皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「ヲトメの悲鳴」

茶々姫」のMURA様から、ちょっと遅れ目の誕生プレゼントを頂きました^^
ありがとうございます。


以前私の描いていた「生脚シリーズ」に触発されてできたお話だとか。
しかし、こちらで生脚を披露するのは…w

役得なのか、残念なのか―――相変わらず天然の一君を、いつものおまけと共に続きからどうぞ。

イラストはMURA様に進呈します♪



ヲトメの悲鳴


草木も眠る丑三つ時ーー


千鶴は自室ですやすやと眠っていた。

「…ん………。痛…っ!?」

寝苦しいのか、しばらくの間何やらもぞもぞと足を動かしていた千鶴が小さな悲鳴を上げてがばっ、と飛び起きた。


ふくらはぎが妙に痛む。


最初は針の先が掠ったような感じから次第にちくり、と刺された感じに、徐々にその痛みは強まる一方で今ではじんじん、と痺れるように痛んでいる。

  (一体、何が……?)

起き抜けではあるが、足の痛みのせいで頭は既にはっきりしている。


その時である。


 スパンーーッ!!


実に、爽快なまでの気持ちよい襖の開かれた音が室内に静かに鳴り響いた。


そこに、月を背にして立っていたのは……

  (さ…斎藤さん……?。)

見事なまでの満月を背に、立っている斎藤。


逆光に輪郭のみが浮かび上がるその姿だが、千鶴には誰だかすぐに解った。

「……邪魔をする。」

ぽつりと呟き、音も無く室内へと入ってくる斎藤。


後ろ手に襖を静かに閉める。


その行動に千鶴の心臓が一つ大きく跳ね上がった。

  (こ…こんな時刻に……?。)

ここは赤くなって良いのだろうか、青くなるべきなのだろうか……?。


千鶴があわあわと、内心暴れている内に既に斎藤は目の前まで来ていた。

「あの…斎藤さ……?」

恐る恐る呼びかけようとする千鶴に斎藤が黙るようにと、険しい目線で合図を送ってきた。


その身から発する空気に圧倒されて、思わず息を飲む。


そのまましばらくの間、斎藤は瞳を閉じて神経を集中していた。

「ーーーそこかっ!!」

閉じられていた斎藤の目がカッ、と見開かれる。


斎藤の体が小さく揺らいだ。かに見えた。


斎藤の得意とする居合いは千鶴の目にも留まらない速さだ。正に神速。


音も無く、空気すら引き裂いて抜刀した刃を千鶴が先程まで寝ていた布団ごと、畳みに対し垂直にぐさり、と深々と突き刺した。

  (まさか床下に間者でも……!?)

殺気に似た空気を発する斎藤の様子と行動に、千鶴は慌てて斎藤の背後へと移動した。


千鶴を背に、斎藤は手応えを感じたのか、鋭い瞳にどこか確信を得たような光が灯る。


そのまま、すいっ、と体を動かし無言で千鶴の布団を勢い良くめくり上げる。

「……うむ。」

どこか満足気に呟く斎藤の背後から、千鶴も恐る恐る覗いてみると、そこには……

「百足……?」

斎藤の刀によって見事に胴体を上と下との真っ二つにされた大きなムカデがうごうごと蠢いていた。

「あ、それで……。」

千鶴は痛む足にそっと手を添えながらも、改めて納得した。


要するに布団に潜り込んだ百足に足を咬まれたのだ。


百足に咬まれる事自体、千鶴は始めてではあるが、今迄にそんな話しも何度か耳にした事はあった。


咬まれた後は人によって多少の違いはあるが、少なくともかなり痛むらしい、と……。


確かに今現在でも、既にじんじんとした痛みは、局部的ながらも痺れるような痛みへと変わり、その痛みは思わず声を漏らしてしまう程だ。


「むっ……!!」


そんな事を考えていた千鶴の耳に、斎藤の厳しい声と同時に、何やらもぞりと動く物が視界の端に入りそちらを見た。


つい今し方、斎藤の手によって真っ二つになった百足の上半身…つまり頭部の付いている方がもぞもぞと再び布団へ潜り込もうとしていたのだ。


なんと言う生命力なのだろうか。


その動きに生理的におぞましさを感じながらも、千鶴は一瞬感心してしまう。


だが、斎藤は再びその掛け布団を片手でめくり上げると、再び刀を突き刺した。


今度は百足の頭部を縦に真っ二つに刃先を埋めている。


それでもその下の方の体は、弱々しくも執念強く蠢いていた。


だが、やがてそれは静かにその動きは止まった。

「ふっ…。」

斎藤が緊張を解くように息を吐いて、刀を抜き去る。


懐から懐紙を取り出し、刃先を拭うとそのまま音も無く鞘に収めた。



百足退治にしては多少やりすぎな気がしないわけでもないが、恐らく自分一人では百足の存在にすら気付かなかっただろうと思い、とりあえず千鶴は礼を述べようと斎藤の方へと向き直った。


