皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「ヲトメの悲鳴 ~斎藤一のささやかな幸せ~」

茶々姫」のMURAさんから、前回の『ヲトメの悲鳴』の続編を頂きました!


前回の読後、
「あんなトコで悲鳴を上げちゃったら、絶対、皆かけつけてくるだろうし、一君どうなっちゃっうの!?」
という感想を送ったら、続きを書いて下さいました♪

報われているのかいないのかw
天然一君のその後、続きからどうぞお楽しみ下さい^^



♪いつものごとく、挿絵は作者様に進呈します。
よければどうぞ持っていってやって下さい^^





「ーーーーーっ!!!」


それは今迄に聞いた事のない、始めての『悲鳴』だった。


何とも実に言葉では形容し難いその『悲鳴』。


まるで生命の危機に直面したかのような、何かに酷く追い詰められたような、切迫さを感じさせられるその『悲鳴』に、心地良い夢の世界でまどろんでいた千鶴の意識は急激に現実へと引き戻された。


  (な…何?。敵襲?まさか、羅刹の暴走…っ!?)


 新選組には敵は多い。


屯所に討ち入ろうと考える輩達がいてもおかしくないだろう。


いや、もしかしたらまた正気を失った羅刹が暴れだしたのかも知れない。


過去に何度も羅刹に襲われた事のある千鶴はその時の恐怖を思い出し、冷たいものが背筋を走り抜けた。


慌ててその身を起こそうとした。が、両足がびりり、と酷く痺れそのままかくり、と膝から力が抜けてしまい体が前のめりになった。


その時。


むにゅ…。


胸元の妙な感覚に陥り、思わずその場で動きが停止してしまう。


恐る恐る顔を下ろして見る。


そこには…


「斎藤さ…ん……?」


 何故、ここに斎藤がいるのだろうか?。


思わず部屋を見回して確認してみても、やはりここは間違い無く自分の部屋だ。


心なしか、赤くも、そして青くも見える不思議なその顔色。


普段は鋭い光を宿しているその眼差しが、何故か今は酷く虚ろだ。


そのままゆっくりと更に顔を下げてゆく。


自分の胸元に、何故か斎藤の両手がしっかりと重ねられていた。


  (…………っ!?)


一瞬で思考が混乱する。


 斎藤がこの部屋にいる理由も、自分の両胸に何故斎藤の両手が……?


斎藤の虚ろな視線が千鶴のとゆっくりと交わる。


どこか救いを求めているかのようなその眼差しに対し、一体何を言えば良いのだろうか?


「……ぁ」


兎に角、何か言おうと唇を薄く開けると、それに反応したかのように斎藤の体がびくりと小さく震えた。


それと同時に


むにゅり…。


両胸からは先程のよりも少し強い感触。


頭の中がぐるぐると回り、そして急激に白くなる。


「いゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーっ!!」


そして今度こそ、本当に絹を引き裂くような本当の『乙女』の悲鳴が屯所中に響き渡ったのであった。


ヲトメの悲鳴 ~斎藤一のささやかな幸せ~

「…っ!!」


千鶴の悲鳴に、反射的に斎藤が後ろに飛びのいた。


その動きはまさに神速。


「な…な…な……っ!?」


だが、そんな事は今の千鶴には関係ない。


  (斎藤さんに揉まれた…斎藤さんに揉まれた…斎藤さんに……)


