あの一言で一気にふくれっ面になった千鶴を宥めすかして、謝ること、三十分近く……。

 機嫌がやっと直った千鶴が、今度は店の中であれも可愛い、これも可愛いと、買って帰る、平助曰く、お茶っぱを選ぶのに一時間近く時間がかかった。

 それに平助には水の中に浮かべる人工の花の置き物みたいなお茶っぱが、一つ千円近い値段だということが信じがたい。その値段なら、さっきのブタまんが2個買える値段だ。

「ねぇ、平助君。これ剣道部のみんなにも買って帰ろうか?」

 すでに千鶴の手にしたカゴにはいくつものお茶っぱが入っている。

「えー、あいつらにそんなお茶の味なんてわかるわけないじゃん!」

「そんなことないよ。斎藤先輩とか喜んでくれそう、きれいだって」

 今度は千鶴が引き金を引く番だった。

 千鶴の口から出た斎藤の名前に平助の機嫌が悪くなる。

「千鶴は一君のこと、気に入ってるもんなぁ」

 横を向いてぼそり、真に乙女心がわかっていない行動だった。

 そんな平助に千鶴の機嫌も悪くなる。

「だって斎藤先輩は優しいし、ちょっとしたことでもすぐ気がついてくれて、気配りしてくれるもの」

 よせばいいのに、それへ平助が反応する!

「俺はどうせ鈍感だよ!」

「そんなこと、言ってないでしょ!」

「言ってるじゃん!」

「言ってません!」

「いや、言った!」

「言ってないもの!!」

 そんな二人のやり取りを人が集まりだして、とうとう千鶴が切れた。

「もういい!!! これ下さい!!」

 そっぽを向いたままの平助を放置して、レジで会計を困った表情をしている店員に頼む。そうして会計を済ませてお茶を包んでもらうと、そのまま、平助の横をすり抜けて店から出て行く。

「お、おい! 千鶴!!」

 さすがの平助もこれには慌てた。千鶴の肩を掴もうにも、今まで面白がって二人の言いあいを見ていた観光客に阻まれてすぐに追いつけない。そこへくるりと振り向いた千鶴が平助に一言!

「大嫌い!! ついてこないで!!」

 売り言葉に買い言葉の痴話げんかだった。



 買ったばかりのお茶の袋がとても重かった。千鶴の周りは楽しそうな人ばかりなのに、どうして、こんなことになっているのだろう。

 千鶴はただ平助と普通のカップルみたいに過ごしたかっただけなのに……。

 山下公園までとぼとぼと歩くと、なんだが自分がとってもみじめに思えてきて、涙がこぼれ落ちてきた。

「平助君のばか……」

 ずっと不安だった。

 仲のいい友達はみんな付き合い始めてすぐに、抵抗なく手をつないだり、キスしたりしてるのに……。

 自分たちはいつまでも幼馴染の延長で、千鶴が子供っぽいから平助は手さえつないでくれないんだろうかとか、千鶴がキスしたいと思っても平助はそんなこと思えないのか……。そう考えると涙が次から次へ零れ出した。

「ひっく……。ぐす……」

 こんなみっともない顔をだれにも見せたくなくて、人がこないような場所で膝を抱えた。近くからは仮装行列が始まったのだろう。歓声と楽しげな音楽が聞こえてくる。

 今日をとっても楽しみにしてきたのに、つまらないことで喧嘩して、しかも千鶴の方から大嫌いと言ってしまった。

 このままだったらどうしよう。

 でも、こんな人ごみの中で平助を見つけることなんてできない。さっきの怒りの勢いでスマホの電源も切ったままだ。平助は千鶴の態度に怒って、もう帰ってしまっているかもしれない……。

「こんなのやだ……」

 小さく呟く。聞いているものなんて、誰もいないはずだった。

「俺だって嫌だよ!」

 思いがけずに頭の上から響いた声に思わず顔を上げる。

 そこには息を切らして、汗だくになった平助の姿。

「平助君……」

「ごめん! 俺が悪かった。つまんないやきもち焼いた……」

 膝を抱えた千鶴の隣に座りこむと、まず頭を下げる。

「必死で探した、お前の行きそうなとこ。もうこんなとこで一人で泣くなよ。俺、お前を泣かせたくなんてないよ」

 その言葉にぼろぼろと千鶴の瞳から新しい涙が溢れた。

「ご、めん、…さい……」

 まるで小さな子供に戻ったようだ。

「だから、泣くなって……」

 そうして平助が思わぬ行動に出た。肩を抱いて、千鶴を抱き寄せたのだ。

「へ、平、す、け君……」

 千鶴が固まった。こんな展開想定外だ。

「泣くなよ。ごめん、千鶴。俺さぁ、ものすごっく不安だった。お前はすっげぇ人気があってさ、それにお前の周りには一君やら総司やら、おまえのことを狙ってる奴がいてさ。お前が俺と付き合ってくれてるなんて、ほんと夢見てるみたいで。さっきも一君の名前出たとき、お前は幼馴染の延長で、仕方なく付き合ってくれてるだけじゃないのかなんて考えてさ。やきもち焼いた……」

 千鶴は言葉にううんと頭を振った。平助も同じ、自分と同じ所で悩んでいたのだとようやく思いついた。

「違うよ。私が好きなのは平助君だけだもの。だから、ずっと不安だったよ。付き合っても手も繋いでくれないし、それに……してくれないし……」

 自然と俯いて顔が赤くなっているのがわかった。

「え、と。だってさ、俺の手、剣道してるから荒れてるし、固いじゃん。だから、その嫌かと思って……。それに、いきなり……したりして嫌われたくなかったし……」

 同じように俯いて平助が答える。この場に剣道部の連中がいたら、このバカップルがッ! と言われるような場面だった。

「でも、じゃあ……」

「うん……」

 そのまま千鶴は瞳を閉じた。平助が顔を近づけてくる気配がした。

 胸がドキドキする。青い空の下でキスしようとしてるんだ、私たち……。

 すぐそばから歓声と、楽しげな音楽と、波の音が聞こえてくる。

 でも今の千鶴は自分の鼓動の音しか聞こえなかった。

 そうして―――。

 観覧車の伝説は、遊園地に行った時に話してみよう、と千鶴はそう思った。

―そうしたら、もう一度キスしてくれる、平助君?

カット256Blár Himinn Kyssa




おしまい
  1. 2013/04/18(木) 08:17:09|
  2. 頂きもの
  3. | トラックバック:0
  4. | コメント:0
<<4月に手がかじかむとは… | ホーム | 新婚さん・おまけ♪>>

コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

トラックバック URL
http://kougethuan.blog.fc2.com/tb.php/361-c0658ad3
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)