皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「Two Hearts-君にとどけ-」

いつもお世話になっている「ひみつかいぎ。」の1073kayaさんから
私の誕生日にSSを贈ってもらっちゃいましたー(^o^)/


誕生日自体は、もはや嬉しくもなんともない日と化していますがw
贈り物にはめっちゃ弱いです~
便乗して、コメントのついでにぽろっと零しただけなのに、ちゃんとそれを拾って下さったkayaさんにはホントにお礼申し上げます!
ありがとうーーー!


ではでは
ちゃんと私の一番好きな一君で書いて下さった誕生日記念SS―――一君になら、どんくらい遅れても、たとえ忘れられていても、その天然ぶりを傍で見られるだけで幸せですともw―――私の絵付きでどうぞ♪





Two Hearts-君にとどけ-



 九月十三日。
 暦は秋を示しているが、相変わらず気温は高い。
 じりじりと強い陽射しに照らされる風景が、「残暑」という言葉があまりにも似合う。…とはいえ、空は秋の色を含んでいて、頭上を見上げればスッとした透き通る青が広がっていた。
 台風が発生しては、強い嵐が通り過ぎる事もよくあるこの時期だ。この晴天は、なかなかに幸運だと思う。
 今日は、俺にとって大事な日だ―――尚の事、そう感じるのかもしれない。

「一さん。」
待ち合わせ先である小さなカフェに入って店内をくるりと見回すと、俺のいる場所から三メートル程離れたテーブル席に、遠慮がちな声で控え目に手を振る彼女の姿が見えた。
「待たせて悪かった。貴重な休みだというのに、わざわざ呼び出してしまってすまない。」
「いえ、気にしないで下さい。元々、有休を消化させる為のものでしたから。急に決まったお休みだったので、特にする事もありませんでしたし。一さんこそ…お仕事、忙しいんですよね?」
「ああ。先週末まではロシア圏にいたが、明日からはまた一週間程、NYへ行かねばならない。すみません…アイスウーロン茶を。」
 俺は、水が入ったグラスを持ってきてくれたウェイターに、メニューを見る事もなくオーダーした。
 このカフェは、いつも彼女との待ち合わせ場所に使っている場所だ。
 俺は元々、紅茶やコーヒーよりも喉元がすっきりするウーロン茶をよく好んで飲む。部屋に常備する茶も、日本茶とウーロン茶の二つは欠かさないようにしている位だ。
「そうですか…今日も、遅くまでお仕事ですか?」
「ああ。出張の前に、片付けておきたい仕事が幾つか溜まっている。本来なら、今日のお前との約束も昼間ではなく、夜にしたかったのだが……片手間のようになってしまって、すまない。」
 俺が頭を下げると、彼女は慌てた口調で「だ、大丈夫ですっ」と言って、俺に顔を上げるように促した。
「今、こうして会ってますから。大丈夫ですよ。」
「だが…」
「それよりも、一さん。海外は色々大変でしょうから、気をつけて帰ってきて下さいね。」
 彼女は、アイスミルクティーが入ったグラスをストローでくるりとかき混ぜると、優しげな声でふわりと笑ってくれた。

 俺が勤めている企業は外資系で、取引先も日本のみならず、海外の企業も多数ある。担当している業務の関係上、俺は国内だけでなく海外への出張も多い。
 恋人である彼女には、おそらく俺の知らないところでしなくても良い余計な気苦労をかけてしまっているだろう。
 俺が常に国内外を飛び回っているような仕事をしていなければ、もっと多く顔を会わせられる機会を作ってやれるのかもしれない。
(一度も口にされた事はないが…寂しい想いをさせてしまっているのだろうな)
(だが、これからは違う)
(そうだ…それこそ、今日からでも―――)
 俺は軽く咳払いをすると、彼女の名前を呼んだ。
 アイスミルクティーを一口飲んでから、彼女は優しく「はい?」と問いかけてくる。俺は、緊張でどくどくと高鳴っている鼓動を落ち着かせようと、小さく深呼吸をすると。