その事実だけが頭の中でぐるぐると渦巻いていた。


なので、自分の両足が痺れていた事すら忘れ、斎藤から離れようとそのまま再び立ち上がろうとしてしまったのだ。


そして当然の如く、先程と同じ両足に走る痺れ。


そして、傾いでゆく千鶴の体。


それに驚き支えようと伸ばされる斎藤の両腕。


そして……。


「何だ、今の悲鳴は……っ!?」


「敵襲か…っ?」


近づいてくるばたばたと慌しい足音。


「千鶴、大丈夫かっ……?」


すぱんっ、と勢いよく開かれた襖。


その向こう側には、それぞれの得意の獲物を手にした勇敢で勇猛果敢な猛者達。


その彼らが目にしたのは……

斎藤一のささやかな幸せ1

 うっすらと涙を浮かべながらも畳みを背に倒れこんだ千鶴。その襟元は乱れ、鎖骨が見え隠れしている。そして肌蹴た両足の間に体を入れた状態の斎藤の姿。


どう見ても、嫌がる少女を無理矢理押し倒す暴漢者の構図である。


「………。」


予想外過ぎるその光景にしばらくの間、彼らは呆然としたまま動けないでいた。


一方、千鶴も、そして斎藤もそのまま身動き一つ取れないまま、完全に固まってしまっていた。


「斎藤、てめぇ……」


 一番最初に我を取り戻したのは流石と言うべきか、副長である土方だった。


土方のその言葉を合図に、皆が同時に、それぞれ手にしていた獲物を構える。全員が全員、一秒たりとのズレのない、まさに一糸乱れぬその身のこなしは流石と言えよう。


殺気も本気のものだ。


躊躇する事すらせずに抜刀した皆のその殺気を身に、咄嗟に千鶴から離れる斎藤。殺気に反応する斎藤も流石と言えよう。


千鶴も慌てて身を起こしつつ素早く乱れた箇所を直し、少し離れた所へと後ずさりしていった。


そして、俯いたまま自分の両腕で自分自身を抱きしめるかのようにした。


「まさか、よりによってお前が……。」


「てめぇ、良い度胸だなぁ……。」


「見損なったよ、一君……。」


「君にそんな行動力があったとはね……。」


信じていた者に裏切られたと言わんばかりに、無念そうに眉を潜める土方。


にやり、と嗤ってはいるものの、その深い笑みにはどこか真剣すぎて怖すぎる物が含まれている原田。


こっそりと永倉と見た春画のような光景を実際に目にし、顔を赤らめながらもその視線はどこまでも酷く暗い、平助。


普段の何を考えているのか解らない笑みをそのまま浮かべながらも、その瞳が本気で怖い沖田。


それぞれが纏っている殺気は本物の本気だ。


  (殺られるーーーーっ!!)


その瞬間、斎藤は死を覚悟した。
斎藤一のささやかな幸せ2




その時だ。


「おぅおぅ、斎藤、てめぇって奴は随分最低な奴だなぁっ!」


『最低』と言われ、見えない何かがぐさり、と斎藤の胸を深く穿つ。


虚ろな眼差しのまま密かに傷付いている斎藤の方へ、殺気立っている皆の間から永倉が突然現れた。


「女を泣かす野郎ってのは昔っから最低な奴だって決まってんだよ。」


両腕を組み、責めるように突然説教を始める永倉。


永倉の『泣かせた』との言葉に慌てて千鶴の方へと視線を移すが、当の本人である千鶴は俯いたままで、本当に泣いているのかどうかは判断出来なかった。


だが、自分自身を抱きしめるその両腕が僅かながらにも震えている事に気づいた斎藤はそのショックのあまり目の前が真っ暗になった。


  (俺は…何と言う事を……っ!)


たとえ自らの意思ではなかったとは言え、あの気丈な千鶴を震わせ、泣かせてしまう程の事をしてしまったのだ。


ショックのあまり呆然としてしまっている斎藤の耳に長々と説教していた永倉の言葉がふいに飛び込んでくる。


「……こいつはきっちり責任とって所帯を持ってやらねぇと」


  (所帯を持つ……?)


  (俺が千鶴を娶る…と言う事か……?)


何故かその言葉だけがやけに耳に残り、そんな考えが頭をよぎる。


一瞬、自然と口元が緩み、じんわりとした不思議な温もりが胸に広がった。


次の瞬間、斎藤は決意した。


「……承知した。」


「早っ!!」


ある意味鋭い、沖田の茶茶を入れるような叫びをも無視して永倉は更に追及してくる。


「おぉ?、その言葉、嘘じゃねぇよな?。」


「武士に二言は無い。俺も男だ。責任は取る。」


どこか嬉しそうながらも再度確認してくる永倉に、斎藤は真剣な眼差しで深く頷いた。


  (俺と千鶴が……。)


  (夫婦に……。)