「あ…ありがとうご……」

「咬まれたのか、痛むであろう?」

「え…あ、はい。少しだけ……。」


本当はかなり痛むのだが、それを告げるのには心苦しくて思わず誤魔化すように苦笑しながらも返事をする。


手は自然と今も痛む足を押さえてしまうのだが。

「見せてみろ。」

「…………え?。きゃ…ぁっ!?」

いきなり見せろと言われ、一瞬固まっていた千鶴の足は、容赦なく斎藤の手で鷲掴みにされ、そのまま強引に引き上げられる。


自然と寝間着の裾は大きく開かれ、千鶴の足が斎藤の前に晒される。


咄嗟に肌蹴てゆく寝間着を両手で押さえ足を下ろそうと試みるが、斎藤の手はがっしりと掴んだままでそれは叶えられなかった。

「さ…斎藤さんっ…!」

真っ赤になりながら千鶴が責めるような口調で斎藤の名を呼ぶが、どうやらその声は肝心の斎藤の耳には入ってはいないようだ。


斎藤は真剣な表情で千鶴の足の、少し赤く腫れている部位を見つめている。


足を掴む手も力強く、千鶴が隙を見ては何とかして降ろそうとしてみたのだが、びくともしない。

「お願い…しますからもう離し…っ、さ…斎藤さ…っ!?」

もはや涙ながらに懇願するような哀れな千鶴の声が、驚きのあまり一気に裏返った。


なんと、斎藤が百足に咬まれたその箇所に口を付けたのだ。


じんじん、と痛む箇所にいきなり唇を落とされ、千鶴の頭はもう爆発寸前。

「な…な……な………っ!?」

これ以上にないと言える限界に迄赤くなった千鶴は、まともに言葉も出せずに口をぱくぱくと、大きく開きながらどもる事しか出来ない。

「騒ぐな。」

騒ぐなと言われても急すぎるこの展開に驚きの声くらい漏れるのも仕方の無い事だと許して欲しい…。


だが、斎藤に皆の安眠妨害になると言われてしまえばその声すら押し殺すしかない。


それでも未だに強引に引き上げられたままの足を支える無理な体勢を取っている千鶴。自然と体がふるふる、と震えてしまう。

「動くな。」

「………。」

更に無茶な要求を突きつけられ、千鶴はもう絶句するしかない。


そんな千鶴の動揺にも全く気付かないのか、或いは無視しているのか、斎藤はじろり、と千鶴を一睨みしては厳しい視線でその動きを封じた。


斎藤の険しい視線に思わずびくり、としては何とか動きを止めた千鶴の脚に斎藤が再び唇を落とす。

「……っ!」

只でさえ、痛む箇所の上から圧せられる。咬まれた痛みとはまた違う鈍い痛みに思わず眉をしかめる。


そんな事おかまいなしで、斎藤はその傷口を強く吸い、または微弱な力で噛みついた。

「……んっ」

痛いのは痛い。のだが、百足に咬まれたのとはまた違う謎の刺激だ。何だが別の熱が体の中にこもるような気さえする。

 ちぅ…

と千鶴の肌を吸う音が小さく耳に聞こえる。その音は千鶴の羞恥心を煽るばかり。


やがて、足から唇を離した斎藤は持っていた新しい懐紙にぺっ、と口の中身を吐き出した。


そして再び千鶴の足へと吸い付く。それを何度か繰り返してゆく。

  (これって、もしかして……)

当初こそは混乱していた千鶴だが、真剣な斎藤の行為を見ているうちに次第に熱も冷め、もしかして…と思いついた。


毒蛇に咬まれた時にする手当ての方法のような気がする。

  (確かに百足も毒はある筈だけれど……)

蛇の毒とはまた違うような気がするが…、さりとて違うとも言いきれる程の自信も知識もない千鶴はその疑問を口には出せない。


それに、傷の手当(?)をしている斎藤の表情は真剣そのもので、決して悪戯や冗談でしている訳ではないのが見て取れる。


そんな混乱から少しずつ落ち着いてきた千鶴は、なるべく足に触れる斎藤の唇の感触や、掠めるようにすれるその髪のくすぐったさに必死に耐えるしかなかった。

  (こ…これって…何かの拷問…ですか……?)

