皓月庵

乙女ゲーム中心の趣味に走ったアナログ二次創作ブログ。マンガと小説のごちゃまぜ^^;

「金平糖の花が咲く」

テール×テール」のドラキョンさんから、久しぶりの新作SSを頂いてしまいましたー♪
ありがとうございます\(^o^)/


そしてこちらも久しぶりのKISSシリーズ♪
それも以前頂いた「戯れに口づけを」「白の迷宮」に続く、完結編となっています。

斎藤さんと沖田さんとの三つ巴―――ドラキョンさんの文章が切なくて、あれからどうなったのか、と思っていましたが…
やっぱり今回も切なかった(ノ_<)
気になる方は、続きからどうぞお読み下さいませ^^


挿絵は感謝を込めてドラキョンさんへ進呈します。
他の方はご遠慮下さいね。



金平糖の花が咲く(side 斎藤)


解っていた。俺はそれをも承知であの役目を引き受けた・・・。

俺が平助とともに伊東さんの元へ行くと決めた時、
千鶴は何度も瞬きを繰り返し、泣くまいと懸命にこらえていた。
そんな千鶴が愛おしくて、何度手を伸ばしかけたことか。
踵を返して、副長の所へ駆け戻り「なかったことにしてください。」
と懇願しようと思ったか。

だが結局俺は、千鶴より新選組を取った。
そんな俺に、何も知らされていない仲間たちから向けられる視線は、
刃のように鋭かった。
副長さえご存じであればよい。
そう思っていなければ耐えられなかったかもしれない。
伊東さんたちを欺き、平助にすら真実を告げず、仲間と、千鶴をも騙す。
そんな俺には似合いのはなむけだったかもしれない。

だが、そんな視線の中に、一つだけ奇妙な視線が紛れていることに気がついた。
総司の視線だ。あいつの視線には、確かに近藤さんを裏切る俺への憎しみがあった。
一方で、何もかもお見通しだと言わんばかりの達観したような視線が混じることもある。
だが、俺の感じた違和感はそれではなかった。時折確かに雑じるのだ。嬉しいと。
俺は総司のその視線の意味を突き詰めることをやめた。
それをすれば、進めねばならぬ己の歩みが止まってしまいそうで。
結局、俺はすべてに気づかぬふりをしてすべてに背を向けた。

あれから、俺は町で浅葱を見るたびに目をそらし、それでいてその中に別の色が混じっているのではと目をやってしまう。
それを見つければ重苦しい心がわずかに浮上し、なければ石を詰め込まれたような心持で。
大事の前に何を浮かれているのか、俺は。
何度己を𠮟咤しようとも、俺の目はそれを繰り返す。

あれから季節は過ぎ、淡い桃色から緑を濃くしていった。
それと同じくして、俺の内偵により奴らの嫌疑も濃くなっていった。
奴らは最初こそ勢いづいていた。
今も伊東さんたち幹部は何やら動いているようだが、それ以外の同士たちは特にすることもなく、屯所の中でぼんやりと時を過ごすのみだ。
特に俺や平助は、伊東さんにすれば、副長への当てつけに引き抜いてきた部分も大きかったのだろう。
副長に近かった分、今は明らかに警戒されていて、何の情報も与えられず放置されていた。
それに異を唱えることすら、ここでは難しい状況だ。
そのせいか、平助はすっかりやる気をなくして、部屋でごろごろするか、酒を飲んでいる。
時々平助が俺を誘いたそうに視線を向けてくるが、俺を誘うことはできないでいる。
俺たち二人が集うことは誰も口にはしないが禁忌だ。
俺も、なすべきことのために、あえて平助とつるもうとは思わぬ。
俺はここに居場所がないからと一人酒を飲み歩いている。

そして今朝、俺は屯所の金を無心して廊下をふらふらと歩いていた。
「あれ?一君、こんな雨の中、どこへ出かけるのさ。」
今日に限って早起きしていた平助に、見咎められた。
「…馴染みから誘いが来た…。」
ぼそりとつぶやけば、平助は俺から目をそらした。
「一君も、変わっちまったんだな。」
も、ということはお前も変わったのか?そう問いたいが、それすら俺達には許されない。
前のように言葉を交わすことがどんどん難しくなっていく。
俺は無言のまま、外へ出た。

柔らかな雨が俺を濡らしていく。
俺はぼんやりと雨の中を歩き続けた。
少し前までは、俺が出かければ誰かしら後をつける者がいたが、俺の堕落した生活に満足したらしく今はその気配すらない。
それでも、ぼんやりを装いながら警戒だけは怠らず、俺はその場所を目指した。
どうやら俺のほうが先についたようだった。
相手の姿がなかったため、俺は己の姿を見せられない奴に見つからないよう、ほんの少し時間つぶしをするつもりで、その隣の寺の中に足を踏み入れた。
境内は、淡い紫に満ちていた。柔らかな雨に打たれ、それは露をたたえ輝いていた。
わずかに重苦しかった気持ちが浮上した。わずかな時だが、久しぶりに俺は気を緩めることができた。
「きれいだ…。」
思わずこぼれた言葉。
どんな時も顔を上げ咲き続けようとする花に、ごくありふれた言葉しか選べない俺は、やはり変わらないのだなと、変なところで気づいてしまい苦笑した。

