皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「鞘」

桜夢記」のロカ様から、また頂き物です♪
ありがとうございます(^o^)

いつも通り、勝手におまけをつけさせてもらいました^^;

ちょっと子供っぽい(いや、いつもそうかなw)総ちゃんと、珍しく強気なちーちゃんの看病シリーズ一話目。
続きからどうぞ堪能して下さい♪
本家へのご訪問は、マナーを守ってどうぞいってらっしゃいませ^^






 季節の変わり目と云うのは厄介だ。寒いわけでもない、暑いわけでもない。それなのにどうしてもこの時期になると体調を崩しやすくなる。どこが、と云うのではなく、食欲が落ちて必ずと云ってよいほど痩せる。ひどい時には熱を出して寝込む。

 そうすると周りから『鬼』と呼ばれている割に心配性で面倒見の良い土方があれこれと口を出してくる。さらに輪をかけて近藤が心配をして手厚く面倒を見てくれる。

 それが幼いの頃からの沖田の年中行事みたいなものだった。

 こんなことが何回か続けば、それなりに誤魔化す方法も上手くなるものだ。相手に心配をかけないように、決して重荷にならないように……。病だからといって甘えることなど沖田には出来なかった。

 もし、そんな子供の顔を見せてせっかく見つけた居場所をなくしてしまったら、自分はどこへ行けばよいのだろう……。

                    ☆
 
 「だ・か・ら、千鶴ちゃん。熱は下がったって言ってるじゃない」

 幹部が集まり朝餉を食しようとしていた時だった。昨日まで微熱が続いていた沖田を心配して土方と近藤の二人で沖田の熱が下がったことを確認したときだった。

 千鶴が誤魔化していないかと、もう一度沖田に手を伸ばしてきたのだ。

 「い・い・え! 今回はもう誤魔化されません!!」

 「千鶴。俺と近藤さんで確認してんだから、でぇじょうぶだろ」

 千鶴の勢いにさすがの土方もとりなすように声をかける。

 「そうだな。それにトシならともかく、さすがの総司も私を誤魔化したりはしないだろう」

 「お、おい近藤さん。そりゃねぇだろ」

 助け船のように近藤の言葉が続き、それに不満げな土方の言葉が続いた。

 ―近藤さんだから、沖田さんは心配をかけたくなくて誤魔化すんじゃありませんか!!

 内心で叫ぶと、千鶴は有無を言わせずに沖田の頬に両手を伸ばした。そして、まるで口付けでもするかのように至近距離に顔を近づけた。

 「ち、千鶴ちゃん、なにする気!?」

 てっきり土方や近藤と同じように額に手を伸ばすと考えていた沖田は、千鶴の手が思いもしなかった所へ伸びてきたのと、彼女の顔のあまりの近さに全身で後ずさりする。これではまるで沖田が千鶴に襲われているかのようだ……。

 「沖田さん、動かないでください!」

 普段からは考えられない千鶴の行動と叱咤に、沖田だけでなく他の幹部も一斉にざわめき立った。


鞘


 「お、おい、千鶴」

 「年頃の娘がまずいだろ、その体勢は!!」

 「あー、もうなにやってんだよ、千鶴!」

 「ゆ、雪村。それはいかがなものか……」

 「雪村君。嫁入り前の女子が、そのようなことを……」

 「おい、おい、何しようってんだよ!」

 「静かにしていただけますか」

 振り返った千鶴の顔にはいつもと変わらない笑みがある。しかし今日だけは泣く子も黙る新選組の幹部を黙らせるのに十分な威圧感に満ちていた。

                    ☆
 
 小さくて柔らかい手が沖田の頬からあごの下あたりから太い血管に沿って慎重に確認するように触れてゆく。あるところに触れると、違和感を覚えるのか、沖田が一瞬顔をしかめた。そこに微かなしこりを感じた。

 それでなくても、私は怒っているんです、という表情だった千鶴の顔がそれに気がつきいっそう険しくなった。額は平熱状態なのに、首筋に熱が籠もっている。声がかすれている事はないが小さなしこりのようなものが指に触れる。こうした時は高い熱が出ていることが多い。額は誤魔化すため、ここへ来る前に濡れ手ぬぐいで冷やしてきたのだろうと確信した。

 「沖田さん、こちらへいらっしゃる前に額を冷やしましたね……」

 千鶴の沖田を見つめるジトリと据わった目つき。気がつけば声がいつもより心なしか低い。

 沖田は首筋を抑えられて身動きもできないまま、

 「言ってることがよくわからない、んだけど、」

 と、思いきり千鶴から視線を外して応える。

 これでは嘘をついていますと白状しているのと変わらない……。

 状況が見えてきた幹部たちが呆れたようにため息をついた。

 「首筋が熱を持っています。それに首に小さなしこりができていますよ。咽喉に違和感があるのではないですか? この所、お食事が進まなかったのはそのせいだと思います」

 近い距離でしっかりと沖田の瞳を見つめながら、首筋から手頸へ手を移すと父である綱道譲りの手際で、手早く脈診をとる。平常よりも脈が早くて打つ数が多い。これからまだ熱は上がりそうだ。

