つくづく頂き物に生かされてる感が否めない昨今―――
トップの『頂き物一覧』がどんどん長くなっていきます^^;
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いつもいつも感謝しております。
これを何で返せばよいのか…(;-ω-)ゞ
今回は「
茶々姫」のMURA様から♪
先日の原千ウエディング画を見て思いつかれたお話だそうで―――原田さんの目付きがイヤらしかったせいで、黒い原田さんに仕上がってしまったようですwww(全て当方の責任ですねw)
そんなちょっと酷い黒原田さん話;OKの方、ご注意の上、続きからどうぞ。
(いつも通りおまけも付けさせてもらいました)
偽りの鐘が鳴る日 カーーン
カーーン
澄んだ空に鐘の音が鳴り響く。
真っ白いウェディングドレスを着たうら若き花嫁。
その肩に手を乗せ、自分の方へと引き寄せる赤い髪の花婿。
参列者の姿は一人もない…。
それは、厳かに行われた二人っきりの結婚式だった。
まだ少女とも言えるような花嫁、千鶴は一粒の涙を零した。
それを花婿、原田左之助は唇で拭ってやった。
「どうした、不安なのか?」
「いいえ…」
原田のその言葉に千鶴は静かに首を振って否定する。
「違います。その反対です…」
「反対…?」
千鶴は顔を上げ、原田を見てふんわりと微笑んだ。
「幸せすぎて…涙が出てきたんです。」
そう嬉しそうに呟く千鶴の瞳からは再び涙が零れ落ちた。
原田はそんな千鶴の瞼に唇を一度落とし、そのまま自分の方へと引き寄せた。
千鶴は大人しくそのまま原田の胸へとしな垂れた。
「そうだな…色々と有り過ぎたからな……」
少し低くなった原田のその言葉に千鶴は寂しげに小さく頷いた。
母の急な病死
父の経営していた会社の不況による傾き
それらのショックに耐えられなかった父の自殺
父の自殺によって会社は倒産の危機に追い込まれたそれらの事柄が実にここ数ヶ月の間千鶴の身に起きたのだった。
一人、残された千鶴の手元には二つの位牌と莫大な借金だけが残ったのだった。
まだ学生だった千鶴にはとても返せる額ではなく、困り果てていた千鶴に手を差し伸べたのが原田だった。
原田はこの国でも有数な財閥の御曹司だった。
そんな原田の協力を得て会社も何とか立ち直る事が出来たのだった。
そんな原田が始めて千鶴と出合ったのはとあるパーティーでの事だった。
いつもの様に原田の周囲には美しく着飾った女達が取り巻いていた。
流行のドレスに煌く宝石を身に纏った女達。
原田はにこやかにそれらに笑顔を向け、会話をしていた。
ーーーーが、原田は内心どこか醒めていた。
自分達の身を飾る以上に強く自己主張する濃い香水の香り。
胸元や腰の括れを強調する布地の少ないドレス。
自分に流し目を送り、しな垂れてくる女性達。
同性同士の楽しげな会話の中に含まれている静かなる戦い。
けたたましく囀るようなそれらの声。
いかに相手を貶めては、自分を持ち上げるように仕向けては優越感に浸る女達。
内心、原田は辟易していたが、ある意味そんな光景も達観していた。
その日はたまたま気が乗らずに一人になろうとその場を離れたその時だった。
「きゃっ…」
とすん、と軽い衝撃と共に小さな声。
顔を下ろすと小柄な少女が空になったグラスを手に目を見開いてた。

その視線は原田の胸元を見つめていた。
余所見をしていたのであろう、少女がうっかりと原田とぶつかり、手にしていたグラスの中身を原田の服に零してしまったのだった。
「あ…ご……ごめん…なさい」
おどおどと手にしていたバックからハンカチを取り出し、原田の服に押し当てる。
白いハンカチは瞬く間に赤く色を染めていった。
それが少女、千鶴との始めての出会いだった。
少女は長身の原田から見下ろせる位小柄だった。
その少女は、原田が今迄に見たどんな女達とも違っていた。
不安そうに自分を見上げる少女、千鶴。その大きな揺れる瞳は不安気に原田を見つめていた。
欲しい…
こいつが欲しい……
原田はどくりと心臓が一つ強く波打ったのを感じた。
「あの、ごめんなさい…私が余所見をしていたばかりに……」
「気にするな。大した事じゃねぇから」
たどたどしく謝る千鶴に原田は優しく微笑みかけた。
原田のその言葉にほっとしたような表情を見せた千鶴。
この大きな澄んだ瞳に映したい
他の誰でもなく、ただ自分だけを…