何故か今にも頬が緩んでしまいそうになり、それを抑える為、今迄に使った事の無いような顔の筋肉を駆使させながらも何とか表情を引き締めた。


それにこれでは、過ちに対し『責任を取る』と言うよりも、『褒美』の方が近いような気がするが、そこはあえて口にはしない。


「よっしゃぁ、流石は斎藤って事だなぁ!俺は見直したぞっ!!」


うんうんと、一人腕を組んで喜び頷く永倉。


まさか永倉がこれ程喜んでくれるとは…永倉の男気とその仲間想いに斎藤の胸が熱くなる。



だが、そんな思いも、すぐに冷や水を浴びせられる結果となるのだが……。


「んじゃ、俺はこれから千代子嬢に伝えてくるわ。」


「…………は?。」


「んだからよぉ、千代子嬢にお前が所帯を持ちたがってるって事を伝えに行くって言ってんだよ。あんだけ朝までさんざん泣かせたんだ、てめぇでその責任の一つもとりやがれってもんだぁ!」


 (一体新八は何を言っているのだ……?)


 何故、ここに『千代子嬢』の名が出てくるのだろうか…?


混乱する斎藤。


その前で、ほんのつい先程まで本気で槍を構えていた原田が、『あぁ、成程…』と呟きながら何やら急に納得したと言わんばかりにぽん、と一つ手を打った。


 確かに、昨夜は永倉に強引に誘われて、原田共に斎藤は島原の千代子嬢の元へと行った。


だが、なぜか当の本人である千代子嬢は斎藤の方は見向きもせずに永倉と原田とばかり言葉を交わしていた。そんな彼女の様子に恐らく照れ隠しにでも、たまたま斎藤の名が出たのだろうと思われた。


念の為、千代子嬢と約束したと言う永倉の顔を潰さない程度に同じ部屋で一人で酒を飲み、適当にキリの良い所で、斎藤はその場を後にした。


だが、実はそう思っていたのは斎藤だけだったのだ。


 千代子嬢は憧れの斎藤を目の前にし、緊張しきってしまってつい話しやすい永倉や原田の方と話し込んでしまったのだ。


そして、少し慣れてきたかと思った頃にはすでに斎藤の姿は無く、誘っておいて放っておいた自分の態度に呆れたのだろうと、斎藤に嫌われてしまったに違いないと泣き出したのだ。


永倉は必死になって、そんな事はない筈だと宥め賺そうとしたのだが、そんな永倉の言葉も耳に入らないまま、永倉にしがみつきながらおいおいと泣き続けたのだった。


それは朝方、つい先程まで続いた事だったのだ。


一晩中女にしがみ付かれ泣かれ続けられ、睡眠不足と八つ当たりに近い、怒り心頭に発した永倉が目の下に濃い隈を作りながらも屯所に朝帰りした時に、丁度この場面に遭遇したのであった。


 ちなみに原田は千代子嬢の泣き出す雰囲気の前にさっさと席を離れていたのであった。


永倉は相手を『千代子嬢』のつもりで話していたのだが、そんな事を知らない斎藤は『千鶴』だと勘違いしたまま会話が成立してしまっていたのだ。


「新八、ちょっと待……っ!!」


慌てて永倉を止めようとしたが時すでに遅く、永倉の姿は既に屯所から消えていた。


「朝までさんざん『啼かせた』だとぉ…?」


「うわぁ、一君、サイテー。」


「その直後に千鶴まで襲うなんて……」


「うわぁ、一君って絶倫だねー。」


更に殺気を深めてゆく土方と平助の言葉の間に、どこまで解っているのか、本気なのかすら解らない沖田の茶茶が入る。


ただただ、状況は悪くなるばかり。



思わず斎藤は縋るように原田の方へと顔を向けた。


今は全ての真実を知っているであろう唯一の人物に助けを求めたのだ。


その視線を受け、原田がちらりと土方や平助の方を見やる。


そして…


「悪ぃ……」


屯所中がひんやりとした冷気に包まれる程の殺気を込めた二人を横に、俺には止められねぇわ、と言わんばかりに苦笑いしつつ、勘弁なと片手を上げる原田。


唯一の救いに拒否された斎藤は、改めて死を覚悟した。


  (俺はここで……)


  (こんな事で死なねばならぬのか……?)