背後から、待ち人にしては軽い足音が近づいてきた。子どもか?
とりあえず待ち人でも、浪士でもないと判断し、俺は蔭へと移動しようとした。
だがその足音は俺から距離を取って止まる。
俺のような男がいて警戒させてしまったかと、申し訳なく思う間もなく、
「斎藤さん?」
ひどく懐かしい声が俺を呼んだ。
なぜここに千鶴がいるのか。千鶴が一人で外を歩くことなどありえないはずなのに。俺の戸惑いに気付かないように足音は俺に近づき、ふいに周囲に影が差した。
「風邪をひいてしまいます。これを。」
そっと差し掛けられた傘と差しだされた手ぬぐいに、間違いなく千鶴だと理解する。
「…すまない。」
俺は差し出されたすべてがうれしくて、受け取る資格がないことや、それぞれの立場など全部忘れたふりをして手拭いを受け取った。
千鶴は俺が手拭いを使う間ずっと笑顔で傘をさしかけてくれていた。
言いたいこと、聞きたいことがあるだろうに、変わらぬ様子で俺を見守り続けてくれる。
それがうれしくて、俺はゆっくりと手拭いを動かし続けた。

聞けば、今朝総司が医者に行くのは嫌だとごねたらしい。副長が叱ると、千鶴と一緒なら行ってもいいと言い出し、何を言っても聞かないため、渋々副長が許可をしたらしい。山崎が一緒について来ようとしたらしいが、自分が一緒なんだから、千鶴を逃がすわけがない、山崎が付いてくるなら医者にはいかないと言い張ったらしい。
総司の変わらぬ様子に、あきれてしまうが、あいつも変わらないのだとひどく懐かしさも覚えた。
総司と一緒には来なかったのだろうが、山崎がここへ来るのは間違いない。あいつには総司に付き添う以外にも仕事があるのだから。おそらく待ち合わせの場所にそろそろつく頃だろう。
刹那、そんなわずかな時ではないのに、俺の心にそんな言葉が沸き上がる。まったくの偶然であり、会えるはずのなかった千鶴との逢瀬が終わってしまう。このまま、役目を忘れて一緒に戻ってしまいたい。ずっと同じ時を過ごせたら…。
俺は…。

「雪村。」
受け取った手拭いを差し出す。千鶴は目を伏せると俺の手から手拭いを持ち上げた。無意識だった。俺は手放すのが惜しくて、手拭いを握りこんだ。手にかかった抵抗を訝しむように千鶴が俺を見上げた。
限界だった。
俺は手拭いと一緒に千鶴の手を引き、傘を持つ手を押さえ千鶴へ顔を寄せた。
千鶴の唇は甘い。幾度も千鶴の甘さを堪能するかのように唇を寄せ。俺はあの時から砂のように味気なかった日々を取り戻すかのように、千鶴を求めた。

カット294

「…甘いな。」
それは千鶴のことであり、俺のことでもあった。
「俺にここで会ったことは、誰にも漏らすな。」
本当にかけたい言葉とは真逆の脅しを千鶴に告げ、俺はまた雨の中に身を躍らせた。
行きの雨と違い、俺を濡らす雨がひどく優しく感じられる。
これから会う俺の待ち人が総司に怒っているとわかっていたが、今日ばかりは総司のわがままに感謝しそうになる俺がいた。




金平糖の雨が降る(side 沖田)


僕は、早く千鶴ちゃんに会いたくて、途中にあるお寺の境内を抜けることにした。
僕を診てくれている医師から、「症状が落ち着いてきている。」と言われて、嬉しくなった。
元気を取り戻したようで、足取りは軽く、気がつかないうちに小走りになっていたみたいだ。
「千鶴ちゃん、君のおかげだよ。」君の顔を見たらそう言って頭を撫でてあげようかな、そうしたら君は首を竦めつつ、でもきっと「よかったですね、沖田さん。」ってとびっきりの笑顔を僕にくれるんだろうな。なんて思いを巡らせていた。

山門を抜けたところで、見慣れた傘が目に入って、僕は名を呼ん・・・
「ちづ・・・」
それ以上の言葉は雨に溶けていった。

カット953金平糖の雨が降る

足元まで溶けていくようで、それ以上みたくなくて、顔を覆った。ゆらりと揺れた上半身に、とんと軽い衝撃があった。僕はもたれかかった山門に背を預け、ずるずると座り込んだ。
手にしていた処方箋が音を立ててつぶれてゆく。

なんで、どうして・・・。
僕と一君、何が違ったの。
どうして一君なの。
どうして僕じゃないの。
ううん、わかっていた。
ずっと知っていた。
でも諦められなくて、手放せなくて。
君の優しさに甘えて。
君と一君の物理的距離がそのまま心の距離になればなんて思ったり。
そんなこと起こるわけがないって分かっていたのに、
もしかしたらなんて都合のいいことを考えて・・・。

だからきっとこれは僕への罰。

神様って随分残酷だよね。
僕が手を伸ばして握りしめたものが、細くなった指の間から音を立てて零れ落ちて行く。
でも、それでもいいかって思える僕もいる。
僕の願いは君の幸せ。
君が悲しむくらいなら、僕の全てを差し出せる。これは本当。

でもね、今は何だか目が痛いよ。
身体にあたる雨がとっても痛いんだ。
君たちを彩る紫陽花が水滴に滲んでいる。

今日は金平糖の雨が降る。
君たちに降り注ぐのは、甘い金平糖の雨。

僕を濡らすのは……。


  1. 2017/04/24(月) 00:32:46|
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