「た、誕生日…おめでとう。」

 半ば上ずった声でそう言って、小さな四角い箱をテーブルの上に置いた。
 深いチョコレート色をした木製テーブルの上に置かれている、小さなラメが散りばめられた薄いブルーの立方体。
 その立方体に、くるくると巻きついている金の縁取りが入ったピンク色のサテンリボンが、室内のライトに反射してキラキラと光っている。まるで宝石箱のようだと思った。
「……えっ?」
 彼女は驚いた顔で言葉を失い、俺と目の前にある小箱を交互に見つめている。
 俺は、己の膝の上に置いている握り拳をぎゅっと握り直すと、視線を左右に這わせながら静かに口を開いた。
「お前にはすまないが、俺は今の仕事をとても気に入っている。だが…今のままの生活では、お前と会う時間がなかなかとれないのも事実だ。お前にも、俺の為に無理をさせている部分があるのではないかと思う。」
「い、いえっ!そんなっ……。」
「…会えないどころか、まともに声を聞かせられない時もあるのに…か?」
「!」
 俺の問いかけに、ぴくりと彼女の小さな肩が上下して、きゅっと唇を引き結ばれる。悲しそうに眉を下げたその表情が、俺の予想が当たっている事を示していた。
「正直…俺自身、これ以上お前と離れていたくない。それで…少しでも、お前と一緒に過ごせる時間が増える方法はないものかと……考えてみた。」
「一さん…。」
「だ…だから、その……。これを、受け取って…もらえないだろうか。」
 俺が、テーブルの上の箱を指先でそっと滑らせながら彼女の目の前に置くと、彼女は大きな瞳を何度も瞬かせながら真っ赤な顔でじっと箱を見つめている。
(…頼む)
(小さくても良いから、「はい」と言ってくれ)
(頷くだけでも構わない)
(頼む……!)
 神か何かへの祈りにも似た気持ちで、彼女の口から出てくる言葉を俺がじっと待っていると。
「あ…あの、非常に申し上げにくいのですが……。」
「!」
(断られた……!)
 胸の奥が、ずしん、と鉛を飲み込んだように重たくなって、息苦しくなった瞬間。


「私の誕生日……一週間前、です……。」


 彼女が呟いた言葉に、俺の頭は真っ白になった。
(今、何て言った?)
(いっしゅうかんまえ……一週間前?)

「一週間前っ!?」

Two Hearts-君にとどけ-


 頭の中でリフレインしている言葉を、やっとの思いで噛み砕いた俺がそのまま彼女に問いかけると、彼女は嬉しいような困ったような複雑な表情で「はい」と頷いた。
「私の誕生日の当日…えっと、丁度一週間前なんですけど。は、一さん……海外へ出張だったでしょう?急な予定が入っての出張だって仰ってましたし、物凄くお忙しそうだったので、あえて触れないようにしていたのですが……。お仕事に行かれているのに、自分から誕生日の事を持ち出すのも、何となく失礼な気がしましたし……。」
「…」
(まぁ、確かに……)
 出張先で「今日は私の誕生日なんです」とメールで教えられても、おそらく俺は「誕生日おめでとう」という返信メールを送るだけで終わっていただろう。
 そもそも、それ以外に俺が出来る事など、他になかったのかもしれないが。
(だが、それでも……誕生日を一週間勘違いして、しかもよりによって更に格好つけて彼女に……)
(誰かっ…時間を戻してくれ!!)
 俺が「人生最大の失態を犯した」と自己嫌悪に陥っていると、彼女がそっと俺の名前を呼んだ。

「あの…これは、頂いてもよろしいんでしょうか?」

(え?)
 俺が無言のまま「もらってくれるのか?」と目だけで問いかけると、彼女は赤い顔ではにかみながら目の前にある小さな箱をそっと手に取った。
「すごくすごく…嬉しいです。開けてみても、いいですか?」
「…ああ。」
 さっきまで、俺の胸の中に落ちていた鉛のような重力が、ぱちんと泡のように弾けて消えた。
 己の現金さに、ほとほと呆れる。さっきまでの俺は、まるで奈落の底にでも落ちたかのような気分だったのに。今は、ふわふわと空に浮かんでいるような心持ちにさせられているのだから。
 上手く思考をまとめられず、錆びた機械のような動きで俺が小さくコクリと頷くと、彼女がぱあっと花が咲くような笑顔で俺に笑いかけてくれた。
 彼女の細い指が優しくリボンを解き、恭しく箱が開けられ…ベルベットの白い貝殻のような丸い箱が顔を出す。
 指先でぱくん、と箱を開いた瞬間、彼女は「わぁ…」と感嘆の声を上げた。うっとりとしたその瞳には、薄い膜のような涙の海が出来始めている。
「あ、あの…つけてみても…?」
「ああ。」
 胸が温かいものに包まれていて、もう頷く事しか出来ないでいる俺に、彼女はにこやかに微笑んで「ありがとうございます」と返してくれた。
 彼女の左薬指にするりとはめられた、細身の銀色の指輪。その中央には、青い石―――彼女の誕生石にあたるサファイアが、小さいものではあるがキラリと輝いている。
 指輪と俺の顔を交互に眺めてから、「寂しいなんて気持ち、もう吹っ飛んじゃいました」と笑う彼女は、本当に幸せそうで。
 己の起こした間抜けな失態に、「来年以降は絶対にやらない」と心に誓いながら…俺は、彼女の手をそっと握った。

「ずっと…傍に、いてくれないか。」

 俺の言葉に、嬉し涙を潤ませた彼女は、こくん…と小さく頷いて。華奢な手で、俺の手をきゅっと握り返してくれた。


-了-

  1. 2012/09/19(水) 10:29:05|
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