千鶴は声を出さないようにと、自分の口を両手で覆い、必死になって声を殺していた。


それは実に、極限迄の精神的疲労の激しい『手当て』と言えよう。


 どれ位たったのだろうかーーーー。


斎藤がゆっくりと千鶴の足から手を離した。


やっとの事で自由になった足は自然と正座してしまう。


肌着は乱れ、既に完全に太ももまで露わになっていた。


千鶴はそれを治そうと少し腰を上げたその時、ぐらりと斎藤の体が千鶴の方へと倒れ込んできた。


「え…?。きゃあっ!?」


斎藤は事もあろうか、千鶴のその剥き出しの太ももに顔を埋めるように倒れ込んだのだった。


「さ…斎藤さんっ!しっかりして……うっ!?」


先程の百足の毒を直接口にしたせいで、毒でも回ったのだろうか?、いや、そもそもそんな事が有り得るのだろうか…?


等と、自問自答してしまう千鶴は慌てふためきながらも、斎藤の様子を伺おうとその身を前のめりに屈めた。…のだが、思わず顔をしかめ、慌てて自分のその身を引き起こした。

  (うっ…、お酒臭い……)

丁度、膝枕の状態…ではあるが、その太ももに直接顔を埋める状態となった斎藤の体からは強い酒の匂いが漂っていたのだった。

  (もしかして…最初から酔っ払って………?。)

今迄の、斎藤らしくもあれば、斎藤らしくも無いと言えようこの行動に千鶴はしばらくの間ぽかん、と呆れたように口を開けたまま放心してしまった。


 そう言えば、夕餉の後に永倉や原田に半ば強引に島原に連れ去られていったような……。


そんな事を思い出した千鶴は全身の力が抜けてしまう程の、えも言われぬ虚脱感に襲われた。


そもそも、よく考えてみれば普段の斎藤の行動としては異なる点が多々あったような気がする。


いくら百足に咬まれたからと言って、普通口でその毒を吸い出すような事はしないだろうし、それ以前に千鶴の足を無理に引っ張り上げるような乱雑な事はしないだろう。


第一、そんな事をもし斎藤がしたとしても、斎藤自身も羞恥の為、真っ赤になっていただろう。


いや、ヘタすれば鼻血ものであるかも知れない……。


 それに以前、聞いた事があるのを今更ながらに思い出す。


斎藤の酔い方は、一見、本当に酔っているのかいないのかが、非常に判別しにくいのだと…。


かなりの量の酒を飲んだ後、斎藤が真剣に説教をしたその相手は『柱』だった…。なんて話しも耳にしたような気が……。


 太股に伝わる振動から、斎藤はそのまま深い眠りに落ちてしまったようだ。


すーすー、と静かな寝息すら聞こえてくる。

「……どうしよう。」

途方に暮れた千鶴は呆然としながら思わず呟いてしまった。

いくらなんでもこのままの状況はあり得ないだろうと、そっと斎藤を揺さぶってみた。

「あの…斎藤さん……?。」

皆の迷惑にならない程度にと、耳元でそっと囁いてみる。が……

「や…ぁんっ!?」

思わず上ずった声が漏れてしまう。


揺さぶられた事を不快に感じたのか、斎藤はなんと、千鶴の太股に更に深く顔を埋めようとしたのだ。


露わにした太股にぐりぐりと自分の顔面を更に潜り込ませようとする斎藤。


一瞬、その全身にぞくり、と妙な感覚が走り千鶴は慌てて斎藤を揺さぶっていた手を離した。


変わりに宥めるように、その頭へとそっと手を下ろした。

  (あ、気持ち良いかも……)

触れた黒髪が千鶴の指先に絡みつく。


軽く指ですいてみると、実に気持ち良い手触りが指先を擽る。

  (綺麗……だな。)

男の人に『綺麗』って言うのも変なのだろうけど、艶々と手入れの行き届いたかのような見事な黒髪。


さらさらながらにも、先っぽの方は意外と癖毛なのも今、始めて知った。


そのままそっ、と撫ぜてみると、気のせいかも知れないが、斎藤がどこか心地良さそうにしているように思えた。


しばらくの間、千鶴はその髪を、頭を撫で続けていた。



「……あと、少…し……。」 

千鶴は斎藤を起こさないようにと注意しながらもそっと手を伸ばし、横に跳ね除けられていた上布団を何とか手繰り寄せる。


それを斎藤の体にそっとかけた。


自分は後方の壁に背を預け、再び斎藤の頭を優しく撫でた。

  (お疲れ、なのでしょうね……。)