 「千鶴ちゃん、お医者様でもないのにわかるんだ。すごいねぇ」

 そういって揶揄しようとする沖田の声が幾分引き攣っている。

 「一応、医者の娘ですからこの程度はわかります。小さい子が沖田さんみたいに熱があるのに誤魔化したいときによく使う方法なんです!」

 千鶴の言葉に沖田以外の全員が納得したように頷いている。

 「動いたから熱くなっただけだよ。もう大丈夫なんだから、ほっといてくれないかな」

 千鶴の手を払うと、沖田はさすがに不機嫌そうな顔つきで言い返す。

 「ほっとけるわけないじゃないですか!」

 「僕はほっといてほしいんだけど。いい加減にしてくれないと斬っちゃうよ」

 「どうぞ! 私は嘘なんてついていません」

 「そうだよね、どうせ僕は嘘つきだから。千鶴ちゃんも僕の言うことなんか信用なんかできないんだよね」

 「私はそんなことはいっていません!」

 互いに引けなくなっているのだろう。千鶴も沖田も滅多にしないような言い合いになり始めていた。

 「いい加減にしねぇか、二人とも!!」

 そこへ土方の怒鳴り声が割り込んだ。

 「千鶴、総司はまだ熱があるんだな」

 「はい。これからもう少し高くなると思います」

 沖田の傍から距離を置くと神妙な顔つきで千鶴は応えた。

 「総司、千鶴が言っていたことは本当か?」

 「もう熱なんてありませんよ。千鶴ちゃんが大げさなんです」

 こちらは半ば膨れっ面状態で、不機嫌そのものだ。

 「どうする、近藤さんよ」

 「うむ……」

 近藤は沖田と千鶴の顔を交互に見つめた。

 千鶴には千鶴の、沖田には沖田の思いがあるのだろう。

 「わかった。総司、熱が下がったのは俺とトシがきっちり確認した。今日はいつも通り仕事をしてもらう、いいな」

 その言葉に沖田の顔が明るくなった。

 「だが病み上がりゆえ、支障が出た場合のことを考え、雪村君は総司に一日同行して手伝いをしてやってもらえないかね」

 「はい!」

 近藤の裁定に肩を落とした千鶴が顔をあげて勢いよく返事を返した。

 「お目付役なんて、いらないのに……」

 呟いた沖田の言葉は残念ながら誰にも支持されなかった。

                    ☆

 「目が覚めましたか、沖田さん」

 熱があるとき特有のゆるゆるとした浮遊感が全身を包んでいた。気がつけば辺りはすっかり暗くなっている。

 近藤の許可が出て、千鶴とともに巡察に出かけた。そうして帰ってきて、疲れたから食事を後回しにして休むと言って部屋に戻った。

 そこまでは覚えているが、そこから眠りこんでしまったのだろうか。記憶が中途半端に途切れてしまっているようだ。

 「千鶴ちゃん……」

 枕元に正座して冷たい手ぬぐいで寝汗を拭ってくれているのは千鶴だった。

 「久しぶりの巡察で少しお疲れになったんですね。良くお休みでしたよ。夕餉の支度が出来ていますが、召し上がりますか?」

 「ほしくない」

 ごろりと寝がえりを打つと、なんだか無性に情けない気持ちがこみ上げてくる。千鶴と言い争いまでして自分の我を通したのに、結局はこのざまだ。

 「僕は、剣を振るうしかないのに……。どうして、こんな、なんだろう」

 「沖田さん……」

 「僕は新選組の剣でいなくちゃいけないのに! 剣が振るえなくなったら、近藤さんのそばに居られないのに、どうして……」

 「大丈夫ですよ。大丈夫……」

 ポンポンと布団を叩く千鶴の優しい手つきが、幼い時に別れた姉を思い出させた。そんな気持ちは全部捨ててきたはずなのに、この少女といると自分の中に封じ込めたはずの幼い子供が顔を出してくる。

 しゃくりあげ、大声をあげて、自分の中の子供が泣いているのを沖田は感じずにはいられなかった。

 「千鶴ちゃんは怖い子だよね、ほんとうに」

 どんな顔をして自分はこの少女に言葉をかけているのだろう、沖田は思った。

 「沖田さんには怖いぐらいでちょうどいいんです。そうでなければ、無茶ばかりなさるじゃありませんか?」

 ふふっ、と笑った千鶴の顔が行灯の明かりに照らされていつも以上に優しく見えた。

 「それに沖田さんが剣なら、きっと鞘になる人がいるはずです」

 「千鶴ちゃんならいいよ」

 「え、」

 熱のせいなのか、疲れのせいなのか、素直な言葉がするりと沖田の口をついて出た。

 「千鶴ちゃんだったら、僕の剣の鞘になってくれてもいい。千鶴ちゃんなら、きっといい鞘になってくれる……」

 「沖田さんが、そう望んでくださるなら」

 千鶴の頬が紅く染まって見えたのは、きっと明かりのせいだろう。その顔を見ているとなんだか安心して今夜は眠りにつくことができるような気がした。

 自分の中の泣いている子供も、いつも自分の弱い体にいら立っている事も、全て千鶴に預けてこのまま眠って良いのだと思った。

 自分の剣が狂気をはらんでいる事がわかっていて、尚、千鶴は鞘になってくれると言ったのだから……。

 そのまま沖田は再び深い眠りの淵へと沈んでいった。なにも案ずることはない。今はその剣を鞘に納めて、ただ安心して子供に戻って眠りに身を任せていればよいのだと沖田は思った。

 季節が変わろうとしている静かな晩のことだった。



 終
  1. 2012/09/11(火) 10:20:54|
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