それは原田の胸の中で始めて黒い欲望がどくどくと音を立てて溢れ出した瞬間だった。
その後、原田は汚れた服の手当てと称して別室へと誘い出し、色々と会話を楽しんだ。
千鶴は最近、成功を納めたさる会社の一人娘だった。
母親の体調が優れずに、その代理として父親に付き添って始めてこのパーティーに来たとの事。
千鶴からしては始めてのパーティーで、父親が挨拶に離れて行き、一人残された千鶴にとって全てが物珍しく、ついきょろきょろとしていて、原田にぶつかってしまったらしい。
恥ずかしそうに頬を染めてそう話すその姿
只でさえも小柄なその身を更に縮める千鶴
話す度に赤いリボンと共にポニーテールが小さく揺れる
薄いピンクの清楚なワンピースをその身に包んでいた。
その小さな体からは香水等の作られた香りではなく、シャンプーの残り香りらしき物が僅かながらに原田の鼻腔をくすぐった。
それらの、何もかもが原田の熱を煽るばかりだった。
「やっぱり私には場違いでしたね。」
「んな事はねぇよ。誰にだって始めてっつのはあるもんだろう?」
少し困ったかのように小さく笑う千鶴に原田はその頭に手を乗せて優しく撫でてやった。
頭を優しく撫でられて千鶴は更に頬を染めた。
こいつを俺のものに…
俺だけのものに……
原田の喉がごくりとなった。
それからの原田の行動は実に素早かった。
千鶴を心配して迎えに来た父親に千鶴との交際の許可を求め、その返事が留意されるやいなや、翌日には会社まで直接会いに行く程だった。
それからやがて、体調の優れなかった千鶴の母親が帰らぬ人となり、それに嘆き悲しんでいた父親の会社が相次ぐ不況に飲み込まれ、倒産の危機に追いやられた。
原田が援助を申し出たが千鶴の父は頑として聞かず、そしてその結果、もうどうしようもない所まで追い込まれてしまった。
心身共に弱められた父親はやがて会社の自室で首を吊り、千鶴は莫大な借金と共に一人残されたのだった。
そして、原田はそんな千鶴にプロポーズをし、千鶴の返事を聞くや否や、その翌日には二人っきりの結婚式を挙げたのだった。
原田のプロポーズの言葉を聞いた当初、千鶴は自分には莫大な借金しか残されていないのだと断ろうとしたのだが、原田は自分が求めているのは、会社ではなく、純粋に千鶴自身なのだと口説き落としたのだった。
そして今に至る…
千鶴にとって、余りにもの目まぐるしい迄の環境の変化に戸惑い涙を流す事しか出来なかった。
しかし、そこを原田が現れて颯爽と千鶴を救い出すだけではなく、プロポーズ迄してきたのだった。
無様にもスーツを汚してしまった自分をなじる事なく、それどころか不安気な千鶴を気遣い反対に宥めてくれた原田。
燃えるような紅い髪に琥珀色の魅惑的な瞳。
地位も人柄も容姿も飛び抜けて優れている原田…
会った瞬間、千鶴は強く原田に惹かれていた。
ただ、肉体的にも精神的にも貧弱な自分では釣り合わないと、自らにそう言い聞かせてはその想いを封印して諦めようとしていたのだった。
だが、そんな千鶴に原田は愛の言葉を甘く囁き、自分の目の前で父に交際の許可を得ようと迄してくれた。
そんな原田に何故か父は良い顔はせず、ひとまず留意とされた。
が、その翌日に再び会社まで原田が会いに行ってくれた事を千鶴は後で知った。
「私、とっても幸せです…」
千鶴は原田にそっと体重を預けた。
「…きっと草葉の陰から父も母も喜んでくれていると思います。」
そう言って涙を流す千鶴。
「ああ、そうだな……」
原田もそう言って千鶴の涙を拭ってやった。
だが、原田は知っていた。
千鶴の、少なくとも父親が自分との結婚を喜ぶ筈がないと言う事を…
原田は千鶴との交際を留意された理由を聞きに翌日会社を尋ねた。
そこで父親は難しい顔をして理由を話したのだった。
それは今迄の原田の日頃の女癖の悪さの指摘であり、原田からしてはぐうの音も出ない程だった。
だが、ここで素直に引き下がる訳にはいかない。
原田は誠心誠意を込めて説得しようとした。
今迄の自分の体の上を通り過ぎてきた数々の女達と千鶴とは全然違うのだと…
今迄の過去は確かに恥ずべき物だが、これからは千鶴だけを見て未来を進みたいのだと…
だが、いくら言葉を重ねても父親の首を縦に振る事は出来なかった。
原田はその時、悟ったのだった。
この男に何を言っても無駄だと言う事を……
原田は次の行動に出た。
