皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「花のしたにて……」

つい先日、お知り合いになったばかりの「桜夢記」のロカ様から
土千のSSを頂いてしまいました♪


サイボーグ009の二次小説をメインでやっていらっしゃるんですが、思い返せばそもそも私がSFにはまったのも、仲間で困難に立ち向かう話が好きになったのも、二次元ヒーローに惚れたのも、009が最初。
(勿論“初期の”、です。トシが知れますねw)
最近また映画になるらしいですが、今だにこんな風に受け継がれていく漫画があるなんてすごいなあ…と改めて実感しました。

興味のある方はロカ様のサイトを覗いてみて下さいね。
重厚な009二次小説を読めます^^


では、こちらでは頂いた土千を―――いつものごとく、勝手に挿絵をつけて^^; 続きからどうぞ♪




花のしたにて……







蝦夷に短い春がやってくる……。








 長い冬が行き過ぎ、雪が溶けて、緑が芽吹き、桜が咲く。








 あの人が……。


そして私が……。


大好きで、大切な季節がもうすぐやってくる。














「今年もようやくこの季節がきたか」


 満開の桜の花の中で本当にうれしそうに歳三さんが微笑む。


「蝦夷は冬が長いですから……」


 ひときわ見事な花を咲かせている大木の下に、歳三さんが家から持ってきた毛氈を広げ、私はその上に用意してきたお酒やお弁当を準備する。


「こいつはまた奢ったなぁ」


 塗りの重箱に用意したお弁当を広げると歳三さんが破顔するように笑った。


「二人で喰いきれるのかぁ、こんなに支度しちまって」


 広げた重箱の中身に、呆れたように歳三さんが呟く。


「大丈夫です。たくさん、召し上がってくださいね。それに……」


 私はほんの少しだけ、続けようとした言葉を言いかけてためらった。


「そう、だな。こんだけ見事な桜ならあいつらもここに来てやがんだろう。千鶴、もしかしたら酒も弁当も足りねぇかもしれねぇぞ」


 私の言いたかったことを察して、歳三さんは新選組の屯所にいたときのようにポンと頭に手をやると、はらはらと舞い落ちる桜の花びらを見つめながらためらった言葉を続けてくれた。


「そうですね。そうだと、いいんですけど……」


 同じように桜を見つめながら私は呟く。





 時は流れる。


もう戻ることはない。それが淋しい。それでも心だけは同じ場所にあるのだと信じたい。そう私は思う。きっと歳三さんも同じ想いでこの桜を見つめているのだと思うから。





「千鶴、知ってっか?」


 それまで黙って桜を見つめていた歳三さんが不意にわたしに問いかけてきた。


「何をですか?」


「桜の女神様の昔話だよ」


「昔話?」


 小首を傾げた私に深い菫色をした瞳が一層深く優しい色に変わる。そして、ゆっくりと子供に言い聞かせるように話しだした。


「桜の女神のことを木花咲耶姫という。天照大神の孫である邇邇芸命が天界からこの地上を治めるためにここへ降り立った時、一人の国津神が自分の娘である木花咲耶姫を妻へと差し出した。この時、国津神は木花咲耶姫の姉の石長比売も一緒に妻にと差し出したんだが、邇邇芸命は木花咲耶姫だけを妻に娶った」


 風もないのにはらり、はらり、と私と歳三さんの元へと桜の花びらが降り積もる。まるで蝦夷に続く長い冬に降り続く雪のように。


「国津神は怒ったそうだ。石長比売も木花咲耶姫と一緒に娶っていれば、人は桜の花のように繁栄し、その命は永遠になったはずだったのにってな」


 散ってしまう桜。それでも、とてもきれいで……。まるで……。


「俺はな、千鶴。木花咲耶姫だけで十分だ。永遠なんて長い時間なんて必要ねぇ。花開いて散る時間がどんなに短くとも、こんだけ見事な花ぁ咲かせてんだ。それ以上なんていらねぇって思っちまうんだよ。きっと、あっち側に逝っちまった奴らもそう思ってるに違いねぇ」


「歳三さん……」


 ふわぁりと微笑む歳三さんの瞳に私の顔が映っている。大丈夫、私はきちんと笑えている。


「千鶴、勘違いすんなよ、俺ぁ、まだ逝っちまう気はねぇんだからな」


 その言葉に私は小さく頷いた。まだ、そう、まだ大丈夫。


「だが、いつかはその時が来る」


 歳三さんはまるで自分に言い聞かせているようだった。


「その時は桜みたいにありてぇな。潔く咲いて、潔く散ってゆく。そうして……」


 その時、歳三さんが小さく呟いた言葉を私は聞こえなかった、振りをした。


「―願わくは花のしたにて春死なむ」


 いつまでも降り続く花弁の中で私たちは飽くことなく桜を見つめ続けていた。


『そのきさらぎの望月の頃』、心の中で歳三さんの言葉を受けて私は続けた。


 願う叶うことなら、その時までずっと共にいたい。


 幾度も、幾度も、花が咲き、散る季節を繰り返して……。


花のしたにて…


  1. 2012/08/05(日) 00:39:18|
  2. 頂きもの
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コメント

もったいなさすぎです!!

ちょこ様。
こんなに素敵な千鶴ちゃんと土方さんをありがとうございます。

桜って、あの散る瞬間がきれいだなと思うんですね。
我が家の近所のお宅の庭に桜の大木があります。(ほとんど神木規模に大きいんです)
必ず前を通るのですが、春の夜のほんのり薄明かりの中で花びらがひらひら散っていく
光景は毎年目にしていても本当にきれいです。

そんな光景を書いてみたかったんです。あまりうまくないですが……。
UPまでしていただいてありがとうございます。

  1. 2012/08/05(日) 12:55:22 |
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  3. ロカ #-
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  1. 2012/08/05(日) 16:10:23 |
  2. |
  3. #
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ロカ様♪

蛇足の挿絵、お受け取りありがとうございます^^

END後の二人を描くのは初めてになります。
文章に合った、しっとり感が出せればよかったのですが…いかんせん、私の絵では…;

うちの近所には、大木のしだれ桜の植わっているおうちがあるんですよ。
毎年、そこの桜をこっそり見にいくのが恒例w
道の半ばまで覆いかぶさるように咲く桜は、それは見事です。
なのに、先月の台風で新芽が潮風でやられて、茶色くなって散ってしまったのが心配。
来年も無事に咲くといいんですが…。

そちらの009の二次も楽しみですが、これからはこっちの二次創作も増やしていって下さいね♪
オールの連載も続き楽しみにしてます^^
  1. 2012/08/05(日) 23:17:51 |
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  3. ちょこ #-
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みゃう様♪

END後の土千を描くのは初めてですが、お褒め頂きましてほっとしました。
考えてみれば、キャラの中で一番描きにくかったはずの土方さん; 
なのになぜか最近多出気味ですねw
まあ、この所、うちの土方さんには色々と苦労させているので、たまにはこんなしっとりと静かなシーンにご登場願うのもいいかも^^
それにしても、最近は(みゃうさんを初めとして)頂き物が沢山で、本当に私は果報者です。
さて、それに少しでもお返しする為にも、やっと一先ず『恋しさ』も終えたので、次の作品に本気で取り掛かるとしますw
みゃうさんの次作も、心より待っています。
  1. 2012/08/05(日) 23:30:51 |
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  3. ちょこ #-
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