 武士として常に死ぬ事は覚悟してきたつもりだった。


だが、まさかこんな事で命を落とすはめになろうとは流石に予想だにしてなかったのだ。


  (せめて、武士らしく腹を切らせて貰えないだろうか……)


そんな事を本気で考え始めていた斎藤の耳に凛とした声が響いてきた。


「斎藤さんは悪くありませんっ!」


それは千鶴の声だった。


つい先程まで何やらぶつぶつと小さく呟き続けては自分の世界へと逃避していた千鶴が、どうやら復活したようだ。


「全て誤解なんです。」


千鶴は斎藤を庇うかのように皆と斎藤の間にきちんと正座をして事のあらましを説明した。


 夜中に百足に咬まれた事。


 それを島原から戻ってきた斎藤が退治してくれた事。


 そして、そこで酔いが回ってしまい、そのまま千鶴の部屋で寝てしまった事。


 朝に寝ぼけてその事を忘れていた自分が驚いて悲鳴を上げ、その時に斎藤が、体勢を崩した千鶴を助けようとしたのだが、そのまま二人揃って転がってしまいあんな体勢になってしまった事。


話し終えた千鶴は申し訳なさそうに、斎藤の方を向き、頭を下げた。


「私が寝ぼけてしまったばかりに……」


そう頭を下げられ、斎藤は慌てて気にするなと言った。


確かに屯所に戻り、自室に向かう途中で千鶴の小さな悲鳴を聞いた、ような…。そして部屋へと入り刀を抜いた…ような気がする。


 表情にこそは出さなかったとは言え、千鶴の話しを聞いていて斉藤自身も、そうだったのか、と内心驚きながらも僅かながらに引っかかりを感じ、首を傾げる。


もっとその後に何かがあった…ような気がするのだが……


それらは完全に深い霧に閉ざされてしまっている。



「その話に嘘偽りはねぇだろうな…?。」


「はい。一つの嘘偽りもございません。」


斎藤を庇っているのではと、訝しげな土方の眼差しを正座したまま真正面から千鶴は受け止めた。


心の中で『嘘はついていない嘘はついていない……』と、必死に自分自身に暗示をかける。


確かに『嘘』はついていない。ただ、話していない事がほんの少しあるだけだ。


まさか斎藤に自分の足を舐められた等と口が裂けても言えないし、更に胸を揉まれたなんて事を迂闊に話してしまえば再び大惨事が起きてしまう事は簡単に予測できるのだ。


千鶴は背中に冷や汗を流しながらも、表情は真摯なままで土方の射るような視線を受け止め続けた。


「……まぁ、良いだろう。」


もう限界だと観念しかけた頃に、ふいに土方の視線が逸らされた。


全身の緊張が解け、ほっと思わず深い息が漏れる。


そんな千鶴を背後から斎藤は見つめ続けていた。


 千鶴は自分と土方の間に割り込むかのように入っては斎藤の身の潔白を証明してくれた。


しゃんと背筋の通ったきれいな正座をしたまま土方に臆する事なく対峙する千鶴。


その姿、その声に斎藤は自分を救いに天から舞い降りてきた御仏の使いなのかと思えてしまう程だった。


 殺気は嘘のように消え去り、抜かれた刃は無事にそのまま鞘に納められ、それぞれが各自の持ち場へと帰っていった。


斎藤も原田に引きずられるかのように強引に連れ出され、千鶴はやっと一人きりになれた。


襖を完全に閉め、ようやく安堵の息を吐いた。


土方は千鶴が隠し事をしている事に気付いていたのではないだろうか?


その上で、無かった事としてくれたように思えてならない。


  (ありがとうございます。土方さん。)


千鶴は心の中で礼を言った。


そして、斎藤の事も気になったが、その事を考えようとすると自然と昨夜の事を思い出してしまうので今は考えないようにと頭をふった。


「朝餉の準備をしなくちゃ…!」


邪な邪心を追い払うかのように自らの両頬をぺしん、と叩いて千鶴は台所へと向かっていった。




 それからしばらくの間、斎藤が自分の両手をじっと見つめながら、にぎにぎと動かしては頬を染めている姿があちこちで目撃されているのであった。


 ちなみに例の千代子嬢は永倉の言葉を信じ、自ら用意した白無垢姿で斎藤のお迎えを待ち続けていたそうだ。


それはいつしか『白無垢の千代子』と字が付けられ、大層評判になりその後、さる大店の跡継ぎに見初められ身請けされ、幸せになったそうな…。


めでたしめでたし。




~おしまい~
  1. 2012/12/22(土) 16:47:33|
  2. 頂きもの
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  4. | コメント:0
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