既に調べていた千鶴の母親の病院へと尋ねて行き、言葉巧みに千鶴の父親、自分の夫に不貞の疑いがある事を吹き込んだ。
病により、心の弱っていた母親は見る見る間に更に体調を崩していった。
そして、それと同時に父親の会社が不況の波に飲まれ、凄まじい勢いで傾いて行ったのだった。
原田は再び会社を訪ね、会社の再建に手を貸す事を、それと同時に千鶴と自分の事を認めるようにと話しを持ち出した。
だが、父親は頑として首を縦に振らなかった。
それどころか父親は原田を罵倒した。
流石は一代でここまで会社を急成長させただけあって、この急激なる会社の傾きの裏に原田の影がある事を感じていたのだった。
原田は自分を罵る父親を無言で冷たい目で見下ろしていた。
そして会社を出た原田はそのまま病院へと再び向かったのだった。
何回か既に通い慣れていた病室へと迷う事なくゆっくりと歩いてゆく原田。
迎えた母親に原田はそっと囁いた。
父親の不貞は事実だったのだと、そして会社が倒産するのも時間の問題だと…
母親はそれらの言葉を耳に苦しそうに胸を押さえて蹲った。
元々それ程体が丈夫ではなかった母親。
病によって更に弱まった心臓は原田の偽りの無残な言葉に耐える事はなく、そのまま動きを止めてしまおうとしたのだった。
苦しんでいる姿を目に原田は小さく一度頭を下げ、そのまま病室を後にした。
やがて予想通り、自分の元に届いた訃報…。
哀しみに打ちひしがれた千鶴を原田は優しく宥めた。
意気消沈した父親の小さくなった姿。
それから間もなく会社の経営もいよいよ倒産かと言われる程傾いていった。
原田が再び会社を訪ねた。
最上階の社長室のドアをノックしようとした原田は僅かに開いていたその隙間から部屋を覗いた。
そこには小さな踏み台の上で首にロープをかけている父親の姿…
原田はそのままドアをノックする事もなく会社を後にした。
そして再び届く二度目の訃報。
残された千鶴はどうするべきなのか、どうすれば良いのかすら解らずにただ、涙を流し震えている哀れな小鳥だった。
原田はそんな千鶴に会社の再建を申し出ては見事にそれを成したのだった。
会社を再建する…
言葉にすれば簡単だが、実際はそれは容易では無い事な筈だ。
だが、原田からしてみれば、それはいとも容易く出来る事だった。
何故なら、元々会社を傾かせるよう仕向けたのは何を隠そう原田の手によってなのだから…
だが、原田はわざと数ヶ月の時間をかけ、いかにも苦労の末、再建させたかの様に見せたのだった。
会社の建て直しに数ヶ月…
それは異様な迄にもの短期間であったが、原田にはそんな事はどうでも良かった。
それは千鶴の信用を得る為に…
そしてその間に千鶴との距離を縮める為に必要な時間だったのだから…。
ある程度千鶴の心に自分がいる事の確信を得た頃に無事に会社の再建出来た事を伝え、同時に千鶴にプロポーズをした。
千鶴は自分には会社も財も何も無いと断ろうとしたが、もとより原田にはそんな物には興味も無く、ただ欲しいのは千鶴だけなのだと口説き落としたのだった。
「私、父や母の分も幸せになります…」
両親の事を思い出したのか、涙を再び零す千鶴を優しく抱き寄せる原田。
その胸に全くの罪悪感が無かった訳ではなかったのだが…
(素直に俺の事を認めてくれればこんな事にはならなかったんだがな……)
病室で優しく迎えてくれた千鶴の母親。
その笑顔は優しくも儚げで、どこか千鶴と似た雰囲気を醸し出していた。
その母親が哀しみ苦しむ表情は原田の胸を僅かながらにも痛めさせた。
出来る事ならなるべく穏便に事を済ませたかった。
だからこそ原田は、何度も父親にそのチャンスを与えたのだった。
だが、父親はそのチャンス全てを悉く台無しにしたのだ。
後に残されたのは残酷で最悪な手段…
だが、それらの全てが千鶴を手に入れる為だとすれば迷う事は無かった。
「ああ、そうだな……」
原田はそう優しく囁いて千鶴をそっと自分の胸へと抱き寄せた
。千鶴はそっと瞳を伏せて原田に身を任せた。
「……親父さんもきっと見守っていてくれるさ…」
原田はそっと千鶴の後頭部に唇を落とし、そして黒く微笑んだ。
何処までも澄んだ青空に教会の鐘の音が鳴り響いていた。

終
- 2012/09/03(月) 12:01:10|
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