いくらお酒が入っているからとは言え、他人…千鶴がこんなに側にいても平気で熟睡しているのだ。


千鶴はゆっくりとまるで子供をあやすかのように撫で続けた。

「お疲れ様でした。ゆっくりとお休み下さい…。」

そっと、耳元で囁くと、もぞりと、一度返事をするかのように斎藤の顔が動いた。

が、それだけだった。


あいも変わらず、すーすー、と定期的に安らかな寝息に誘われるように、千鶴も小さく欠伸を一つ漏らした。


自然と瞼が下がってゆく。


指先に絡む手触りの良い髪と、腿の暖かい人肌の温もりと感覚を楽しみながら、千鶴の意識はそのまま深い眠りの淵へと誘われた。



ちゅん、ちゅん、ちゅんーーー



雀の鳴き声に沈みきっていた意識がゆっくりと覚醒される。

  (もう、そんな刻か……。)

斎藤は未だに蕩けたまま、回らない頭でぼんやりと考えていた。

 昨夜は確か、最近永倉が贔屓にしている千代子嬢の生誕記念日だとかで無理矢理島原に連れ出されたのだった。


どうも、以前から密かに斎藤を気にしていた千代子嬢が永倉に連れてくるように頼んだらしい。そして永倉は彼女の気を引こうとし、少しでも良い所を見せようと二つ返事をしたのだと言う。


結局、祝いだと理由を無下にも出来ずに斎藤は、本来ならば全く飲む気のなかった酒を口にする羽目になった。


とりあえず、千代子嬢と永倉へと義理は果たしたと思えた頃に、斎藤は店を後にした。


屯所に戻った頃までは、はっきりと記憶にある。


が、それ以降が非常に曖昧だ。


自室へ戻ろうとした時に確か小さな悲鳴みたいなのを聞いた…ような気がする。


それから…自分はどうしたのだろうか……?。


何とか思い出そうと試みるが、濃密な霧に閉ざされたままのようで思い出せない。

  (それにしても……)

斎藤は深く深呼吸しながら布団に頬ずりをした。


実に気持ちが良く心地よい。


千鶴が天気の良い日に小まめに布団を干してくれているのを知っていたのだが…。


その成果だと言うのだろうか?。


干すだけで布団と言う物はここまで心地よくなる物なのか…。


仄かに鼻腔を擽るような甘い香りすら感じられるような気がする。


しっとりとしながらもこの沈み込むような柔らかさは正に極上の物と言えよう。それにこの温かみもまた人肌で丁度良い。


その手触りを楽しむように、そっと手を動かすとぴくり、と動いたような気がした。

  (これからは自分でも布団を干してみようか…それならば千鶴の手を煩わせる事も少しは減るだろうし……。)

ぼんやりと、そんな事を考える一方で、頭の隅に矛盾を感じ思わず眉を潜める。

  (何故、布団が動くのだ…。それにこの温もりは……?)

嫌な予感を感じながらも斎藤は恐る恐る目を開け顔を上げてみる。


眼下に広がるのはどこまでも広がる雪原のような眩しいまでの白き肌。

  (肌…だと……?)

もう後に残るのは嫌な予感しか無い。

それでも斎藤は勇気を振り絞ってそのまま顔をゆっくりと上へと上げた。

「ち……っ!?」

思わずその名を叫びそうになった事を、咄嗟に自制できた自分を褒めてやりたい。


そんな思いを胸に、斎藤は呆然と固まってしまった。


その視線の先には…、


壁に背を預け、あどけない寝顔を晒す千鶴。


寝るのには少し無理がある態勢の為か、襟元が少し乱れており、そこからは白いうなじと、鎖骨が……


そして今迄自分が『布団』と思い込んでいたモノは…


そのまま身動き一つ出来ないまま、たらたら、と冷や汗だけが滝のように流れ落ちる。


眼下には未だに荒らされた事の無い、新雪のような千鶴の太股が露わに……

 (俺はこの太…股に…今迄…顔を………)

そして先程伸ばしていた筈の自分の手の行方と言えば……


千鶴の太股にしっかりと挟み込むように潜り込んでいたのだった。

斎藤の限界はそこまでだった。


まるで乙女のような、絹を引き裂くような、『斎藤』の悲鳴が屯所中に響き渡ったのは、きっちりそれから三秒後だった……。


ヲトメの悲鳴


  1. 2012/11/16(金) 18:55:40|
  2. 頂きもの
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  4. | コメント:0
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